無能力者だろうが、諦めなければ強くなれるらしい。②
戦闘場には、ロメリア先生が一人。
仁王立ちで俺たちの事を待っていた。
先生は全員来たのを確認すると、説明を始めた。
「これから、授業を始める。力の弱点を把握するために、今回の授業では私と戦ってもらう!戦ったのち、私がそれぞれの弱点を分析し、説明していくため、本気で取り組むように!」
先生と戦うって、まじかよ。
先生が戦っている姿は少ししか見たことはないが、先生は強い。
まず、生呪の力を抜きにして、運動神経が尋常じゃないほど高い。
そして、戦闘経験が俺たちの数倍は多いはずだ。
その上、先生の生呪の力は分からない。
授業だし、そこまで本気で戦うわけではないのだと思う。
それでも、俺たちの技術が通用するとは、全く思えない。
これは授業にならないんじゃないか?
そんな事を考えていると、準備が終わったのか、先生が話を再開した。
「さて、準備は完了した。誰からでもいい、順番にかかってこい!」
先生は開始の合図をしたが、誰一人としていこうとはしない。
さすがに先生相手に、最初の一人目はきついのだろうか。
辺りが静まり返っていると、隣にいたアリウムが話しかけてきた。
「誰も行かなそうなら、俺が行こうかな」
「……え、まじかよ。よく、最初に行けるな」
「別に普通だろ?自分の今の実力も早く知りたいし、」
「……そう言えば、アリウムはどんな力を持ってるんだ?」
「ん?俺は無能力者だよ。……それじゃあ、行ってくるわ」
「お、おう。……って、無能力者?それってどういう……」
俺の話を聞くことなく、アリウムはゆっくりと前へ出て行った。
無能力者って……能力がないってことだよな。
能力ってのが生呪の力だとすると、生呪の力を持っていないってことになるよな。
……え、生呪の力を持ってないのか?
生まれながらに誰しもが持っている力だと聞いたが、持っていない人がいるのか。
というか、持っていないのなら、ムクゲの一味との戦いでは、どうやって戦っていたんだ?
力を持っていないのに、あの長時間三人を止めるなんて、不可能だろ。
一体どういうことなんだ?
衝撃の事実を聞き、様々な疑問が生まれてくる中。
アリウムと先生の戦いが始まろうとしていた。
「ほう、最初はアリウム生徒か」
「はい、よろしくお願いします!」
「さて、どこからでもかかって来い!」
先生がそう言うと、アリウムは慣れた動きで、腰から剣を引き抜いた。
剣の大部分は綺麗な銀色で、長年使ってきたせいか、所々汚れや傷が目立つ。
アリシアは剣を先生に向けたと思うと、少し笑い、叫んだ。
「行くぞ……変剣!」
瞬間。
剣が光ったと思うと、剣先は光りながらグニャグニャと形を変え始めた。
そして、物の数秒で剣先は変化を終えた。
その剣は、いや、その大剣は大きく、綺麗な銀色で、
不思議な文様が描かれている。
美しく、見ただけで、どんなものでも斬れると思わせるほどの、迫力がある大剣だった。
「……いや…………は?」
ついさっきまで普通サイズの剣だった物が、一瞬にして大剣に変化した。
なるほど。いや、何が起こったんだ?
