祭りの始まりは、問題だらけである。②
カンナやアリウムの助けもあり、
客の流れに落ち着きが見えてきた頃。
酒樽を運びながら、アリウムが声をかけてきた。
「にしても、何やかんや早かったなー。もう、団体戦当日か!」
「そうだな。長いようで短い、そんな数日間だったよ」
「だな!だけど、コウキもマリーも、新技が完成してよかったよ」
「ああ、ギリギリだったけどな」
俺の新技。
あの日から、話し合いを進めながら、毎日特訓を続け、ようやく完成した新技だ。
大体想像通りのものが完成したし、強さも十分にある。
この技なら、どんな敵にも対応できる気がする。
マリーの新技も、簡単ながら中々良い物だ。
俺とマリーとお姉さんの合作。
きっと、あのいじめをした奴らにも、通用するはずだ。
「……あ、そう言えば、アリウムもいろいろ考えてたよな。どんな技が出来たんだ?」
「それは本番のお楽しみだよ。すげえから、楽しみにしとけよ!……あ、そう言えばさ、コウキの所には触手野郎の家の執事来たのか?」
「触手野郎の……執事?」
「ほら、この間の夜。俺とお前で戦っただろ。その時の敵のリーダーの執事だよ」
触手野郎……リーダー……。
あ、ムクゲの事か。
触手を使ってたし、リーダーだもんな。
だが、ムクゲの執事なんて知らないな。
あの事件以来、ムクゲ関係の事は何も起こってないし、関係者なんて見たこともない。
「知らないけど、それがどうしたんだ」
「いやさ、実は俺の所に、その執事が来てよ。お詫びも兼ねて、家に招待するって、招待状を持ってきたんだよ。怪しすぎるから、とりあえず保留にしたんだけど、お前はどうすんのかと思ってよ。まあ、来てないならいいさ」
「へー……」
お詫びも兼ねた招待か。
確か、ムクゲが俺は貴族だとか言ってたな。
てことは、貴族から直々の招待か。
ムクゲの言っていたことが本当なら、貴族は貴族じゃない俺に負けたくらいで、ムクゲを馬鹿にしたような奴らだ。
恐らくは貴族が一番で、それ以外はゴミみたいに考えている、最低な奴らだろう。
そんな奴らの招待という事は、危ない可能性が高いよな。
アリウムの所生きたという事は、俺たちの所に来るかもだし、一応注意しておくか。
そんなことを思っていると、大体の作業を終えたお姉さんがキッチンから出てきた。
「いやー、みんなありがとうね!みんなのお陰で何とか落ち着いてきたよ。時間も時間だし、みんなもう行っていいよ!団体戦、頑張って!……あ、手伝ってくれたお礼に、ジュースとご馳走用意しとくから、祝杯はここで頼むよー!」
「はい、頑張ってきます!」
俺たちはお姉さんに挨拶を済ませ、
団体戦の会場へと足を進める。
酒場から会場への道のりは様々な人の活気で賑わっていて、いつも以上に楽しい雰囲気に包まれている。
出店もいつもより多く、美味しそうな食べ物や、不思議な遊び道具を破格の価格で売っている。
想像以上の盛り上がりだ。
もしかしたら、アフロさんに聞いた以上に、大きな祭りなのかもしれないな。
そんなことを思いながら歩いて行くと、ついに団体戦の会場に到着した。
そこには既にゲッケとマリーがおり、二人ともそわそわした様子だ。
「マリーにゲッケくん。おはよう!」
「あ、みんなおはよー!ついにこの日が来たねー……めっちゃ緊張しない?」
「分かる!うちなんか緊張しすぎて、今日全然寝れなかったよ!」
これは意外だな。
カンナも緊張することがあるのか。
あの性格だし、緊張なんかしないと思っていたが、そんな事もなかったのか。
「さて、みんな集まったみたいやし、ワイらも申し込みに行かへんか?どうせ、あのクズどもはもう登録してるやろ」
「だれがクズだってー?」
聞き覚えのある、女の声に振り替えると、
そこには思った通りの奴らがいた。
