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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
47/120

祭りの始まりは、問題だらけである。①

「……ついに来たか」


 起きると同時に、俺はそう呟いた。

 今日は、団体戦がある、花火大会当日。

 ここ数日間の全ての努力が試される日だ。


 ……行きたくねえ。

 団体戦は昼からなのにもかかわらず、今から超絶緊張している。

 俺のせいで負けたらと思うと、怖くて気分が落ち込む。

 もし、これで完全敗北して、努力がすべて無駄になったりしたら、俺はもう二度と立ち直れないだろうし……。

 本当なら、仮病でも使って休んでやりたい。

 


 ……前世の俺なら、本当に仮病を使って、休んでいただろうな。

 嫌な事からは逃げて、言い訳をし、逃げた自分を正当化する。

 それが前世の俺のやり方だった。


 だが、今の俺は前世の俺とは違う。

 行きたくないし、休みたい。

 それでも、俺は行かないとならないんだ。

 今の俺には、それなりに背負ってる者がある。

 今の俺には、逃げちゃならない理由がある。

 だから、俺は行かなければならない。


 俺は自分の頬を叩き、気合を入れる。

 そして、着替え、必要な物を持ったのち、部屋のドアを開けた。


 いつもの様に、一階へ降りると、

 まだ朝なのにも関わらず、酔った客で溢れかえっていた。

 何事かと思いながらキッチンを見てみると、お姉さんやユリが大忙しに作業をしていた。


「えっと……おはようございます。これって……何の騒ぎなんですか?」


「あ、ちょうどいい所に来たね!光輝も少しは暇でしょ!エプロン着て、ホールで何とかしておいて!」


 良く分からないが、手伝った方が良いというのだけは分かる。

 そう思い、言われた通りにエプロンを着け、ホールへと出て行く。


 やっぱり、凄い客の数だ。

 いつもの倍以上の客が入っている。

 もしかして、花火大会と関係があるのだろうか。

 そう考えていると、どこかから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「お、兄ちゃん!今日は兄ちゃんも働いとるんか!」


「あ、ハゲさんにアフロさん。おはようございます。……その、何でこんなに客が多いんですかね?いつもの倍以上いますけど」


「そんなの決まってるらろー。今日は年に一度の花火大会ららららー。花火大会はこの街で、一番大きら祭りれらー。朝らら晩られ、一切仕事をせず、騒ぐことが許られる日なんらー。この日だけは、女房にもなんも言われらいらら、騒ぐしかなくてー。楽しくて―。祭りらー」


 飲み過ぎているせいか、アフロさんはろれつが全く回っていないな。

 だが、大体は理解できた。

 俺が想像している以上に、花火大会は大きな祭りだったようだ。

  

 あれ、待てよ。

 そんな大きな祭りのチラシに、大きく書かれていた団体戦って、

 もしかして、相当大きいイベントなんじゃ……。

 となると、多くの人が見に来たりして……。

 

 ……今は考えないでおこう。

 そんなことを思いながら、次々に入ってくる客をさばき始める。

 数十分間、案内したり、注文したりを繰り返すが、

 少しでもキリが付く気配は一切しない。 


 流石にここまで動きっぱなしなのは初めてだ。

 最近は酒場のバイトにも慣れてきて、多少なりとも普通に働けるようになったが、ここまでの長時間労働となれば、話は別だ。

 流石に疲労感が出てくる。

 そんな時だった。


「おい、遅えよ!酒はまだか!」


 突如聞こえた怒鳴り声に、驚きながら声のした方を見てみる。 

 そこには珍しすぎるモヒカンをした、おっさん顔の男がユリともめていた。


「申し訳ございません。今準備していますので、少々お待ちください」


「あー?待てねえよ!俺はお客様だぞ!お客様は神様なんだよ!神様を待たせるなんて、どうかしてるんじゃねえか?」


 あれはどっからどう見たって迷惑客だな。

 真っ赤な顔からして、相当酔っている。

 酔っている迷惑客程厄介な客はいない。

 ユリは大丈夫だろうか。


 そう思い、ユリの顔をのぞいてみると、

 ユリは少し怖い顔をしていた。

 以前のダンジョン攻略でグリシアに見せたのと同じような顔。


 うん、これは大丈夫そうだな。 

 あの顔の時のユリは、凄いからな。


「申し訳ございません。本当にもう少しなので、少しだけ待っていただけませんか?……それと、他のお客様の迷惑になりますので、もう少しお静かにお願いします」


 ユリが少し強く言うと、モヒカンの客は、より強く言い返す。


「待てねえっつってんだろ!悪いが、静かにも出来ねえよ!静かにしてほしいなら、酒持ってこいや!」


「……お客様、静かにしていただけないようでしたら、こちらもそれ相応の対応を取らせていただきます」


 ユリがそう言った次の瞬間。

 突如酒場の入り口の方から何かが飛んで来た。

 よく見てみると、それは人。

 それも、良く見知った人だった。


 その人は、モヒカンの客に衝突し、そのままモヒカンの客を吹き飛ばした。

 モヒカンの客は壁に突撃し、それから動かなくなった。


「……えっと、な、なにしてるんだ…………カンナ」


「え、だって、迷惑客だったでしょ?だから、蹴り飛ばしてやっただけだよ!」


 こいつまじで言ってんのか……。

 確かに迷惑客だったが、それでも蹴り飛ばすなよ。


「ちょ、カンナ何やってるの!」


「え、うちがやんなくたって、ユリがやってたでしょ。凄い怖い顔してたし」


「やるとしても、軽く店の外に出すだけだよ!全く……今の人外に運ぶから、カンナ手伝って」


 そう話しながら、ユリとカンナはモヒカンの客を運び始めた。


 やっぱり……カンナは凄いな。いろいろな意味で。

 そういえば、カンナはどうしてここに来たんだろう。

 団体戦の時間まで、約束とかはしてなかったはずだが。


「いやー、凄いな、カンナ。一撃で気絶させるとは」


「ああ……え、アリウム!何でここに?」


「そんなん、店を手伝いに来たに決まってんだろ。団体戦の時間まで、俺たちも暇だったからよ。来ちゃった」


「来ちゃったって……まあ、ありがとう。助かるよ。……それじゃあ、キッチンのお姉さんにいろいろと聞いて来てくれ」


「おうよ!」


 そう答えて、アリウムはキッチンへと向かって行く。

 結構大変だったからな、アリウムたちが来てくれたのは、ありがたすぎる。

 

 それから、カンナとアリウムが加わり、

 何とか酒場は、いつものように回り始めた。

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