ギャルはいじめっ子に言い放つ。②
「……リアトリスこんなところに呼び出して何の用なの?」
「少し話がしたくてねー。……団体戦で勝ったからって、いい気にならないでよねー。団体戦で勝ったのは、マリーちゃんの実力じゃなくて、他の人たちの実力なの。別にマリーちゃんが凄い訳じゃないからねー」
何を言ってるんだ、あの女は。
団体戦でマリーと戦って、倒されたことを忘れてしまったのだろうか。
マリーとリアトリスは正々堂々戦い、自らの力のみで、マリーは勝利を収めた。
それは揺るぎない事実だ。
そう、リアトリスはマリーに完全敗北しているのだ。
それなのに、よくそんな事が言えるものだ。
「そんなこと知ってるよ。話はそれだけ?……団体戦で負けたら、もう関わらないっていう約束でしょ。そんな話良いから、もう二度と話しかけてこないで」
冷静な顔つきでそれだけ告げると、マリーは振り返り、酒場へ戻ろうとする。
想定外の行動だったのか、リアトリスは焦り、急ぎ足でマリーの前へと走り、通路をふさぐ。
「に、逃げるんだー!わたしに言われたことが図星過ぎて、言い返せなくて逃げるんだー!やっぱりマリーちゃんは腰抜けだね!……どうせ、団体戦に出てた友達もみんな腰抜けなんでしょ!マリーちゃんの友達なんだからさー!」
リアトリスがそう言うと、マリーが動きを止めた。
そして、鋭い眼差しでリアトリスを見つめながら、
強い口調で話し始めた。
「……あたしをバカにするのは良いけど、みんなをバカにするのは許さないから。次あたしの友達をバカにしたら……リアトリスでも容赦しないから!…………ねえ、なんでこうなっちゃったの?前は一番仲良くてさ、いつでも一緒にいて、あたしは親友だと思ってたんだよ。……それなのに、何でこんなことに……」
「何でって……全部……全部悪いのはマリーちゃんでしょ!マリーちゃんがわたしが狙ってた男を勝手に取ろうとしたのが悪いんじゃない!」
表情を見るに、リアトリスは本気でそう思っているようだ。
状況的に考えれば、そう思ってしまうのも無理はないのかもしれない。
しかし、実際は違う。
マリーは別に男を取るつもりは微塵もなく、
ただ一人の友達になりたかっただけだった。
それがリアトリスには狙っていた男を、奪い取ろうとしているように見えた。
そのせいで、マリーを恨み、痛い目に合わせてやろうと考えてしまった。
よくある勘違い。
それが、最悪の形になって表れてしまった。
……複雑な気持ちになる。
悪いのはリアトリスだが、全部が全部悪いとは言い切れない。
リアトリスはマリーに裏切られたと感じ、行動に移した。
もし俺がリアトリスの立場だったとして、リアトリスと同じとまではいかなくとも、
マリーに酷い事を全くしないとは言い切れない。
「……だから勘違いだって……もういいよ。約束は守ってね。今後一切あたしには関わらないで。……それじゃあね、リアトリスさん」
それだけ告げると、マリーはリアトリスをよけ、まっすぐ歩き始めた。
負とマリーの顔を見ると、どこか寂しそうで、悲しそうな顔つきをしているのが目に映った。
まだ出会って少ししか立っていないが、それでも分かるほどマリーは優しい人だ。
もしかしたら、マリーは団体戦で勝つことが、仲直りのきっかけになるかもしれないと、思っていたのかもしれない。
心のどこかで、まだやり直せると思っていたのかもしれない。
しかし、現実は非情だった。
仲直り出来ず、決別することになってしまった。
……少し悲しい。
元の原因は勘違い。
それが大きくなっていき、最終的にこんな終わり方。
何とも言えない気持ちになる。
「……え、コーキ?」
俺の名を呼ぶ声に、反射的に前を向くと、そこにはマリーが立っていた。
考えるのに没頭しすぎて、目の前に来るまで気が付かなかった。
……あれ、これまずくね?
マリーからしたら、個人的な話をしている所を、こっそりと盗み聞きしている男にしか見えないはずだ。
早く事情を説明しないと。
「いや、その、これはその、ぬ、盗み聞きとかじゃなくて、その……」
焦りすぎて、言葉がまとまらない。
これは絶対盗み聞きしてたと思われた。
俺が焦っていると、マリーは少し笑い、いつも通りの声色で話し始めた。
「大丈夫だよ、悪気はなかったんでしょ!それより、酒場に戻ろ!みんな待ってるだろしさ!」
「う、うん。……あ、バックを私に来たんだった。はい、これ、どうぞ」
「あ、ありがと!……ねえ、コーキ。……ありがとね。あたしを進ませてくれて!」
「え……いや、気にしなくていいよ」
リアトリスとしっかり話さなくて良いのかとか。
マリーは今のままで良いのかとか。
本当ならいろいろと言いたいことがあった。
それでも、実際に言う気にはなれなかった。
マリーはマリーなりに、いろいろな事を考えたんだろう。
マリーはリアトリスとの決別を選んだ。
それに対して、俺なんかがどうこう言うのは野暮というものなのだろう。
俺が今すべきことは、いつも通りに察することなのかもしれないな。
「ねえ、マリーさん。もしよかったら、こ、今度一緒にカラアゲの作り方を、お姉さんに教わらない?きっとマリーさんの力になると思うんだけど」
「良いね!カラアゲ作り方気になってたんだよねー!お姉さんが良いなら、この間みたく、三人で料理の練習しようよ!きっと楽しいよ!」
「う、うん。そうだね!あ、それなら明後日辺りにさ……」
「あなたがコウキ様ですか?」
俺たちが楽しく話している時だった。
目の前に老人が走って来たかと思うと、まじまじと俺の顔を見ながら、そう聞いてきた。
何事かと思いながら、首を縦に振ると、老人はポケットから一枚の手紙を取り出し、俺へ手渡ししてきた。
「これは一体……?」
「それは招待状です。ムクゲ様のご家族からと言えば、分かるでしょうか?」
「……ムクゲの?」
ふと、朝アリウムが言っていたことを思いだした。
アリウムの所に来た、ムクゲの執事。
まさか、この人がその執事なのか?
とりあえずは対いじめっ子はこれでおしまい!
もう少し……もう少しで、学園編を終わらせられる!




