コミュ症とギャルが力を合わせれば、いじめっ子を倒すことが出来るのかもしれない。③
『うおおおおおおおお!』
甲高い音を鳴らし、デルの斧とシャドウハンマーがぶつかり合う。
お互いの力で武器が弾きあうと、すぐに態勢を変え、再度武器をぶつけ合う。
その攻撃のぶつけ合いは、先程の戦いより素早く、激しい。
パワーアップキャンディーで力が上がった俺に対し、
負けじと、力強く斧を振り続けるデル。
互いは少しずつ怪我を負い、体力も無くなっていっているのにもかかわらず、
武器を振る速度と力は、時間がたつにつれより速く、より力強くなっていく。
デルの奴、なんて力だよ。
俺は飴の力でパワーアップしてる上に、
影の鎧でダメージや衝撃を最小限に抑えている。
そのお陰で、ほとんどの力を攻撃に注ぐことが出来ている。
それなのに、デルは簡単に俺の動きについて来て、
俺と同程度の力で攻撃を繰り出してきている。
想像以上に化け物だ。
そう思いながらも、攻撃を続けていると、
限界が来たのか、攻撃をやめ、デルは少し後ろへと下がっていった。
追い打ちを考えたが、体力的な事を考え、仕方なく俺も少し下がり、距離を取る。
「……ハッハッハー!いいぞ、坊主ううううう!想像以上だあああああ!」
「お前こそ、やるじゃないか!……だけど、そろそろケリを付けようぜ」
「ああ、同意見だぜえええええ!」
飴のお陰で力は上がり、自信もついている。
だが、時間が立ち過ぎたせいで、もうすぐ飴を舐め切ってしまう。
そうなれば、勝ち目はほぼゼロだ。
飴が切れる前に、確実に倒さなくては。
そう考えていると、デルは突如として雄たけびを上げた。
何をしているんだと見ていると、今度は口から炎を空へと放った。
放たれた炎はある程度上がると、そのままデルへと降りかかる。
炎を全身に浴びたデルはしばらく燃えたのち、腕を広げ炎を振り放った。
炎を振り放ったデルの肌色は赤く変色し、
体からは白い蒸気のようなものが出ている。
「これは俺の必殺技あああああ!この状態の俺はさっきよりも強くなっているんだあああああ!……さあて、俺の名はデルううううう!全てを喰らいつくす猛獣だあああああ!……お前も改めて名乗れ!決戦の前に名乗りあうううううう!これが俺のポリシーだあああああ!」
良く分からないが、あの赤い体が、デルの奥の手の様だ。
ここで出してくるという事は、それなりに自身のある技なのだろう。
しかし、名乗りを上げるか。
今更って感じはするし、いろんな人の前でそんなことしたくない。
普段の俺なら、そう思って絶対にしないだろう。
だが、今の俺は飴の力で自信がついている。
今なら、緊張も何も感じない。
「それじゃあ、俺は光輝!コミュ症陰キャにして、どんな猛獣をも倒す……冒険者志望だ!……行くぞ、デル!」
そう叫び、俺は装備の影を解き、全ての影を右手へと集めていく。
さっきの攻撃で分かったが、生半可な攻撃じゃ、デルを倒すことは不可能だ。
デルを倒すためには、全ての影を使った、全力の一撃を喰らわせなくてはならない。
そのために、防御をすべて捨て、攻撃にすべてを込める。
影はゆっくりと集まり、シャドウハンマーへと形を変えた。
俺はシャドウハンマーを両手で持ち、デルへと構える。
それと同時に、デルは斧を前に出し、構えを取る。
数秒後。
俺たちは同時に走り出した。
そして、同時に全力で、互いの武器を振る。
シャドウハンマーと斧はぶつかり合い、互いに押し合う形となった。
俺たちは全ての力を使い、武器を押す。
互いの力は互角。
どちらが倒されてもおかしくない。
互いに全力を出し、自然に叫ぶ。
『うおおおおおおおお!』
次の瞬間。
デルが少し押され、一歩分足を下げた。
俺はそれを見逃さず、後の事なんて考えずに、
残ったすべての力を使い、シャドウハンマーに力を籠める。
「いっけえええええええ!」
シャドウハンマーは一気に斧を押していき、
斧ごとデルを殴り飛ばした。
デルはそのまま壁にぶつかり、変身は解け、動かなくなった。
その様子から見るに、気絶しているのは明らかだ。
……勝った。本当に強かった。
凄くうざかったし、やってることは最低だったけど、
恐らく強くなるために、しっかり努力はしていたんだろう。
マリーの作った飴に、防御を捨てた攻撃。
全てを尽くした攻撃で、やっと倒すことが出来た。
……いや、まだだ。これは団体戦。
俺が勝っても、マリーが勝たないと意味がない。
戦いに夢中で忘れていたが、マリーとリアトリスは今どうなっているんだ。
そう思い、マリーたちの方を見てみる。
そこにはボロボロになりながら、飴と獣人の身体能力を生かし、
リアトリスへ向かって行くマリー。
それに対し、様々な物をマリー目掛けて放ち、
近づけさせまいと戦うリアトリスの姿があった。
「くそっ……何なのよー!さっきまで虫の息だったってのに……マリーちゃんは弱くて、何もできない、ただの獣人のはずでしょー!なんで……なんでそんなに向かってこれるのよー!」
「……確かに、あたしは弱いかもね。ゲッケに言われなかったら、一切抵抗せずにいじめられてただけだったかもだし、心のどこかでは怖くてリアトリスたちに逆らえてなかったんだと思う。だけどね、そんなあたしに力を貸してくれる人たちがいたの。全く関係ないのに、今日まで協力してくれた人たちと出会ったの。……その人たちのためにも、あたしは負けるわけにはいかないんだわ!」
そう言いながら、マリーは獣人の脚力の強さを生かし、
全力で地面を蹴り、リアトリスへと加速する。
リアトリスは焦りながらも、操っていたものを一か所へ集め始める。
集まったものは、綺麗に合体していき、一つの球体にまとまった。
リアトリスは、マリーへと狙いを定め、球体を放つ。
球体は今までリアトリスが操っていたものとは、比べ物にならない速さで、マリーへと向かって行く。
あの大きさで、あの速さだ。
あの球体をまともに喰らえば、マリーでも相当な傷を負ってしまうはずだ。
それを分かっているだろうに、マリーは速度を落とし、防御することなく、
逆に速度を上げ、一直線に球体へと向かって行く。
一体なにを考えているんだ?
マリーは球体との距離が数メートルの所で、
足に力を入れ、これでもかという程に速度を上げ、球体へと急接近した。
そして、次の瞬間だった。
マリーが球体を殴ったかと思うと、球体はその一撃で粉々に破壊された。
破壊すると思っていなかったのか、リアトリスは呆気に取られている。
そんなリアトリスを気にすることなく、
球体を破壊したマリーはリアトリスへと駆けていく。
「う……そ…………。ちょ、ちょっと待っ……」
「ごめん、倒れて。……ビーストハント!」
マリーの拳から放たれた一撃が、リアトリスへ炸裂した。
その一撃を受けたリアトリスは、ふらふらと後ろへ下がったのち、
膝から崩れ落ちるように倒れこんだ。
その様子を見るに、結果は明白だ。
この戦いは……俺たちの……。
「あたしたちの……勝ちだー!」
そう叫び、マリーは地面に倒れこんだ。
安心したからか、俺は思わずその場に座り込んだ。
そうか……勝ったのか。
他のみんなは、上手くやっているだろうか。
……いや、みんななら大丈夫か。
そうだよな、みんな。
長かった団体戦、決着!




