コミュ症とギャルが力を合わせれば、いじめっ子を倒すことが出来るのかもしれない。①
体中が熱く、痛い。
まるで、炎で焼かれているかのような熱さを感じ、
体を押しつぶされているかのような痛みが体を襲っている。
足に力が入らず、立つこともままならない。
目がぼやけて、周りが良く見えない。吐き気もすごい。
俺はボロボロの体を何とか動かしながら、顔を上げ、周りの様子を確認してみる。
顔を上げた俺の目の前には、真っ赤に燃える地面が広がっていた。
驚きながら隣を見ると、そこにはボロボロになったマリーが倒れこんでいた。
怪我を負っているのか、気絶しているようだ。
少し前の記憶があいまいだ。
一体、何があってこんなことになったんだっけか。
数分前。
俺たちはリアトリスたちと対峙していた。
「それじゃあ、行くぜ坊主!」
そう叫びながら、丸刈りの男は右腕を大きく上げ、俺へ殴り掛かかった。
俺はそれを慣れた動きで避け、作っておいた影の剣で、カウンターを喰らわせようとする。
が、丸刈りの男は地面を強く蹴り、その一撃を軽々と避けた。
避けられたか。
だが、攻撃を綺麗に避けれただけで、上々だ。
分かりやすい大振りだったってのもあるだろうが、
ここ数日間で鍛えた成果が出た。
「ほー、俺の一撃を躱すか―。坊主にしてはやるじゃねえか。……なあ、リアトリス。温存とかしないで、最初っから力使って良いよな?あの坊主を潰したくて、俺はもう我慢ならねえんだ!」
「えー、もうー?しょーがないなー。いーよ、デル。最初っから飛ばしちゃえー」
「おう!」
そう答えると、デルと呼ばれた丸刈りの男は、大きく息を吸いながら両腕を上へと上げていく。
両腕が頂点へと昇った所で、デルは大きく笑い、叫んだ。
「ミノロスタ!」
瞬間、デルに大きな変化が起こり始めた。
肌の色は黒く変色していき、少しずつ体が大きくなっていく。
頭からは角の様な物が生えていき、数秒で人間とは思えないような姿へと変貌した。
変貌した顔は、まるで牛の様な顔をしている。
体半分は人間のようだが、半分は別の生物の一部に見える。
あの牛と人間が合体したような見た目。
前世の本で何度か目にしたことがある。
あれは確か……。
「ミノタウロス!これが俺の力だぞおおおおお!」
デルの声が、その場周辺に響き渡る。
ミノタウロス。
大きくて、怖くて、強そうだ。
あんな化け物の攻撃を一撃でも喰らえば、ひとたまりもなさそうだな。
「どうだあああああ!俺の姿に、ビビッて声も出ねえかあああああ!」
「……確かに、凄い力だと思うよ。……でも、こっちも負けちゃいないさ。…………お、俺が身に着けた新技。見せてやるよ」
「ほうううううう!見せてみろおおおおお!」
俺は話し終えると同時に、周辺の影に触れていく。
大体の影に触れた所で立ち止まり、イメージする。
ここ数日間で作り上げた、新たな武器を。
俺の身を守り、俺の動きをサポートする、頑丈かつ身軽な武器を。
「……影」
俺がそう呟くと、触れた全ての影が俺へと集まってくる。
影は一気に俺の体中に広がっていき、それぞれの部位を作っていく。
数日前、マリーのアドバイスを得て作った鎧。
初めてにしては中々の出来だったが、それでも問題点はいくつもあった。
俊敏性、防御力、転ぶと立ち上がれない。
だが、この数日間で、ほぼすべての問題点を解決することが出来た。
すべての問題点を解決した、新しい鎧。
それこそが、俺の新たな武器。
「……どうだ、これが影で作った鎧。……その名は、シャドウメイルだ!」
「シャドウメイルううううう?」
守りたい部分を多くの影で覆い、関節など動く上で邪魔な部分は皮一枚程度の影で覆った。
関節部分の鎧をなくしたことにより、より動きやすくなっている。
関節部分の影を他の部分に利用できたことにより、所々の防御力は上昇している。
さらに、試行錯誤を繰り返すことにより、最もバランスの取れた鎧を生み出すことが出来た。
今出来る最高の鎧。
これが俺の身に着けた、新技だ。
「……良く分かんねえが、俺の拳の前じゃ無力だぜえええええ!」
そう言いながら、デルは俺の方へ突進してくる。
それに対し、俺は腕を前に出し、足、腰、腕に力を籠める。
デルの体が俺に衝突した瞬間。
俺は簡単に吹き飛ばされ、数メートル先まで飛ばされてしまった。
「ほらなあああああ!一撃で倒れそうじゃ……あああああ?何でそんな平気な顔してんだあああああ!?」
「……これでも試行錯誤して作った鎧なんでな。そう簡単には攻略できないぞ」
あまりの強さに吹き飛ばされてしまったが、体には大したダメージはない。
それどころか、影で作った鎧にすら、傷一つついていない。
これならいけるかもしれない。
俺は使っていない影に触れ、巨大ハンマーを形作る。
