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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
72/120

コミュ症は初めて仮冒険者として、仕事をこなす。①

 デイングの町に到着した翌日。

 俺たちは冒険者ギルドと呼ばれる建物の、客室でとある人を待っていた。

 

 冒険者ギルドとは、冒険者を支援する会社の様な物らしい。

 冒険者と市民の依頼を繋いだり、緊急の依頼を冒険者に託したり、

 冒険者に報酬を渡したりと、冒険者のために様々な事を行っているようだ。

 そして、俺たちはこの冒険者ギルドの社長であるギルド長という人物に会い、仮冒険者としての仕事を受けるために、ギルドに朝早くから集まっている。

 

 しかし、ギルド長か。

 社長という事は、相当頭が良く、信頼が厚い。

 それに加え、冒険者という事から、相当強い人なのだろう。

 どんな人か、物凄く気になるな。 

 そんなことを思っていると、客室の扉が開き、外から一人の男が入って来た。


 その男はガタイが良く、引き締まった服装をしている。

 黒いちょび髭を生やし、超絶特徴的な巨大なリーゼントをした、黒髪の男だった。

 そのリーゼントは昔のヤンキーがしていたであろうリーゼントよりも長く、今までで見たことがないほどに長く丈夫そうなリーゼントだった。

 その特徴的な髪形に、俺を含め全員開いた口が塞がらない。


 ……リーゼントだよな?

 いや、まあリーゼントなんだよ。

 リーゼントなんだけどさ、異常なほどに長すぎる。


 あれ、何十センチあるんだ? 

 あそこまで長いリーゼントは漫画やゲームの世界でも見たことがない。

 というか、この世界にリーゼントは存在したのか。


 様々な思いを巡らせていると、リーゼントの男は俺たちが座っているソファの対面にあるソファ腰を下ろした。

 そして、俺たち全員の顔をゆっくりと確認していく。

 その目つきは鋭く、男に顔を確認されるだけで、一気に気持ちのゆとりがなくなっていくのが分かった。

 男は全員の顔を確認し終えると、大きくため息をつき、小さく口を開いた。


「……あっとー……帰りたい」


「……え?」


 俺は思わず、そう声に出してしまった。


 今、帰りたいって言ったか?

 間違えなく帰りたいって言ってたよな。

 ソファに座って、全員の顔を見たかと思ったら、帰りたいって言ったぞ。

 この人、大丈夫なのか?


「……あっとー……俺はギルド長のカナリーって言います。……あっとー、君たちが仮冒険者ですね

ね。……その顔、ガッカリしてますよね。……すみませんね、俺なんかがギルド長で……本当にすみません……」


「そんなこと思ってませんよ!どうしたんですか、いきなり!……と、とりあえず、仮冒険者の話をお願いできますか?」


 いつも元気に受け答えするアリウムが動揺して話しているのは初めて見る。


 アリウムが動揺するのも分かる。

 異常に長いリーゼントをしている男が、想像と真反対の凄く悲観的な話し方をしてきたんだ。

 俺でも動揺し、いつも以上に言葉を発せられなくなる。

 この人、本当に大丈夫なのか?


「……あっとー…………話を始めます。君たち仮冒険者にはいくつか仕事を頼ませていただきます。……それは、その……最近この町の周辺で異常なほどに発生しているモンスターを……この町の周辺から追い出してもらう事です。……それと、冒険者の一般的な仕事を……復興に向かった冒険者の代わりにこなす事です……」


 なるほど。

 どうやら、俺たちが伝えられていた内容と大体一緒のようだ。

 異常発生しているモンスターの対応と、俺たちの街の復興に向かった冒険者の代わりに、冒険者として働く事。

 聞いていた通り、どちらも大変そうだ。


「それで……その……いきなりなんですけど、君たちの実力を測る為にも……この後、一つの依頼をお願いできるかな?……いや、無理ならいいんだけどさ。……そうだよね、無理だよね……」


「いやいや、受けますよ!」


「そう……それじゃあこれを……」

 

 そう言いながら、カナリーは一枚の紙をアリウムに渡した。

 そこには依頼内容と、この町の周辺の地図の様な物が書かれている。


「それが依頼なので……それをうまく利用して……依頼を達成してきてください。……あっとー……もう話は終わったので……出て行ってもらえると助かるんですけど……人と話すのしんどいので……」


 俺たちは動揺しながらも、同時に頭を下げ、部屋を後にした。

 そして、来た道を帰るように、ギルドの出口へ向かって行く。


「何て言うか……世の中にはいろんな人がいるんだな。凄い人だったな」


『うん、凄い人だった』


 アリウムの言葉に対し、俺たちは全員同時に同意した。


 あれだけ長いリーゼントで、あれだけ鋭い目つきをした貫禄のある男。

 物凄く怖そうで、顔を見るだけで周囲の空気を張り詰めた男が、あそこまで自信がなさそうな話し方をするとは。

 マリーの見た目と中身のギャップで、人は見た目に寄らないと分かっていたが、これに関しては格が違う。

 あんなリーゼントの男が、あんな話し方をするなんて誰も想像できないだろ。

 そんなことを思っていると、ギルドを出ると同時に、アリウムが再び口を開いた。


「さて……それじゃあ、この依頼を終わらせに行くか!」


「うん、そうだね!……けど、初めての依頼か……なんかうち、緊張してきたな!」


「分かる!けどそれと同時に、仮ではあるけど冒険者になったんだって気がして、なんかよくね?」


「うん!いやー、うちらの初めての依頼……頑張っちゃうぞ!」


 カンナはそう言うと、町の出口の方へ我先にと駆け出した。

 その様子を歩きながら見ていると、先に言ったカンナは早く行きたいのか、かつてないほどに急かしてきた。

 仕方なく、俺たちもカンナの方へ走り出す。


 そして、この日。

 俺たち仮冒険者は、初めて冒険者として、町を出る。

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