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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
71/120

コミュ症は新たな町でも、コミュ症を発揮する。②

「お、見えて来たぞ。あれが俺たちの愛する町。デイングの町だ!」


 そう言うリュウガの視線の先を見ると、そこには確かに町が見えていた。

 その町は俺たちがいた街に比べ、相当小さいようだ。

 壁に囲まれていないし、出入り口を守る騎士もいないように見える。


 どうやら、どんな人でも自由に出入りが可能な町のようだ。

 町並みは俺たちの街よりも古く、少しばかり建物の数が少ないように見える。

 いや、もしかしたらこれが普通で、俺たちの街の建物が多すぎただけなのかもしれない。


 それにしても……ワクワクしてくる。

 実際に町を見たら、ワクワクする気持ちが、より昂って来た。

 今日からこの町で、仮冒険者として働くのか……。

 早く仮冒険者として、いろんな事を経験してみたい。


 そんなことを思っていると、町に着くと同時に怪我人二人を連れ、一人の冒険者は医療所へと向かって行った。

 もう一人のリュウガと名乗った冒険者は、少し考える仕草をしたのち、俺たちへと口を開いた。


「よし、怪我を負った俺の仲間はもう一人の仲間に任せたから、俺はお前らの事を案内をするぞ」


「え、良いんですか?」


「さっきの恩があるしな!それに、言ってなかったが俺はそれなりにこの町じゃ有名な冒険者でな。仮冒険者と出会ったなら、いろいろ良くするよう言われてんだ!……ってことで、お前らついて来い!」


 そう言いながら、リュウガさんは先頭を歩き始めた。

 俺たち街の様子を観察しながら、その後をついて行く。

  

 俺たちがいた街ほどじゃないが、この町も活気で溢れている。

 子供は楽しそうに追いかけっこをし、その親は友達と世間話に話を弾ませている。

 冒険者は難しい話をしている人から、楽しそうに飲食をしている人まで様々だ。

 ただ、全員共通して、楽しそうな顔をしている。

 まだ分からないことだらけだが、この町も良い町だという事だけは理解できる。


 しばらく変わらない町中を進んで行くと、一同は一際大きな建物の前で足を止めた。

 その建物は周囲の建物と比べると豪勢で大きく、建物内は外にいても分かるほどに賑わっていた。

 リュウガは俺たちに待っているように伝えると、一人で建物内へと入って行った。


 そして、数分後。

 リュウガは一枚の紙を手に持ち、建物から出てきた。

 その顔はどこか申し訳なさそうな顔をしている。


「いやー、お前らすまん!どうやら、うちのギルド長が仮冒険者が来る日を明日と勘違いしてたみたいで、今いないみたいなんだよ。悪いが、仮冒険者の話は明日にして、今日は宿でゆっくりしててくれねえか?」


「……え、あ、はい。全然大丈夫ですよ。……なんか、こっちこそすみません」


「いや、何お前の方が謝ってんだよ。ミスしたのはこっちだから、それはこっちのセリフだよ」


 そう答えると、リュウガさんは再び足を進める。

 そのまま、建物の左側へと歩いて行くと、看板に宿と書いてある建物に到着した。

 建物内に入ると、リュウガさんは受付と少し話したのち、それぞれに別の鍵を手渡しし、部屋の箇所を説明すると、怪我した冒険者を見に行くと告げ、宿から出て行った。

 

 俺たちはそれぞれの部屋で休むことに決め、決められた部屋へと入って行く。

 部屋はそれなりに大きく、巨大なベッドに、綺麗な机。

 大きめのタンスに食品入れなど、様々な物が揃えられていた。


 俺はバックを床に放り投げ、身に着けたローブをその上にかぶせる。

 ベルトも取った上で、体の力を一気に抜き、ベッドへと飛び込んだ。

 ベッドはすぐにでも眠れるほどに気持ちよく、体中の疲れが一気に取れていく感じがした。

 今日は様々な事があって疲れたし、このまま眠りについてしまおうか。


 そう思った直後。

 部屋中に、聞き覚えのある大声が響き渡った。

 驚きながら体をベッドから離し、周りを見渡すと、荷物を頬り投げた床に、一つの剣が刺さっていた。

 その剣は紫色で、黒いラインが入っている。

 そう、魔剣であるスターチスだった。


「おい、陰キャっぽい男!お前は……何俺様のこと忘れとんねん!俺様じゃなかったら、今頃どうなっていたことだか……おい、聞いてんのか!」


 まずい。すっかり忘れていた。

 ウォールドとの戦闘に、怪我した冒険者を運ぶ手伝い。

 あまりにも突然の出来事の連続で、スターチスの存在を完全に忘れていた。

 アリウムたちが馬車から持ってきた様子はなかったし、どうやらスターチスは馬車に取り残されていたようだ。

 

