新たな日常が終わるのは、いつも突然である。①
「よし、全員集まったようだし、話を始める!」
生徒全員がいることを確認すると、ロメリア先生は大きな声で話を始めた。
この日、俺たちは特別授業のため、戦闘場へ集まっていた。
今日までで新しく得た技を使い、俺たちがどれほど成長できたのかを、実感してもらうための授業を行うらしい。
特訓の成果を見せるというのは分かるが、一体どうやって成果を見せるのだろうか。
実力テストで使った案山子でも使うんだろうか。
それとも、先生と一対一で戦うのだろうか。
なんにせよ、一筋縄じゃいかないのは確かだ。
気を引き締めていこう。
「生徒諸君、今日までよく鍛錬した!本当ならば、校長先生が仕切るべきなのだろうが、今日校長先生は出張中のため、私が仕切らせてもらう!……今日までの鍛錬の成果を確認する方法として、私たちは以前の授業でも使用したダンジョンを使用することにした!」
以前にも使用したダンジョン。
数か月前に行われたモンスター討伐訓練で使用した、ゴレムやグレイムが生息しているダンジョンの事だろう。
良くも悪くも、思い出深いダンジョンだ。
あのダンジョンで初めてモンスターと戦い、生と死について学んだ。
あのダンジョンのせいで、ロメリア先生から死ぬほど怒られた。
あのダンジョンがあったから、グリシアとここまで仲良くなれた。
本当にいろいろな思い出を作ったダンジョンだ。
「……今回の授業では、禁止エリアを一部撤廃し、さらに強いモンスターと戦えるようにする。生徒諸君らには、グレイムと呼ばれるモンスターを一人一体討伐してもらう!前回と同じチームで集まったら、私の所へ来るように!」
それだけ言うと、ロメリア先生はそそくさとダンジョンの方へと向かって行った。
グレイムを一人一体討伐。
相当大変なお題を出してきたな。
俺たちは訳あって前回の授業で戦ったが、信じられないほどに強かった。
俺たち全員が束になって、死に掛けながらも攻撃を続けたのち、何とか勝てたような相手だ。
そんなグレイムを一人一体は無茶ぶりにもほどがある。
「いやー、まさかグレイムと戦わないといけないなんてね。うち一人で勝てるかなー」
「え、あ、カンナ。まあ、カンナなら勝てると思うよ。カンナは強いしさ」
「どうかな、前回戦った時はそこまで通用しなかったし、勝てるか微妙だと思うんだよね。……まあ、なるようになるか!あ、うちが戦ってるとき、コウキはうちの事をちゃんとエロい目で見ててよね!その方が力出るしさ」
「まあ、善処するよ」
カンナはどんな状況でもぶれないな。
尊敬するところではあるが、場所を選んでそう言う話はしてほしいものだ。
「こら、またコウキくんを困らせないの!」
「あ、ユリにグリっち!……みんな揃ったし、早速行こうよ!ダンジョン攻略!」
そう言いながら、カンナはロメリア先生へと駆け出した。
仕方なく、俺たちも走っていき、ロメリア先生にダンジョンへ入る際の注意点を聞いた。
その際、俺たちは危険エリアには絶対に入らないようにと、必要以上にくぎを刺された。
まあ、前回の事を考えると、先生が心配になるのも分かる。
長く眠くなる説明を受けたのち、ダンジョンへ足を向ける。
一度は行ったことのあるダンジョンだが、やはり入るときは興奮する気持ちが抑えられない。
「……さて、みんな行こう!ダンジョン攻略開始!」
カンナの合図と同時に、ダンジョンへ一歩踏み出した。
ダンジョン内は前回は行った時とほとんど変わっておらず、自然に作られた洞窟のような見た目をしている。
一本道が枝分かれするように部屋が出来ていて、アリの巣の構造に似た構造になっている。
俺たちは前回と同じ部屋で戦う事に決め、前回と同じ道なりを進んで行く。
運が良かったのか、前回の授業でゴレムと戦った所にはモンスターはおらず、それどころか、それ以外のどこにもモンスターの姿はなかった。
そのお陰で、前回よりも早く、簡単にグレイムがいる部屋へ到着することが出来た。
部屋の扉の前に着くと、一気に緊張と恐怖がこみあげてきた。
よく考えたら、当然の事だ。
数か月前にこの部屋に入り、自分より巨大なモンスターと戦い、何度も死にかけた。
そんなモンスターと今度は一人で戦い、勝たなければならない。
冷静になると、モンスターの恐怖を思い出し、手足の震えが止まらなくなる。
出来る事なら、今すぐ酒場に帰って、ベットに飛び込みたい。
今回に関しては他のみんなもそうなのか、扉を前にしたところで、全員が黙り込み、動かなくなった。
しばらく静寂が続いたのち、カンナが大きく口を開いた。
「あー、もう、いいや!」
「……え、いいや?」
「うん!いろいろ考えたけど、ずっとこうしてたってしゃーないし、行こう!なるようになるでしょ!」
そう言うと、カンナは扉に手をかけ、全力で扉を開いた。
一気に開かれた扉の向こうには、既にグレイムが一体疲れたように座り込んでいた。
グレイムは俺たちに気づくなり、両腕を地面につき、飛び上がるように立ち上がった。
それと同時に、巨大な咆哮を放ち、俺たちを威嚇した。
圧倒的な威圧感。
その威圧感に恐怖しながらも、影に触れ、武器を作り出す。
そして、いつ攻撃が来ても良いように、影の鎧で体を覆っている時。
カンナから衝撃的な一言が飛び出した。
「よし、それじゃあ、最初はコウキよろしく!」
「うん。……え、いや、え?……カンナが最初に行くんじゃないの?」
「いやいや、ここは前回グレイムを倒すのに一番貢献したであろうコウキからでしょ!大丈夫!コウキなら勝てるよ!」
「いや、でも……」
「大丈夫!」
「……はい、行ってきます」
……あまりの押しの強さに、思わず同意してしまった。
最悪だ。てっきりカンナが最初に戦うと思っていたが、まさか俺が最初に戦うことになるとは。
どうして少し押されただけで、「はい」なんて言ってしまったんだろうか。
そんなことを思いながらも、グレイムへと近づいて行く。
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