コミュ症が美少女とまともに話すのは、テストで全教科100点を取るくらい難しい。①
元気よく街へ向かっている途中。
ある事に気づいて、俺は足を止めた。
よく見たら街の前に並んでいる人たちは、門番のような人に何かを確認されているように見える。
もしかして、街に入るには何か証明書のような物がいるのか?
ゲームや、小説でも街に入るために、何か物が必要な場合があった。
だとしたら、俺は街に入ることができない。どうするか。
数秒考えたのち、俺は答えを出した。
「……とりま行ってみよう」
それだけ呟き、俺は再度町へ向かって進みだす。
もしかしたら証明書とか必要ないかもしれないからな。
というか、考えるの面倒くさいしな。行動だ、行動。
そして、門の前の列に並ぶが、ここでまた一つ問題が発生した。
このままいけば、間違えなく門番と話さなくてはならないということである。
……まずいな。
女騎士と話した時よりは楽かもしれないが、コミュ症からしたら知らない人と真正面から話すのは難易度が高すぎる。
野球初心者の人が、プロから一球目でホームランを打つ程の難易度の高さだ。
普通に話そうとしたら、緊張とか焦りとかで、ごもちゃったりしてまともに話せるとは思えない。
かと言って、町に入らないと何も始まらない。
とりあえず一度列から外れて、考えるか。
しかし、そう思った頃にはもう遅い。
「さて、次の方どうぞ」
最悪だ。列から外れる前に順番が来てしまった。
しかも、門番は銀色のがっしりした鎧を着ていて、目つきの怖い中年男性。
この目つき、学校で一人はいた、理不尽に怒鳴り散らかしてくる怖い先生の目つきだ。
この目を見るといつも以上に話せなくなり、考えもまとまらなくなる。
そして、俺の苦手な人間の目でもある。
「……あの、通行証明書はお持ちですか?」
「え……あ、その……」
「お持ちではないんですか?」
「いや……その…………」
それだけ、呟いたところで、限界が来た。
焦りや緊張のせいで、俺は完全に黙り込んでしまった。
考える限り最悪の状況。
町に入るためには証明書が必要で、もちろん俺はそんなものを持っていない。
さらに、想像していた以上に、怖くてか緊張してか分からないが、言葉が発せられない。
……これ無理だな。町に入るのは諦めるしかなさそうだ。
証明書を持っていないし、俺の事を説明しようにも、言葉が上手く発せない。
もう諦めるから、見逃してくれ。
早くこの無音で、地獄の様な時間よ、終わってくれ。
そう願い始めた時。
「……分かりました、ちょっとついて来てください」
それだけ言って、門番は部屋へと入っていった。
ついて来てって……。
これついて行って大丈夫な奴か?部屋に入った瞬間、怪しいという理由でリンチされたりしないよな。
もしくは問答無用で警察とかに突き出されたりしないよな。
どうするべきなんだろうか。ついて行くべきか、逃げるべきか。
本当なら、現実逃避をしながら、この場から逃げ出したい。
しかし、あんなに強そうな門番から、この草原で逃げられるとは思えない。
数秒考えたのち、仕方なく覚悟を決め、門番が入った部屋へと入っていく。
部屋は思っていたよりかは広く、良く分からない紙や物で満たされている。
俺の部屋と同じくらい汚い部屋だ。
そんなことを思っていると、山のように重なった紙の中から一枚の紙を取り出し、門番がこっちに近づいてきた。
「お前さん、名前は?」
「……こ、光輝です」
「コウキだな」
そう言いながら、紙に何かを書き込んでいく。
間違いない、これから事情聴取のようなものが始まるのだろう。
おそらく危険な人物と判断されたら、問答無用で警察に突き出されるんだ。
それは何とか避けなくてはならない。
「さて、コウキ。お前はどこから来た?」
「え……えっと…………日本です」
「聞いたことのない場所だな。それじゃあ街に来た目的は?」
「え……えー…………」
「言えないか。分かった」
それだけ言って、さらに紙へ記入していく。
……終わった。完全に終わった。
別世界から来たなんてどうせ信じてもらえないだろうし、日本なんて嘘ついてるとしか思われない。
街に来た目的だって、そこに街があったからだし、大した理由もない。
門番から見たら、どう考えても怪しい奴だ。
警察に突き出されて、第二の人生即積みに決まっている。
「よし、これでいいな。……最近はいろいろと事情を持っている奴も多いからな、詳しいことは聞かない。これは特別在許可証といってな、数日間だけ街にいることを許可してくれる。これをやるから、期間が切れるまでに通行証明証を手に入れるんだな」
そんなことを言うと、門番はその紙を渡してきた。
「え、い、いいんですか?」
「……俺の気が変わらないうちにさっさと裏口から町に行け。少しトンネルが続いているが、すぐに街に入れる。その後の事は俺は知らないからな」
「門番さん……あ、ありがとうございます」
そう言うと、門番は軽く手を振り、部屋の奥へと消えていった。
それを見送って、言われたように裏口から部屋を出ていく。
……めっちゃいい人だった。
人は見かけによらないと言うけど、全くもってその通りだった。
まさかあんな見た目をしている人が、俺の事を助けてくれるなんて思ってもみなかったな。
しかし、優しい門番のお陰でとりあえず街には入ることができたけど、どうするか。
門番の話では数日間しか効果がないらしいし、それまでに通行証明書を手に入れないといけないらしいけど、どこで手に入るんだろうか。
やっぱり市役所的な場所があって、そこで手に入れたりするのかな。
それともゲームとかでよくあるギルドとかで手に入るのかな。
まだ、手に入れ方は分からないけど、早いうちに手に入れた方がいいだろうし、最初の目標は証明書入手だな。
「ん……明かりだ」
いろいろなことを考えているうちに、トンネルの出口へと着いたようだ。
始めてみる街の風景に期待と不安を膨らませながら、出口へ向かってゆっくりと進んで行く。
そしてついに、異世界に来て初めて、街を目にした。
「す、すげえ……」
街中はいろんな服装をした人であふれていて、楽しそうな声で賑わっている。
いたるところにレンガのような素材でできた家が並んでいて、所々に出店もある。
前に本で見たことがある、中世のヨーロッパのような街並みをしている。
しかし、前世で見たヨーロッパとは明らかに違うところがある。
空を飛んでいる人や、自分の体より何倍も大きな荷物を片手で運んでいる人など、普通じゃありえない事をしている人が何人もいるということだ。
とてつもない光景を目にして、さらに改めて実感した。
「本当に異世界に来たんだ……」
そうだ、ここから本当に始まるんだ。俺の新しい人生が!
そして、再度歩みを進める。
よし、証明書ゲットに向けて頑張るか。
そう思った瞬間。
突如横から大きな衝撃が加わり、俺は大きく吹き飛ばされた。
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