コミュ症は新たな町でも、コミュ症を発揮する。①
「みんなあれ見て!ほら、あそこ!」
カンナが指さす方を見ると、そこには数人の冒険者とモンスターが集まっていた。
状況から察するに、冒険者とモンスターが戦っている最中のようだ。
ここから見る限り、状況は良いとはいえなさそうだ。
冒険者の内、二人が怪我を負っているのか倒れこみ、その冒険者を守るように、他の冒険者が戦っている。
動ける冒険者が二人なのに対し、モンスターは六体。
いつ冒険者がやられてもおかしくはないように見える。
「あれって……まずいよな。……ど、どうする?」
「どうするって……行くしかねえだろ!」
アリウムはカエデを手に取ると、冒険者たちの元へと駆け出した。
それを見るなり、ユリたちもその後を追い、駆けていく。
俺は出遅れながらも、馬車で出来た影に触れ、一同の後を追っていく。
冒険者の元へ近づくと、状況をより一層把握できた。
どうやら、倒れている冒険者は足に攻撃を受けたらしく、立つことも儘ならないようだ。
今戦えている冒険者は、大した怪我は負っていないが、体力が限界なのか、今にも倒れそうに見える。
俺たちがユリに指示を仰ぐと、ユリは少し考えたのち、それぞれにやるべき事を伝えていく。
「グリシアさんと私が冒険者さんの事を見るから、相性が良さそうなカンナとコウキくんとアリウムくんはモンスター討伐をお願い!」
『了解!』
指示を受け、俺は付近のモンスターへと近づいて行く。
そのモンスターは大木に黒い目と、悪魔の様な口がついたような見た目をしている。
以前本で見たことがあるが、確か名前はウォールドだったか。
どことなく不気味で、怖い雰囲気を醸し出している。
陽の光が入らない森で出会ったなら、間違いなく悲鳴を上げる程に不気味で怖い。
そんなことを思いながらも、深呼吸を済ませ、前を向き、叫ぶ。
「影!」
事前に触れておいた影を右手に集め、巨大な武器を想像する。
影の量的に、鎧を作ることは出来ない。
つまり、攻撃を受ける事無く、素早く倒さなければならない。
ウォールドの大きさと、木という事から考えるに、生半可な攻撃では倒すのに苦労するはずだ。
それなら、一番使い慣れた武器で、全力で潰す。
影は数秒で、巨大なハンマー。シャドウハンマーへと姿を変えた。
シャドウハンマーを握りしめ、大木の化け物へと駆け出す。
当然、ウォールドが何もせず待っていることはなく、数本の木の枝を伸ばし、俺を串刺しにしようと、攻撃を繰り出した。
しかし、その動きは鈍く単調で、走る足を止める事無く、軽々避ける事に成功した。
そして、ウォールドが攻撃範囲内に入った瞬間。
シャドウハンマーを大きく振り、ウォールドを全力で殴った。
ウォールドはその見た目絵に反し、大木の様な重さはなく、簡単に数メートル先まで殴り飛ばされた。
その後、少し枝を動かしたように見えたが、すぐに動きを止め、完全に静止した。
……呆気ない。
想像以上に呆気ない。
見た目の怖さもあってか、相当手強い相手だと思っていたが、一撃だった。
ハッキリ言って見掛け倒しだ。
俺がウォールドを倒すと、別のウォールドが怒ったような目つきで、俺へと襲い掛かって来た。
根の部分を動かし、無数の枝を揺らしながら向かってくる様は、どことなく気色悪い。
そんなことを思いながらも、シャドウハンマーを構え、カウンターの準備をする。
ウォールドは枝で攻撃することなく、一直線に走り続け、俺へ突進を繰り出した。
それをハンマー越しに何とか受け止めると、手足に力を籠め、全力で押し返す。
ウォールドは反撃に対応できず、綺麗に背中から倒れこんでしまった。
体についている枝だけで立つことが出来ないのか、その場でジタバタするだけで、起き上がることはしない。
その隙を突き、シャドウハンマーを高く振り上げる。
ウォールドの顔面を狙い、気絶させる気でハンマーを振り下ろす。
ハンマーは巨大な破壊音を立てながらウォールドの顔面に直撃し、ウォールドを完全に動かなくさせた。
その様子を見るに、ウォールドは完全に気絶しているようだ。
とりあえず、俺が任されたウォールドは倒しきれた。
しかし、予想以上に呆気なかった。
木の化け物と言うのと、怖い見た目からしてそれなりに警戒はしていた。
それが、こうも簡単に倒せるとは……。
いや、そんな事よりも他のみんなの状況だ。
敵がいくら弱かろうが、モンスターとの戦いだ。何かが起きないとも限らない。
ひとまず状況を確認し、すぐに加勢しなければ。
そう考え、アリウムたちを確認すると、どうやらアリウムたちもモンスターを倒し終わっていたようだ。
アリウムは怪我を負っている冒険者の治療を手伝い、カンナはウォールドが本当に気絶しているか、確認していた。
流石二人だ。俺が心配する必要はなかったな。
そう思いながら、冒険者の治療をしているユリたちへと駆けていく。
「えっと……冒険者さんたちは大丈夫そう?」
「あ、コウキくん。一応応急処置は済ませたけど、傷口から黴菌が入ってるかもしれないから、出来るだけ早くしっかりした治療をしてもらった方が良さそう」
ユリがそう言うと、先程まで戦っていた冒険者の内、一人が前に出てきた。
その男は三十代後半のハゲで、背中には巨大なハンマーを背負っている。
ガタイが良く、一目見ただけで、強そうだと理解することが出来た。
「それなら、俺たちの町へ向かおう。俺たちの町なら、治療系の力を使える奴がそれなりにいるし、距離もそこまで遠くない」
「分かりました。それなら、私たちの特製動石に乗ってください。歩いて行くよりかは、断然早いでしょうし」
「本当か?悪いなお嬢ちゃん、恩に着る!」
そう話し、俺たちは足を怪我した二人をおぶり、馬車の中へと運んでいく。
馬車が最大六人乗りだったという事があり、ケガをしていない冒険者一人と、立候補したアリウムが馬車の天井に乗り、馬車は街へと動き出した。
町は歩いて十数分の位置にあるらしく、馬車を使えば数分で着くとのことだ。
恐らくは、怪我した冒険者たちも無事に町へはたどりつけそうだ。
「いやー、しかし助かった!お嬢さんたちが居なかったら危なかった!……と、そう言えば自己紹介をしてなかったな!俺の名はリュウガ。見ての通り冒険者だ」
ハゲの男はそう言うと、一度水を飲み、まず俺に名を訪ねてきた。
「え……あ……お、お、俺の名前は……コウキです」
「コウキ……どっかで聞いた名だな。確かどこかで……あ、そうだ!仮冒険者だ!確か、仮冒険者の中にそんな名前の奴がいたっけな」
「え、あ、はい。……お、俺たちが仮冒険者なの……で」
「まじかよ、そうだったのか!それなら、お前らからしてもラッキーっだったかもな!何せ俺たちは、お前らが仮冒険者として働く、デイングの町の冒険者だからな!」
驚いた。
この冒険者たちはデイングの町の冒険者だったのか。
という事は、今俺たちが向かっている町はデイングの町であるという事になるな。
ついに新しい町に着くのか。一体どんな町なんだろうか。




