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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
51/120

いくら強くても、変態と秀才の前には無力なのである。

「あー、もう、どうなってんの!」


 疲れ果てたカンナが、私の横でそう叫んだ。

 

 モヒカンの人たちと戦いを始めて、数分後。

 私たちは、モヒカンの人たちに一撃も入れられずにいた。

  

 相手が強くて、攻撃する隙がないとか、相手が早くて攻撃が当たらないとか、別にそう言うわけじゃない。

 攻撃されているわけでもないし、避けられているわけでもない。

 ただ、何故か私たちの攻撃が当たらない。

 

 カンナが攻撃しようとすると、足を滑らせて、転んでしまい、

 私が攻撃しようとすると、風がモヒカンの人たちを何故か避けていく。

 ふざけてるわけでもないし、手を抜いてるわけでもない。

 私たちは本気で戦っている。

 それなのに、当たらない。

 本当に、意味が分からない。


「ふんふーん。なんで当たらないか気になるかー?しょーがないなー、そこまで言うなら、教えてあげるよ!俺様の力はラッキー!ただひたすらに、ラッキーである力だ!」


「ラッキー?えーと、運が凄く良いってこと?」


「凄くなんてもんじゃないぞ!超絶凄くだ!俺様のラッキーにかかれば、お前らは俺に触れる事すら出来ないのだ!つまり、最強の防御と言っても過言じゃない!さらに、俺様の隣にいる金髪で無口女!この女は最強の攻撃を持っている!行け!その力をあいつらに見せてやれ!」


 モヒカンがそんなことを言うと、金髪の女の子はモヒカンの頭を叩いたのち、ゆっくりと前へ出てきた。

 金髪の子は、上を向いたと思うと、巨大な叫び声をあげた。

 あまりの大きさと、迫力に圧倒されていると、

 いつの間にか、その子の目が赤色に染まっているのに気が付いた。

 

 いや、それだけじゃない。

 さっきよりもガタイが良くなっていて、髪も伸びている。

 歯や爪も伸びていて、その見た目は猛獣のようにも見えてくる。

 

 金髪の子は叫ぶのをやめたかと思うと。

 ゆっくりと、私たちの方を向いた。

 

 次の瞬間。

 私の横にいたはずのカンナが突風とともに、姿を消した。

 その代わりに、カンナがいた所には金髪の子が一人立っていた。

 突然の事に動揺しながら、私は風で壁を作る。


 が、その壁を突き抜け、金髪の子の右腕の一撃が、私に炸裂した。

 私は抵抗することが出来ず、元いた場所の数メートル先に殴り飛ばされた。


 体中に激痛が走っている。

 風で作った盾と、風で作ったクッションのお陰で、ダメージは最小限に抑えられたはず。

 それなのに、このダメージ。

 体がしびれて、上手く起き上がれない。

 

 少し先に、カンナが壁に寄りかかり、倒れているのが見える。

 どうやら、カンナも金髪の子に殴り飛ばされたみたいだ。


 相当身体能力を上げているカンナでさえ、反応出来ずに大ダメージを受けているみたい。

 カンナを超える程の身体能力……あの子、相当強い。


「はっはっはー!どうだ!彼女の異名はバーサーカー!その名の通り、理性を失う代わりに、とんでもない力を得る力だ!普通なら、理性を失うと仲間も攻撃しちまう!だが、俺のラッキーがあれば、俺に攻撃することはないのだ!ラッキーだからな!」


 暴走する代わりに、カンナ以上の力を得る力か。

 普通なら団体戦には向かないけど、モヒカンの人のラッキーなら、話は別。

 運がいいおかげで、攻撃されないから、一緒に戦うことが出来る。

 これは、厄介。


 状況を把握しながら、なんとか立ち上がり、私はカンナへ近づいて行く


「……カンナ、大丈夫?」

 

「なんとかー……。あの子力強すぎでしょ。全力でガードしたのに、吹き飛ばされたよ!モヒカンの力も厄介だけど、あの子の力も厄介だねー。……して、ユリよ。何か作戦があるんでしょ?」


「モヒカンの人を倒す手段はもう浮かんでるけど、金髪の子を倒す手段は考え中かな」


「おー、モヒカンの方は浮かんでるんだ。流石ユリ!……それじゃあ、金髪の方はうちに任せてもらおうかな。あの指輪を使って、ぶっ倒してあげるよ!」


 あの指輪か。

 カンナが言ってるのは、この数日間で手に入れた、

 カンナの新しい力の事だと思うけど、大丈夫なのかな?


