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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
31/120

謎の因縁をかけられたコミュ症は、ただひたすらに困惑する。②

 学園入学試験日。

 俺は二人組を作れと言う無理難題を受け、何もできずベンチで一人俯いていた。

 そんな時、俺に話しかけてくれたのがムクゲだ。

 ムクゲは俺にペアを作っているかどうか聞き、作ってないと答えると、ペアになろうと誘ってくれた。

 その後、俺とムクゲはペアになり、試験を受けたのち、俺が合格し、ムクゲが不合格となった。

 あれから一度もあっていなかったが、まさかこんなところで会うことになるとは。


 見た目が違いすぎて、全然気が付かなかった。

 以前はマッシュルームヘアで、眼鏡をかけた、クラスに一人はいそうな、ガリ勉っぽい見た目をしていた。

 それが、今はオールバックでヤンキーっぽい見た目をしている。

 イメチェンにもほどがある。


「……あ、見た目が違いすぎて、気が付かなかったよ…………」


「まあ、俺にもいろいろあったからな。確かに気づかなくてもおかしくはないか」


「……う、うん…………」


 そう答えると、当たりがまた静寂に包まれた。

 ムクゲたちは何か言ってほしそうな目で、俺の方を見つめてくる。


 何か変な事を言ってしまったのだろうか。

 それとも、やっぱり最初に気づかなかった事に怒っているのだろうか。

 うーん、分からん。一体俺に何をしてほしいんだよ。

 

 ……あれ、よく考えたら、ムクゲが果たし状を送ったってことになるよな。

 だとしたら、一体何の目的で送ったんだろうか。

 もしかして、試験の時のリベンジをしたいとかか?

 それとも、ただ会って話したいだけだとか?


 ……いや、よく考えたらそこじゃない。

 ムクゲが果たし状を送ったってことは、ムクゲがユリを連れ去ったってことだ。

 重要なのはそこだ。

 一体何でユリを誘拐したんだろうか。

 俺を呼びだすだけなら、ユリを連れ去る必要はなかっただろ。

 見た感じ、近くにユリはいなさそうだ。

 ユリは大丈夫なのか?

 

 そう思い、ユリの事を聞こうとすると、

 その前にムクゲがゆっくりと口を開いた。


「……聞いてくれないのか?いろいろあったって、何があったのかって」


「え、あ、ごめん。……な、何があったの?」


「そうだな。まずは、俺の生まれから話そうか……」


 そう言って、ムクゲはゆっくりと自分語りを始めた。

 ムクゲが言うに、ムクゲは貴族の生まれらしい。


 小さい頃から英才教育を受けていて、所謂エリートでもあったらしい。

 そこそこ有名な貴族らしく、親の跡を継げば、楽して裕福な人生を送れるのは確定だったそうだ。

 しかし、ムクゲは小さい頃、自分を助けてくれた冒険者に憧れ、

 親の後を継ぐのを断り、冒険者を志すようになったそうだ。


 それから、エリートであるのにも関わらず、毎日必死に努力し、強くなっていった。

 そして、冒険者に一番近い、魔防学園に入学するべく、この間の試験を受けたらしい。

 今まで努力してきたこともあり、受かる気満々だったらしいのだが……。


「そこで現れたのがお前だ。お前を見つけた時、俺よりも弱くて、自身もなさそうだと思ってな、絶対にこいつになら勝てると思って、お前を誘ったんだ。……実力では、絶対に勝ってたんだよ!それがどうだ、少し油断したせいで、俺は負け、お前は勝った。…………この世は実力社会だ。実力があるものだけに、全ての権利がある。そして、俺には実力があるんだよ。それなのに……お前に俺の気持ちが分かるか!?」


