無能力者だろうが、諦めなければ強くなれるらしい。①
ユリが無事に帰って来た翌日。
昨日までは体調の事も考慮し、学園を休まされていたが、
今日からはいつも通り、学園へ出席することになった。
俺は準備を終え、自室から一階へと降りていく。
一階ではユリとお姉さんが楽しそうに話をしていた。
「あ、コウキくん。おはよう!」
「うん、おはよう」
「コウキくんも来たことだし、行ってくるね、お姉さん!」
「うん、行ってらっしゃい!」
お姉さんにしっかりとあいさつをしたのち、
俺とユリは一緒に酒場を出た。
酒場の外はいつもより人で溢れていて、活気づいている気がする。
そういえば、お姉さんも忙しそうに、何か準備をしていた。
もしかしたら、ここら一体で何か祭りでもするのかもしれない。
そんなことを思いながら、ユリと楽しく話していると、
俺たちはすぐに学園に到着した。
教室に入ると、いつもの様にカンナがうるさく出迎えてくれた。
「ユリにコウキー、おはよう!そして、久しぶり!二人とも、元気そうでよかったよ。ユリは本当に無事で何よりだ!もう、本当に心配したんだから、気を付けてよ!」
「心配かけてごめんね。次はこんなことにならないように、気を付けるよ」
「しょーがないな。今回は許してあげよう!」
それだけ話すと、俺たちは自分の席へと着いた。
荷物を置き、適当に授業で使う物を用意していると、
カンナが思い出したかのように話を始めた。
「そう言えば、今日新しく転入生が来るらしいよー」
「転入生?」
「そ、何でも凄く良い事をしたらしくて、その功績が認められて、特別に入学許可が出たらしいんだ!」
転入生か。
これはまた突然だな。
一体どんな人なんだろうか。
陽キャか陰キャか。
強いのか弱いのか。
そもそもとして、男か女か。
どんな人であれ、転入生は楽しみだな。
「転入生かー、一体どんな人なんだろうな」
「確か名前だけは言ってたんだ。えっと、名前は……アリウムだ!」
「……え、今なんて…………」
「おう、この間ぶりだな、コウキ!」
聞き覚えのある声に反応し、すぐに後ろを向くと、
そこには見覚えのありまくる男が立っていた。
茶髪で、少し尖ったような頭をしていて、
腰には使い古された剣を差している男。
俺の初めての友達にして、先日共に戦った男。
そう、そこに立っていたのはアリウムだった。
「……え、アリウムって……え、え!?」
「驚いたか?この間ぶりだな、コウキ!実はこの間、戦った功績?が良く分かんないけど認められてよ。今日から俺も学園に通うことになったんだ!けど驚いたぜ、まさかコウキと同じクラスになるとはな」
「驚いたって……それはこっちのセリフだよ!まさか……まさか、アリウムが転入してくるなんて!……良く分かんないけど、取り合えずおめでとう!」
「おう、ありがとな!」
そう話して、俺たちは強く握手を交わした。
あのアリウムが転入生だったとは。
おめでとう!とは言ったが、急すぎる事態に、まだ理解し切っていない。
いくら何でも衝撃的過ぎる。
しかし、嬉しいな。
もう諦めていたが、まさかアリウムと学園生活を送れることになるとは。
本当に、最高過ぎる。
いろいろあったが、今回の事件で勇逸良かった出来事だ。
そんな事を考えていると、カンナが不思議そうな顔をして訪ねてきた。
「えっと、二人は知り合いなの?」
「う、うん。……アリウムとは友達でさ…………」
「そうだったんだ!それなら、うちも友達みたいなもんだね。うちはカンナです!よく使う武器は素手、共感できる言葉は永遠ほど怖いものはない、性癖はドMで、いじめられると興奮しちゃうタイプです!ぜひいじめてね、ちなみに彼氏募集中だから、程よくドSの男友達がいたら、紹介よろしく!」
瞬間的に、その場の空気が凍り付いた。
何というか、カンナはぶれないな。
たとえ教室だろうと、たとえ初対面の男だろうと、堂々と自分の性癖を暴露していく。
そして、やっぱり好きな言葉とかじゃなくて、共感できる言葉なのか。
うん、何というかカンナはやっぱり凄いな。
そんな事を考えていると、アリウムは少し前に出て、右手を伸ばした。
「俺はアリウム。よく使う武器は大剣で、好きな言葉は諦めなければ、どんな夢でも叶うだ!好きな事は筋トレ。よろしく頼む!」
「おう、よろしく!」
そう答えると、カンナはアリウムの手を取り、
がっしりと握手を交わした。
あんな個性的な自己紹介をされたのに、一切気にすることなく自らも自己紹介し、握手を交わすとは。
アリウムもぶれないな。
それから、ユリも自己紹介をしていると、
ロメリア先生が少し怒りながら教室へと入って来た。
どうやら、先生の話を聞かず、アリウムは勝手に教室に来たらしい。
アリウムは凄く先生に怒られていた。
その後、先生からアリウムの紹介があったのち、
今日の授業の説明が始まった。
「これから数回の授業を通して、それぞれの力の弱点を把握し、その上で新たな技を習得してもらう。そのために今回は、自らの弱点を把握する授業を行う。授業は戦闘場で行う。それぞれ来るように!」
そう言うと、先生は教室を出て行った。
俺たちも必要な物を持ち、教室を出て行く。
弱点を把握し、技を習得か。
なんか、それっぽくて、良いな。
特に技の取得。
これぞ異世界の授業って感じがして良い。
前世の授業では当然、こんな感じの授業はなかったからな。
そんな事を考えていると、楽しそうなアリウムが話しかけてきた。
「いやー、これから俺の初めての授業か。なんかワクワクするな」
「そっか、アリウムは今日入学したんだもんな。……結構スパルタだから、覚悟した方が良いぞ」
「まじかよー。けどまあ、俺はみんなと比べて、遅れてるんだ。頑張るしかないな!」
そう言うと、アリウムは戦闘場へ向かって走り出した。
俺とユリたちも、アリウムを追って走りだす。
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