想像力は無限大なのかもしれない。①
「それでは、団体戦に向けて、作戦会議をしたいと思います!」
カンナが大きな声で、そう宣言した。
マリーとゲッケと出会った翌日。
俺たちは授業をしっかりこなしたのち、
学園内にある中庭のようなところに集まっていた。
その目的は、それぞれの力を把握するため。
そして、団体戦に向けて、作戦を立てるためだ。
団体戦は7人と、大人数のチームで行われる。
いくら個々が強くても、連携が取れていなければ、負けるのは目に見えてる。
そのため、あらかじめ連携を考えておいたりと、
作戦を考えておくのが大切らしい。
「さて、まずはうちの力から見せて行こうか!」
「あー、ちょいまち。実はあたしらは、みんながどんな力を持ってるか知ってんだよね」
「え、そうなの!?」
「そ、アリムはこの不思議な時期の転入生、他のみんなは最初のダンジョン授業で、いきなりルールを破った問題児ってことで、みんな有名人なんだよ?それもあって、みんなの力とかは広まってるんだよ」
「問題児……」
問題児か。
まあ、確かに傍から見たらそうだな。
最初のダンジョン攻略で、禁止されたエリアに入り、
最終的に先生に助けられ、怒鳴り散らされる。
どっからどう見ても、問題児だ。
しかし、隣のクラスであるマリーたちにも伝わっているとは。
人が少ない田舎の集落並みに、噂が広がるの早すぎるだろ。
これからは問題を起こさないように気を付けないとかもな。
「なら、うちらの説明は良いか!それじゃあ、マリーたちの力を教えてほしいかな!って言っても、マリーの力も昨日大体わかったし、とりあえずはゲッケだけで良いかな」
「それじゃ、ワイの力を見せたろか。アリウムはん、ちょっとその缶貸してくれ」
そう言って、ついさっきまでアリウムが飲んでいたジュースの空き缶を持つと、ゲッケは空き缶を軽く潰した。
そして、目を瞑ったかと思うと、ゲッケの手を鼠色のオーラが覆い始めた。
それから数秒後、ゲッケが何かを呟くと、空き缶は急激に変化を始める。
潰された空き缶は、大きな音を立てながら変形していき、
物の数秒で、潰れる前の姿へと変化した。
「え、こ、これどうやったんですか?」
「ワイの力を使ったんや。ワイの力は物の状態を数秒前に戻す力。普通に考えりゃ弱いが、使い方によれば、中々良い力やで」
一見何の役にも立たなそうだが、上手く使えば超強そうだな。
例えば、敵から逃げている時。
他の仲間に壁を破壊してもらい、破壊された壁を元に戻したりすれば、それだけで敵から逃げきることが出来る。
他にも、あらかじめ壊しておいた物の上に敵をおびき寄せ、敵がその上に立った瞬間、物を元に戻して、その物に敵をはめるとか、いろいろなことが出来そうだ。
面白そうな力だな。
そう思っていると、ユリがゆっくりと口を開いた。
「とりあえず、みんなの力を大まかにまとめてみよっか。えーと、力に関して言えば、私とカンナ、それにコウキくんとアリウムくんが、前に出ての戦闘向き。マリーとゲッケくんがアシスト向きで、グリシアさんは弓だし両方いける感じかな。あ、身体能力で言えば、獣人のマリーも十分戦えるね」
「うん、私は一対一でも戦えるし、アシストも出来るよ」
「となると、戦闘向き4人、アシスト向き2人、両方いけるのが1人か。実は見てほしいものがあるんだけど……」
そう言って、ユリはバックから一冊のノートを取り出した。
ユリが開いたページには、過去の団体戦の情報が大量に書かれていた。
「え、これユリが書いたの!凄すぎるって!それぞれの団体戦のポイントが、綺麗にまとめられてる……。あたしじゃ絶対できないよ!」
「ノートにまとめたりするのが好きだからさ、試しに少しまとめてみたら、止まらなくなっちゃってね。それに、やるからには絶対勝ちたいでしょ!……それで、皆に見てほしいのはここの部分」