赤髪で、派手なメイクをしている女。
そして、丸刈りで巨大な図体の男
その後ろには数名の男女がいて、その中には特徴的なモヒカンをした男もいた。
あれ、あのモヒカンって……。
「あー!てめえらは酒場にいた!……なるほど、こりゃあラッキーだな!まさかこんなに早く復讐できるとは!」
「んー。モヒカン、こいつらの事を知ってるのー?」
「まあ、いろいろあってな。ボコボコにしてやりたいと思ってたところなんだよ」
……どうやら、本当に酒場でカンナに蹴られたモヒカンの様だ。
世間は狭いというが、狭すぎるだろ。
こんなに早く、最悪の再開をすることになるとはな。
そんなことを思っていると、赤髪の女が一歩前に出た。
「いやー、逃げずにちゃんと来たんだねー。どうせボコボコにされるだけだっていうのにー」
「……あ、そうか、お前らが例のマリーをいじめてる奴らだな。お前らにはいろいろと言いたいことが……」
アリウムが話していると、マリーが前に立ち、
アリウムの言葉を遮った。
そして、深呼吸をしたのち、ゆっくりと口を開いた。
「……今のうちに、好きに言ってればいいよ。……勝つのは、あたしたちだからね」
「へー、言ってくれるねー。……まあ、いいや。また後でねー」
「そこの坊主も、また後でな。この間言った事、後悔させてやるよ」
そんな事を言って、女たちは去っていった。
あの男、絶対この間の宣戦布告を気にしてるよな。
もしかしたら忘れてくれてるかもとか思ってたけど、
そんな事はなかったかー。
まあ、仕方がないか。
覚悟は出来てるんだ。
俺の方こそ、絶対後悔させてやる。
そんなことを思っていると、少しの間黙っていたマリーが口を開いた。
「……ふー。ど、どうよ!言ってやったよ!怖かったけど、勝つのはあたしたちだって、言ってやったよ!」
「おう、やってやったな!すげえよ、マリー!」
「うんうん、カッコ良かったよ!……にしても、まさかあのモヒカンも敵チームにいたとは……世間は狭いねえ」
「みんな強そうだったし、私たちも気を引き締めた方が良さそうだね。……と、そんなことを話してるうちに、今年のルール説明が始まるみたいだよ!」
ユリに言われ、主催者が集まっている方を見てみる。
どうやら、これからルールが張り出されるみたいだ。
毎年団体戦のルールは、団体戦開催の10分前に張り出されることになっている。
参加者は張り出された紙を見たのち、詳しい作戦を練るようにしているのだとか。
そして、今年も10分前になった瞬間、紙が張り出された。
近くにより、張り出された紙を見てみると、
そこには陣地支配団体戦と書かれていた。
まず、参加者はそれぞれの陣地へ出される。
フィールドの向かい側には、相手チームの陣地があり、
2チームの間は、巨大な3本道に分かれている。
それぞれの道の真ん中には、巨大な旗が置かれており、
その旗を敵より早く手にし、自らの陣地へ持って帰る。
最終的に、陣地に持ち帰った旗が多い方が勝利。
なるほど。
つまりは、旗争奪戦というわけか。
3本道という事は、2・2・3で別れる事になりそうだな。
3組に分かれるというのは、今年も同じのようだな。
ということは……。
「これは、作戦通りに分かれる感じで良さそうだね。後は、誰がどのルートに行くかだよね」
「あ、それなら、あたしとコーキが真ん中で良いかな?」
「え、良いけど、何か理由でもあるの?」
「うん。多分、リアトリスは真ん中に来ると思うの。あ、リアトリスってのは、さっきの赤髪の子で、いじめの主犯格ね。それで、リアトリスとはあたしが戦いたいの」
「分かった。マリー、コウキくんが真ん中ね。それじゃあ、私とカンナが上のルートで良いかな?」
ユリがそう言うと、アリウムたちはお互いを見合ったのち、首を縦に振った。