 まだ完全には使いこなせてないし、暴走する可能性もある。

 暴走する可能性は確か五分五分。

 そんな状態で新しい力を使うのなら、他の作戦を考えた方が良いんじゃ……。


「ユリ、大丈夫だよ!だって、うちだよ!長い間一緒にいたんだから、うちが凄いことは、ユリが一番良く分かってるでしょ!」


「……うん、そうだね!それじゃあ、金髪の子はカンナに任せるよ!モヒカンの人は、私に任せて!」


「よし、それじゃあ、やりますか!」


 そう言うと、カンナはポケットの中から、一つの指輪を取り出した。

 カンナは勢いよく、自らの指へ指輪をはめた。

 

 その次の瞬間。

 カンナを覆っている、カンナの力の大きさを示す、

 ピンク色のオーラが、一気に大きく膨れ上がった。


 ピンク色で、赤い宝石がはめ込まれている指輪。

 以前、店主の店という店でカンナが買った、興奮の指輪と呼ばれる指輪だ。

 その指輪は装着者に、周囲の視線が強くなったように感じさせる力を持っている。


 そして、カンナの力は、興奮すると身体能力が上がる力。

 加えて、カンナは他人に見られたり、酷い事を言われたりすると興奮する、ちょっと変わった性格をしている。


 つまり、周囲の視線が興奮するカンナにとって、興奮の指輪程適したアクセサリーはない。

 指輪を付けると、視線が強くなり、凄い興奮する。

 凄い興奮することによって、さらに身体能力を上げることが出来る。

 だけど、この指輪にも問題はある。


 この指輪はあまりに視線を強く感じすぎるため、普通の人は耐えきれず、気を失ってしまうことが多々あるらしいのだ。

 実験で何度か試していたけど、カンナでさえ、二回に一回は気を失ってしまっていた。

 それに加えて、あまりにも急激に身体能力が上昇するせいで、力を制御し切れない一面もある。 


 成功するかどうかは、本当に五分五分。

 と言うか、どちらかと言えば、失敗する可能性の方が高いかもしれない。

 今カンナを覆っているオーラは、かつて見たことがないほどに、大きく膨れ上がっている。


 これは……どっちなんだろう。

 力を制御できているのか、それとも暴走しかけてるのか。


「……カンナ、大丈夫?」


「…………ユリ。……何て言うか……最高に興奮してる!今なら、誰にも負ける気がしない!とりあえず、あの金髪の方、倒してくる!」


 カンナはそう言って笑った。

 そして、金髪の子を見ながら、ゆっくりと歩き始めた。


 あの顔は……間違いなく、成功している。

 何度も実験を見てきたから分かる。

 あれは、力を制御できている時の顔だ。


 だけど、状態を見るに、長くは持たなそう。

 勝負は、すぐに決まる。


 カンナがある程度近づくと、金髪の子は足に力を入れ、全力で地面を蹴る。

 その勢いを利用し、カンナへと急接近する。

 そして、右手を振り下ろし、カンナを潰しにかかる。


 が、カンナはその攻撃を軽々と片手で止め、

 もう片方の手で、金髪の子を殴る。

 金髪の子はもろに一撃を喰らうが、それでも耐え、反撃の一撃を繰り出す。


 しかし、カンナはそれすらも片手で止め、金髪の子を吹き飛ばす。

 その直後、追い打ちをしようと、カンナは駆け出した。

 そして、カンナの拳と金髪の子の拳が衝突する。


 そこからは、単純な殴り合いが始まった。

 殴って殴られての繰り返し。

 あまりの迫力に、私もモヒカンも近づくことが出来ない。 

 

 数十秒間殴り合った所で、限界が来たようだ。

 金髪の子一度引こうと、一歩足を下げた。


 その次の瞬間。

 そうするのを待っていたのかのように、

 流れるような動きで、カンナは金髪の子に急接近した。


「くらえ!おりゃあああああああああ!」


 そう叫びながら、カンナの一撃が金髪の子の腹部へと炸裂した。

 突然の急接近に動揺した金髪の子は、その一撃に対応することが出来ず、

 そのまま軽々と殴り飛ばされた。

 金髪の子はそのまま壁に衝突し、動かなくなった。

 変化が解けている所を見ると、気を失っているみたいだ。


「……う、うそだろ。……あ、あいつがやられるなんて…………」


 金髪の子が負けるのを想像もしていなかったのか、

 モヒカンは相当衝撃を受けているように見える。

 さて、カンナが勝ったことだし、私もやるか。


 私は、こっそりと風を凝縮し、モヒカンの後ろへ配置しておく。

 その後、今度は派手に、大量の風をまとめ、空に浮く風の槍を作っていく。  


「……ま、まあいいさ!どれだけお前らが攻撃しようと、絶対に俺に攻撃は当たらない!俺様のラッキーの前には、何者も無力なのだ!」


「そうとも限らないよ。悪いけど、あなたの力の攻略法は、もう見つけてるの」


「あー?攻略法ー?いいぜ、やってみろよ!その空飛ぶ槍でなんかするのか?」


「まあ、そうかな!」


 そう言いながら、私は作った全ての槍をモヒカンへと放つ。

 風の槍は全速力でモヒカンへと向かって行く。

 最初は何の変化もなく向かって行っていた。

 