「……え、あ…………はい」


 確かに、ムクゲの言う通り、実力ではムクゲの方が上だった。

 実際に最初は俺が押されていたし、普通に戦ってれば、あのまま俺が負けていただろう。

 だが、隙を突き、俺がムクゲを倒した。

 それが結果だし、現実だ。

 今そのことをいろいろと言われたって、何というか……困る。


「……お前に負けてから、俺は散々だった。貴族でもないお前に負けた俺は、周りの奴らからは馬鹿にされて、蔑まれる事になった。お前に俺の気持ちが分かるか?分からないだろうな!」


「えっと……まあ…………」


「ついには親からも見放された俺は、全てがどうでもよくなったんだ。……冒険者とか、家族とか、友達とか、全てがどうでもよくなった。……だが、その代わりに、俺の中に一つ、大きな野望が出来たんだ」


「……野望…………?」


「ああ、それはな……魔防学園をぶち壊すことだよ。……その手始めに、俺たちは今、今年の魔防学園入学者を襲っているんだ。……ここにいる奴らは試験に落ちた奴らでよ。自分を倒した奴に復讐するのを手伝う代わりに、作戦を手伝ってもらってんだ。……おい、聞いてんのか?」


「……いや…………は?」


 全てが理解できなかった。

 魔防学園を壊す?

 入学者を襲う?

 復讐?

 意味が分からない。

 どうしてそんな考えになるんだ。

 困惑していると、俺の考えていることを読み取ったのか、

 ムクゲはまたゆっくりと話し始めた。


「……分かってるよ、意味が分からないんだろ。だが、仕方がないだろ、壊せば全てが変わるんだ。俺を馬鹿にしてきた奴も、蔑んできた奴も、誰も俺を見下せなくなるんだ。そう思ったら、体が勝手に動いて、行動に移しちまったんだ。……言っておくが、お前らは何も言えねえからな。お前らと俺じゃ、俺の方が実力が上だ。実力が高い方が相手を自由にするのは、この世の摂理だからな!お前たちが俺に逆らえないのは当然だ!……さて、話はここらへんで止めるか」


 そう言うと、ムクゲは背中から、さらに触手を出した。

 そして、一度深呼吸をすると、戦闘態勢に入った。

 どうやら、ムクゲは既にやる気満々の様だ。


 ……いや、駄目だ。やっぱり意味が分からない。

 何でそんな考えになるんだよ。

 全てが変わるって、変わるからってやっていい事といけないないことがあるだろ。

 自分の欲望のために、一つの学校を壊すなんて、どうかしている。

 確かに分かる所はあるが、流石に自分勝手すぎる。

 

 しかし、どうするか。

 話し合いが通用しそうにないし……戦うしかないのか。

 以前の俺なら、絶対にムクゲには勝てなかっただろう。

 だが、魔防学園に入って、俺は多くの経験を積んだ。

 戦い方や、力の使い方も学んだし、今日なんかはモンスターとも戦った。

 今の俺なら、普通に戦って、ムクゲにも勝てるかもしれない。

 

 問題は敵の数だ。

 ムクゲ以外も一緒に相手するとなると、流石にきつい。

 とりあえず、話をして時間を稼ごう。 

 時間を稼ぎつつ、何かいい作戦を思いつくのを願おう。

 そう思い、とりあえず俺はユリについて聞くことにした。


「……そ、そういえば、ユリはどこにいるんだ?……預かったって、果たし状に書いてあったけど……」


「ユリ……ああ、あの女か。そこの中にいるんじゃないのか?」


 そう言いながら、ムクゲが指さしたほうを見てみる。

 そこには、大量の袋が積まれていて、よく見ると合間合間に袋でない何かが積まれているように見える。 

 近づいてよく見ると、その積まれていたものは、学園の服を着た生徒たちだった。

 生徒たちはみな少し怪我をしているようで、かすり傷をしている者から、ボロボロに怪我をしている者まで様々だが、全員気絶しているようだ。

 まさかと思い、その中から急いでユリを探し始める。


「……ユリ!」


 目立った外傷はないし、息もしている。

 とりあえず気絶しているだけだし、一応は大丈夫そうだ。

 良かった。


「……ユリに、ユリに何かしたのか?」


「……あ、ただ殴っただけだよ。そいつを捕まえるのは意外と簡単だったんだぜ。ちょっとボコした生徒を人質に取ったら、全く抵抗しなくてよ。触手で一発殴っただけで、すぐに気絶しやがったんだよ。全く、冒険者志望が聞いて呆れるよな!」


