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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
48/120

祭りの始まりは、問題だらけである。②

 カンナやアリウムの助けもあり、

 客の流れに落ち着きが見えてきた頃。

 酒樽を運びながら、アリウムが声をかけてきた。


「にしても、何やかんや早かったなー。もう、団体戦当日か!」


「そうだな。長いようで短い、そんな数日間だったよ」


「だな!だけど、コウキもマリーも、新技が完成してよかったよ」


「ああ、ギリギリだったけどな」


 俺の新技。

 あの日から、話し合いを進めながら、毎日特訓を続け、ようやく完成した新技だ。

 大体想像通りのものが完成したし、強さも十分にある。

 この技なら、どんな敵にも対応できる気がする。


 マリーの新技も、簡単ながら中々良い物だ。

 俺とマリーとお姉さんの合作。

 きっと、あのいじめをした奴らにも、通用するはずだ。


「……あ、そう言えば、アリウムもいろいろ考えてたよな。どんな技が出来たんだ?」


「それは本番のお楽しみだよ。すげえから、楽しみにしとけよ!……あ、そう言えばさ、コウキの所には触手野郎の家の執事来たのか?」


「触手野郎の……執事?」


「ほら、この間の夜。俺とお前で戦っただろ。その時の敵のリーダーの執事だよ」


 触手野郎……リーダー……。

 あ、ムクゲの事か。

 触手を使ってたし、リーダーだもんな。


 だが、ムクゲの執事なんて知らないな。

 あの事件以来、ムクゲ関係の事は何も起こってないし、関係者なんて見たこともない。

 

「知らないけど、それがどうしたんだ」


「いやさ、実は俺の所に、その執事が来てよ。お詫びも兼ねて、家に招待するって、招待状を持ってきたんだよ。怪しすぎるから、とりあえず保留にしたんだけど、お前はどうすんのかと思ってよ。まあ、来てないならいいさ」


「へー……」


 お詫びも兼ねた招待か。

 確か、ムクゲが俺は貴族だとか言ってたな。

 てことは、貴族から直々の招待か。

 

 ムクゲの言っていたことが本当なら、貴族は貴族じゃない俺に負けたくらいで、ムクゲを馬鹿にしたような奴らだ。

 恐らくは貴族が一番で、それ以外はゴミみたいに考えている、最低な奴らだろう。

 そんな奴らの招待という事は、危ない可能性が高いよな。

 アリウムの所生きたという事は、俺たちの所に来るかもだし、一応注意しておくか。


 そんなことを思っていると、大体の作業を終えたお姉さんがキッチンから出てきた。


「いやー、みんなありがとうね!みんなのお陰で何とか落ち着いてきたよ。時間も時間だし、みんなもう行っていいよ!団体戦、頑張って!……あ、手伝ってくれたお礼に、ジュースとご馳走用意しとくから、祝杯はここで頼むよー!」


「はい、頑張ってきます!」


 俺たちはお姉さんに挨拶を済ませ、

 団体戦の会場へと足を進める。

 

 酒場から会場への道のりは様々な人の活気で賑わっていて、いつも以上に楽しい雰囲気に包まれている。

 出店もいつもより多く、美味しそうな食べ物や、不思議な遊び道具を破格の価格で売っている。

 想像以上の盛り上がりだ。

 もしかしたら、アフロさんに聞いた以上に、大きな祭りなのかもしれないな。


 そんなことを思いながら歩いて行くと、ついに団体戦の会場に到着した。

 そこには既にゲッケとマリーがおり、二人ともそわそわした様子だ。


「マリーにゲッケくん。おはよう!」


「あ、みんなおはよー!ついにこの日が来たねー……めっちゃ緊張しない?」 

 

「分かる!うちなんか緊張しすぎて、今日全然寝れなかったよ!」


 これは意外だな。

 カンナも緊張することがあるのか。

 あの性格だし、緊張なんかしないと思っていたが、そんな事もなかったのか。


「さて、みんな集まったみたいやし、ワイらも申し込みに行かへんか?どうせ、あのクズどもはもう登録してるやろ」


「だれがクズだってー?」


 聞き覚えのある、女の声に振り替えると、

 そこには思った通りの奴らがいた。

 赤髪で、派手なメイクをしている女。

 そして、丸刈りで巨大な図体の男

 その後ろには数名の男女がいて、その中には特徴的なモヒカンをした男もいた。

 

