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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
77/120

コミュ症は中級冒険者の弟子になる。①

「どうしたコウキ!まだまだ、あと三周だぞ!」


「ちょ……と……まっで…………つ、つかれ……」


 声にならない声を出しながら、背中に木製ハンマーを背負い、無理やり足を動かし続ける。

 息は上がり、目の前は歪み、足は悲鳴を上げていある。

 そんな状態なのにもかかわらず、足を止めずに走り続ける。


 何故こんな状況に陥っているのか。

 その理由は、数日前に遡る。



 リュウガさんの誘いで洞窟へ向かったあの日の帰り道。

 様々な思いを胸に持ったまま、リュウガさんへハンマーの使い方を教えてくれないかと頼んだ。

 ハンマー使いであるリュウガさんなら、俺に欠けている戦闘技術を向上させてくれるかもしれない。

 そんな考えで、深く考えずに、聞いてみたのだ。


 すると、リュウガさんは嬉しそうに笑い、少し悩む仕草をしたのち、快く頼みを受け入れてくれた。

 数日後に鍛錬を付ける約束をし、その日はそれぞれの帰路についた。

 


 そして、約束の日である今日。

 最初は簡単な準備運動からだった。

 それが少しずつ過激になっていき、今現在。

 巨大な広場を十数周走らされている。


 自分で言うのもなんだが、ロメリア先生の鬼授業で、それなりに体は鍛えられていたと思う。

 鬼授業だったお陰で、大抵の鍛錬なら難なくこなせるとも思っていた。

 しかし、それは間違いだった。


 リュウガさんの鍛錬はえぐすぎる。

 休む暇なく、何千メートル走らされ続けるし、休もうとしても、強制的に走らされて休めない。

 少しでも速度が落ちれば、声を掛けられ、速度を保たざる負えなくなる。

 何と言うか、リュウガさんの鍛錬には前世の学校で行われた、シャトルランという地獄の授業を彷彿させる辛さがある。

 

「おい、コウキ!あと少しだぞ、速度を落とさず頑張れ!」


 リュウガさんにそう叫ばれ、嫌になりながらもさらに限界を超え、走り続ける。

 そして数十秒後。ついに俺たちは指定された回数広場を走り終える事に成功した。

 走り終えると同時に地面に倒れこみ、出来る限り落ち着いて呼吸を続ける。


 限界を超えて走り続けた俺の体は既に限界だった。

 体中痛く、目の前は歪み、足は腫れ上がっている。

 呼吸もまともに出来ず、まさに死にかけの人間と大差ない。


 何とか体を落ち着かせ、呼吸を整えていくと、数分後には少しではあるが、体が冷静な状態へと変化していった。

 そんな時、弟子という理由で一緒に走っていたキキョウが水筒を持って俺の目の前に現れた。


「コウキ大丈夫? 水いる?」


「あ…………あ……ありが……とう……。……キキョウさんは……い、いつも……こんなに走っ……でる……の?」


「稽古をつけてもらう時は毎日 ワタシは走らされてる ずっと走ってて慣れた」


 走ってて慣れたって……慣れてそこまでなるものなのかよ。

 俺と同じ量走ったはずなのに、キキョウは全く息が上がっていない。

 それどころか、体のどこを見ても、汗一つかいていない。

 化け物としか言いようがないな。

 いくら走り続けようが、ここまで凄くなるのは想像が出来ない。


「おし、休憩も済んだみたいだし、そろそろハンマーの鍛錬に移るか!」


「あ……リュウガさん。……えっと、ハンマーの使い方を……やるんですか」


「おう!お前もそれが目的で来たんだろ!……そうだな、コウキはハンマーの使い方を学ぶのが初めてみたいだし、とりあえず構えからやっていくか!」


 それだけ告げると、リュウガさんは背負っていた巨大なハンマーを取り出し、両足を大きく開いた。

 その瞬間。リュウガさんから笑顔が消え、真面目な顔に変化したのが見えた。

 初めて見る真剣な顔に、俺にも一気に緊張が走る。

 

