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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
3/120

異世界で女騎士に会ったとしても、コミュ症はまともに会話することができない。②


「そこの貴様!ここで何をやっている、お前は何者だ!」

 

 急に聞こえた声に驚き、ほぼ反射的に後ろを向いた。

 声のした方には、長い剣を持ち、銀色の鎧に身を包んだ、黒髪ロングの女。

 そして、似たような服装をしている、甲冑で顔を隠している人が二人、全員こちらに剣を向けて立っていた。

 

 あの見た目。あの言葉遣い。

 長年小説や、ゲームで見てきたんだ、見間違えるわけがない。


 あれはどんなRPGにも絶対に現れる騎士。

 そう、女騎士だ。

 本当に異世界には、女騎士が存在したのか!

 一気に気分が上がってくる。


「おい、聞いたのが分からないのか!」


 女騎士がさっきより強い声で聞いてくる。

 女騎士との初対面だ。

 そうだな、ここは落ち着いて、クールに答えることにしよう。

 よし、行くぞ!

 

「……あ…………その……ども」


 ……ダメだった。

 いや、よく考えれば分かることだった。

 前世では、俺は基本的に女と話すことはなかった。

 

 例えば「ここ最近、話した女性は?」と聞かれたとする。

 その時、母親か、コンビニで「ビニールはいりますか?」「あ、いや、大丈夫です」と会話したコンビニバイトの女性と答えるような男だったんだ。

 そんなコミュ症が、異世界に来て数秒で、女と話せるわけがない。


 そんな俺の事も考えずに、女騎士はさらに強い声で話してくる。


「なんて言ったんだ?話すならはっきりと話すんだ、何を言っているか分からない。それで、貴様は何者なんだ!」


「…………あ、えっと……日本から……その……」


「はっきり話せといっただろ!……貴様、怪しいな。我々と一緒に来てもらおうか」


 そう言い放って、女騎士はゆっくりこちらに近づいてくる。


 ……しょうがないじゃん、はっきり話せないものは話せないんだから、しょうがないじゃん。

 そんなに強く言わないでくれよ。……しかし、まずい。

 おそらくここで捕まってしまえば、面倒くさいことになることは確実だ。

 何とかこの状況を打破しなくては。


「い、いや、待ってください。……あの、俺は、怪しい者じゃなくて……」


「はっきり話せと言っているだろ!」


 んー、怖い。普通に泣くほど怖い。

 学校で話も聞かず、理不尽に怒鳴りつけてきていた、教師くらい怖い。

 異世界の女騎士はもっと優しいものだと思っていたのに、めちゃくちゃ怖いやん。

 このままじゃ俺普通に泣いちゃうぞ。


 そんな事を思っても、女騎士は近づいてくる。 

 こうなったら、仕方がない。前世から使ってきた奥の手を使うとしよう。


「ちょ、ちょっと待ってください。あ、あれなんですか!」


「あれ?」


 そう言って、女騎士が振り向いた瞬間。

 俺は即座に後ろを向き、駆け出した。

 そう、俺は女騎士から逃げるため、走りだしたのだ。

 これでもクラスの中では、下から8番目くらいの足の速さだった。


 つまり、遅いことは遅いが、遅すぎるわけでもないのだ。

 この速さなら、重そうな鎧を着た女騎士に追いつかれることはないはずだ。

 

 そう思ったのもつかの間、後頭部に何かがぶつかり、強烈な痛みが走った。

 思わず、悲鳴を上げて倒れこむ。

 

「い、痛い!な、なんだ?」


「貴様、逃げるとはいい度胸だな」


 そう言いながら、女騎士はゆっくりと近づいてくる。

 女騎士はさっき何も持っていなかった右手に、何か小さなものを持っている。

 それを見てようやく分かった。

 どうやら俺の後頭部にぶつけられたものは、石だったらしい。

 女騎士が転がっていた石を拾い、それを凄い力で投げ、俺を倒したようだ。


 ……石投げただけで、あの威力かよ。

 筋力ゴリラかよ。


「さて、もう逃げようもないぞ。大人しくついてきてもらおうか!」


「い、いや、だから誤解で…………。その、俺は別に悪い奴じゃなくて……なんて言うか、別の世界っていうか…………」


「もういいから、さっさと私たちについてくるんだな」


 そう言い放ち、女騎士は俺の腕に手を伸ばしてくる。

 まずい、このままだと本当に捕まってしまう。

 どうする、どうする、どうする?

