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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
78/120

コミュ症は中級冒険者の弟子になる。②

「す、す、す、すげえ……」


 リュウガさん。いや、師匠たちと別れ、俺は一人でギルドの方向へと向かった。

 そのままギルドの大通りを抜け、人だかりがある方へと歩いて行き、さらに大きな通りに出た所で、俺は思わずそう呟いた。


 その時、俺の目の前には食べ物だらけの巨大な商店街が広がっていた。

 ほとんどの店で様々な料理が売られ、入り口なのにもかかわらず、様々な料理の良い匂いが、次から次へと鼻へ入ってくる。

 その食欲をそそる匂いに、よだれが止めどなく出てくる。


 思えば、今日は朝食を食べてから、何も口にしていない。

 数分前までの地獄の様な鍛錬のせいで、体中のエネルギーを消費しすぎたこともあり、腹の減りも限界に達している。


 空腹状態の腹に、目の前に広がる食べ物の山。

 これは食べる以外の選択肢がない。

 そう考え、右手に金を握りしめると、手始めに肉の串刺しが売ってる店へと走り出した。


 初めての店で買う事もあり、当然の事如くコミュ症は発生した。

 しかし、極限まで空腹状態の前ではコミュ症も関係ない。

 多少買うのに手こずりながらも、すぐに串刺しを入手し、一気に口に入れていく。


「う……う……うめえ…………」


 何これ美味しい。

 何の肉かは分からないが、とにかく美味しい。

 何だこれ。初めて食うし、何て名前の料理か分からないけど美味しい。

 なんかたれが絡み合ってて、触感が良くて……なんか良く分からないけど美味しい。


 物の数秒で串刺しを食べ終えると、ゴミ箱に串を頬り投げ、周りを観察する。

 そして、大勢の人が並んでいる、人気店であろう店に並び、食べ物を購入する。

 それは肉まんに似た見た目をしているが、肉まんと違い甘い香りが異常なほどに匂ってくる。

 

 一体どんな味か見当もつかないそれを一口かぶりついてみる。

 その瞬間、口の中に優しい甘さが広がって来た。

 小さい頃、お母さんが作ってくれた甘いクッキーと同じような甘さがある。

 何が入っているのかは分からないし、一体何でこんな味がするのか分からない。

 けどまあ、美味しいし、懐かしい味がするからいいか。


 見返してみると、宿で出てきた夕食も含め、この町で食べた料理は美味しいものばかりだ。

 俺たちがいた街と比べると、どの料理も一段階美味しくなっているようだし、もしかしたら、このデイングの町は食文化が優れた街なのかもしれない。


 そんな事を考えながらも、残りの肉まんに似た何かを口に詰め、再び歩き始めた。

 店に出されている料理を一つ一つ確認し、美味しそうな料理があれば、すぐさま買い、実食する。

 それを続けていると、商店街を出る頃には腹が膨れる程になっていた。

 

 腹も膨れ、これからどうしようかと考えていると、付近から聞き覚えのある事が聞こえてきた。

 特に何も考えず、その声がした方へとよくある公園程の大きさの広場が広がっていた。

 そして、その真ん中には木刀を振るアリウムの姿があった。


「よう、アリウム。……こんな所で何してるんだ?」


「お、コウキじゃねえか!いつも通り修行中よ!」


「修行中って……今日は久しぶりの休みだぞ?こんな日くらい、修行なんてしなくても良いと思うぞ」


 そう言いながらアリウムの肩にかかったタオルを見てみると、水に浸けたようにビショビショに濡れているのが分かった。

 アリウムの全身をよく見てみると、体中に砂が付き、至る所がボロボロで、長時間ここで体を動かしていたであろうことが見て取れた。

 恐らく、朝から今まで、ずっとここで頑張っていたのだろう。


「んー、いや、みんなはそうかもしれないけど、俺は駄目なんだよ。ほら、俺って才能がないじゃん」


「……は?いや、才能はあるだろ」


 あれだけ強くて、才能がないわけがない。

 才能がないなら、仮冒険者に選ばれてないだろうし、学園にすら受かっていないはずだ。


 俺の言葉を聞くと、アリウムはその場に腰を下ろし、ゆっくりと口を開いた。


「いや、才能はねえよ。そもそもとして、俺は無能力者だからな!それに、元から身体能力は低いし、頭も悪い。その証拠として、俺は何度も学園の試験に落ちてるだろ。俺は才能がないんだよ……。だからさ、俺は休むわけにはいかないんだ。いくら辛くても、いくら辞めたくなっても、それでも努力を続けなくちゃならないんだ。それでやっと、お前らに追いつけるんだからな」


「……いや、そんなことないと思うぞ。……その、俺目線お前は凄い奴だよ。力が無くても、お前は強いし、めっちゃカッコいいじゃんかよ」


 俺はアリウムに何度も助けられた。

 凄い所を何度も見てきたし、強い所も何度も見てきた。

 確かに無能力者かもしれないし、試験に何度も落ちているかもしれない。

 それでも、俺は強いし、凄い奴だと思う。


「そうか?ありがとうな!けどまあ、俺は強くならないといけないんだ。お前らについて行けるように……俺の夢を叶えるためにな!」


「……夢?」


 そう聞くと、アリウムは楽しそうに笑った。

 そして、木刀を置き、ゆっくりと立ち上がると、空を見上げながら話し始めた。


「言ってなかったっけか。……俺は最強になりたいんだ!最強になって、誰にも負けないくらいに強くなって、誰でも守れるようになりたいんだ。ほら、最強になれば、敵はいないだろ。そうなれば、誰でも助けられると思うんだ。だから、俺は最強になりたい。そのために、今は頑張らなきゃなんだ!」


 夢を語るアリウムの目はどこか輝いているように見える。

 その目から伺える。アリウムはどれだけ時間が掛かろうが、本気で最強になろうとしている。


 この世界で最強なんて、普通は途轍もなく難しい事だろう。

 それでも、今のアリウムを見ると、アリウムなら出来る気しかしてこなくなった。


「最強か……アリウムなら、絶対なれるよ」


「ありがとうな!……それじゃあ、俺は修行に戻るかな!」


「あ、なんか手伝えることないか?俺もこれから暇だし、そう言う事なら何か手伝うぞ」


「え、いいのか!?それじゃあ、試合相手を頼めるか?やっぱ相手がいた方が、やりやすいんだよ」


 俺は頷くと、付近の影に触れ、木刀と同じ長さの影の棒を作り出す。

 そして、俺たちは日が暮れるまで、剣を交え続けるのだった。

夢を見据え、無能力者の少年は努力し続ける

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