 あれ、あのモヒカンって……。


「あー!てめえらは酒場にいた!……なるほど、こりゃあラッキーだな!まさかこんなに早く復讐できるとは!」


「んー。モヒカン、こいつらの事を知ってるのー?」


「まあ、いろいろあってな。ボコボコにしてやりたいと思ってたところなんだよ」


 ……どうやら、本当に酒場でカンナに蹴られたモヒカンの様だ。

 世間は狭いというが、狭すぎるだろ。

 こんなに早く、最悪の再開をすることになるとはな。

 そんなことを思っていると、赤髪の女が一歩前に出た。

 

「いやー、逃げずにちゃんと来たんだねー。どうせボコボコにされるだけだっていうのにー」


「……あ、そうか、お前らが例のマリーをいじめてる奴らだな。お前らにはいろいろと言いたいことが……」


 アリウムが話していると、マリーが前に立ち、

 アリウムの言葉を遮った。

 そして、深呼吸をしたのち、ゆっくりと口を開いた。


「……今のうちに、好きに言ってればいいよ。……勝つのは、あたしたちだからね」


「へー、言ってくれるねー。……まあ、いいや。また後でねー」


「そこの坊主も、また後でな。この間言った事、後悔させてやるよ」


 そんな事を言って、女たちは去っていった。

 

 あの男、絶対この間の宣戦布告を気にしてるよな。

 もしかしたら忘れてくれてるかもとか思ってたけど、

 そんな事はなかったかー。


 まあ、仕方がないか。

 覚悟は出来てるんだ。

 俺の方こそ、絶対後悔させてやる。

 そんなことを思っていると、少しの間黙っていたマリーが口を開いた。

 

「……ふー。ど、どうよ!言ってやったよ!怖かったけど、勝つのはあたしたちだって、言ってやったよ!」


「おう、やってやったな!すげえよ、マリー!」


「うんうん、カッコ良かったよ!……にしても、まさかあのモヒカンも敵チームにいたとは……世間は狭いねえ」


「みんな強そうだったし、私たちも気を引き締めた方が良さそうだね。……と、そんなことを話してるうちに、今年のルール説明が始まるみたいだよ!」


 ユリに言われ、主催者が集まっている方を見てみる。

 どうやら、これからルールが張り出されるみたいだ。

 

 毎年団体戦のルールは、団体戦開催の10分前に張り出されることになっている。

 参加者は張り出された紙を見たのち、詳しい作戦を練るようにしているのだとか。

 

 そして、今年も10分前になった瞬間、紙が張り出された。

 近くにより、張り出された紙を見てみると、

 そこには陣地支配団体戦と書かれていた。


 まず、参加者はそれぞれの陣地へ出される。

 フィールドの向かい側には、相手チームの陣地があり、

 2チームの間は、巨大な3本道に分かれている。

 それぞれの道の真ん中には、巨大な旗が置かれており、

 その旗を敵より早く手にし、自らの陣地へ持って帰る。

 最終的に、陣地に持ち帰った旗が多い方が勝利。


 なるほど。

 つまりは、旗争奪戦というわけか。

 3本道という事は、2・2・3で別れる事になりそうだな。

 3組に分かれるというのは、今年も同じのようだな。

 ということは……。


「これは、作戦通りに分かれる感じで良さそうだね。後は、誰がどのルートに行くかだよね」


「あ、それなら、あたしとコーキが真ん中で良いかな?」


「え、良いけど、何か理由でもあるの?」


「うん。多分、リアトリスは真ん中に来ると思うの。あ、リアトリスってのは、さっきの赤髪の子で、いじめの主犯格ね。それで、リアトリスとはあたしが戦いたいの」


「分かった。マリー、コウキくんが真ん中ね。それじゃあ、私とカンナが上のルートで良いかな?」


 ユリがそう言うと、アリウムたちはお互いを見合ったのち、首を縦に振った。

 その様子を見たユリは話を続ける。


「よし、それじゃあ、申し込んでこよっか!時間も時間だしね」


 そう話し、俺たちは受付へと歩いて行く。

 そして、選手登録をし、対戦相手の指名を行ったのち、受付をすました。

 受付を済ませると、俺たちは黄色のリストバンドの様な物を受け取った。

 受付の人曰く、どのチームの選手なのか、分かりやすくするためらしい。

 参加人数が多いため、見分けるためのものが必要なのだとか。

 

