クラスメイトと買い物をするという事は、実質陽キャになったと言っても過言ではない。②
近づいてみると、店の外観が良く分かった。
全体的にボロボロで、剣や盾が適当に掛けられている。
建物自体は古そうで、全てが木で作られている。
何というか、店というよりかは物置き小屋の様に思える。
そんなことを思っていると、何も考えていなさそうなカンナが、大声を発しながら、店の扉を開けた。
「すみません、こんにちは!」
仕方なくカンナに続いて店に入ると、そこには一人の男が新聞を読みながら座っていた。
見た目から察するに、30代後半くらいだろうか。
丸刈りの赤髪で、目つきは鋭い。
少し怖い見た目だ。
俺たちが男の方を見ていると、男は顔を俺たちへ向け、ゆっくりと口を開いた。
「……いらっしゃい。店主の店へようこそ。俺はこの店の店主だ。まあ、好きに見て行ってくれ」
そう言うと、男は新聞に目を戻した。
店と言っていたし、どうやらちゃんと店の様だ。
辺りを見た感じ、指輪や剣やマントなど、様々な物が置いてある。
所謂何でも屋なのだろうか。
「店主さんもああ言ってるし、試しにいろいろ見てみようよ!……あ、これなんか面白そうだよ!興奮の指輪だって!」
カンナがそう言うと、
店主は再び顔を俺たちへ向け、今度は早口で話し始めた。
「そいつはお嬢ちゃんには向いてないと思うぞ。その指輪は付けた瞬間、装着者に周囲の視線が強くなったように感じさせる指輪だ。そう言うのが好きな奴からしたら、最高の物だろうが、あまりに視線を強く感じすぎるため、普通の人は耐えきれず、気を失ってしまうんだ。恐らくお嬢ちゃんじゃ、視線に耐え切れず気を失うと思うぞ」
そう言うと、店主は再び新聞紙に目を戻した。
凄い早口だった。
いきなりの出来事に、流石に動揺している。
カンナが指輪を見るなり、指輪の特徴、メリットとデメリットを早口で話し始めた。
寡黙な人かと思ったが、見た目に反して優しい、というか道具に対して思いやりのある人なのかもしれない。
店主の話を聞き、少しの間黙っていたカンナは、考えがまとまったのか、大きく口を開いて話し始めた。
「なんですか、この指輪。最高じゃないですか!周りの視線が強くなるって……最高に興奮するじゃないですか!ドMからしたら、最高過ぎる一品じゃないですか!この指輪買います!というか買わせてください!」
「え、お、おう。お嬢ちゃんが良いなら良いよ」
若干カンナの勢いに押されながら、店主は会計を始めた。
まあ、ドMのカンナからしたら、買わない手はないか。
しかし、不思議な物ばかりだな。
これだけ不思議な物があるなら、俺も何か良い物が見つかりそうだ。
そう思い、店内をゆっくりと見て回る。
呪いの指輪に、破壊の鎖。
滅亡のお札なんかもある。
全体的に物騒な名前の物ばっかりだな。
だが、中々良い感じの物は……ん?
その時、一つのベルトが俺の目に留まった。
茶色い革の部分に、銀色のバックル。
一見普通に見えるが、バックルの部分には小さな宝石が三つ埋め込まれている。
これは一体?
