人生にはすぐに答えを出さなくても良い事も、あるのかもしれない。②
「…………うあ……いって…………」
俺は……気を失ってたのか?
体中が悲鳴を上げている。
なぜか分からないが足が震えて、しばらく立てそうにない。
何があったのか確認しようと、一度周りを見渡してみる。
すぐ横には、ユリとカンナが気を失って倒れている。
医療に関しては詳しくはないが、ただ気を失っているだけだろうし、一応は大丈夫そうだ。
ユリとカンナはいたが、グリシアの姿は見当たらない。
一体グリシアはどこに行ったんだ?
そう思った次の瞬間。
木が生い茂っている森の方から、巨大な衝撃音が聞こえてきた。
驚いて、森の奥を見て見ると、何やら誰かが戦っているように見える。
あれは……グリシアか。
それと戦ってるのは……確かグレイム。
そうだ、確か瀕死だと思っていたグレイムが起き上がって、両腕で地面を叩き割ったんだ。
それにより起こった凄い衝撃が俺たちを襲い、気を失ってしまったのか。
気を失わなかったのか、すぐに目を覚ましたのか分からないが、
俺たちが気を失っている間に、一人でグリシアがグレイムの相手をしていたらしい。
だけど、さっきグレイムを一撃で倒してたよな。
それなら、簡単に倒せるはずだろ。
何であんなに手こずっているんだ。
おかしいだろ。
そう考えていると、衝撃音がすると同時に、森の方からボロボロになったグリシアが吹き飛ばされて来た。
さらに、それを追ってグレイムも森から走ってくる。
「……っく!この!」
そう言いながら、矢を放つがグレイムの体に刺さることなく、簡単に弾かれてしまった。
そして、隙を突かれたのか、グレイムの攻撃が、グリシアに直撃し、壁まで一気に殴れ飛ばした。
まずい、助けに行かないと。
このままじゃ、グリシアがやられてしまう。
足の震えも収まってきたし、今なら……。
そう思い、俺が立ち上がると、グリシアが大声を上げた。
「来ないでください!」
「……え、いや、だってボロボロじゃんか。……弱いけど、いないよりかはいた方が良いだろ」
「いえ、覚悟が決まらず、どうすれば良いか決める事すら出来ない人は……邪魔になるだけです。いない方がマシです。……分かったら、そこの二人と一緒に……出て行ってください」
「いや……だから……」
「何度言ったら分かるんですか!……モンスターも殺せず、答えも見つけられない人は……足手まといなんですよ!さっさと消えてください!」
グリシアに怒鳴られ、俺は近くのユリとカンナを背負い、巨大な扉へと走っていく。
扉に着くと、そのまま扉を開け、俺は部屋から逃げて行った。
よし、ユリたちも安全な所に置いたし、俺も加勢しに……。
いや、だけど邪魔になるだけって言ってたしな。
本当に邪魔なら、行かない方が良いよな。
……確か、覚悟が無くて、答えを見つけられない俺は、足手まといなんだっけか。
そんな事言ったって、分からないものは分からないんだから、仕方がないだろ。
殺すか殺さないかなんて、そんな簡単に決められることじゃない。
いくらこの世界の常識だからって、俺は殺したくない。
別に、命が大切だからとか、良けない事だと思うからとか、そういう理由じゃない。
ただ、俺が嫌だから、そんなしょうもない理由だ。
だけど、嫌な物は嫌なんだ。
……俺は一体どうすれば良いんだよ。
この世界では殺すのが普通だし、冒険者になるからには、モンスター殺しはついて回る。
だが、俺は嫌だ。モンスターでも、殺しはしたくない。
かといって、冒険者に慣れないのも嫌だ。
あれ、そう言えばなんで俺は冒険者になりたいんだ?
