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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
75/120

先輩冒険者から学ぶものは多くあるのかもしれない。②

「アリウムくん!そっち行ったよ!」


「おう、任せろ!」


 そう叫びながら、全速力で地面を進むリクウオの群れを剣で切り裂いた。

 それでも勢いを止めない群れに対し、俺はシャドウハンマーを振るい、群れの流れを止める。

 群れがばらけた隙を突き、グリシアが渾身の一矢を放つと、矢は一直線に群れのリーダーであるリクウオに向かって行く。

 そして、リクウオが避けるギリギリの所で直撃し、リクウオは動かなくなった。

 リーダーであるリクウオが倒された群れは動揺し、バラバラになりながらその場を後にした。


「……追い払えたのか?」


「そうみたいだね。……つっかれたー!」


 俺たちは依頼の達成に安心し、少しずつ緊張を解いて行く。


 初めて依頼をこなした翌日。

 俺たちは新たに課された依頼をこなしていた。


 今日の依頼は暴走し、人を襲うようになったリクウオを追い払う事。

 リクウオは温厚で、他の生物を襲うなんてことはしない。

 しかし、最近デイングの町周辺のリクウオに原因不明の何かが起きたらしく、凶暴で好戦的な性格へと変化したらしい。


 リクウオは群れで行動しており、最も強いリクウオがリーダーとして、先頭で群れを率いている。

 リーダーは絶対的存在らしく、リーダーに何かがあった場合、群れの統率は獲れなくなり、自然に群れは解散するらしい。

 その弱点ともいえる点を利用し、俺たちは作戦を考えた。


 まず、リーダーを倒すうえで邪魔になるリクウオの群れを出来る限り離れ離れにする。

 そのために、グリシア以外の前衛が可能なメンツで、群れを攻撃する。

 そして、群れが離れ、リーダーを狙いやすくなったところで、グリシアが遠距離でリーダーを射抜く。

 単純だが、中々にいい作戦だろう。


 作戦の結果、俺たちはリクウオの追い払いに成功した。

 グリシアが完璧にリーダーを倒し、それによって群れはバラバラに消えて行った。

 

「いやー、今回も依頼達成できてよかった!てか、グリっち一撃で倒すの凄すぎ!」


「……そんなことないよ。私なんてまだまだだよ」


「そんなことないよ!グリシアさんの弓矢の腕は、上級冒険者の腕に匹敵すると思うよ!」


 ユリたちの言う通りだ。

 一矢で、いとも簡単にリーダーを射抜いたグリシアの狙撃には流石以外の言葉が出てこない。


 ユリたちがあまりにも褒めるからか、グリシアは照れながらそっぽを向いた。

 その素振りと、少し赤くなっている様子をどことなく可愛く感じてしまう。

 

 よく考えたら、俺が一緒に冒険している友達は、みんな美少女ばかりだ。

 ユリは言わずもがな美少女だし、グリシアも普段は無症状で分かりやすいが美少女。

 カンナはちょっと、というか相当やばい人だが美少女だ。

 こう考えなおすと、俺は相当恵まれてるのでは?

 そんなことを思っていると、アリウムが思い出したかのように口を開いた。


「あ、そう言えば昨日リュウガさんと約束した時間までもう少しじゃね?」


「あ、ホントだ!うちすっかり忘れてたよ……急いでいかないとだね!」


「ああ、とりあえず走るか」


 そう言いながら、アリウムは急いで駆けだした。

 俺たちも時間を見ながら、アリウムの後をついて行く。

 

 リュウガさんと約束した場所は町の北方向に位置する洞窟の入り口だ。

 ダンジョンとは少し違い、モンスターが大量に生息していることはない。

 地図に寄れば、遥か昔に出来た普通の洞窟らしい。

 リュウガさんはそんな洞窟に、一体どんな要件があって俺たちを呼んだんだろうか。


 そんな事を考えながら、木一本生えていない草原を進んで行くと、草原の真ん中に異様な山の様な物が見えてきた。

 よく見ると、そこには巨大な穴が開いており、付近に二人の人影が見える。


 さらに速度を上げ走って近づくと、人影のうち一人はリュウガさんだという事が見て取れた。

 そして、その横にいるのは俺たちと同年代ほどに見える褐色の肌をしている少女だった。

 瞳と髪は黄色で、頭にはいかしたゴーグルを掛けており、背中には木製のハンマーを背負っている。

 様子を見るにリュウガさんの子供かなんかだろうか。


「おはようございます、リュウガさん!」


「おう、お前ら!全員ちゃんといるみたいだな!」


「はい!……えっと、隣の人は?」


「お、そうだな。キキョウ、自己紹介してやれ!」


 そう言われると、キキョウと呼ばれた女は少し前に出た。

 そして、少し間を開けてから、口を開いた。


「ワタシはキキョウ リュウガさんの弟子 ワタシはハンマーを使う よろしく」


 なるほど。そう言う事だったのか。

 距離感からして、兄弟か子供かと想像していたが、リュウガさんの弟子だったのか。

 同じハンマーを背負っているという事は、ハンマーの使い方を学んだりしているのだろうか。


「よろしく、キキョウちゃん!うちはカンナです!よく使う武器は素手、共感できる言葉は永遠ほど怖いものはない、性癖はドMで、いじめられると興奮しちゃうタイプです!ぜひいじめてね、ちなみに彼氏募集中だから、程よくドSの男友達がいたら、紹介よろしく!」