「す、すみません。完全に忘れてました」


「忘れてたって……お前なあ!……まあ、ええわ!それより、さっきのウォールドとの戦い。一応全部見せてもらったで。ハッキリ言うけどな。……お前の実力は、学校で良い点数を取れはするが、ギリギリ満点を取れない学生くらいのレベルや!」


「はい……え?」


「お前は学生にしちゃ強いと思うで。お前レベルの学生はそうはいない。けどな、冒険者としては良くて中の下くらいや。さらに、お前と同じ転生者の中では下の下の下と言った所や!動きはまだまだだし、力もうまく使いこなせてへん。」


 下の下の下。

 理解していたが、実際に言われると辛いものがある。 

 しかし、学生にしてはそれなりに良いのか。

 少し安心したな……いや、待て。

 スルーしたがこの魔剣、今なんて言った?


「……えっと……今、転生者って言いましたか?」


「ん、もしかしてお前は転生者違うんか?てっきり地球からの転生者かと思ったんやけどな」


 魔剣から放たれた転生者と地球という言葉に、開いた口が塞がらなくなり、俺は完全に静止した。


 間違いなく転生者と言ったし、地球とも言った。

 俺は死んでこの世界に来てるわけだし、一応転生者ともいえる。

 それに、前世で俺が住んでいた星は当然地球だ。

 

 この世界に来てから、地球という言葉は一度も聞いたことがない。

 一度アリウムに地球について聞いたときも、全く知らない素振りをしていた。

 それもあって、この世界の住民は地球を知らないと思っていたが、まさかこんな所で地球という言葉を聞くことになるとは。


「……えっと、地球を知ってるんですか?転生者を知ってるんですか?なんであなたがそんな事を知ってるんですか?」


「ちょっ……質問は一つずつにせいや!……良いか、俺は魔剣や!それなりに、この世界で生きてきてるんだよ!そりゃあ、転生者の一人や二人会ったことあるに決まっとるやろ!」


「……え……こ、この世界には俺以外の転生者がいるんですか!?」


「そりゃあいるやろ。転生者なんだからな」


 勝手にこの世界に転生したのは俺だけなのだと考えていた。

 他の人がこの世界に転生したなんて、考えてすらいなかった。

 それがまさか、他にもいたのか。

 スターチスの発言から考えるに、それも複数人。


 一気に様々な事が見えてきた気がする。

 他の転生者。一体どんな人たちなんだろうか。

 一体どんな仕事をし、一体どんな生活を送っているのだろうか。

 他の転生者、会ってみたいな。


「あー……いろいろ考えてるみたいやけど、話し続けるからな!とりあえず、同行者としてお前に一つ課題を課す!お前はこれからの仮冒険者の期間で、戦闘技術を向上させろ!」


「えっと……戦闘技術の向上ですか?」


「そうや!お前の動きは単調やし、武器を操る技術がまだまだなんや!お前の力的に、戦闘技術が向上すれば、お前は今の何倍も強くなれるはずや!」


 動きが単調か。

 確かに、スターチスの言う事も一理ある。

 学園生活で、それなりに戦い方は学んできたつもりだ。

 それでも、この世界で生まれ、小さい頃から戦い方を学んで来た人たちに比べれば相当劣る。


 身体能力や知識。力の使い方も劣ってるとは思うが、少しずつ追いついていけてると思う。

 団体戦の一件までで、体は相当鍛えられ、力もうまく使えるようになってきた。


 しかし、戦闘技術はまだまだだ。

 スターチスの言う通り、戦闘技術の向上を優先するのも良いのかもしれない。


「まあ、そう言う事やから、戦闘技術を磨くことをお勧めするで。それじゃあ、俺様は他の奴らのとこに行かんといけへんから行くわ。……あ、転生者とか、いろいろ聞きたいことあったら、聞きに来てええぞ!俺様は優しいからな!……優しいからな!」


「え、あ、はい。……分かりました。今度いろいろ聞かせてもらいます」


「おう!あ、あとお前らは敬語使わなくていいぜ!」


「え、敬語をですか?……えっと、良いんですか?」


「良いって良いって!その方が、俺様としても助かるしな!それじゃあ、またな!陰キャ転生者!」


 最後にそう言うと、スターチスは突如として姿を消した。

 言葉通り、なんの前兆もなく、一瞬にして消えたのだ。

 スターチスがあった所へ行き、周囲を確認するが、スターチスの姿は見当たらない。


 一体どんな手を使って消えたのだろうか。

 この部屋に突如現れたこともあるし、瞬間移動系の力でも持っているのか?

 そもそもとして、魔剣が生呪の力を持っているのか疑問だ。

 

 俺は様々な考えを巡らせたのち、面倒くさくなり、考えるのをやめた。

 そして、疲れた体を動かし、再びベッドへ横たわる。

 ゆっくりと瞼を落とし、今日起こった出来事を整理しながら、夢の世界へ落ちて行った。

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