なんやかんや誰にでも同じように接する奴が、一番いい奴なのかもしれない。②
男は茶髪で、少し尖ったような頭をしていて、腰には使い古された剣を差している。
見た目から考えるに俺と同じ歳か、俺より少し上くらいだろうか。
そんなことを考えていると、その男が話しかけてきた。
「なあ、あんたさ、この試験を受けるのは初めてだろ」
「え……そ、そうですけど…………」
「やっぱりな!俺の名前はアリウム。この試験を小さい頃から何度か受けている、いわばベテランってやつさ、よろしくな。お前さんは何て言うんだ?」
「え、あ、はい……あ、俺は光輝です」
「よろしく、コウキ!さっきも言った通り、俺はこの試験のベテランだからさ、何か分からない事があったら、聞いてくれてかまわないぞ!」
聞いてくれてかまわないか、それはめちゃくちゃ助かる。
結局試験について全く分かってないからな。ありがたく、いろいろ聞くことにしよう。
そう思い、俺はゆっくりと口を開く。
「あの……それじゃあ……一つ聞きたいんです……けど、この試験って……何の試験なんですか?」
「なるほどなー。え、何の試験か分からないのか!?」
「いや……一応確認で…………聞いたんです……けど……」
「なんだそう言うことか!この試験は魔族撃破冒険者育成学園。通称魔冒学園の入学試験だよ。分かってると思うが、魔冒学園は魔族を討伐する、冒険者を育成する学園だな!」
学園の入学試験。思っていた通り、前世でいう学校に入学するための試験のようだな。
しかし、魔族か。ゲームとかで絶対と言っていいほどに出てくる、魔族が本当にこの世界には存在するのか。
それに陰キャが一度は憧れたことがある、冒険者という職業も存在すのか。
何というか、ワクワクしてきたな。
「後は通行証明書とか、街で何かを買う時の割引券とかいろいろ便利な物も貰えるな」
「え、証明書がもらえるんですか?」
「おう、知らなかったのか?通行証明書のために受ける人もいるんだし、結構有名だと思ってたんだけどな」
これはラッキーすぎる。成り行きで受けることになった試験で、最初の目標である証明書を手に入れられるとはな。
他にも便利な物が貰えて、しかも前世で憧れたことがある冒険者になれる学校なんて、最高過ぎる。
とりあえず試験を受けるのは確定でいいと思うけど、そうなるとまた一つ問題が出てくる。
「えっと……アリウムさん。………その、試験って…………どんなことを……するんですか?」
「それは年によって違ってな、去年は志望者全員で戦いあって、残った30人が合格。その前の年はシンプルな筆記試験と、実技だったな。その年の試験は当日に担当教師から伝えられるから、今はまだ分からないんだよな。ってそんなこと言わなくても分かるか!」
「いや……凄い勉強になりました。…………他にもいろいろ教えてもらえませんか?」
「お、もちろんいいぞ!なんでも聞いてくれ!」
それから俺はこの世界の事を片っ端から聞いて行った。
そのお陰でいろいろと分かったことがある。
まず、この世界には俺が思っていたような、魔法とかそういうものは存在しないらしい。
似たような物はあるらしいが、才能に恵まれた人にしか使えないような超人的な力で、基本的には使えないようだ。
さらに、この世界は前世の世界に比べて科学力も、技術力も劣っている。
テレビや、ゲームはおろか、扇風機や冷蔵庫など、生活で必要な物すら存在していない。
しかし、科学力と技術力がない代わりに、前世にはなかった特殊な力がこの世界には存在する。
それが生呪の力。
生呪の力は人が生まれた時に授かる力らしく、どんな人にも平等に与えられる力らしい。
その力は人によってそれぞれで、炎を操る力や、物を浮かせる力、物を生成する力など、十人十色だ。
これは俺の予想だが、生呪の力という便利な力があるお陰で、科学力や技術力を上げなくても、便利な生活が送れるため、前世よりそれらは劣っているのだと思う。
全体的に見ると、前世の方が発展している部分もあれば、この世界の方が凄い部分もあるようだ。
「ありがとうございます。お陰でいろんなことを知ることができました」
「気にすんなって、同じ志望者だろ!しかし、緊張が解けたみたいで良かったよ」
「え、緊張?」
「緊張してただろ。最初話しかけた時なんか、まともに話すことだって出来てなかっただろ。だけど、今は普通に話せるようになったし、緊張も解けたんだろ。……え、もしかして違った?」
どうやらアリウムは俺が緊張しているせいで、はっきり話せてないと思っていたようだ。
実際はコミュ症過ぎて、話せなかっただけなんだが、いつの間にかアリウムとは普通に話せるようになっていたな。
アリウムが気を使って、俺が話をしやすいように接してくれたからだろうか。
こいつも良い人だな。この世界に来てから良い人にばっかりあっているような気がする。
まあ、最初の女騎士は除くけどな。
「……アリウムさん、確かに少し緊張してたかもしれません。だけど、お陰で緊張が解けました。ありがとうございます」
「気にすんなって言ってるだろ。同じ志望者……いや、もうダチか。ダチが困ってたら助けるのは当たり前だろ」
「はい!……え、ダチって、俺たち友達でいいんですか?」
「そりゃいいだろ。だってこんなに仲良くなったんだ。一緒に笑って、楽しく話せるってことは、そりゃあもうダチだ!もしかして嫌か?」
「いえ……そうですね、俺たちはもう友達です」
「おう!ダチなんだから、敬語なんて使わないで、タメでいいだろ」
「……そうだな!」
友達か。前世でも少なかったが友達はいた。
しかし、俺にできるような友達だ。いい奴らだったけど、俺と同じ種類の人間ばかりだった。
そう考えると、アリウムは初めてできた、俺とは全然違った、日に当たる種類の友達になるのか。
何というか新鮮な感じがする。
それに、こんなにハッキリ友達だって言われたのも初めてだ。
上手く表せないけど……悪くない気分だな。
異世界に来て、色々なことがあったが、俺に初めて友達が出来た頃。
会場横の建物から、緑髪で腰に剣を差した、大人の女性が会場へと入ってくるのが見えた。
女性は噴水の前まで行くと、大きな声を出して、話し始めた。
「私は今回の試験担当官の一人、ロメリアだ。これから今回の試験内容を伝える!……今回の試験内容は、対人試験。志望者同士で、二人一組のペアを組み、その二人で戦いあってもらう!武器の使用は可で、二人の内勝った方を合格、負けた方を不合格とする!ペアが出来たら、建物を通って戦闘場に来い!以上だ」
それだけ言うと、試験担当官は急ぎ足で歩いて行き、会場横の建物へと、戻っていった。
「コウキ……これはついてるぞ!二人の内勝った方なら、志望者の半分も受かるってことだ!こんなに受かる事は、十年以上なかったぞ!俺たちついてるな!」
「あ……ああ…………」
二人一組。
この言葉を聞くだけで、嫌な事を思い出してしまう。
二人一組、好きな子と組む、一人余る、先生と組む。
……本当に嫌な事を思い出してしまった。
二人組…うっ、頭が……




