表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
64/120

コミュ症だって、大切な役目を任されることはある。①

「ここが……騎士団本部か……ぼろいな」


 予想に反する建物に、思わずそう呟いた。

 学園やマリーの豪邸よりも大きく、豪勢な建物を想像していたが、実際は至る所に破壊跡があり、全体的に錆びた鉄の様な素材で出来た建物。

 これが騎士団の本部に当たる建物だとは、俄かに信じられない。


 敗北を知り、目を覚ましてから数日後。

 この日、ロメリア先生から貰った手紙に記載された場所に来ていた。

 手紙を読んだときは、鉛のように体は重く、今日出かけられるか不安だったが、この数日間で体は完全に治療され、いつも通りの状態へと戻り、晴れて今日ここへ来ることが出来た。


 しかし、一体何用で俺なんかを呼んだのだろうか。

 手紙には詳しい内容は書いておらず、大切な用があるとだけ書かれていた。

 様々な問題を起こした記憶はあるが、校長に呼ばれるほどの大事ではないはずだ。

 どんな理由があって読んだのか、全く見当がつかない。


 そんな事を考えながらも、ボロボロの騎士団本部へと入って行く。

 本部内は建物の見た目に反し、綺麗で素晴らしい建物。

 という事はなく、想像通り、至る所が汚れ、派手な破壊跡があり、様々な書類や道具が散ら張っている。


 より一層騎士団本部だとは思えなくなっていると、誰にも話しかけられず、一人で立ち尽くした俺に気が付いた一人の騎士が、モモ校長の元へと案内し始めてくれた。

 当然のこと如く、コミュ症を発揮し、人に話しかけられず困っていたため、この騎士には感謝が止まらない。

 まあ、実際に感謝を述べる事は出来ないんだがな。

 

 しばらく床が軋む音を聞きながら歩き進んでいると、案内していた騎士が部屋の前で足を止めた。

 その様子から察するに、この部屋にモモ校長はいるのだろう。

 騎士が扉をノックし、事情を説明すると、部屋の中から俺に入るよう促す声が聞こえた。

 

 どんな世界でも、校長先生の部屋へ入るのは謎に緊張する。

 謎に緊張する心を落ち着かせながらも、扉の取っ手に手を掛け、ゆっくりと押し開く。


 その時、目の中に衝撃の状況が入って来た。

 流石に驚き、思わず声を出し、その名を呼んだ。


「……え、アリウム!?それにユリに……カンナにグリシア!?」


 そこにいたのは、俺の大切な友達たちだった。

 その奥には、モモ校長がボロボロの椅子に座っているのも見える


「お、久しぶりだな、コウキ!元気そうで良かった!悪いな、起きてから見舞いに行けなくてさ。一応寝ている時は行ったんだけど、起きてからは時間がなくてよー」


「そ、そうなんだ。……え、いや、何でここに?」


「それは私が呼んだからだ。ユリ、カンナ、コウキ、アリウム、グリシア。今日私が呼んだのは、この五人だ。コウキの手紙には、書き忘れていたからな、知らないのも無理はない」


 てっきり、モモ校長と俺だけで話すと思っていた。

 これはある意味ラッキーかもしれない。

 一対一なら想像を絶する緊張を受けなければならないが、他にも人がいるとなると、その緊張も多少薄れてくる。

 それが友達なら、尚更だ。お陰で少し心配が解けた。


「さて、全員集まった事だし、諸君らをここに集めた理由を説明しよう。諸君らをここに呼んだ理由は……諸君らに仮冒険者になってほしいからだ」


 そして、モモ校長は様々な事情の説明を始めた。

 話をまとめるとこうだ。


 アーズリバイスの襲撃により、魔防学園並びにこの町は深刻な被害を被った。

 魔防学園は半壊状態、周辺の住宅街は三分の一が壊滅状態。

 建物の再築や、住む場所を失った市民への仮住居の提供、今だ完治していない大怪我を負った人の治療など、様々な仕事があり、周囲にいた一般冒険者や騎士団など、様々な人員を投入し復興を進めているが、それでも人員は不足している。

 

 それに加えて、最近原因不明で活発化しているモンスターの抑制などの、冒険者自体の仕事が増量した事もあり、冒険者は一杯一杯。

 冒険者不足にも陥っている。

 そのため、今自由に動ける冒険者は少なく、この町はともかく、周辺の小さな町で何か起きた場合、対処が難しい。

 どうやら、周辺の町は相当危険な状態らしい。

 そこで、モモ校長先生ら、騎士団はとある一手を考えた。


 それが、仮冒険者制度。

 仮冒険者制度とは、魔防学園に通っている生徒などを一時的にほぼ冒険者と同じ権限を与え、仮冒険者として、復興で手一杯の冒険者の代わりに、冒険者の仕事をこなしてもらうという物。