「え え…… え?」


 突然のカンナの自己紹介に、キキョウは見て取れるほどに動揺している。

 それどころか、リュウガさんも多少目を丸くしている。


 まあ、そうなるよな。

 誰だって、自己紹介ついでに性癖暴露されたら動揺するに決まっている。

 何度か聞いてきたが、俺だってこの自己紹介になれていない。

 

 全く、カンナは本当に凄い精神をしている。

 今だって、キキョウから向けられる冷たい目線に興奮しているのが見て取れる。

 ドMというのは、みんなこうなのだろうか。

 そんなことを思っていると、リュウガさんがハッとして、口を開いた。


「ま、まあ、仲良くしてくれ!さっき言った通り、こいつは俺の弟子でな。出来る限り、行くところについて来てもらうようにしてるんだ。てことでキキョウも今回の冒険に参加するけどいいよな?」


「良いですけど、そもそもとしてどこに行くんですか?私たちは詳しい話を聞いてないんですけど……」


「んー……行けば分かる!ってことで、お前らついて来い!」


 それだけ言い、リュウガさんは荷物を持ち、洞窟へと入って行った。

 キキョウは親の後を追う子供の様に、小走りでその後をついて行く。

 俺たちは顔を見合わせながらも、リュウガさんを信じ、その後を追っていく。


 洞窟の中は暗く、リュウガさんが持っている松明で何とか数メートル先まで見える程だ。

 時々水滴が滴り落ちる音が聞こえたり、何か小動物の気配がしたりと、どことなく不気味な雰囲気を醸し出している。

 壁は脆く、少し強く振れただけで、触れた箇所の周辺が崩れ落ちてしまう。

 この洞窟が大丈夫なのか、本気で心配になってくる。


「あの、この洞窟って……その、大丈夫なんですよね?なんていうか……凄いボロボロなんですけど……」


「んー……分からねえな!」


「え……え!?」


「なんてな!まあ、多分大丈夫だ!随分前にできた洞窟らしいが、今まで一度も崩れてないしな!多分大丈夫だ!」


「そ、そうですか……」


 リュウガさんの話を聞き、更に心配がましてくる。


 本当の本当に大丈夫か?

 多分大丈夫って、多分の部分が怖すぎる。

 これで洞窟が崩れて、生き埋めになったりしないよな……。


 そんなことを思いながら進んでいると、リュウガさんは突如足を止めた。


「よし、お前らここで止まれ!ここからは、少し道が不安定になっている。とりあえず、俺が先を見に行くから、お前らはここで休んでてくれ、分かったか?」


「あ、それなら、俺も行きましょうか?何かあった時、松明を片手に持った状態じゃ、対処しずらいだろうし」


「あ、それならうちも行きたい!色々あって、暗闇でじっとしてるのは嫌いなんだ!」


「そうだな……よし、それじゃ、二人にはついて来てもらおうかな!よろしく頼むぞ!」


『はい!』


 そう話すと、二人を連れ、リュウガさんは奥へと進んで行った。

 残った4人は残された松明を囲うような形で座り込んだ。


 すると、ユリがグリシアに何か耳打ちをし始めた。

 一体何を話しているのかと思っていると、二人は少し荷物を持ち、立ち上がった。


「コウキにキキュウさん、私たち行くところが出来たから、少し席を外すね」


「えっと……行くところって?」


「……コウキ、察して」


「……?…………あ、ごめん!」


「いいから」


 そう答えると、二人は来た道を引き返していく。

 あの様子から察するに、二人はお手洗いに行ってくるようだ。


 しかし、まずいことをしたな。

 どこに行くか聞いてしまった。

 普通はスルーすべき所だっただろうに……こういう所が駄目なんだろうな。


 ……あれ、ちょっと待て。

 これって、キキョウと俺が二人っきりってことだよな。

 初対面の女子と、コミュ症の俺が二人っきりってことだよな。

 まずい……非常にまずいことになった。


 コミュ症が初対面の女子と二人っきりは非常にまずい! 

コミュ症と初対面の女子が二人っきり。

何も起きないはずも無く……?

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