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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
66/120

コミュ症たちは旅に出る。①

「よし……行くか」


 そう呟き、俺は古臭く、錆びれた扉に手を掛ける。

 そして、様々な悲観的な考えを押しのけ、勇気をもって扉を開いた。


 扉の向こうには、以前訪れた時と変わらない店内が広がり、

 奥には丸刈りの赤髪で、30代後半くらいの男が座っていた。

 以前と変わらず、鋭い目つきで新聞に目を通している。

 どんな人か分かっていても、その風貌から、少しの怖さを感じてしまう。


 そう、俺はこの日、以前アリウムたちと訪れ、師へのベルトという、なんともネーミングセンスのないベルトを入手した店へ、一人で訪れていた。


 二日前に仮冒険者の話を受け、昨日様々な事を考えた。

 仮冒険者として町を出る前にするべきこと、準備すべきことを時間を掛けて考えた。

 考えた結果、この町を旅立つ前に、もう一つ良い装備を身に着けておくべきだと考えたのだいう考えに至ったのだ


 俺はまだまだ未熟。

この先何が起こるか分からないし、何が起こっても対応できるよう、より強力な装備を入手しておくことにより、少しでも対応力を上げておきたいのだ。

 この店で入手したベルトは強力で、相当身体能力を上げてくれている。

 これほど良い物を扱っているなら、他の装備も良いものだらけのはずだ。

 そう踏んで、買いに来たは良いが……緊張する。


 俺はコミュ症だ。

 いくら店員とはいえ、人と話すのは緊張する。

 例えば、コンビニを訪れた時。

もし、店員がビニール袋をいるか聞いてこなかった場合、ビニール袋が必要なのにも関わらず、いると言えずに、ビニール袋諦めてしまう。

 そのレベルのコミュ症なんだ。


 そんな俺が一人で、鋭い目つきの男店主一人が経営している店に入るのは、想像を絶するほどに大変な事だ。

 緊張し、手足は震え、鼓動が大きくなっていく。


 ……いや、大丈夫だ。

 俺は強くなるんだろ。こんな所で躓いてる場合じゃないだろ。

 心を強くもて、勇気を出せ、頑張れ、俺!


 覚悟を決め、店内へ足を踏み出す。

 店主は一度俺の方へ目をやるが、すぐに新聞へ視線を戻した。

 その動きを目にし、更に緊張が高まっていく。

 それでも、緊張を抑えつけ、心の底から声を絞り出す。

 なぜなら、俺にはやらなくてはならない事があるのだから。


「……あ、あ、あの。…………その、えっと……そ、装備を買いたくて……お、おすすめの装備を……聞きたいです」


 震える手足を抑えながら、何とか言葉を発することに成功した。

 言葉を発することが出来ただけなのにも関わらず、異常なまでに心が達成感に満たされていく。

 

 今回買い物をする上で、避けて通れないのが店主へ話を聞くことだった。

 店主が道具や装備に対して、尋常じゃないほどの情熱を持っているのは以前の買い物で把握していた。

 そのため、この店主なら、要望に合った最高の装備を提供してくれると考え、最初に店主に欲しい装備の説明をしようと決めていたのだ。


「……装備?いったいどんな装備が欲しいんだ?」


「えっと……その……凄く軽くて……自分の身を守れるものです。……その、物理攻撃の防御はなくても良いので……物理攻撃以外に対する耐性が欲しい……です」


「なるほどな。……ちょっと待っとけ」


 それだけ告げると、店主は新聞を畳み、店の奥へと入って行った。

 特にやることもないが、ただ立っているだけというのは良くないと感じ、適当に店内の道具を観察し始める。

 ほとんどが良く分からないものだったが、それでも全て良い道具だというのは何となく理解できた。

 改めてこの店に来てよかったと実感していると、短めで綺麗な茶色のローブを右手に持った店主が、店の奥から出てきた。


「物理攻撃以外ってのは特殊攻撃だよな。悪いが、今うちにある、要望に沿う装備はこいつくらいだ。こいつは防御のローブマント。刃物とかには弱いが、炎や水、特殊攻撃とかにはとんでもなく強い。灼熱の炎で焼いても焦げないし、高圧の水を長時間喰らっても穴一つ開かない。試しに着けてみろ」


 言われるがままに、身に着けてみる。

 身に着けたローブは想像以上に軽い。そこに何も存在しないと勘違いするほどだ。

 これなら戦闘中も気にすることはなさそうだし、動きにくいという事もなさそうだ。

 しかし、これだけ軽いと本当に防御できるのか心配になってくる。


 そう考えているのが分かったのか、店主はポケットから紐のついた筒状の何かを取り出した。

 何かの先端を俺へ向けると、店主は何かの紐を引き抜いた。

 すると、何かの先端から、真っ赤に燃える炎が俺へ一直線に放たれた。


 突然の出来事に力を発揮することが出来ず、何の抵抗もすることが出来ないまま、炎は俺の身に着けているローブへ直撃する。

 焦り、ローブを脱ぎ捨てようとするが、そこで異変に気が付いた。

 

 全く熱を感じないのだ。

 そもそもとして、よく見るとローブ自体に炎が燃え移っていない。

 間違いなく炎はローブへ降りかかっていたのにも関わらず、ローブに炎が燃え移っていないのは不自然だ。

 もしや、これがこのローブの力と言う奴なのか。

 とんでもなく強いと言っていたが、想像以上だ。

 ここまで熱さを感じず、燃え移らないなんて凄すぎる。

 

 ……というか、こんな方法でローブの力を見せる必要はあったのか?

 いや、それは良いとしても、炎を出すなら一声くらいかけたって良かっただろ。


「さて、どうだ、そのローブ」


「……え、あ、ああ……いや、す、凄いです。……俺が欲しかった装備にそっくりです。……あ、これ、買わせてもらいます。値段はいくらですか?」


 そう言いながら、酒場で働いて手に入れた金が入った財布を取り出していると、店主が俺の動きを辞めさせた。


「金は結構だ。そのローブはくれてやる」


「……え、くれてやるって……え?」


「お前、仮冒険者ってやつだろ。噂で聞いたよ。……仮冒険者に選ばれた祝いの品だと思ってくれ。こんな誰も買いに来ない店で、ベルトを買ったお得意さんだからな」


「……え、ベルトって…………でも……良いんですか?」


「良いって言ってんだろ。……俺も忙しいからな、ローブ持って、さっさと帰りな」


 それだけ言うと、店主は元いた席に戻り、再び新聞を開いた。

 

 俺はどうしようか悩んだ末、その店主の優しさを受け取ることにした。

 ローブを折りたたみ、バックへ丁寧に入れる。

 そして、一度礼を言ったのち、振り返り扉を開ける。


 店の外へ出る直前。改めて礼を言うと、店主は軽く手を振ってくれた。

 それを確認し、ゆっくりと扉を閉めると、バックを大切に握りしめ、歩き始める。


 しかし、驚いた。まさか、仮冒険者の事が噂になっていたとは。

 俺たちしか知らないようなものだと思っていたから、結構な驚きだ。 

 俺が思っている以上に、重要な役目を引き受けてしまったのかもしれないな。

 だが、それでも無料でローブを譲ってくれるとは……。


 ……こうも良くしてもらったんだ。

 頑張って成果を出さないといけない。

 とりあえず、今日は酒場に戻って、準備を完璧にしよう。

 

 そう思い、駆け足で酒場へと戻っていく。

 酒場へ戻り、準備を完璧にした上で、他のすべき事をこなしていく。

 そして、その二日後。その日は来た。

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