いくら何でも、この時代に果たし状は古すぎると思う。②
【果たし状!】
学園生徒のコウキよ。
君の大切な女は俺たちが預かった。
返してほしくば、裏路地のゴミ処理場に来い。
秘密の集団より。
……なるほど。
……いや、古いわ!
果たし状って、いつの時代だよ。
今の時代果たし状を書く奴なんて、いないぞ。
ヤンキー系漫画ならともかく、現実で書くやつは0人だ。
一体いつの時代の奴なんだよ。
そもそもとして、この世界で果たし状なんて存在したのか。
この世界の雰囲気と果たし状って、合わなすぎるだろ。
洋食だらけの食卓の中に、一つだけ和食が混じってるような違和感がある。
……しかし、大切な女を預かったって、どういう事だ?
俺には彼女とか、好きな人とかの、大切な女はいないはずだ。
当然、いない女を預かるなんて、出来ない。
もしかしたら、送り主は何か勘違いしているのかもしれないな。
というか、送り主は誰だよ。
果たし状を送ってくるような知り合いは、俺には存在しない。
……となると、陽キャの悪戯か。
この世界では、陰キャに悪戯するタイプの陽キャとは、大抵関わらないようにしていた。
それなのに、悪戯の的とされるとは。
どこかで反感を買ってしまったのか、それとも関わっていないからか。
まあ、気にせずに帰ることにするか。
そう思い、一応果たし状をポケットの中に入れ、靴に履き替える。
何やかんや考えていせいで、いつの間にかほとんど夜に差し掛かっていた。
心の中で、果たし状を書いた陽キャに文句を言いつつ、宿へと帰り始める。
いつもより帰り時間が遅いこともあって、少し早歩きで帰ったからか、すぐに酒場へ帰ることが出来た。
いつも通り静かに扉を開け、酒場へ入ると、酒場内は客の声で賑わっていた。
いつも以上の活気に、多少圧倒されていると、キッチンの外から出てきたお姉さんが、元気よく出迎えてくれた。
「おかえり、ユリちゃん!……って、光輝かい。おかえり光輝!」
「あ、はい。……ただいま、お姉さん」
「ユリは一緒じゃないんだね。てっきり一緒だと思ってたけど」
「え、ユリはまだ帰ってないんですか?」
「うん。いつもなら帰ってきてる時間なのに、まだ帰ってなくてね。さすがに心配だな。ユリちゃんは女の子の訳だしね」
少し変だな。
ユリは俺よりも早く学園を出たはずだし、まだ着いてないのはおかしい。
寄り道した可能性もあるけど、寄り道したとしても、もう着いているはずだ。
それに、真面目なユリが、お姉さんに何も言わずこんなに遅くなるはずがない。
もしかして、何かあったのか?
そう考えていると、酒場に誰かが入ってきた。
ユリかと思い、すぐに振り向くと、そこには少し怒った顔をしているカンナが、腕を組んで立っていた。
「あれ、カンナさん。ど、どうしたの?」
そう聞くと、カンナは俺の両肩を掴んで、一気に話し始めた。
「あ、コウキ!ちょっとユリに文句を言いに来てね。聞いてくれる?学園から帰っている時、ユリがトイレに行きたがってね、トイレに行く間、うちは近くの店で、待ってることにしたんよ!それでさ、数十分待っても来なくて、トイレに見に行ったら、ユリはもういなかったんだよ!うちに何も言わずに帰ったんよ!?さすがにガツンと言ってやろうと思ってね!……さて、ユリはどこにいるの?」
「……それが、まだ帰ってきてないみたいなんです」
「……あー、なるほど!……え、まだ帰ってないの!?なんで!?」
なんでって聞きたいのは俺たちの方だ。
だが、カンナのお陰で、分かったことがある。
どうやらユリは、トイレに行った後、行方不明になったようだ。
問題は一体どこへ行ったのかだが……。
全く見当がつかない。
そもそもとして、ユリがカンナに何も言わずいなくなるなんて、ありえない。
そう考えると、何かがあった事には間違いないと思う、
もしかして、誰かに捕まってたりして……。
そう思った時、一つの考えが浮かんだ。
そして、ポケットの中を探り、一枚の紙を取り出す。
果たし状の中には、大切な女を預かったと書いてあった。
この果たし状が、本物の果たし状だったとする。
そうだとしたら、この女を預かったってのも、本当だってことになるよな。
もし、よく一緒にいるユリを、俺の彼女や、好きな人だと勘違いして、連れ去ったとしたら……。
そう思った直後。
俺は扉を全力で開け、一気に走り出した。
「……え、ちょ、コウキ!?急に走り出して、どこ行くの!」
「も、もしかしたら、ユリの居場所が分かったかも!」
もし、この果たし状が本物なら、急がないと。
今頃、ユリが大変な目に合ってるかもしれない。
頼む、無事でいてくれ!
そう願いながら、数分間走ったところで、俺は足を止めた。
ここでやっと、重要な事に気づいたのだ。
……そもそもとして、裏路地のゴミ処理場ってどこだよ。
俺はすぐに後ろを向き、酒場へと駆け出した。