 しかし、モヒカンに当たる直前、

 全ての槍がモヒカンを避けるかのように、外れてしまう。


 やっぱり、真正面からの戦いでは、相手に分があるみたい。

 相当強く風をまとめているのにもかかわらず、簡単に外されている所を見るに、

 ただ単に火力を上げるだけじゃ、あの力は攻略できそうにない。

 となると、やっぱりあの作戦で行くしかないかな。


「おいおい、どうした?攻略法を見つけてるんじゃないのか?」


「まあ、見ててよ。行くよ……ウィンドボール!」


 そう叫ぶと、付近の風が私の頭上へと集まりだした。

 頭上へ風は一気に形を作っていき、巨大な風の球体を作り出した。

 私は球体を作り終えると、剣身がない剣を取り出し、

 風で剣身の部分を作る。


 よし、これで準備は整った。

 これならいける。


 私は、準備が整うと同時に、片手を高く上げた。

 そして、全力で片手を下ろし、頭上の風の球体を放つ。

 風の球体は地面を破壊しながら、一直線にモヒカンへと向かって行く。

 その後を追い、私もモヒカンへと走る。


 これは私の完全なる予想。

 恐らく、あのモヒカンの人のラッキーは、

 モヒカンの人が意識している物質や、生物にしか発動しない。


 数時間前の、酒場での出来事。

 カンナがモヒカンの人を蹴り飛ばした時、

 モヒカンのラッキーは働くことなく、モヒカンの人は簡単に蹴り飛ばされた。

 これまでの言動や行動から見るに、あのモヒカンの人がカンナに蹴られることを許すとは思えない。

 だから、普通ならラッキーでカンナの攻撃を避けていたはず。

 

 それなのに、モヒカンの人はそれをしなかった。

 力を発動しないようにしてた可能性もあるけど、

 モヒカンの人は自分の力を自身に思ってるみたいだし、

 誇りにも思っているみたいだった。

 それなら、力をわざわざ発動しないでおく理由がない。


 時間制限とかもあるかもしれないけど、

 この長い戦闘中に時間が来ていないのはおかしい。

 そうなると、時間制限の可能性は低い。

 このことを考えると、カンナの蹴りにラッキーが働かなかったのはおかしい。


 何で働かったのか。

 それは、意識外の攻撃だったから。

 それが一番理由としてあり得る。

 それなら、私も意識外からの攻撃をすればいいだけ。


「……良く分かんないけどよお!どれだけ、大きな攻撃でも、俺のラッキーの前には無力!」


 モヒカンがそう言うと、風の球体は不思議な力が働いたかのように、

 モヒカンを避け、空高く飛んで行った。


 その様子を見たモヒカンの人は、勝ち誇ったような顔をしている。

 だけど、これは私の予想通りだ。

 今、モヒカンの意識は完全に私に向いている。

 となれば……。


「意識外の後ろからの攻撃は、必ず当たるよね?」


 私は、事前にモヒカンの後ろに配置しておいた、風が凝縮されたものを発動する。

 凝縮されたものは、全速力でモヒカンの足へと向かって行き、

 物の数秒でモヒカンの足へと衝突した。

 突然の攻撃に反応できる事もなく、

 足を攻撃されたモヒカンは、頭から後ろへと倒れこんだ。


 予想通り。

 意識外の攻撃に、ラッキーは発動しない。

 そして、あまりにも突然の出来事に、

 モヒカンの人の意識は、足を襲った何かに、完全に向いているはず。

 つまり……。


「私の攻撃にラッキーは発動しない!くらえ!」


 そう叫びながら、私は風の剣を振り下ろす。

 当然、モヒカンは反応し切れず、風の剣にラッキーが働くこともなく、

 風の剣はモヒカンへと炸裂した。


 攻撃を受けたモヒカンは、風の勢いに吹き飛ばされ、

 地面に叩きつけられたのち、完全に気絶した。

 その様子を見ると、疲れて座っていたカンナが走って抱き着いてきた。


「ユリー!勝ったねー!やったよー!」


「うん、やったね!少し休んでから、旗は持ってこうか!」


「うん、そうだね!そういえば、他のみんなは勝ってるかな?」


「きっと大丈夫だよ!コウキくんも、グリシアさんも強いから!」


 そうだよね、コウキくん。

次回、主人公VS牛?


少しでも面白ければ、ブクマか評価してくださると幸いです!

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