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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
60/120

コミュ症と触手使いは、全力で語り合う。

「……ユリ、カンナ、グリシア。俺目当てだろうから、みんなは先に状況を確認しに行っててくれ」


「え、でも……」


「大丈夫。すぐに捕まえて、後を追うからさ」


「……分かった、頑張ってね!」


 そう言うと、ユリたちはボロボロになった校舎を抜けていく。


 しかし、まさかこんなに早くムクゲと再会することになるとはな。

 ムクゲの家族と話してから、まだ二三日しか立ってない。

 流石にここまで早く再開するとは想像もしてなかった。

 いろいろと言いたいことはあるが、まずは……。


「……あ、えっと、校舎を、学園をここまで壊したのはお前なのか?……そもそも、学園は今どうなっているんだ。お前は一体なにをしたんだ」


「質問は一つにしてほしいな。……まあ、今は機嫌が良いから答えてやるよ!学園をここまで壊したのは俺たちだ!お前に倒されて、騎士団に捕まって数週間後。俺はある組織に助けてもらって、脱走に成功したんだ!」


「……ある組織?」


「ああ、その名はアーズリバイス!人類滅亡を望み、魔族のみの世界を望む、最強の組織!俺はその実力を認めてもらい、服従を誓う代わりに、脱走の手伝いをしてもらったんだよ!それで、今はアーズリバイスの一員として、作戦の一部である魔冒学園の破壊を手伝っているってところだ!」


 なるほど。

 少しずつではあるが状況が見えてきた。

 どうやら、アーズリバイスとかいうテロリスト集団が、学園を攻めてきたという事か。

 それならこの学園の状態も納得がいく。


 しかし、もしムクゲの話が本当なら、状況は相当悪い。

 ムクゲのような強いやつを従えて、作戦をしっかり練った上で攻めてきたという事は、アーズリバイスは学園を潰す準備が完璧に整っているはずだ。

 それくらべ、学園は反撃の準備は出来ていないだろうし、今日はチート能力を持ったモモ校長も学園にはいないはずだ。

 完全に隙を突かれている。

 最悪以外の何者でもない。

 

 状況を見に行ったみんなは大丈夫だろうか。

 少なくとも、学園に来たアーズリバイスとか言う奴らはムクゲと同等、それ以上の可能性が高い。

 もし、そんな奴らと出会ったなら、みんなでも勝てるかどうか……。


 いや、今はみんなの事より俺自身の事だ。

 俺の相手はあのムクゲだ。

 一瞬でも油断すれば、倒される。

 気を抜かずに行こう。


「はあ……俺は色々と話してやったのに、聞いてからは無言かよ!何か言う事はないのかよ!」


「その……ムクゲ、お前の家族と会ったよ。……お前の家族からの伝言だ。お前がどんなことをしようが、私たちだけは絶対にお前の味方であり続ける。一度一緒に話をしよう。……そう言っていたよ。きっと……きっとまだやり直せる。……戦うのをやめて、自首しないか?そして、家族と話せよ」


「……バカかー?俺が分かったって言うと思うか?俺を馬鹿にするような家族とは話したくねえし、俺は捕まりたくもねえんだよ!」


「そうか……それなら、お前を倒して、無理やり捕まえてやる」


 俺はそう言うと、この間マリーから貰ったパワーキャンディーを口に含む。

 すると、心の底から自信と力が湧いてくる。

 俺は周囲の影に触れ、叫ぶ。


「……影!」


 瞬間。

 触れた影が浮き上がり、俺の体を覆って行く。

 それと同時に、俺自身の影は右手に移動し、変化し始める。

 影は数秒で変化を終え、シャドウメイル、シャドウハンマーを作り上げた。


 一歩足を出し、ハンマーを構え、覚悟を決める。

 俺がそうすると、ムクゲは不気味な笑みを浮かべながら、背中から数本の触手を生やした。

 