 話は聞いてくれないし、逃げることもできない。

 こうなったら、試してみるか……。


 そして、俺はしっかりと前を見る。


「ん、なんだその目は。何を考えているんだ」


「か、覚悟してくださいよ……影!」


 叫ぶと同時に、俺の影は変化し始める。 


「な、なんだ!」


 突然動き始めた影に驚きながら、女騎士は後ろへ引こうとする。

 しかし、もう遅い。

 俺の作った影の武器は、

 巨大な影でできたハンマーは、すでに完成している。

 俺は完成した巨大な影のハンマー。

 言うなればシャドウハンマーを大きく振り上げた。

 そして、女騎士に向けて、全力でぶつけた。

 ハンマーが女騎士にぶつかると同時に、女騎士は力に押され、真っすぐ後ろへと吹き飛ばされていった。

 

 ……すっげええええええ!

 あの強そうな女騎士を、吹き飛ばしたぞ。

 持った感じは軽くて、家によくあるハンガーをかけるあれを持ってるような感覚だった。

 それがぶつけた瞬間、良く分からないけど、ハンマーが重くなって、吹き飛ばして……良く分からないけど、凄い。

 やっぱり、この能力は強力かもしれない。


 しかし、そんな喜びもつかの間。

 女騎士はゆっくりと立ち上がってくる。


「……貴様、よくもやってくれたな!ぶった斬ってやる!」


 凄いキレてる。

 あの一撃を食らって立ち上がるとは、凄いな。結構な距離吹き飛んだし、相当ダメージがあってもおかしくないと思うんだが。

 しかし、次は通用しないかもしれないし、どうするか。


 ……こうなったら、やれることは一つだな。

 さっきは失敗したが、今は相当な距離があるんだ。上手くいくはずだ。

 そう思い、俺はさっきのように後ろを向く。

 そして、女騎士とは真逆の木が生い茂っているところを目指し、駆け出した。


「え……、いや、ちょっと待て!」


 女騎士が何か叫んでいるが、知ったことじゃない。

 このまま戦って勝てるかもしれないし、勝てないかもしれないが、さすがに異世界に来ていきなり戦う気にはならない。

 相手があの女騎士なら尚更だ。


 そんな事を思いながら、俺はただひたすらに走っていく。

 体力がないせいで、何度か休憩を挟んだが、それでも確実に森を進んで行った。

 そして、駆け出して、数分立った頃。


「はあ、はあ……あ、あれは、光だ!」


 やっと森を抜けられると思い、最後の力を振り絞り、走り出す。

 そして、ついに森を抜けた。


 森の外はひたすらに綺麗な草原が広がっていて、圧巻の光景になっている。

 前世では見たことのないような景色に、俺は思わず数秒間あっけにとられた。 

 それから我に返り、すこし進んでから周りを見てみると、少し遠くにそれは見えた。

 大きな壁に囲まれて、巨大な敷地を持ち、前に数人が並んでいる門がある。

 あの見覚えのあるような見た目。

 間違いない。


「……街だ!」


 思わず俺は声に出した。

 もし草原だけで、何もなかったりしたら、どうしようかと思っていたが、街があって良かった。

 しかし、実際に壁に囲まれた街を見て、改めて実感した。

 俺はどうやら、本当に異世界に来たようだ。

 そう思うと、ワクワクとドキドキが心の底から湧き上がってくる。

 

「よし、いくか」


 そう呟き、俺は町を目指して走り出す。

主人公がゴリラの筋力と言っていますが、主人公はゴリラの握力が凄いことしか知りません。

握力強いし、筋力強いんじゃねって感じで思ってます。


面白くなりそうだと、少しでも思ったら、評価かブクマ登録お願いします!

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