 この制度を会議で発表した時は、ほぼ全員の出席者に反対されたらしい。

 当然だ。所詮は子供である学生を、冒険者と同じように危険を伴う、死が付きまとう仕事をさせる。

 一般的に考えれば、誰もが反対する内容だろう。

 その後、会議では復興する冒険者の人数を減らしたり、騎士団の騎士に冒険者の仕事をさせたりし、上手く人員を管理するべきだと、様々な意見が出た。


 しかし、モモ校長は折れる事無く反論した。

 今の冒険者だって、いつ、如何なる理由で戦えなくか分からない。

 数年後、冒険者として戦うのは未来ある学生諸君だ。

 今、そんな学生諸君に冒険者を体験させる事により、未来の冒険者をより強く成長させることが出来るはずだ。

 今回の襲撃事件のように、敵は私たちの予想を超えてくる。

 そんな敵に対抗するべく、未来の冒険者をより強くしなければならないと。

 それが私たちの責務なのだと反論した。


 会議の結果。

 仮冒険者は複数でチームを組み、如何なる時もそのチームと活動する。

 仮冒険者には通常の冒険者よりも、安全かつ楽な仕事をさせる。

 チームには一人の優秀な同行者を付け、同行者は命をとして仮冒険者を守る。

 仮冒険者は慎重に審査したうえで、優秀な生徒のみを選出する。

 このすべてを守るのなら、仮冒険者を認める事で、決定されたらしい。


 そして、慎重に審査した上で、魔防学園からの二番目の仮冒険者チームに俺が選ばれたらしい。

 慎重な審査をした上で、俺が選ばれたらしい。

 慎重な?審査をした上で?俺が選ばれた?


「え、いや、え?……だ、え、何でですか?」


「理由は様々だが、コウキの主な理由は、アーズリバイスのムクゲとやらを倒し、幹部を足止めした事だな。一応言っておくが、ユリとアリウムは、襲撃において、怪我人の誘導や、アーズリバイスの一員の足止めなど。カンナにグリシアは、アーズリバイスの一員数人の捕獲などだ」


「えーと……え、幹部?」


「知らないのか?君が戦っていた太陽を操る男。彼は三人いるアーズリバイスの幹部の一人だったんだ。君が足止めをしていたおかげで、救われた生徒が大勢いるんだぞ」


 初耳だ。あの男は幹部だったのか。

 通りであそこまで強い訳だ。

 けどまあ、足止め出来ていて、生徒を救えたのなら良かったな。


 ……いや、今はそこじゃないだろ。

 いくらムクゲを倒して、幹部を足止めしたからと言って、何で俺なんかが選ばれるんだ。 

 他にもマリーとかの優秀な生徒がいただろ。


 あ、二番目の仮冒険者チームって言ってたし、一番目がいるのか。

 てことは、マリーたちは一番目に選出されて、仕方がなく俺を入れたのかな。

 

 ……いや、それでもだ。 

 それでも俺以外に良い人材はいたはずだ。

 なんで弱い俺が選ばれるんだよ。


「……先に言っておくが、嫌なら断ってくれ。事が事だし、無理強いするつもりはない」


「えっと……アリウムたちはどうするんだ?」


「俺たちはコウキが来る前に答えを出したぞ。俺たちはな……」


「おっと、駄目だぞアリウム。これはコウキ自ら決めなくてはならない事なんだ。他の誰かに流されたりしたら、後で必ず後悔する。……コウキ、君が決めるんだ」


「俺がって……」


 俺が決める。そう言われても、どうしようもない。

 行ってみたい気持ちもあるが、行きたくない気持ちもある。

 冒険者に一気に近づけるだろうし、行って損はない。


 しかし、少しでも危険が伴うのは確実だ。

 自ら危険に向かって行くことは俺にはできない。

 行きたいけど、行きたくない。

 簡潔に言えば、どっちでもいい。

 

 いくら考えようが、答えを一つに絞れない。

 誰でも良いから決めてほしいが、モモ校長がそれを許そうとしない。

 何か、大きな理由があれば……。

 

 そう思った直後。数日前の事を思い出した。

 ロメリア先生と話した事、自らの中で決心した一つの事。


 そうだ、俺は強くならなくちゃいけないんだ。

 だが、もしここで仮冒険者になれば、強くなるための何かを見つけられるかもしれない。

 それなら、答えは決まった。


「……ります。……俺は…………俺は仮冒険者になります」


「そうか、それで良いんだな?」


「……はい。俺自身が決めました。お、俺自身がなりたいんです」


「分かった。それでは、全員一致で、仮冒険者に志望するので決定だな」


「え、ってことは……」


「おう、もちろん俺らも志望したぜ!困ってる人がいるのに、動かないわけにはいかないからな!」


 アリウムたちも仮冒険者になるのか。

 心のどこかでそんな気はしていたが、いざ分かると少し安心する。


 そう思っていると、モモ校長はボロボロに汚れた引き出しを探り、その中から数枚の書類を取り出した。

 書類のほこりを払うと、一人一枚書類を手渡ししながら、話を続けた。


「ここには必要な道具や、諸君ら仮冒険者への最初の仕事が書かれている。急ですまないが、出発は四日後。町の正門前に集合し、そこで同行者と合流し、デイングの町へと向かってもらう。……諸君らの最初の仕事は、デイングの町で、冒険者とは何かを再認識しながら、町で出される仕事をこなすことだ。重要な仕事だ。頼むぞ、仮冒険者諸君!」


『はい!』


 そして、俺たちは仮ではあるが冒険者となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