努力は報われないが、諦めなければ報われる。
今回は、アリウム目線です!
「変剣!」
剣を抜き、そう叫ぶ。
剣は光りながら形を変え、大剣へと変化する。
俺は全力で地面を蹴り、金髪の男へと向かって行く。
そして、金髪の男へと、大剣を振り下ろす。
大剣は一直線に男へ振り下ろされ、間違いなく金髪に直撃した。
が、金髪は全くダメージがないのか、平然としている。
不思議に思いながら、連続で斬りかかるが、男平然としている。
これは一体どういうことなんだ。
俺の剣カエデは、どんなものでも斬ることが出来る。
それなのに、生身で攻撃を受け切って、平然としてやがる。
普通なら、今頃倒れているはずだぞ。
「なんで切れねえか不思議かあ?しょーがねえから、教えてやるよ!」
そう言いながら、金髪は右手を前に出した。
すると、その右腕はミシミシと音を立てながら、剣の様な物へと姿を変えた。
「どうよ、これが俺の力、体を刃物へと変える力だ!」
刃物に変える力……。
そう言う事か、何となく分かったぞ。
さっき俺が斬れなかったのは、あいつが体の一部を刃物にしてたからか。
相手が人間というのもあって、さっきの攻撃は人間をギリギリ切れるくらいに、勢いを殺していた。
それもあって、刃物になった体を斬ることが出来なかったのか。
だが、仕組みが分かれば大して問題はねえ。
刃物も斬れるくらい、強く斬りかかればいいだけだ。
「……さて、今度は俺らの番だな!行くぞ、お前ら!」
金髪がそう言うと、他の二人が一瞬にして姿を消した。
消え方から考えるに、素早い動きでどこかへ行ったとか、ワープしたとか、そう言う事ではなさそうだ。
そうなると考えられるのは……。
「多分だけど、シンプルな透明化みたいな力だよね」
「ああ、多分な。透明化なら、さっき急に現れたのにも、合点がいく。実態はあるだろうし、攻撃は当たるんだろうが……グリシア、透明の奴に狙って攻撃当てられたりする?」
「流石に難しい。透明じゃ、どこに狙えばいいか、分からない」
「おいおい!今は戦闘中だぞ?何呑気に話してんだよー!」
そう言いながら、金髪は剣へと変わった腕を、振り下ろしてくる。
俺はカエデを使い、何とかガードするが、その力に押されてしまう。
力の副産物か、こいつ自身の力なのか分からないが、なんて力だよ。
俺も相当鍛えているはずなのに、少しずつ押されていく。
このままじゃ、少しやばいかもな。
「……なあ、俺だけに気を向けてていいのか?」
「え、何言って……」
「アリウム危ない!」
グリシアの叫び声が聞こえた次の瞬間。
体の腹部に強烈な痛みが走った。
あまりにも急な痛みに、手の力を緩めると、その隙を突かれ、
金髪に蹴り飛ばされてしまった。
俺は逆らうことが出来ず、そのまま地面を転がっていく。
……一体なにが起きた?
グリシアの声が聞こえたと思ったら、腹が痛くなって、 力が抜けちまった。
金髪の奴の動きには注意してたし、何かした様子はなかったはずだ。
「アリウム、大丈夫?一瞬しか見えなかったけど、アリウムの横から、ゲッケを倒したのと同じ攻撃が急に出てきたように見えた。恐らくは、透明化している奴らの攻撃だと思う」
「やっぱりか。……ちくしょう、直前まで敵の攻撃が見えないんじゃ、避けようがないな」
どうする?
透明じゃ、狙って攻撃は当てられない。
そもそもとして、どこにいるんじゃどうしようもない。
それに加えて、あいつらの連携が完璧すぎる。
金髪が俺たちの気を引き、その隙に透明になってる奴らが避けれない攻撃する。
連携を崩そうにも、金髪は強えし、
透明の奴らは、攻撃できない。
俺たちはいったいどうすりゃいいんだ。
……駄目だ、全く分からん。
大体、こういう風に考えるのは苦手なんだよな。
俺はもっと、単純に戦う方が……そうだ。
俺は単純に戦う方が好きなんだよ。
てか、戦いの最中にどうこう考えるのは、俺らしくないんだよ。
「……よし、やめだ!……グリシア!俺は良い作戦が浮かばないから、考えるのを考えるのをやめる!作戦とかどうするとかはグリシアに任せる!」
「え、いや、任せるって……」
「頼むぞ、グリシア!俺は……時間を稼いでくる!」
それだけ話し、俺は金髪へと突っ走る。
そして、大剣を全力で振り下ろす。
予想はしていたが、全力の一撃でも倒すことは出来ないか。
それなら、全力の一撃を、倒れるまで繰り返すのみだ!