ユリが指さしたほうを見てみると、そこにはここ数回の団体戦の特徴が書かれていた。
昨年はシンプルな戦いで、まずチームから二人か三人で一組を作り、合計三組を作り出す。
その後、それぞれのチームが一組を選出し、順番に戦ってもらい、
最終的に勝利数が多いチームの勝利。
一昨年はチーム対抗の迷路。
チームを三組に分け、それぞれ別の迷路に入り、
それぞれの迷路で、先に脱出したチームが多いチームが勝利。
他にもいろいろ書いてあるが、
全てに共通しているのはチームを三組に分けるという点だ。
「これを見て分かる通り、チームをあらかじめ三組に分けておくべきだと思うの。みんなはどう思う?」
「ユリに賛成だな。傾向から考えるに、三組に分かれる事になるに、決まってるぜ」
「うん、うちも賛成!というか、みんな賛成でしょ!」
「よし、それならチーム分けなんだけど、さっきの戦闘向けとアシスト向けの話と、それぞれのバランスを考えて、私とカンナ。アリウムくんとゲッケくんとグリシアさん。コウキくんとマリーってのはどうかな?」
なるほど。
恐らくこの中では一番の古くからの友達であるユリとカンナ。
二人は連携がしっかりとれそうだし、実力的にも問題はない。
アリウムとゲッケとグリシアは、近距離戦闘が強いアリウムを、ゲッケとグリシアが上手くアシストし、場合によってはグリシアが直接戦うような感じだろうか。
バランスが良くて、実力的にも問題はない。
そして、俺とマリーは……問題しかないな。
「えっと、俺とマリーさんの所に、誰かひとり入れられたりしないかな?」
「もしかして、何か問題でもあった?」
「いや、その、マリーさんが獣人の身体能力を駆使して、戦えるとしても、流石に俺と二人じゃ厳しいんじゃないかな。……ハッキリ言って、俺は弱いしさ。確実に足を引っ張ることになると思うんだ。そ、そうなると、流石にもう一人必要かも……」
俺がそう言うと、みんな何とも言えない顔をして俺を見てきた。
やはり、意見すべきじゃなかったのかもしれない。
いや、これで話さずに、俺のせいで本番負ける方が大変だ。
そう考えると、今意見するのは正しかったはずだ。
そう信じよう。
というか、そうであってくれ。
そう自分に言い聞かせていると、
少し黙っていたユリが口を開き、意味の分からない言葉を放った。
「いや、コウキくんは十分強いでしょ」
「……え?いや、俺は弱いですよ?」
「……おい、コウキ。お前と一緒にいて、分かったことがある。お前は自分を過小評価しすぎだ。お前はちゃんと強い。俺が保証する!……だから、ちゃんと自分に自信を持てよ。お前はやるやつなんだからさ」
……確かに、アリウムの言う通り、俺は自分を過小評価しているのかもしれない。
だが、それでも俺は弱いと言いきれる。
実力テストでは最下位だったし、モンスター一体倒すのに、中々の時間を要する。
ムクゲとの戦いでは、体中を殴られ、ボコボコにされた。
最終的に勝てたのは、運が良かったからだ。
俺は変わろうと息巻いてはいるが、今はまだ変われていない、ただの弱者だ。
今回ばかりは、ユリもアリウムも見当違い過ぎる。
「……そうだな。とりあえず、今回は俺たちを信じて、この組み分けで行ってみないか?大丈夫、お前なら出来るさ!俺を、俺たちを信じてくれ!な!」
「…………分かった。アリウムたちを信じるよ」
「お、ありがとな!大丈夫だよ、お前は強いからな!」
「……良く分かんないけど、問題が解決したならよし!それじゃあ、次は連携の練習でもしようか!」
そう言って、カンナは準備に取り掛かった。
……ついつい信じると言ってしまった。
少しでも押されると、すぐに同意してしまう。
……しかし、やることになったからには頑張らないとだよな。
団体戦。何としても、足を引っ張らないように、しないとだな。