 その後、受付に案内されるがままに、待合室へと向かって行く。

 待合室には、凄い筋肉の人や、鋭い目つきの人など、強そうな人ばかりが休んでいる。

 あまりの迫力に、本当に勝てるのか、少し不安になってくる。


 ここ数日間、それなりに努力はしてきた。

 覚悟も決めたし、やる気も十分にある。


 だが、それでも怖いものは怖い。

 朝、仮病を使わなかったことを、今になって後悔してしまっている。

 はあ……帰りたくなってきた。


「……大丈夫?顔色が悪いけど」


「え、あ、グリシア。……大丈夫…………だと思う」


「そう。……私は大丈夫じゃないかな。凄い緊張してるし、怖いしで、頭の中ぐちゃぐちゃだよ」


「え、そうなんだ」


 いつも通り、クルーな顔をしていたから、そうは思わなかった。

 だが、グリシアも緊張していたのか。

 なんか、少しほっとしたな。 


「……でもね、初めてなんだ。初めて、家族以外の人から頼られたの。……だから、頑張ろうって思えてさ、緊張とかよりも、その思いが勝ってるから、少し平常でいられてるの。……コウキも、今ここにいる理由を思い出してみなよ。少しは楽になるからさ」


「理由……」


 最初の理由は、アリウムが勝手に参加させたから。

 一応、いじめは良くないってのと、助けてあげたいって思いもあった。

 その後、マリーの話を聞いて、凄い人だと思って、俺も頑張りたいと思ったかな。

 

 みんなと組み分けの話をしたときは、期待に応えようと思って、俺が頑張らないとって思って、マリーとさらに話して、より助けてあげたいって思った。

 

 いじめの主犯格たちと会って、凄くムカついて、意味わかんなくて……。

 それで、宣戦布告して、絶対勝ちたいと思った。

 このいじめを止めたいと思った。

 

 そうだ、俺は一つのいじめを止めたいから、戦うんだ。

 あのムカつく奴らを痛い目に合わせてやりたいし、マリーの事も助けてあげたい。

 

 ……なんだろう、思い出したら、恐怖とか、不安とかよりも、勝ちたいって気持ちの方が出てきた。 


「……ありがとう、グリシア。……少し、楽になったよ」


「なら良かった」

 

 そう話している時だ。

 部屋の扉を開け、スタッフが一人、部屋へと入って来た。


「次の団体戦出場チームを発表します!次は……黄色チームです!黄色チームの皆さんは、私について来て下さい!」


「あ、私たちの番が来たね。それじゃあ、行こ……」


「あ、ユリ待って!」

  

 俺たちが行こうとすると、カンナが突然止めてきた。

 何事かと思っていると、カンナが右腕を前に出した。


「こういう時は、円陣でしょ!みんなバンドを付けてる手を前に出して!ほら、ほら!」


 俺たちは円になり、言われた通りにバンドを付けた方の手を、前に出す。


「よし、それじゃあ……リーダーのマリー!掛け声よろしく!」


「え、あたし!?……それじゃあ、みんな、今日はあたしのためにありがとう!いろいろ言いたいことはあるけど、とりま……絶対勝とう!目指すは、全部の旗を取って、完全勝利!行くよー……黄色チーム!絶対勝つぞ!」


『おー‼』


 俺たちは、掛け声とともに、出した手を大きく上げた。

 それから、俺たちは大きな覚悟を胸に、フィールドへと歩きだす。

次回、団体戦開幕!


ちなみに、モヒカンは急遽登場させたモブなので、そこまで気にしないでください。

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