 リュウガさんは一度目を瞑ったかと思うと、数秒後に目を開き、動きを始めた。

 左足を前に出し、右足を少しずつ引く。

 それと同時にハンマーに角度をつけ、両手で握りしめる。

 そして、左足に力が入ったかと思うと、全力でハンマーを振る。

 その威力はすさまじく、数メートル離れているのにも関わらず、強い衝撃が襲い掛かり、動く事すら出来なくなった。


 一連の動きを終えると、固まっている俺に対し、リュウガさんは質問を投げかけた。


「これは俺が考えたハンマー構えの一つでな。一点に高火力を出すのに適した構えの一つなんだ。どうだ?凄かったろ」


「はい……凄かったです。……なんか、ハンマーを振ったらぶわってなって……その、迫力も凄くて……えっと、とにかく凄かったです」


「だろー!まあ、これでも中級冒険者だからな!」


 本当に、想像以上の力だ。

 ハッキリ言って、ついさっきまでこの人の力を見誤っていた。

 出会った時からさっきまで、リュウガさんの良い所や、凄い所は何度か見てきた。

 しかし、戦っている所をほとんど見ていない事もあり、その実力を過小評価していたようだ。

 

 俺がやろうとしても、ここまで威力がある一撃を出すことは出来ないだろう。

 あのハンマーで、あの威力。これは中級冒険者とか、そう言うレベルじゃない気がする。


「だからワタシは言った 師匠は超凄い」


「う、うん。……その、キキョウさんの言った通り凄かったよ。……本当に、凄い人だね」


 俺の言葉を聞くと、キキョウは少し嬉しそうな顔をした。

 どうやら、リュウガさを褒められるのが自分の事の様に嬉しいみたいだ。


「よし、それじゃあ、今の構えをコウキに教える!意外と難しいから、心して教われよ!」


「は、はい!」


 そして、本格的にハンマーの扱い方に関する鍛錬が始まった。

 最初は先程リュウガさんが行った構えから。

 俺は構えが適当だった節があるため、構えを襲われるだけ非常にありがたい。


 リュウガさんの構えをマネ、同じように構える。

 それをリュウガさんが修正し、出来る限り完璧に構えられるように鍛錬していく。

 

 この鍛錬、めちゃくちゃ難しい。

 少しでもハンマーの角度が違うと、ハンマーの威力が落ちるため、少しの角度でも気を使わなければならない。

 しかし、角度に気を使いすぎると、体の向きがずれ、ハンマーの威力が落ち、方向もおかしくなる。

 その他にも気を遣わなければならない点が多すぎる。

 これはかなり時間が掛かりそうだ。

 それから、俺たちは永遠とも思える時間、鍛錬を続けた。


 そして、数十分後。

 俺は教わった通りに体を動かし、構えを取る。

 完璧に構えを取り終えると同時に、綺麗な流れでハンマーを振る。

 その瞬間。巨大な衝撃音とともに、辺りに衝撃が広がった。

 これは……。


「すげえじゃねえか!まだ数十分しか立ってねえのに、殆ど構えは完璧だ!コウキ、お前意外と才能あるかもしんねえぞ!」


「ほ、殆ど完璧ですか……よっしゃあーあー……疲れた!」


 疲れた。ただひたすらに疲れた。

 もう体は動かない。これ以上何かをすることが出来る気がしない。

 

 体中ボロボロだが、成長したのは間違いない。

 最初の構えを覚えただけでも、相当強くなったはずだ。

 一歩ではあるが、あの太陽使いに近づけた気がする。


「とりあえず、今日の鍛錬はここまでだな!次は四日後とかで良いか?」


「……え、また、いろいろ教えてくれるんですか?」


「そりゃあ、そうだろ。何たって俺はお前の師匠だからな!」


「……え、いや……え?」


「ん?ここまで教えたんだから、そりゃお前の師匠だろ」


 師匠……師匠か。良いな、師匠。

 つまり、俺はこの人の弟子になったという事か。

 弟子に師匠……一度は憧れたことがある関係性だ。


 前世では習い事など、人と関わることを積極的に行わなかった。

 それもあって、年上の人と関わる機会が少なく、師匠と呼べる人は当然の事如く存在しなかった。


 それがまさか、この世界に来て、弟子と師匠という関係性になれるとは。

 何と言うか、良いな、こういう関係!


 驚きとともに、何とも言えない喜びの感情が溢れ出てくるのを感じる。


「さてとっと、それじゃあ、俺は依頼でも受けに行ってくるかな。キキョウは……分かった、一緒に行こうか。コウキはこの後どうするんだ?」


「え、そうですね……そう言えば、この町の事そんなに知らないですし……その、町を見回ってみます」


「お、良いじゃねえか!この町は本当に良い町だからな。楽しんで来い!」


「……はい!」


 それだけ話し、俺は広場を後にした。 

 

 さて、町を見回るといったがどうするか。

 とりあえず、ギルドがある大通りの方でも見に行ってみるか。

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