そう思い、俺は大剣を振り続ける。
防御なんて一切考えずに、一撃一撃を全力でだ。
「おいおい!忘れちまったのかあ?相手は俺だけじゃないんだよ!」
金髪がそう言うと同時に、どこからかさっきと同じ攻撃が飛んで来た。
その攻撃は一直線に俺の体へと向かってくる。
さっきは急な事もあって、分からなかったが、
透明の奴が放つ攻撃は、そこまで速くはない。
ギリギリ目で追えるくらいの速さだ。
それくらいの速さなら……。
「俺なら、反応できるんだよ!」
そう言いながら、大剣を振り、攻撃を弾く。
そして、弾いた次の瞬間には、金髪への攻撃を再開する。
金髪に、反撃の隙を与えず、攻撃し続ける。
これが、今の俺に出来る最大限だ。
「まじかよ……。だ、だがな!いくら攻撃を弾いて、攻撃を続けても、いずれ限界は来るんだよ!無駄な努力ご苦労さん、バカな無能力者!……あ、お前どうせあれだろ!努力は報われるとか思ってんだろ!残念ながら、努力は報われないんだよ!いくら頑張ったって、無駄なんだよ!」
「何言ってんだ、バカはお前だよ!努力が報われない?そりゃあ、そうだよ。努力が報われるなら、俺はもっと早く学園に受かってる!」
「は?何言って……」
「確かに努力は報われない!だがな……努力が報われなかったとしても、諦めなければ報われるんだよ!俺みたいにな!」
諦めずに、続けて行けば必ずいつかは報われるんだ。
今だってそうだ。
圧倒的に不利なこの状況でも、諦めずに耐え続ければ、必ず報われる。
必ず、この状況が覆る。
なあ、そうだろ……グリシア!
「アリウム、頭下げて!」
グリシアの指示が聞こえると同時に、俺はすぐさま頭を下げる。
すると、後ろから飛んで来た一本の矢が、金髪の顔面に直撃した。
その隙を突き、俺は全力でグリシアの所へと下がっていく。
「助かったよ、グリシア。それで、何かいい作戦が思いついたのか?」
「成功するかどうかは五分五分だけど、一つだけ考えは浮かんだ。よく考えれば、すぐに分かる事だったんだよ。透明になってる二人は、体も服も影も見えない。だけど、恐らく実物はある。……これは私の推測なんだけど、あいつらの力は、自分と自分に関する物、および自分が指定した人物とその関する物を透明化する力だと思う。どんなものでも透明化できるなら、攻撃も透明化するはずだからね」
……良く分からないな。
攻撃が透明にならなくて、服が透明になる。
それは分かったが、だからどうしたんだ。
それが分かったからって、何も変わらないだろ。
そう思っていると、グリシアはバックから何かを取り出した。
あれは……絵具?
グリシアは絵具を手に持つと、小さな声でメイダーと呟いた。
すると、絵具が光り、一瞬にして、二本の矢へ姿を変えた。
聞いていたが、凄いな。
これがグリシアのどんなものでも、その性質に合った弓と矢に変える力か。
そう思っていると、グリシアは二本の矢を弓にセットした。
そして、その矢を金髪の上空へと放つ。
二本の矢は回転しながら、引き寄せられるように近づいて行く。
「……これは」私の予想だけど、さっきの話から考えるに、自分に関さないものは透明化できないと思うの。つまり……これから降りかかる絵の具は、透明化できないよね」
グリシアが話し終わると同時に、
二本の矢は、金髪の真上でぶつかり、はじけ飛んだ。
はじけ飛んだ矢からは、黒い水の様な物が雨の様に降りかかっていく。
話を聞いた感じ、あれは恐らく黒い絵具だろう。
黒い絵具は、金髪に降りかかり、金髪を絵具で黒色に染めていく。
そして、黒く染められたのは、金髪の男だけじゃなかった。
よく見ると、金髪のそばで、何もない空間に黒い絵具がたまっていた。
状況から察するに、それが何かは明らかだ。
間違いない、あの絵具がたまっている所にいるのは、
透明になった二人組だ。
そうか、絵具の雨を降らせることによって、透明の奴らに確実に絵具をかける。
絵具をかける事によって、透明の奴らがどこにいても分かるようにしたのか。
「……アリウム、少しどいて」
言われた通り少し下がりながらグリシアの方を見てみると、
グリシアの手には一つの石が握られていた。
見覚えがある。
確かあれは、前に俺たちが買い物をした時。
丸刈りで赤髪の店主がいた店で、グリシアが買っていた石だ。
一見普通の石にしか見えないが、何に使うんだ?