「これは師へのベルトと言ってな。俺の最高傑作の一つだ。埋め込まれた宝石はそれぞれ特殊な効果を持っていてな。それぞれ、装着者の体を軽くする効果、装着者の身体能力を上げる効果、装着者に生呪の力をより扱いやすくさせる効果。こんな効果を持ってるんだ。まあ、最後の効果は俺の技術不足のせいで、ないようなもんだがな」
「そ、そうなんですか。な、なんか良いですね」
店主に急に話しかけられて、少しびっくりしてしまった。
しかし、師へのベルトか。
最後の効果は使えないっぽいけど、体を軽くして、身体能力が増すだけで、普通に良い物だ。
自分の中で、身体能力のなさは大きな課題の一つとなっている。
昨日ロメリア先生も言われたし、どうせなら買っておくか。
「あ、あの。ち、ちなみにこれって、いくらですか?」
「それは少し高いぞ。1万モリアだ」
「……え、1万…………」
モリアはこの世界の金の単位だ。
1モリアは1円と考えて大差ないだろう。
つまり、1万モリアは1万円。
そして、俺の今の手持ちはお姉さんの優しさで、お小遣いとしてもらった4000モリアのみ。
物によれば学園の生徒証明書を見せて無料で買い物できるらしいが、この店がその制度に対応しているとは到底思えない。
畜生、こうなったら……。
「それなら、大丈夫です。ほ、他のを見ます」
諦めるしかないよな。
お金がないなら、買えないしな。
中々良さそうだったんだけどな。
残念だ。
そう思い、他の物を見ようとすると、店主が止めてきた。
「ちょっと待て。……お前は今いくら持ってる?」
「え、え、えーと、4000モリアです」
「……はあ。それなら1000モリアで良いよ。1000モリアで師へのベルトを売ってやる」
「……え、い、良いんですか?」
「ああ。この店は立地が悪いせいで、人がそこまで寄ってこないんだ。どうせ、お前さんが買わなかったら、今後もここで誰にも使われないだろうからな。それなら、お前さんに買ってもらって、使ってもらった方が良い」
「あ、あ、ありがとうございます!」
「……ただ、このベルトに頼り過ぎずに、しっかりと自分を鍛え続けろよ?」
「はい!」
そう答え、俺は師へのベルトを1000モリアで買った。
凄く良い店主さんだった。
本当は凄く高い物を、半額以下に負けてくれるとは。
俺は関わる人には恵まれているのかもな。
俺が買い物を終える頃には、他のみんなも買物を終えていた。
カンナはさっきの指輪。
グリシアは謎の石。
ユリは新しい剣、アリウムは筋トレ道具を買っていた。
みんな良い物を買えたようだ。
見かけによらないというが、本当にその通りだった。
暗くて、ろくな店じゃないと思っていた店で、まさかこんな買い物が出来るとはな。
俺たちは店主にしっかりとあいさつし、また来ると約束したのち店を出て行った。
店を出たころには夕方に差し掛かっていて、今日はこの辺で解散することにした。
「それじゃあ、俺はこっちだから行くな!」
「うちもこっちだから!じゃあね、ユリにコウキにグリっち!」
「うん、じゃあね!」
そして、俺たちとアリウムとカンナは別れを告げた。
俺とユリとグリシアは帰り道が同じこともあり、一緒に話しながら帰っていく。
「いやー、楽しかったね!コウキくんとグリシアさんはどうだった?」
「も、もちろん楽しかったよ。みんなと遊べて楽しかったし、良い買い物も出来た。……本当に最高だったよ」
「なら良かったね!グリシアさんは?」
「私も楽しかったです。経験した事のない事ばっかりだったし、みんなと遊べて楽しかったです。来て良かったです」
「それなら良かった!それと、前に言ったけど、敬語じゃなくて良いから!」
「まあ、善処します」
多分、カンナはグリシアに気を使って今日誘ったのだろう。
ダンジョンの一件で、グリシアは大分落ち込んでいた。
カンナはグリシアを元気づけようと思っていたんだろうな。
恐らくユリも似たような理由で、積極的にグリシアに話しかけ、仲良くなっていた。
そのお陰か、少しずつグリシアが笑っている所を見るようになっていた気がする。
これから俺ももっと、仲良くなれると良いな。
そんなことを思っていると、いつの間にか酒場へ着いた。
「それじゃあ、私たちはここだから。またね、グリシアさん!」
「はい。ユリさん、また明日。それにコウキも、また明日。」
「うん、また明日」
そう話して、俺たちはグリシアと別れた。
その後、俺たちも部屋の前で別れ、それぞれの部屋へと帰った。
それから俺は、明日の準備をしたのち、ゆっくりと眠りについたのだった。