無能力者って言ってたよな。
なら、何であんな芸当が出来るんだ。
理解不能な出来事に、俺はただひたすらに困惑した。
俺が困惑していると、先生はゆっくりと口を開いた。
「なるほど、それが例の武器か。……面白い、かかって来い!」
「言われなくても!」
そう答え、アリウムは強く地面を蹴り、
物凄い速さで、先生へと斬りかかる。
大剣は真っすぐに振り下ろされ、先生の肩に直撃した。
が、先生は一切動揺する様子がない。
「……なるほど、中々の素早さに、中々の力だ。だが、まだまだだな。こんなものでは、私に傷一つつけられんぞ!」
「これなら、どうだ!」
そう言いながら、アリウムは大剣を横に振り、先生を斬ろうとする。
しかし、今度はいとも簡単に剣先を止められてしまった。
しかも、二本指だけでだ。
アリウムは何とか先生に大剣を離させようとしているが、
先生が大剣を話す気配は一切しない。
「……これまでのようだな」
そう呟いたかと思うと、先生は大剣を空に大きく投げた。
アリウムが大剣に気を取られていると、
先生の全力パンチが、アリウムの腹へと炸裂した。
もろに喰らったアリウムは、すぐに膝をついてしまった。
落ちてきた大剣を軽くとると、
先生はゆっくりと話し始めた。
「動きはまあ良い。大剣の使い方もなっている。だが、根本的に速さと力強さがまだ足りない。その上、動きが単調すぎる。もっと剣の性質を理解したのち、動きをより良いものに改善しろ!分かったか!」
「……はい」
「よし、次だ!」
終わってみれば、先生の圧勝。
分かっていたことだが、先生が強すぎる。
アリウムは強かったし、凄い動きをしていた。
それでも、ほとんど遊ばれているようなものだった。
こんな化け物相手に、俺の技術は少しでも通用するのだろうか。
不安な気持ちになっていると、戦いを終えたアリウムが戻って来た。
「いやー、駄目だったわ。ロメリア先生凄すぎる」
「い、いや、アリウムもすごかったと思う……よ。だけど、やっぱり力を持ってたのか。……何で、持ってないなんて嘘ついたんだ?」
「ん?何言ってんだ、俺は力を持ってないって。もしかして、この剣が変化した事か?さっきこの剣が大剣になったのは、この剣の力なんだよ。この剣の名はカエデと言ってな。俺が思ったように変化する、変わった剣なんだ。俺自体は本当に無能力者だよ」
「……そうだったんだ」
あの変化は剣特有のものだったのか。
それなら、納得がいく。
それにしても、力がなくとも、あんな動きが出来るのか。
アリウムの動きは速くて、力も相当強かった。
あれが力なくして出来るなんて……何というか凄い。
しかし、そう言う事なら言わないとだな。
「なんかごめんな。……その、力の事をいろいろと聞いちゃって。……その…………本当に力がないとは思わなくて……さ」
「ん、別に気にすんなよ。俺が気にしてないからさ。……俺は別に、力なんてどうでも良いと思うんだ。どんな力を持ってるとか、そもそも力を持ってるのかとか。俺は力も個性の一つだと思ってるんだ。……人間、出来る事もあれば、出来る事もあるだろ。俺はただ力を使うってことが出来ないだけだ。だから、他の事で頑張ることにしたんだ。力がない分。俺には他に出来る事があるはずだ。だから、それを伸ばして、力がないのを補う。まあ、誰でもやってる普通の事だけどな」
「アリウム……凄いな、お前」
「そうか?普通だって」
……いや、普通じゃない。
どんな奴でも、他の奴が持っている才能には嫉妬するし、
力が強い奴は少しでも、弱い力の奴よりも優位に立ってると思ってしまうと思う。
結果的に、いじめや喧嘩が起きたりするし、
コンプレックスを持つ奴や、自分の実力を過信する奴が出てる。
これは俺の考えとかじゃなくて、現実だ。
それを、個性と割り切って、受け入れ、
それ以外の持ったもので勝負する。
そうしてくても、普通じゃそうできない。
アリウムは自分で思っている以上に、凄い奴だと思う。
アリウムは、俺が前世でなりたかった人物像にそっくりだ。
俺もこんな風になれるだろうか……。
俺が浸っていると、不思議そうな目をしたアリウムが、話しかけてきた。
「どうした?なんかあったか?」
「……え、いや……何でもない」
「そうか。お、また、戦いが終わったみたいだし、次コウキが行けば?」
「え、でも……いや、そうだな。…………行ってくる」
「おう、頑張れ!」
浸っている場合じゃない。
変わるんだろ。
なら、行動あるのみだ。
先生に勝つなんて、そんな無茶な事は思わない。
ただ、一撃は食らわせてやる。
力がなくとも、努力すれば強くなれる!