この世界に来た頃ならともかく、今の俺ならそれ以外になる選択肢もあるはずだ。
それなのに、なんで……。
「メイダーフレイム!」
そう叫び、炎を纏った矢を放つ。
放たれた矢は、一直線にグレイムへと向かって行く。
が、グレイムに直撃する直前に、グレイムの腕に弾かれてしまう。
本気の一撃を弾かれたことに動揺していると、グレイムがその胴体に見合わない速度で、グリシアへと突撃していく。
何とか防ごうと、弓を前にするが、グレイムの一撃は弓を壊し、そのままグリシアを殴り飛ばした。
何とか受け身を取ったが、そのダメージは大きく、立ち上がることが出来ない。
……ここまでかな。
まさか、ここまでグレイムが強かったとは。
グレイムの強さを、甘く見積もり過ぎていたのかもしれないな……。
いくら早く冒険者にならないといけなかったからって、無理はするべきじゃなかったのかもしれない。
こんなことになるなら、弱いモンスターを多く倒すだけでも良かったのかもしれない。
最近は、良い成績が取れずに、凄い焦ってた。
焦ると周りが見え見えなくなる癖、
少しは直しておくんだった。
そう言えば、みんなは逃げれたのかな。
自分の事ばっかりで、周りを見れなくなっていた。
そのせいで、みんなも危険な目に合ってしまった。
これじゃあ、あの人と同じなのに……駄目だな、私は。
何とかモンスターからも逃げきって、先生の所についているといいな。
緊張と、焦りのせいで、コウキにも、強く当たっちゃったし、こんな事になるなら謝っておくんだったよ。
今頃になって、後悔とか、謝罪とかたくさん出てくるな。
まあ、もう意味ないけどね。
様々な事を考えている間に、グレイムは近づいてきていたようだ。
目の前まで来たグレイムは両腕を上げ、殴り潰す姿勢に入る。
……本当にここまでか。
最悪で、諦めの悪い人生だったな。
最後くらいは、諦めて、安らかに逝くかな。
「…………さよなら」
そう呟いた直後、グレイムの無慈悲な一撃は振り下ろされた。
その一撃はそのままグリシアへと向かって行き、グリシアを潰……。
「かげええええええ!」
グリシアに攻撃が当たる直前。
グレイムは何かに殴られ、森の方へと飛ばされていった。
突如殴り飛ばされたグレイムに驚き、グリシアが前を向くと、そこには一人の男が立っていた。
「……なんで…………なんでここにいるんですか……逃げろって…………」
「なんでって……決まってるじゃないですか。……助けに、助けに来たんですよ」
そこに立っていたのは、巨大なハンマーを持った、コウキだった。
コウキは、ハンマーを下ろすと、グリシアへと近づいて行く。
「助けにって、二人はどうしたの?それに、邪魔だって言ったでしょ!人の話聞いてたの!?」
「それは、グリシアさんには言われたくないかな。……はい、一応応急処置用の、医療道具あるから、渡しとくね。……それに、大丈夫だよ。もう、邪魔にはならないから」
そう言いながら、コウキはグリシアへ絆創膏や傷薬が入った袋を手渡しした。
そんな事をしていると、殴り飛ばされたグレイムはすぐに立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。
「もう起き上がって……もう良いから、早く消えてください!この状況が分からないんですか?」
「嫌だって、言ってるだろ。……影」
木陰に触れながらそう呟くと、木陰が少しずつ動き始めた。
木陰はあっという間に、集まり、形を巨大なハンマーへと変えた。
「グリシアさん、さっき俺に覚悟が無い、答えを見つけられていないって言いましたよね。もう大丈夫です、ある意味答えは見つけました」
「……答えを見つけた?」
「はい!」
あれから、少しの間考えていた。
なんで俺は冒険者になりたかったのか。
別に、困っている人を助けたいとか、みんなのためになることをしたいとか。
そんな大それた理由じゃなかったんだ。
答えは簡単だった。
俺は、この世界で最高の人生を送りたかったんだ。
そして、この世界の最高の人生には、冒険者が必要だったんだ。
前世で少し憧れていたからじゃない、学園で生活を送るうちに、冒険者になって、最高の人生を送りたいと思うようになったんだ。
しっかりした理由じゃないし、根本的な部分も曖昧だ。
それでも別に良いと思う。
他の誰でもなく、俺が良いんだ。
俺の人生なんだ、今俺が思うように進めばいいんだ。
だとしたら、答えは決まった。
「……俺は、やっぱりモンスターを殺せません。別に凄い理由がある訳じゃなく、ただシンプルに殺すのが嫌だからです。それでも、冒険者にはなりたいです。俺が最高の人生を送るためには、モンスターを殺さない事も、冒険者になる事も、必要不可欠なんです。だから、今はこれで良いんです。矛盾してようが、なんだろうが関係ありません!自分の目標のために、今はこのままで行きます!これが俺の答えです!」
それだけ言い切り、俺はしっかり前を向いた。
ゆっくりと歩いてくるグレイムの方をしっかりと向いて、シャドウハンマーを構える。
そして、覚悟を決めた俺は叫んだ。
「……かかってこいや、ゴーレムやろう!俺が相手に、なってやる!」
俺はハンマーをしっかり握り、グレイムへと立ち向かう。
覚悟を決め、コミュ症は巨大なモンスターに挑む




