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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
46/120

想像力は無限大なのかもしれない。③

「ねーねー。なんで無視するの、マリーちゃん。わたしの話聞いてるー?」


 そう言いながら、しばらく黙っているマリーへ近づいて行く。

 女が目の前に来ても、マリーは黙ったままで、微動だにしない。

 その様子を見た女は、より不気味に笑うと、今度は俺の方を向き、

 嘗め回すように俺の体を見てきた。

 何とも不気味で、気味が悪い。


 しばらく俺の体を見ていた女は、マリーへ目を戻し、

 再び、馬鹿にするように話し始めた。


「へー、今度はこのアホそうな男に色目を使うんだー。まあ、いいんじゃない?マリーちゃんにはお似合いだよー」

  

 アホそうな男とは失礼だな。

 確かに頭は悪いが、初対面でアホは失礼過ぎる。


「……別に、コーキもそんなんじゃないよ。……それより、何の用?団体戦までは会わないんじゃなかったの?」


「コーキも、ねえ……。別にー、ちゃんと団体戦に参加する仲間が出来たか、心配で見に来てあげたんだよー。ちゃんと仲間が出来たみたいで良かったよー。……まあ、ガリッガリで弱そうだけどー」


 女がそう言うと、女と一緒に来た男女はクスクスと笑い出した。


 この状況。前世で一度見たことがある。

 いじめている人と、いじめられている人の構図だ。

 一人か二人の主犯格が中心になっていじめ、

 周りの取り巻きが、主犯格に乗って、何も考えずにいじめに加担する。

 何度か見たことがある、最悪の構図だ。

 状況から察するに、この女がマリーをいじめている主犯格だろう。


 しかし、主犯格はマリーの元友達だったはずだ。

 それが、ここまで……。

 酷いとしか言いようがない。


「……勘違いしてるみたいだけど、コーキは強いよ。コーキが本調子なら、あんたら全員、瞬殺できるレベルなんだからね」


「おいおい!この俺を瞬殺?バカなこと言ってんじゃねえよ!」


 そう言いながら、巨大な図体の男は俺の方へと近づいてきた。

 俺の目の前に来た男は、無理やり俺の肩を組んできて、顔を近づけてくる。

 ハッキリ言って、息が臭い。


「なあ、こんな坊主に俺が瞬殺できるわけないだろ!坊主もそう思うよな!」


「……え、あ、その……はい」


 一瞬言い返そうと思ったが、勢いに圧倒されて、はいと言ってしまった。

 何やってんだよ俺、ダサすぎる。

 弱いとかそう言うレベルの話じゃないぞ……。


「ハハッ!本人が認めちゃってんじゃん!まあ、マリーの話に乗るんだから、こんなもんよねー。どうせ、他の仲間も弱くて、しょーもない奴らなんでしょー!淫乱なマリーちゃんの事だから、全員色目使って集めた、きもい奴らなんでしょうし!」


「違う!そんなんじゃ……」


 マリーが反論しようとすると、

 女はマリーの髪を掴み、怖い目で睨んだ。

 そして、言い聞かせるように、ゆっくり話していく。


「いい?弱くて、気持ちの悪いマリーちゃんたちはわたしたちには敵わないのー。マリーちゃんも、その仲間も全員弱いんだから、いくら足掻いたって無駄ー。さっさと諦める方が身のためだよ。……そっちの男もさ、今のうちに出るのやめた方が良いよ?わたしたちは団体戦で、マリーちゃんとその仲間に、公開的に酷い事をするつもりなの。団体戦では、何をしてもいいルールだからね。……酷い目にあいたくなかったら、出ないことをお勧めするよー」


 そう言うと、女はマリーの髪を離し、

 取り巻きの男女の所へと歩き始めた。

 それを見た巨大な図体の男も、女と同じように歩き始める。


 ……シンプルにムカつく。

 何が敵わないだよ。

 何が足掻いたって無駄だよ。

 俺たちの事を何も知らないくせに、どうこう言ってくるんじゃねえよ。

 

 俺の友達も、マリーも強いんだ。

 しょうもなくないし、弱くない。

 最高の奴らなんだよ。


 それにだ。

 マリーの事を散々言いやがって。

 一体何様のつもりなんだよ。

 実際の所、マリーは悪いことはしてないはずだ。

 それなのに、勝手に怒り出し、勝手に嫌って、勝手にいじめて……。

 

 弱くて、気持ちが悪いのはお前らの方だろ。

 集団にならないとなんにも出来ない、クソ野郎どもが。

 一人じゃ何にもできない、弱者どもが。


 ……だが、そんなことを思っても、口には出せない。

 言ったら殴られるかもとか、そう言う自分への保身や、臆病さが勝ってしまう。

 本当なら全部こいつらに言ってやりたい。

 だが、あと一歩勇気が出ない。

 あの女を止めて、ぶん殴ってやりたいが、足が震えて動けない。


 ……はあ、やっぱり、駄目だな俺は。

 