「……この石は、雷竜の石と言われててね。雷の竜の力が籠ってるの。ただ籠ってるだけで、普通に持ってるだけじゃ、ただの石と変わらない。だけど、私の力を使えば、途轍もなく強力な武器になる。……メイダー!」
グリシアがそう言うと、石は光りだす。
そして、物の数秒で、巨大な弓矢へと変化した。
黄色いラインが入ってて、普通の弓の倍くらいのでかさだ。
グリシアは普通の矢を三本取り出すと、三本全てを巨大な弓につがえる。
そして、手から足まですべてを使い、矢を引く。
「この弓から放たれる全ての矢は、雷竜の力が付加される。強力すぎるが故、これを使ったらしばらく動けないから、もしものときは頼むね、アリウム。……行くよ、サンドラアロウ!」
瞬間。
黄色い一線が目の前を通ったかと思うと、
とんでもない突風が俺を襲った。
しばらく風に耐えたのち、ゆっくりと目を開け、敵がいた方を見てみる。
するとそこには、三本道にえぐられた地面と、その横に倒れる三人がいた。
一撃で、全員倒しやがった。
凄い以外の言葉が出てこねえぞ。
「す、凄いなグリシア!一撃で倒すなんて!」
「アリウムが時間を稼いでくれたおかげだよ……そのお陰で作戦も思いついたわけだしさ。……けど、ごめん。どうやら、一人だけ、倒せなかったみたい」
そう言われ振り向くと、さっきまで倒れていたはずの金髪が、一人立ち上がっていた。
あの一撃を喰らっても、気絶しなかったようだ。
「アリウム……悪いけど私はもう動けないから、後は……」
「おう、任せろ!……さて、そろそろケリを付けようぜ!」
「……ああ、そうだな!……二人を倒したのは驚きだが、もうあの一撃も打てないんだろ。…………なら、俺がお前らを倒して、終わりだ!」
「そう上手くいくかな?」
金髪は、今の一撃で相当なダメージを追っている。
だが、俺も時間稼ぎの時に体力を使いすぎたせいで、大分限界が来てる。
他の仲間は、お互いに動ける状態じゃなさそうだ。
状況は、五分五分か。
それなら後は、シンプルな話。
俺と金髪、どっちが強いかで、全てが決まる。
俺は大剣を前に出し、金髪と向き合う。
それとほぼ同時に、両手を刃物へ変え、前に出す。
「……状況を見ろよ。お前は大剣一本。それに対して、俺は両腕で、刃物が二本。そして、俺の力なら、お前の剣なんざ、片手で止められる。お前の剣を止めて、片方の手で斬って終わりだ。お前に勝ち目はないんだ、諦めろや」
確かに、金髪の言ってることは正しい所もある。
このまま、真正面から斬りかかれば、片手で止められて、
もう片方の手で、簡単に倒されちまう。
万全の状態で、全力で斬り続ければ、金髪の刃物も斬れるだろうが、
今この状態じゃ、金髪の刃物を斬ることは出来ない。
だが、斬ることが出来ないだけだ。
ロメリア先生に指導してもらって、俺に足りないことを知ることが出来た。
動きが単調すぎるという事。
カエデの性質をもっと生かすべきだという事。
最初は動きをもっと複雑にするために、体を鍛え続けていた。
それでも、複雑な動きを完璧に身に着けることは出来なかった。
そこで、俺はふと考えた。
俺じゃなくて、カエデに複雑な動きをさせられないかと。
カエデは、どんな形にもなれる、変幻自在の剣だ。
そう、俺が想像すれば、どんな形にでもなれるんだよ。
これは……俺が学園に入って、初めて身に着けた技。
「ふぅー……。見せてやるよ、俺の新技をな!」
「新技?どうせ、少し大剣の姿を変えるだけだろ。そんなんが、俺に通用すると思うなや!」
そう言いながら、金髪は俺へと向かってくる。
これは好都合だ。
この技はまだ完璧には使いこなせない上に、
避けられちまったら、それまでの技だからな。
俺は右足を下げ、両足に力を入れる。
そして、しっかりと前を向き、叫ぶ。
「……変剣!」
瞬間。
大剣は光りながら、より大きく、より柔らかく形を変えていく。
そして、物の数秒で形を完全に変えた。
その見た目は剣と言えないほどに大きく、生物のような見た目をしている。
そう、それはまるで、昔本で読んだ狼の牙の様に鋭く、捕食者のような見た目をしている。
その見た目に、金髪も動揺しているように見える。
「……な、なんだよ、それ!……そ、それって……剣…………なのか?」
「ああ、そうだよ。剣先を極限まで広げて、狼の口の様な形状にしている。鋭く、大きく、強い。そんな剣だ。……さて、行くぞ、金髪!」
「え、いや、待っ……」
「喰らえ!ウルフソーダ!」
俺が全力で振ったカエデは、綺麗に金髪をとらえた。
その口の様な剣先で金髪を抑え、斬りながら喰らい、壁へ叩きつけた。
叩きつけられた金髪は、よほど火力があったのか、
すぐに気絶し、動かなくなった。
「……気絶したよな。……勝ったのか?」
「……うん、何とか勝てたみたいだね」
「そうか……っしゃー!勝ったー!疲れたー!」
そう言って、俺はその場に寝転んだ。
「え、アリウム大丈夫?」
「おう、何とかな!」
厄介な力の奴に、シンプルに強い奴。
なんていうか、強力で凄い相手だった。
だが、なんとか勝つことが出来た。
……俺たちは勝ったぞ。
コウキ、お前らも勝てよ。
次回は、ユリたちの戦い!だと思います!