俺は巨大ハンマ―を握りしめ、デルの方をしっかりと向く。
デルはいつの間に手に取ったのか、さっき俺目掛けて投げた斧を片手に持っていた。
表情から察するに、あの斧を使っての戦闘には相当自信があるようだ。
少しの間見合ったのち、俺とデルは同時に駆け出す。
そして、斧とシャドウハンマーが甲高い音を上げ、ぶつかった。
武器同士がぶつかった瞬間、武器を戻し、次の攻撃を仕掛ける。
攻撃を仕掛け、ぶつかり、仕掛けを繰り返す。
ただひたすらに勝つという思いだけ持ち、互いの武器を全力でぶつけあう。
「やるじゃねえか、坊主ううううう!」
「……そ、そっちこそ!」
「それじゃあ、これは耐えられるかなあああああ!」
そう言うと、デルは斧を大きく振り上げ、
俺目掛けて全力で振り下げた。
何とか避けるが、その風圧により、俺は少しとばさっれてしまった。
一体どんな力してるんだよ。
こんなの、まともに喰らったらひとたまりもないぞ。
……だけど、しっかり戦えてる。
今は互角だけど、少しずつデルの動きも読めてきた。
この調子で頑張れば、もしかしたら勝てるかもしれない。
そう思った直後だった。
俺の真横へ、マリーが吹き飛ばされて来た。
「え、ま、マリーさん!大丈夫ですか?」
「なんとか……ごめん、コーキ。あたしリアトリスの事甘く見てたかも。あたしが思ってたいじょーに……強い」
「そりゃあそうでしょー。わたしはすっごく強いんだぞー」
マリーの方を見てみると、マリーの周りには小さなナイフや、小石など様々なものが浮いていた。
あれがリアトリスの生呪の力か。
事前にマリーから聞いていたが、物を浮かせる事も出来るのか。
あらゆるものの働く方向を操る力。
想像以上にめんどくさそうな力だ。
「んー、もういいかなー。抵抗されるのめんどくさいしー。とりま適当にボロボロにしてから、あとは楽しもうかなー。デルー。例の合体技やろー」
「ああああああ?もうやるのかよおおおおお!もっと楽しみたかったのによおおおおお!……しょーがねえなあああああ!」
デルはそう言うと、口を全開で開き、俺たちの方へと向けてきた。
何をやってるかと思い見ていると、デルの口の中に、赤い光の様な物が集まりだした。
直感でやばいと思ったが、その時にはもう遅い。
デルの口から放たれた炎は普通じゃない勢いで広がり、
俺たちを巻き込み、その周辺を包み込んだ。
……そうだ、そうだよ。
あのデルから炎で、燃やされたんだ。
「ぐっ……」
体を動かすと、途轍もない痛みが体全体を襲う。
体中がやけどしているような感覚もする。
いくらシャドウメイルが硬くても、それを貫通する熱には無力なのか。
直前、マリーの前に出て、炎が直撃しないようにはしたが、大丈夫だろうか。
一向に起きる気配はないし、マリーの状態が心配だ。
「あれー、あの一撃を喰らって、まだ動けるんだー」
「……リアトリスさん」
「わたしの名前知ってくれてたんだねー。んー、この一撃に耐えるなんてすごいねえー!何かご褒美でもあげたいけどー……。あ、そうだ!君は見逃してあげるよー」
見逃してあげる?
この状態で、一体何の話をしてるんだ?
「ほんとなら、君にも酷い事をする予定だったんだけどさー。ご褒美に、見逃してあげるー。あたしは元から、マリーだけが目的だからねー。デルにはわたしから言っとくからさー。武器置いて、泣きながら逃げちゃいなよー」
……なるほど。
懐が深いリアトリスさんは、俺を見逃し、マリーと俺に酷い事をする予定を変えて、マリーだけに酷い事をしてくれるのか。
……前世の俺なら、もしかしたら逃げていたかもしれない。
実際の所、俺は今怖いし、泣きたい。
全てを諦めて、ここから逃げてしまいたい。
でも、それでも俺は……。
「……に、逃げないよ。……マリーは大切な、と、と、友達なんだよ。そんな友達を置いて逃げるわけないだろう。……そ、そっちこそ、今なら逃がしてやるぞ」
「見逃してやるぞー?状況分かって言ってるー?何でわたしたちが逃げえるのよー」
「そんなの決まってるっしょ……あたしらがこれから大逆転するからだよ!」
「……マリーさん!」
横を見ると、そこにはボロボロになりながらも、何とか立ち上がろうとしているマリーの姿があった。
どうやら俺たちが話しているうちに目を覚ましたようだ。
「ごめん、少し寝てた。けど、もう大丈夫!コーキ、もう出し惜しみなしで行こう!あたしたちの特訓の成果、見せてやろう!」
「特訓……あ、マリーさん、やるんだね」
「うん!コーキこれを!」
そう言って、マリーはバックから一つの玉を俺に渡してきた。
その玉は赤くて、ほんのり甘い香りがする。
そう、これこそが、俺たちの特訓の成果だ。
リアトリスにデル。
見せてやるよ、俺たちの力を!
上手くまとまらない…