その様子を見たユリは話を続ける。
「よし、それじゃあ、申し込んでこよっか!時間も時間だしね」
そう話し、俺たちは受付へと歩いて行く。
そして、選手登録をし、対戦相手の指名を行ったのち、受付をすました。
受付を済ませると、俺たちは黄色のリストバンドの様な物を受け取った。
受付の人曰く、どのチームの選手なのか、分かりやすくするためらしい。
参加人数が多いため、見分けるためのものが必要なのだとか。
その後、受付に案内されるがままに、待合室へと向かって行く。
待合室には、凄い筋肉の人や、鋭い目つきの人など、強そうな人ばかりが休んでいる。
あまりの迫力に、本当に勝てるのか、少し不安になってくる。
ここ数日間、それなりに努力はしてきた。
覚悟も決めたし、やる気も十分にある。
だが、それでも怖いものは怖い。
朝、仮病を使わなかったことを、今になって後悔してしまっている。
はあ……帰りたくなってきた。
「……大丈夫?顔色が悪いけど」
「え、あ、グリシア。……大丈夫…………だと思う」
「そう。……私は大丈夫じゃないかな。凄い緊張してるし、怖いしで、頭の中ぐちゃぐちゃだよ」
「え、そうなんだ」
いつも通り、クルーな顔をしていたから、そうは思わなかった。
だが、グリシアも緊張していたのか。
なんか、少しほっとしたな。
「……でもね、初めてなんだ。初めて、家族以外の人から頼られたの。……だから、頑張ろうって思えてさ、緊張とかよりも、その思いが勝ってるから、少し平常でいられてるの。……コウキも、今ここにいる理由を思い出してみなよ。少しは楽になるからさ」
「理由……」
最初の理由は、アリウムが勝手に参加させたから。
一応、いじめは良くないってのと、助けてあげたいって思いもあった。
その後、マリーの話を聞いて、凄い人だと思って、俺も頑張りたいと思ったかな。
みんなと組み分けの話をしたときは、期待に応えようと思って、俺が頑張らないとって思って、マリーとさらに話して、より助けてあげたいって思った。
いじめの主犯格たちと会って、凄くムカついて、意味わかんなくて……。
それで、宣戦布告して、絶対勝ちたいと思った。
このいじめを止めたいと思った。
そうだ、俺は一つのいじめを止めたいから、戦うんだ。
あのムカつく奴らを痛い目に合わせてやりたいし、マリーの事も助けてあげたい。
……なんだろう、思い出したら、恐怖とか、不安とかよりも、勝ちたいって気持ちの方が出てきた。
「……ありがとう、グリシア。……少し、楽になったよ」
「なら良かった」
そう話している時だ。
部屋の扉を開け、スタッフが一人、部屋へと入って来た。
「次の団体戦出場チームを発表します!次は……黄色チームです!黄色チームの皆さんは、私について来て下さい!」
「あ、私たちの番が来たね。それじゃあ、行こ……」
「あ、ユリ待って!」
俺たちが行こうとすると、カンナが突然止めてきた。
何事かと思っていると、カンナが右腕を前に出した。
「こういう時は、円陣でしょ!みんなバンドを付けてる手を前に出して!ほら、ほら!」
俺たちは円になり、言われた通りにバンドを付けた方の手を、前に出す。
「よし、それじゃあ……リーダーのマリー!掛け声よろしく!」
「え、あたし!?……それじゃあ、みんな、今日はあたしのためにありがとう!いろいろ言いたいことはあるけど、とりま……絶対勝とう!目指すは、全部の旗を取って、完全勝利!行くよー……黄色チーム!絶対勝つぞ!」
『おー‼』
俺たちは、掛け声とともに、出した手を大きく上げた。
それから、俺たちは大きな覚悟を胸に、フィールドへと歩きだす。
次回、団体戦開幕!
ちなみに、モヒカンは急遽登場させたモブなので、そこまで気にしないでください。