「……俺はお前に負けてから、牢の中で努力したんだ。触手をより強く、より速く、より頑丈にしようとな!そして……これがその成果だ!」


 そう叫ぶと、触手は突然波の様に揺れ始めた。

 それと同時に、青色に光だし、変化を始めた。

 触手は揺れながら、少しずつ何かで覆われ始め、見た目に変化が生じ始める。

 

 そして、揺れが収まり、光が消えたころには、滑らかな姿をしていた触手の面影はほとんどなく、触手の表面はカニの体の様に、頑丈そうな甲羅で覆われていた。

 先は尖り、どんなものでも貫くことが出来るような見た目をしている。

 明らかに、変化前の触手より頑丈で、より鋭い。

 強くなっているのは確実だ。


「さて……見せてやるよ、俺の力をよ!」


 そう言いながら、ムクゲは触手を広げ、俺へと駆けてくる。

 それに対し、ハンマーを振り上げながら、迎え撃つ準備をする。


 そして、互いの攻撃範囲に入った瞬間。

 触手とハンマーが強烈な音を立てながら、ぶつかり合う。

 互いの力は互角なのか、どちらも押されることはなく、その場で押し合う形になった。


 俺は確実に強くなり、グレイムだって倒せるようになった。

 それなのに、ムクゲは余裕で俺の攻撃に耐えている。

 想像以上にムクゲも強くなっているようだ。


「やるじゃねえか、コウキ!だけどなあ、俺にお前は勝てねえんだよ!」


 そう言いながら、ムクゲは新たに触手を生やし、

 その触手で俺を殴り飛ばした。


 シャドウメイルで体を守っていたのにもかかわらず、殴られたとこが途轍もなく痛い。

 やはり、パワーは相当強くなっている。

 さっきのハンマーの攻撃を余裕で耐え、傷一つついていない所を見ると、防御力も上がっている。


 とりあえずは、あの触手の攻略法を考えた方が良さそうだ。

 パワーが上がり、頑丈になっている分速度は遅そうだが、どうするか。

 ノコギリで斬ることは出来ない。

 かと言って、シャドウハンマーで潰すのも難しそうだ。

 何か、何か良い手はないだろうか。


「どうやら、凄すぎて声も出ないみたいだな!これが俺の力だ!……俺を見下してきた奴らすべてに復讐するべく、俺一人で努力したのちに力だ!他人となれ合ってるお前なんかが努力したって、絶対に越えられない力だ!」 


「……いや…………何言ってんだ?」


「……あ?なんだと?」


「いやさ……それは違うだろ。その言い方だと、一人で努力した方が、友達と努力した方が強いって言ってるように聞こえるけど、それは違う。……俺も最近分かったんだけどさ。一人でいくら努力したって、限界は来るんだ。そして、限界が来た時に、その限界を壊す手伝いをしてくれるのが友達なんだよ。友達が居るから努力を続けられて、より強くなれる。どんなに怖くても、友達が居るだけで力が湧いてくる。一人じゃできない事も、友達となら出来る。……上手く言えないけど、友達が居るからこそ、俺たちは強くなれるんだ。……そして、友達と一緒に強くなった俺に、一人で強くなったお前なんかは勝てないよ」


 そう、これは俺がこの世界に来て知った事だ。

 この世界に来て、ユリと出会って、アリウムと出会って、カンナ、グリシア、マリー……みんなに出会った。

 みんなに出会ったおかげで、学園には入れて、経験した事がない事をたくさん経験出来て、俺自身が成長できた。

 

 少しではあるが、今変われているのだってみんなのお陰だ。

 みんながいなければ、変わるのを諦め、前世の俺と全く変わっていなかっただろう。

 みんながいなければ、努力することなく、堕落した生活を送っていたことだろう。

 みんながいなければ、俺は弱いままだっただろう。


 ……みんながいたから、今の俺はあるんだ。


 だから、一人で努力した方が、みんなで努力するよりも強くなれる、

 友達を必要のない物だと考えるムクゲの考えに賛同するわけにはいかない。

 そして、そんな考え方をし、悪の道へと進んでしまったムクゲに負けるわけにはいかないんだ。


「……意味分かんねえ。意味分かんねえよ!バカかがよ!どうせお前の友達も、お前の事をバカにしているんだよ!俺の元友達と同じようにな!」

 

