コミュ症たちは、初めてダンジョンを冒険する。①
「ついったー!ついに……ついについた!」
そう叫びながら、カンナは大きく背伸びをした。
その様子を見ながら、俺は荷物を下ろし、体を休める。
同じ姿勢で、長い道のりを歩いてきたせいか、少し楽な姿勢を取るだけで、一気に開放感が押し寄せてくる。
開放感に浸りながら、ゆっくりと顔を上げ、目の前に広がる建造物をじっくりと観察する。
その建造物は至る所が欠けているが、相当前に作られた遺跡のようだ。
周辺にはボロボロに壊れた柱が並び、建造物自体は前世で見た神殿のような雰囲気もある。
そのどう考えても何かがありそうな建造物を目にし、心の底からワクワクした気持ちがあふれ出してくる。
「それにしても、ギルド長さんめちゃくちゃ良い人だよね。仮冒険者であるうちらに新しいダンジョンを探索させてくれるなんてさ!」
「本当だよな!新しいダンジョンなんて、そうそう探索できるもんじゃないからな。感謝してもしきれないぜ」
二人の言う通り、ギルド長には頭が上がらない。
久しぶりの休みを終え、いつも通り依頼をこなした昨日。
ギルド長であるカナリーは俺たちをギルドへと呼びだした。
何が言われるのかとドキドキしていると、ギルド長は俺たちにダンジョン攻略の話を持ち掛けてきた。
なんでも、このダンジョンは相当前から発見はされていたらしい。
しかし、その周辺にはモンスターの群れが大量に生息していたため、ダンジョンにたどり着くことが困難とされていたのだ。
そんな時、突如周辺のモンスターがデイングの町付近へと移動したため、ダンジョンの周辺にいたモンスターの群れが消え去り、ダンジョンへたどり着けるようになったのだ。
そこで、日頃仮冒険者として頑張っている俺たちに、ダンジョン攻略の体験として、一番最初にダンジョンを探索する権利を譲ろうとしていたのだ。
ユリたち曰く、ダンジョンを最初に探索できるのは凄く良い事らしい。
基本的に、ダンジョンで発見した物の大体は、発見した冒険者の所有物としていい決まりがある。
そして、ダンジョンは大昔の人たちが作った洞窟などで、モンスターが住処にしている空間の事。
つまり、ダンジョンには大昔の人たちが保存していた宝や、太古の道具など、様々な貴重な物質が存在し、それを見つければ全て自分の物に出来るのだ。
それに加え、もし価値があるモンスターが住み着いていたりすれば、そのモンスターの所持する素材なんかも、大量に入手することが出来る。
まとめると、ダンジョンを最初に探索できれば、宝もモンスターも、全てを独り占めすることが可能なのだ。
そんな権利をギルド長は俺たちに譲ろうとしている。
これを受け取らないほど、俺たちは馬鹿じゃない。
俺たちは喜んで権利を受け取った。
そして今日。そのダンジョンへと、長い距離を歩き、向かって来たのだ。
本当に、ギルド長には頭が上がらない。
「いやー、それにしてもワクワクする!みんなもそうだろうけど、本物のダンジョンを探索するのは初めてでさ!なんかもう、楽しすぎる!」
「分かるぜ!この先のダンジョンで俺たちを待っている物を想像すると、めちゃくちゃワクワクするよな!」
うん。確かにワクワクする。
ワクワクドキドキが止まらな過ぎてやばい。
俺たちは学校でダンジョンを探索した事は何度かある。
しかし、学校のダンジョンは学校が管理している、モンスターが住処にしている洞窟の様な物だった。
ハッキリ言って、危険と発見が伴う、本物のダンジョンの探索とは程遠いものだったのだ。
実質的に俺たちは本物のダンジョンを探索した事はないのだ。
当然、一番最初にダンジョン攻略をするなんてこともやった事がない。
つまりだ。
今日、俺たちは初めて、本物のダンジョンを攻略するのだ。
テンションが上がらないわけがない。
ワクワクドキドキが止まるわけがない。
そんなことを思いながら、俺が心を躍らせていると、ユリが時間を確認し、口を開く。
「……あ、時間も時間だし、そろそろ入らない?」
「そ、そうだね。そろそろ入った方が良いかも」
その会話を聞くとカンナは素早く立ち上がり、荷物を完璧にまとめ上げた。
そして、ダンジョンの目の前に立ち、大きく声を上げた。
「それじゃあ……ダンジョン攻略開始!」
『おー!』
カンナの掛け声に答え、俺たちはカンナについて行く形で、ダンジョンへ一歩を踏み出した。
ダンジョン内は薄暗く、周辺しか視界に入れることが出来ず、先の景色が全く見えない。
壁は所々穴が開き、地面は今にも崩れそうな階段が並んでいる。
その雰囲気に、少し緊張が走るが、全員で顔を見合わせたのち、ゆっくりと階段を降り始める。
階段の途中には錆びた剣や、いつのものか分からない生物の骨などが落ちていた。
恐らくは、ダンジョンを攻略しようとして、失敗した冒険者のなれの果てだろう。
いくら楽しそうでも、ダンジョンは危険な場所である。
期待を胸に膨らませながらも、警戒は怠らなずに行こう。
そんな事を考えながらも、数分間階段を下りて行くと、階段は終わり、真っ直ぐな廊下へと到着した。
廊下の地面は崩れそうだった階段と打って変わって、つい最近掃除したと言っても分からないほどに綺麗で、ガラスの様に凹凸の一つもない真っ平らな地面になっている。
ゆっくりと一歩踏み出すと、突如何かが割れる音がしたと同時に、廊下の側面に明かりが灯った。
『おお……おおおー!』
グリシアを除く一同は、全員同時にそう声に出した。
廊下に入った途端、廊下の壁についていた松明に灯りがともった。
どんな原理かは分からないが、恐らくここを製作した人の生呪の力だろう。
「なんか……なんか凄いな」
「ああ……なんか……凄い……。なんていうかダンジョンっぽい!」
「アリウム……分かる。なんていうか……ダンジョンっぽい!」
その言葉では表せないダンジョンらしさに、俺とアリウムは深く頷きあった。
そして、まだ見ぬダンジョンの世界へと、進んで行く。




