いくら何でも、この時代に果たし状は古すぎると思う。①
「なんで……何でここに先生が?」
「……馬鹿か、貴様ら?」
『え?』
「貴様らは私の話を聞いてなかったのか?マップで禁止と書かれている所には、立ち入ってはならないと、話があったじゃないか。貴様らは一体何をしているんだ?」
「……え、いや……すみません。……あ、先生、後ろ!」
先生が俺たちに話しかけていると、二体のグレイムが、頑丈な腕を振り下ろそうとしているのが見えた。
先生に知らせようと、声を上げるが、少し遅かったらしい。
グレイムの腕はすぐに振り下ろされ、先生の頭に直撃した。
が、先生は気に留めることなく、話を続ける。
「良いか、私たちが禁止エリアを作ったのは、貴様らを守る為なんだ。別に貴様らを過小評価しているわけじゃないが、禁止エリアにいるモンスターはどれも強く、貴様らじゃ敵わない。だから私たちは……」
「え、いや、ちょっと待ってください!……今、頭殴られましたよね?」
「それがどうした?話をそらそうとするな!そもそもだな……」
先生が話を続けていると、今度はグレイムは連続で殴り始めた。
何度も何度も殴り続けるが、やはり先生が気に留める様子はない。
ダメージが入っている様子も全くない。
目の前で起こっている、衝撃的な状況に、唖然としていると、先生は大きなため息をついた。
「……全く、話を聞いていないようだな。説教は上に戻ってからにしよう。とりあえずダンジョンを出るぞ」
そう言って、先生が剣を取り出した次の瞬間。
二体のグレイムが、腕ごと真っ二つに割れ、倒れこんだ。
……いや、え?
今、何が起こったんだ?
ロメリア先生が剣を取った瞬間。
突然、グレイムが真っ二つに割れた。
ただ、剣を抜いただけで、剣を振るどころか、動かしてすらいない。
それなのに、グレイムは倒れている。
状況からして、ロメリア先生がやった事に間違いはないが、一体何をしたというんだ。
俺たちが困惑していると、先生が注意してくる。
「何をしている。さっさと行くぞ!」
『は、はい!』
俺たちはそう答え、急ぎ足で先生について行く。
先生が導いてくれたおかげか、すぐにダンジョンから出ることが出来き、学園に戻ることが出来た。
そして、いろいろあったが、生きて帰ってこれて良かった!と、皆で少し浸っていたら。
先生にめちゃくちゃ怒られた。
何で禁止エリアに入ったのかとか。
何ですぐに逃げようとしなかったのかとか。
泣きそうになるまで、とことん説教された。
結局、説教が終わるころには夕方に差し掛かっていた。
「……はあ、とりあえず今言ったことを忘れないように!分かったか!」
『はい……分かりました……』
「なら、よし!それじゃあ、グリシア生徒とコウキ生徒は、授業の後片付けを手伝うように!」
「はい……え、何でですか?」
「話を聞いた所、一番悪いのはグリシア生徒で、次に悪いのはコウキ生徒だからだ!分かったら、そこの道具を片付けるのを手伝え!」
次に悪いのはって……。
確かに消去法で行けば、次に悪いのは俺なのかもしれないよ。
確かにあの時、グリシアを助けに行く前に、先生たちに連絡を取るのが一番良かったかもしれないよ。
だけど、そこまで悪いことしてないやん。
何で俺まで手伝わないといけないんだよ。
なんてことを思いながらも、口には出さず片づけを始めた。
ここで文句を言って、怒られるのは怖いしな。
そして、ほとんどの物を片付け終わり、片付けが終盤に差し掛かった頃。
ずっと黙っていたグリシアが、突然話しかけてきた。
「……あの、コウキ、一つ良いですか?」
「……え、あ…………はい」
一体何の話だろうか。
もしかして、ダンジョンで戦いに入った事怒ってるのかな。
それとも、モンスターを殺せなかった事に怒ってるのかな。
それとも、それとも、別の何かで怒ってるのかな。
いずれにしろ、怒っているのに間違いはないと思う。
「……その、すみませんでした!」
そう言って、グリシアは頭を下げてきた。
想像の斜め上を行く言葉に、一瞬完全に思考が止まってしまった。
すみませんでした!って、あのすみませんでした!だよな。
あの、人に謝るすみませんでした!だよな。
え、なんで俺に謝るんだ?
怒るんじゃないのか?
「……私は、焦りすぎてました。そのせいで、みんなを危険にさらしてしまって、コウキにもひどい事を言ってしまいました。…………謝って、許されることじゃないのは分かっています。それでも、すみません!」
そう言いながら、グレシアはさらに深々と頭を下げてきた。
「いやいや、謝らなくていいよ!…………その……俺も悪かったし……それに、失敗は誰にでもあるよ。……困った時はお互い様だしさ!」
「……でも…………」
「じゃあ、俺が困った時。……その時に、助けてくれれば、それで良いよ!それで、お相子!……これで、良いよね、グリシアさん?」
「……はい、本当に今日はすみませんでした。……それと、グリシアで良いです。さん付けして呼ばれるのは、嫌なので」
「……え、分かったよ……グリシア…………そ、それじゃあ、片付け終わらせちゃおっか!」
それだけ言って、俺は片づけを続けた。
多分、グリシアにもいろいろ考えがあったんだろうな。
禁止の部屋に入ったことは良くなかったと思うけど、
そうまでして早く冒険者になりたい、理由があったんだろう。
良くない事をしたのは確かだけど、少しグリシアの事を悪く思いすぎたかもな。
そんなこんなで、俺たちは片付けの手伝いを終えた。
思った以上に時間が掛かったが、夜になる前に終わってよかった。
「よし、それじゃあ、グリシア生徒と、コウキ生徒。二人とも帰って良いぞ。しっかり反省するようにな!」
「……それじゃあ、私は行くね」
「え、あ……はい。それじゃあ、また明日……ね」
そうして、グリシアはそそくさと歩いて行った。
それを見送ってから、俺もゆっくり歩き始める。
何というか、怒涛の一日だったな。
初めてモンスターを目にして、モンスターの怖さを知った。
その後すぐに、ダンジョンに潜って、初めてモンスターと戦かった。
自分の中で、一応答えは出せたし、勇気をもって、強大なモンスターに立ち向かう事も出来た。
悩んだり、死にかけたり、いろいろ大変な事もあった。
だけどまあ、終わり良ければ全て良しだ!
そんな事を考えながら歩いていると、すぐに学園の下駄箱に到着した。
俺はいつもの様に、自分の下駄箱に行き、靴を取ろうと下駄箱を上げた。
するとそこには、普段はない、何かが置かれていた。
これは……手紙か?
一体何でこんな物が俺の下駄箱に……は!
まさか……ラブレター!?
いや、俺にラブレターを書く人なんていないか。
……いや、でも、もしかしたら、奇跡的に俺の事が気になって、ラブレターを書いた人がいるかもしれない。
多分そんな事はないと思うけど、もしかしたら!奇跡的に!あるかもしれない!
そう思い、期待を膨らませながら手紙を開けてみた。
そこには、まず大きな文字でこう書かれていた。
【果たし状!】と。
いや、果たし状って、どういう事やねん。