「それは違う。俺の友達は良い奴だ。いくら俺が駄目で、どうしようもない奴でも、そんな事は思わないよ。……それに、お前の友達も、家族もそうだ。お前は周りが言っていることを悲観的に考えすぎてるんだよ。お前の周りの人は、たくさんの事をお前のためにしていたはずだ。心当たりがあるんじゃないのか?……ちゃんと周りを見ろよ」


「……う、うるせえよ!このバカがよ!!それが間違いだってこと、思い知らせてやるよ!」


 そう言いながら、ムクゲは触手を操りながら、向かってくる。

 そのムクゲの表情は、どこか躊躇うような顔をしていた。

 

 俺は少しの間で、様々な事を考えたのち、覚悟を決めた。


 俺はシャドウメイルを解き、瓦礫の方へと駆け出した。

 そして、瓦礫で作られた影や、今にも崩れそうな校舎の影。

 ありとあらゆる影に触れていく。


 さっきの攻撃で分かったが、普通のシャドウハンマーではあの触手を破壊することは出来ない。

 それなら、より強力なシャドウハンマーを作り出せばいい。

 運が良い事に、ここには大量の影が溢れている。

 全ての影に触れ、全ての影を操り、全ての影で武器を作る。


 ほぼすべての影に触れた所で、足を止め、ムクゲと向かい合う。

 そして、真っ直ぐのムクゲの方を見ながら、叫ぶ。


「……影!!」


 瞬間。

 周囲の全ての影が俺の右腕へと集まっていく。

 影は時間を影て形作っていき、十数秒かけたのち、俺が想像した通りの形へ変化した。


 入学試験でムクゲと戦った時よりも、授業でグレイムと戦った時よりも、団体戦でデルと戦った時よりも、巨大な影のハンマーへと変化したのだ。

 かつてないほど巨大なシャドウハンマー。

 名づけるならば……。


「……どうだ、これが超絶巨大シャドウハンマーだ!」


「……は……はは……なんだよそれ。……へ、いくら巨大だろうが、俺の触手の前には無力なんだよ!」


 そう言いながら、ムクゲは臆すことなく、俺へと向かってくる。


 俺は巨大すぎるシャドウハンマーをうまくバランスを取りながら持ち、

 向かってくるムクゲへと、叫びながら、全力で振り下ろす。

 ムクゲは触手でハンマーを破壊しようとするが、当然破壊することは出来ず、触手ごとハンマーに潰された。


 ムクゲからの反撃がない事を確認し、影をゆっくりと解く。

 そして、ムクゲがいた所へと歩いて行くと、そこにはボロボロになって倒れているムクゲの姿があった。

 その姿からして、俺の勝利で間違いないようだ。

 俺は安心すると同時に、その場に座りこんだ。


 ムカついて、カッコつけたりしたが、やっぱり途轍もない強敵だった。

 前回戦った時よりもさらに強く、さらに厄介になっていた。

 

 恐らく、ムクゲの中に迷いがあったのだろう。

 戦いの最中、家族や友達の話をしたとき、珍しく動揺しているように見えた。

 きっと、心の中では自分が悪いことを自覚し、本当に今していることが正しいのか、自問自答していたんだろう。


 ……ムクゲは嫌な奴だ。

 ユリやマリー、他にもたくさんの学生を襲い、危険な目に合わせた。

 捕まった後は脱獄し、今だって学園をボロボロにする手伝いをしていた。

 ハッキリ言って、許せない。


 しかし、家族の話を聞き、ムクゲの話を聞くと、恨むことは出来ない。

 出来る事なら、家族と仲直りして、良い奴になってほしいな。


 ……まあ、俺はそれでも許さないし、嫌いなのは変わらないけどな。


 とりあえず、ムクゲを倒したことだし、もっと状況を把握しないとだな。

 ユリたちを追いかけないとだし、アリウムたちも大丈夫か気になる。

 みんな無事だと良いな。

次回、太陽現る!


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