無能力者だろうが、諦めなければ強くなれるらしい。③
「む、次はコウキ生徒か」
「は、はい。よろしくお願いします……」
「それじゃあ……かかって来い!」
ロメリア先生が構えたのを見て、俺も戦闘態勢に入る。
さて、どうするか。
運悪く、今近くに自分の影以外の影は存在しない。
こうなると、自分の影だけで戦わないといけないわけだが、
自分だけの影で少しでもダメージを与えられるだろうか。
ただでさえ、みんなの前で戦うという事で、
緊張と焦りで手足が震えて、全く本調子を出すことが出来ない。
そんな状態で、影も少ししか使えないとなると、相当きつい。
とりあえず、安定のシャドウハンマーで潰すか?
いや、いとも簡単に、片手で止められそうだ。
それじゃあ、剣を使って、素早く動きながら、先生の隙を狙うか?
いや、アリウムのあの速さに付いてこれてたんだ。
いくら俺が全力を出そうと、簡単に付いて来られるに決まってる。
……まじで、どうしよう。
作戦が決まらず、俺が悩んでいると、痺れを切らしたのか、ロメリア先生がせかしてきた。
「……いつまで考え込んでいるつもりだ!さっさと、かかって来い!」
「……わ、分かりました。…………い、行きます。影!」
そう言い、自分の影を変化させていく。
影はいつもの流れで変化していき、大きめのハンマーへと、
シャドウハンマーへと姿を変えた。
俺はシャドウハンマーをしっかりと握りしめ、先生へと向かって行く。
そして、ある程度近づいた所で、シャドウハンマーを先生の頭上へと振り下ろした。
シャドウハンマーは真っ直ぐに振り下ろされ、先生の頭に直撃した。
しかし、先生は一切動じる事はない。
「……くそっ…………影!」
俺は数歩離れ、もう一度影を変化させる。
次に変化させたのはノコギリ。
ムクゲとの戦いで初めて変化させた、ムクゲを倒すのに最も貢献した武器だ。
そのノコギリを使い、先生へと斬りこむ。
ノコギリの刃が当たっているのにも関わらず、
やはり先生は全く動じていない。
だが、これは想定内。
ノコギリの真価はここからだ。
体中に力を入れ、俺は全力でノコギリを引く。
が、それでも先生の体には傷一つついていない。
……まじかよ。
俺が作った事のある武器の中で、最も火力のあるシャドウハンマーとノコギリ。
この二つで、傷一つつけられないとなると、もうどうしようもないぞ。
全力を出した上で、全くダメージが入らなかったことに動揺していると、
ずっと何もしてこなかった先生が、ゆっくりと動き始めた。
先生は少し歩き、俺に近づくと、右手のパンチを、俺の腹へと繰り出した。
パンチを喰らった俺は、あまりの激痛に、その場に倒れこんでしまった。
「……そうだな、影で作り出す武器は個性的かつ強力で良いと思う。しかし、そもそもの身体能力が低すぎる!特に速さと、防御力。これを強化するように!分かったか!」
「……は、はひ…………」
そう答えて、フラフラになりながらも、俺は元いた位置へと戻っていった。
俺の攻撃が全く通用しなかった。
心の奥底では、ダンジョンでの戦いと、ムクゲとの戦いで勝てたことから、俺に自身強くなっているんじゃないかと思っていた。
だが、全然まだまだなようだ。
冒険者になるからには、もっと力をつけないとだな。
確か、速さと防御力か。
どうするかな……。
「おつかれ、コウキ!コウキもやっぱり、きつかったかー」
「う、うん。やっぱり強すぎだよ。ロメリア先生」
「だなー。俺も戦ってみて思ったけど、あの先生化け物だわ」
俺たちが先生の強さについて話していると、
カンナが後ろから話しに入って来た。
「二人とも、こっぴどくやられたみたいだねー」
「あ、うん。……やっぱり歯が立たなかったよ」
「……よし、それじゃあ、二人の敵はうちが取ることにしよう!ちょっと、行ってくる!」
そんな事を言って、カンナは先生の所へと走っていった。
最初はカンナの力と速さで、もしかしたら一撃位喰らわせられるんじゃないかと思えた。
だが、その後いとも簡単に一撃を貰い、カンナは即敗北を期した。
その後も、ユリやグリシアなどのクラスメイトが先生に挑んで行った。
が、皆いとも簡単に倒されてしまった。
全員が挑み終えたところで、先生は話を始めた。
「……これで、全員だな。今回の授業で、それぞれに足りない事や、弱点が分かっただろう!次の授業からは、分かった弱点の克服及び、新たな技の開発を行う!次の授業のために、体をしっかりと休めておくように!……それでは、これで今日の授業を終える。解散!」
先生の話が終わると、クラスメイト達はそれぞれ戦闘場から帰っていく。
俺たちもその流れに乗り、教室へと歩き出す。
「あ、そう言えばコウキこの後か、明日空いてたりしないか?」
「え、あ、この後は酒場の手伝いがあっていけないけど、あ、明日なら空いてるよ」
「それじゃあさ、明日一日付き合ってくんない?実は入学許可を貰ったのが急でさ、まだ学園に必要な物とか買えてないんだよ。もし良ければ、明日一緒に買い物に行かないか?」
「え、お、俺で良ければ、もちろん良いよ」
「あ、それなら、うちとユリも一緒に言って良い?」
俺とアリウムが話していると、
その話を聞いていたのか、カンナが話に入って来た。
「お、別にいいぞ!人数は多い方が楽しいからな」
「やったー!ありがとー!……あ、人数が多くても良いなら、もう一人誘いたいんだけど……良い?」
「もちろん!誰を誘うんだ?」
「それは、明日のお楽しみだよ!いやー、明日が楽しみになったな!」
ふむ、つまりは五人でのお買い物か。
なんか……なんか青春っぽくて良いな!
前世では、友達と遊ぶことはあっても、お買い物なんてしたことはなかった。
家で一緒にゲームをしたり、一緒に本を買いに行ったりする程度だった。
それが、大勢の友達と一緒にお買い物か。
しかも、女子が二人もいる。
以前、ユリと二人で出かけた時は、緊張が超絶膨れ上がったせいで、よりまともに話せていなかった一面もあった。
今度は、緊張のし過ぎで失敗しないように、十分準備をしておこう。
大勢の友達とお買い物……。
いやー、今から楽しみだ!
流れで決まった、友達大勢でのお買い物。
俺は新たなイベントに胸を膨らませるのだった。




