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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
37/120

コミュ症に、接客アルバイトは難しい。①

 授業を終え、教室へ戻ったのち、

 俺とユリはアリウムたちに別れを告げ、酒場へと足早に帰っていた。


 俺たちが足早で帰っていたのには理由がある。

 今日は、俺たちが酒場を手伝う日なのだ。

 俺は酒場に泊まる許可を貰う際、

 酒場の手伝いをする代わりに、宿代を払わなくていいという契約を交わした。

 今日はその約束に乗っ取って、初めて酒場を手伝うというわけだ。


 しかし、何というか心配だ。

 前世では俺は一度もアルバイトをしたことがなかった。

 シンプルにめんどくさかったというのもあるが、

 一番の理由は人とまともに話すことが出来なかったからだ。


 前世の友達が言っていたのだが、アルバイトでは、人とのコミュニケーションが大切になってくるらしい。

 そのため、コミュ症過ぎた俺には、アルバイト自体が超難関過ぎたんだ。

 全く話せないんじゃ、コミュニケーションも何もないからな。

 

 そんな俺が初めてのアルバイト。

 しかも、酒場という事は間違いなく接客業。

 不安でしかない。

 本当に俺なんかが、手伝って大丈夫なのだろうか。

 何か問題を起こさなければいいが……。


 というか、シンプルにアルバイトをしたくないな。

 何か手違いで、今日は中止になったりしないかな。

 そんな風に祈っていると、ついに酒場に着いてしまった。

 俺とユリは、大きな声で帰ったことを知らせながら、酒場へと入る。


「お、お帰り、ユリちゃんに光輝!待ってたわよ!今日は二人に酒場を手伝ってもらう日だからね。二人とも、準備は良い?」


『はい!』


「よろしい!それじゃあ、ユリはいつもの服に着替えてきて!……えーと、コウキはこれ!」


 そう言いながら、お姉さんはキッチンの方から、一枚のエプロンを取って来た。

 そのエプロンには、大きな文字で「お姉さんの酒場」と書かれている。


「……えーと、これは?」


「この酒場のエプロンだよ。ここで働く人には、このエプロンを付けてもらうようにしてるのよ。良いから付けてみな」


 お姉さんに言われるがままに、試しにエプロンを身に着けてみる。

 エプロンは俺のサイズに合わせてあるのか、ピッタリ合って、着心地が良い。


「うん、サイズはあってるみたいだね。似合ってるよ!」


「あ、ありがとうございます……」


「あ、コウキくんも、エプロン貰ったんだ。似合ってるよ!」


 声のした方を見ると、エプロンを身に着けたユリが立っていた。

 話している間に、準備を終えて、戻ってきていたようだ。

 ユリが戻ってきたのを確認したお姉さんは、急いで指示を出し始めた。


「ユリちゃんも来たし、それじゃあ、二人に指示を出します!開店まで時間がないから、急いで準備するよ!……とりあえず、光輝には開店前準備として、肉の下準備をしてもらいます!光輝は今日が初めてだから、ユリちゃんは光輝に色々教えてあげながら、準備をするように!二人ともわかった?」


『はい!』


「よし、よろしい!それじゃあ、よろしくね!」


 そう言うと、お姉さんは他の準備をしに、二階へと上がっていった。

 俺はユリの指示を受けて、キッチンへと向かって行く。


 キッチンは前世の家に合ったキッチンとは全く違った。

 前世の家に合ったコンロや冷蔵庫、電子レンジの様な物は何一つない。

 その代わりに、レンガのような素材で出来た、コンロの代わりの様な何かや、

 暖炉に似ているが、暖炉ではない何か。

 他にも、謎の綺麗な岩や、謎の立方体など、見たことがない物も置かれていた。

 何というか……なんか凄い。


 俺がキッチンの中を見て回っていると、

 どこから取って来たのか、ユリが鶏肉の様な肉を、まな板の上に置いた。


「それじゃあ、これから料理の下拵えをします!準備は良い?」


「え、は、うん」


「よし、まず、私が実演しながら説明するから、それを見てやってみよう!」


 そう言うと、ユリは肉の四分の一程度を切り、別のまな板の上へ移動した。

 そして、慣れた手つきで、包丁を使い、

 肉を素早く切りながら、説明を始めた。

 

「まず、肉を切る所から!肉は一口サイズで、食べやすい大きさに、こんな感じに切ってね。さ、コウキくんもやってみて!」


 ユリから渡された包丁を手に取り、肉を抑える。

 そして、力を入れて、一気に包丁を振り下ろしてみる。

 包丁は肉に食い込み、少しずつ肉を切っていく。


 が、途中で止まり、全然切ることが出来なくなった。

 力を込めて押し込むが、全く切れない。

 一体どうなってんだ、これ?


「あー、皮の部分は、料理してないと切りにくいかもね。じゃあ、今日は私が切るの中心にやるよ。練習すれば、上手く切れるようになるから、気にしないで良いよ!」


「……はい」


 気を使わせてしまった……。

 悪気はなかったんだがな。

 こういうことがあるからアルバイトは嫌いだ。


 しかし、料理がここまで難しいとはな。

 こんなことになるなら、前世でもっと練習しておくんだった。

 そんな事を思っていると、今度は謎の液体と、白い粉が入った袋をユリが持ってきた。


「よし、次にやらなきゃいけないのは、今切った肉をこの不思議な液体に浸ける事!数秒間付けたら、この白い粉をふんだんに付ける!とりあえずこれで下準備は終わり!コウキくんもやってみて!」


 言われた通りに、ユリの動きを繰り返しやってみる。

 液体に浸けて、粉を付けるだけ。

 多少難しいが、包丁で切るのに比べれば、まだ簡単だ。

 

「初めてなのに上手だよ!さすがコウキくん!」


「あ、ありがとう。……だけど、この肉はどんな料理に使うの?」


「そうだねー、初めてだし、一応見せておくよ!」


 そう言うと、ユリは肉を一つ持ち、

 油の様な物が入った、四角い立方体の中に、ゆっくりと入れた。

 それから数秒後、引き出しから箸を取り出すと、ユリは肉を慎重に取り出し、皿へとよそった。


 その肉は、茶色い何かに包まれており、凄く良い香りを放っている。

 途中から何となく思っていたが、これはもしかして……。


「これはカラアゲって言ってね。凄くおいしい肉料理なんだよ!」


「……やっぱりそうなんだ」


 うん、どっからどう見ても唐揚げだ。

 まさか、この世界に唐揚げが存在するとは。

 この世界に来てから、様々な料理は見てきた。

 前世の料理に似ている物から、見たことがない料理まで、本当に様々だった。


 しかし、ここまで前世の物と似ている料理は初めてだ。

 味もそっくりで、凄くおいしい。

 良く分からないが、謎の感動がある。


「……さて、それじゃあ、下拵えの続きしよっか!私が肉を切るから、コウキくんは液体に浸けるのと白い粉を付けるのをよろしくね!」


「う、うん。分かったよ」


「よし、頑張ろうか!」


 そう話して、俺たちは下拵えと戻った。

 ユリの素早い手さばきもあり、下拵えは順調に進んで行った。

 そして、数十分で全ての下拵えを終えることが出来た。


 その数分後だった。

 お姉さんの口から絶望の言葉が飛び出したのは。


「下拵えが終わったなら、光輝はこっちに来てくれる?光輝にはホールをお願いしたいと思うからさ」


 ホールって……マジすか…………。 



アルバイトは難しい!

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