新たな日常が終わるのは、いつも突然である。②
「いくぞ、影!シャドウハンマー!」
シャドウメイルで体を完全に覆い終わると同時に、残った影を操り、シャドウハンマーを形作っていく。
相手はグレイム。
巨大な図体で、どんなものでも破壊出来る頑丈な腕を持つ。
地面を叩くだけで凄い衝撃を周囲に伝え、それだけで俺たちを気絶させることが出来る。
どう考えても強敵だ。
少しでも手を抜いていたら、確実に殺される。
初っ端から、全力で行く!
残った影で作ったシャドウハンマーを構え、グレイムへ駆け出す。
一直線に向かう俺に対し、グレイムは右腕を大きく振り上げ、攻撃範囲に入った瞬間、全力で振り下ろした。
その右腕を、身を引くことにより避けると、攻撃後の隙を突き、全力でシャドウハンマーを振る。
シャドウハンマーはグレイムの左半身に直撃し、グレイムを数メートル先まで追いやった。
防ぐことなく攻撃を喰らったはずだが、グレイムは何事もなかったかのように、平然と立っている。
さすがグレイムだ。
全力で殴ったはずなのに、全然効いていない。
これは相当攻撃を繰り返さないと、倒すことは出来なさそうだ。
改めて気を引き締めよう。
そう思い、グレイムの動きに注目し、次の一手を待つ。
しかし、グレイムは数十秒立っても、一向に動く気配がない。
流石におかしいと思い、警戒しながら、恐る恐るグレイムへと近づいて行く。
ついにはグレイムの攻撃範囲まで入ったが、グレイムは動く気配がない。
軽く叩いても、強く叩いても、一向に動く気配はない。
これはまさか……。
「……うん、間違いなく気絶してる。……凄いよコウキくん!一撃であのグレイムを気絶させるなんて!」
「え、やっぱり気絶してる?…………え、いや、え……?」
「凄いじゃんコウキ!最近いろいろあったから、強くなってるとは思ってたけど、ここまでとはね!うちも誇らしいよ!」
みんなが凄いほめてくるが、それどころじゃない。
俺自身、衝撃的過ぎて、開いた口が塞がらない。
……俺、強くなってるやん。
ムクゲとの戦い。大変なロメリア先生の授業。マリーの一件。
忙しくも楽しい日常を送っているうちに、自分で思っている以上に強くなっていたようだ。
全体で見ればグレイムは強いとは言えないモンスターだ。
それでも、俺たちからしたら強敵の部類に入るモンスターなんだ。
そんなモンスターを俺が、俺が倒した。
俺がここまで強くなっているという事は、他のみんなはそれ以上に強くなっているだろうし、全体で見れば俺自体相当弱い。
それでも、俺がここまで強くなったというのが重要なんだ。
度胸が無くて、弱くて、どうしようもない。
変わろうと思っても、全然変われなかった俺がここまで強くなったんだ。
初めて、少しだけ……少しだけだけど、努力が報われた気がする。
嬉しさと、衝撃の強さに、興奮する心が収まらない。
ここまで心が高ぶるのはいつぶりだろうか。
「……良かったね、コウキくん。頑張ったかいがあったね!」
「え、あ、うん!何て言うか、めちゃくちゃいい気分だよ」
「よーし!それじゃあ、この流れに乗って、次はうちが行こうかな!」
カンナがそう言った次の瞬間。
突如として、巨大な揺れがダンジョンを襲った。
あまりにも突然の揺れに俺たちは地面に倒れこみ、動くことが出来なくなった。
その揺れは数秒間続き、それからは少しずつ収まっていった。
揺れが収まったのを確認すると、俺たちはゆっくりと立ち上がり、
揺れの影響で周囲に危険が及んでいないかを確認し始める。
しばらく周囲を確認したが、危険な物はなさそうだ。
とりあえずは安全と言っていいだろう。
「び、びっくりしたー。凄い大きな地震だったね。凄すぎて動けなかったよ!……まあ、もう大丈夫そうだし、気を取り直して今度はうちが……」
「待って、カンナさん。……グレイム討伐は中止にして、一回外に戻った方が良いと思う」
「え、大丈夫だって!なんかあったら先生たちから連絡が来るはずでしょ!来てないってことは大丈夫ってことでしょ」
「……魔冒学園のシステムは凄いよ。もし緊急事態が起きたら、即座に先生からの放送が入って、状況の説明が起こる。だからこそおかしいの。優秀な魔冒学園だからこそ、それなりに巨大な地震が起きたのにもかかわらず、連絡一つ来ないのはおかしい。……今地震が起きる直前、どこかで爆発音も聞こえた。……嫌な予感がするの」
「んー、グリっちがそこまで言うなら戻ろっか!何かあっても嫌だしね!二人も良いよね」
カンナがそう聞かれ、俺とユリは顔を縦に振った。
全員の考えが一致したところで、グレイム討伐を切り上げ、来た道を戻り始める。
グリシアとしばらく一緒にいて分かったことがある。
こういう状況において、グリシアの予感はよく当たる。
良い予感も悪い予感も、平等によく当たるのだ。
そんなグリシアが深刻な顔をして、嫌な予感がすると言っていた。
そうなれば、流石に戻らない手はない。
もし、何もなかったなら何もなかったで、それはそれで良い。
何もないに越したことはないからな。
……しかし、今回は俺も少し嫌な予感がする。
シンプルな勘というのもあるが、
さっきの地震。あの地震に違和感があったのだ。
俺の前世は地震大国である日本で生活していた。
そのせいで何度も巨大地震や小さい地震など、様々な地震を経験してきた。
そんな俺だから分かる。
さっきの地震は普通の地震とは様子が違ったんだ。
上手く言えないが、普通の地震ではありえない揺れ方をしていた。
もしかしたら、上で何かがあり、その影響の揺れなのかもしれない。
絶対にそうとは言い切れないが、その可能性がない訳じゃない。
何もいないことを祈るが……。
「あ、みんなみて!出口だよ!」
考えながら走っているうちに、どうやら出口まで近づいていたようだ。
俺たちはより速度を上げ、外まで一気に走る。
そして、俺たちは外に到着した瞬間。
俺たちは全員同じようにして、足を止めた。
誰一人として何かを言うことなく、完全に動かなくなった。
その時、俺たちの目の前には崩壊した校舎の姿があった。
つい数十分前まではいたって普通だった校舎。
それが、瓦礫と化し、至る所から煙が上がり、遠くから助けを呼ぶ声も聞こえる。
あまりにも衝撃的過ぎる状況に全員が動けずにいると、横から俺の名を呼ぶ声がした。
横を向くことなく、俺はその声主が誰なのかを理解した。
何度も聞いたことがあり、何かと因縁もある。
「……ムクゲか」
「おお、今度は覚えていたんだな!コウキ!」
そう、そこに立っていたのはムクゲだった。
次回、三度目のコウキVSムクゲ。
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