 心の底でそう思いながら、少し顔を上げる。

 すると、そこにはマリーの姿があった。

 俺の目に映ったマリーは、泣いていた。


 それを見た瞬間。

 何かが吹っ切れたのか、考えるよりも先に、

 言葉が口を衝いて出ていた。


「……おい、待てよ」


「……んー。なんか言ったー?」


「……一つ言っておく。俺は確かに弱いよ。だけど……だけど、俺の友達とマリーさんは強い。お前らよりも全然強い。俺らがお前らに敵わない?……ふざけんなよ。それはこっちのセリフだ。お前らごときが、俺たちに……俺たちに勝てると思うなよ!俺たちがお前らを叩きのめしてやる!……そして、約束しろ。もしこの戦いで俺たちが勝ったら、マリーさん謝れ。分かったか、クソ野郎が!」


「……ハハッ!いいよ!もし私たちが負けたら、土下座でも何でもしてあげるよ。……でも、負けたらどうなるか……覚えといてよね」


 それだけ言うと、赤髪の女たちは帰っていった。


 ……やっちまったあああ!

 何故か分からないが、急にいろいろと吹っ切れて、

 それで、思ったこと全部言ってしまった。

 感情に任せて、何も考えずに、めちゃくちゃ早口で言ってしまった。


 確か、やばいこと言ってたよな。

 俺たちの方が強いとか、お前らとか、勝てると思うなとか。

 やばい事しか言ってないな。

 これじゃあ、宣戦布告の様なものだろ。

 


 ……まあ、仕方がないか。

 状況が状況だったし、どう考えたって悪いのはあいつらだしな。

 逆に、言ってよかったよな。

 

 だが、これで後に引けなくなった。

 もう勝つ以外の選択肢はなくなったな。

 頑張らないとだな。

 

 あ、そう言えばマリーは大丈夫だろうか。

 泣いていたし、あそこまで言われてたんだ、大丈夫じゃないわけないだろうが……。

 

 そう思いながら、マリーの方を向いてみると、

 マリーはボロボロに泣きながら、俺の方を見ていた。


「コーキ……ありがど……あだしのだめに、あんなに言ってぐれて!あたし……怖くって。言い返そうと思ったけど、何も言い返せなくて、それで、それで……」


「え、いや、お礼なんて良いよ。俺が言いたくて言っただけだしさ。いや、その、もう大丈夫だから、泣くのやめてさ」


「……うん。本当にありがと……。あ、そうだ。これあげるよ」


 そう言って、マリーはバックの中から何かを取り出し、渡してきた。

 マリーが渡してきた物。

 それは……何の変哲もないおにぎりだった。


「……おにぎり?」


「うん。食べてみて」


 何で今おにぎり?

 今凄く感動的な状況だったと思うんだが……何でおにぎり?

 そう思いながら、おにぎりに口をつけてみる。


 一口食べると、すぐに体に異変が起こった。

 心の底から温まっていき、自然と体が軽くなっていく。

 さっきまでの疲れがウソみたいに消え去った。

 一体どういうことだ?


「……つ、疲れが取れて、体が軽くなった。……一体、どういうことなの?」


「言ったでしょー。あたしの力はさ、凄い料理を早く作れる力だって。これも力の一環でね。そのおにぎりには、心があったまって、体が軽くなるように愛情を込めたんだ!その効果が働いたんだよ!……まあ、効果が出るのは食べてる間だけで、食べ終えたら次第に効果は消えていくんだけどね。疲れてるみたいだったし、必要かなーって思って。あと、さっき言い返してくれたお礼にさ」


 凄い料理って、こんな特殊な料理を作れるのか。

 愛情を込めて作ったって、そうなるように作ったってことだろうか。

 もし、別の事を祈って作ったら、別の効果が発現したりするのだろうか。

 まあ、食べてる間だけしか効果が出ないのなら、そこまで意味ないか。

 

 そう思った直後だった。

 俺の頭に、一つの考えが浮かんだ。


「……ねえ、マリーさん。ちょっと試したいことがあるんだけどいいかな。……もしかしたら、面白いことが出来るかもしれないんだけど…………」


「え、なになに?ちょー気になる!」


 俺は考えをマリーに伝え、考えを試すため、マリーの家へと向かった。

 その後、様々な実験をしたのち、俺は家へと帰った。


 それから、怒涛の日々が始まった。

 影で上手く鎧を作れるようになるための特訓。

 体力や、筋力を身に着けるための特訓。

 戦闘により慣れるための特訓。

 

 それに加えて、酒場での働きや、通常の授業。

 さらに、マリーの力に関する実験など、

 様々な事をしていく内に、時間は過ぎて行った。


 そして、晴天の今日。

 ついに、団体戦がある、祭りの日が来たのだった。

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