「……そうか」


 ユリが簡単に捕まるわけがないと思っていたが、そう言う事だったのか。

 人質を取られて抵抗しなかったとは。確かにユリならそうしそうだな。

 自分の身が危険な時くらいは、自分を最優先にしたっていいだろうに。

 全く、バカかよ……。


 しかし、酷いありさまだ。

 ユリはそこまで怪我をしていないが、他の奴らの怪我はひどすぎる。

 殴られすぎて、体中あざだらけになっている者や、少し焼かれた跡のある者。

 いくら何でも酷過ぎる。


「……ここまで、ここまでやる必要はあったのか?……この人たちは、そこまで悪いことをしたのか?」


「さあな、そこまでボコボコにしたのは俺じゃなくて、そこに立ってる俺の仲間だ。俺に聞くな。……だが、そうだな。悪いのはそいつらだろ」


「……は?」


「そいつらに実力がないから。だからそうなるんだ。どうせ合格できたのはお前みたいに、運が良くて、奇跡的に相手の隙を付けたからだろ。実際に実力がないくせに、粋がるからそうなるんだ。力が無くて、度胸がない奴は、底辺を這いつくばって生きて行けばいいものを」


「這いつくばってって……てか、弱い奴には何をしたっていいと思ってるのか?」


「それはそうだろ。弱い奴には生きている意味がないからな」


「……そうか」


 どうやらムクゲは、弱い奴には何をしても良いという考えの持ち主の様だ。

 弱ければ、ここまで酷い事をしても良いと思っているのか。

 何もせず、ただ試験に合格しただけの、ただの生徒に……こんなことをしても良いと思っているのか。

 ああ、駄目だ。流石に我慢が出来ない。


 自分で言うのもなんだが、俺はそこまで怒ったりはしない。

 前世でも、高校に入ってから怒ったことは一度もなかった。

 基本的に、どんなことをされても許すし、文句の一つも言ったりしなかった。


 怒る相手に興味がなかったからかもしれないし、

 意見を言う勇気がなかったのと同様に、怒る勇気もなかったからかもしれない。

 はたまた、怒られる人が、かわいそうだと思っていたからかもしれない。

 ともかく、しばらく怒っていなかったら、本当に大したことじゃ怒らなくなった。

 これもなれという物だろうか。


 ……だが、そんな俺でもさすがにこれは許せない。

 目の前でこんなものをみて、許せるわけがない。

 ハッキリと思える。俺は今、怒っている。


「ムクゲ……それじゃあ、俺がお前に勝ったら……俺の方が強いってことになるよな……そうしたら、お前はお前の言う、弱い奴になるよな……」


「何言ってんだ?……もしかして、キレてんのか?お前みたいな、弱くて、度胸もない。暗くて、ろくに話すことが出来ないような雑魚がキレたって、全く怖くないな。ほら、どうした?許せないなら、何かしてみろよ!」


「……お前は一つ勘違いしているようだな。確かに俺みたいな陰キャは、傍から見たら弱いし、度胸もない。暗いし、ろくに話す事も出来ないよ。だけどな、陰キャは外に出せないだけで、うちにはちゃんと、強い力を持ってるんだよ。一つ言っておく。この世界で一番怒らせちゃいけない生物は、陰キャだ!……お前はその陰キャを怒らせたんだ、覚悟しろよ!」


 俺はそう言って、ムクゲの方をしっかりと向いた。

 そして、怒り解き放ち、覚悟を決める。

 俺は一歩、大きく前へ踏み込んだ。

怒った影使い陰キャVS触手使いの戦いが今始まる……!

あ、リアルの用事が片付いたので、来週から投稿頻度があがる……かもです!多分だけど!

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