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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
26/120

人生にはすぐに答えを出さなくても良い事も、あるのかもしれない。②

「…………うあ……いって…………」


 俺は……気を失ってたのか?

 体中が悲鳴を上げている。

 なぜか分からないが足が震えて、しばらく立てそうにない。


 何があったのか確認しようと、一度周りを見渡してみる。

 すぐ横には、ユリとカンナが気を失って倒れている。

 医療に関しては詳しくはないが、ただ気を失っているだけだろうし、一応は大丈夫そうだ。

 ユリとカンナはいたが、グリシアの姿は見当たらない。 

 一体グリシアはどこに行ったんだ?

 

 そう思った次の瞬間。

 木が生い茂っている森の方から、巨大な衝撃音が聞こえてきた。

 驚いて、森の奥を見て見ると、何やら誰かが戦っているように見える。


 あれは……グリシアか。

 それと戦ってるのは……確かグレイム。

 そうだ、確か瀕死だと思っていたグレイムが起き上がって、両腕で地面を叩き割ったんだ。

 それにより起こった凄い衝撃が俺たちを襲い、気を失ってしまったのか。


 気を失わなかったのか、すぐに目を覚ましたのか分からないが、

 俺たちが気を失っている間に、一人でグリシアがグレイムの相手をしていたらしい。

 だけど、さっきグレイムを一撃で倒してたよな。

 それなら、簡単に倒せるはずだろ。

 何であんなに手こずっているんだ。

 おかしいだろ。


 そう考えていると、衝撃音がすると同時に、森の方からボロボロになったグリシアが吹き飛ばされて来た。

 さらに、それを追ってグレイムも森から走ってくる。

 

「……っく!この!」


 そう言いながら、矢を放つがグレイムの体に刺さることなく、簡単に弾かれてしまった。

 そして、隙を突かれたのか、グレイムの攻撃が、グリシアに直撃し、壁まで一気に殴れ飛ばした。


 まずい、助けに行かないと。

 このままじゃ、グリシアがやられてしまう。

 足の震えも収まってきたし、今なら……。

 そう思い、俺が立ち上がると、グリシアが大声を上げた。


「来ないでください!」


「……え、いや、だってボロボロじゃんか。……弱いけど、いないよりかはいた方が良いだろ」


「いえ、覚悟が決まらず、どうすれば良いか決める事すら出来ない人は……邪魔になるだけです。いない方がマシです。……分かったら、そこの二人と一緒に……出て行ってください」


「いや……だから……」


「何度言ったら分かるんですか!……モンスターも殺せず、答えも見つけられない人は……足手まといなんですよ!さっさと消えてください!」

 

 グリシアに怒鳴られ、俺は近くのユリとカンナを背負い、巨大な扉へと走っていく。

 扉に着くと、そのまま扉を開け、俺は部屋から逃げて行った。

 

 よし、ユリたちも安全な所に置いたし、俺も加勢しに……。

 いや、だけど邪魔になるだけって言ってたしな。

 本当に邪魔なら、行かない方が良いよな。


 ……確か、覚悟が無くて、答えを見つけられない俺は、足手まといなんだっけか。

 そんな事言ったって、分からないものは分からないんだから、仕方がないだろ。

 殺すか殺さないかなんて、そんな簡単に決められることじゃない。


 いくらこの世界の常識だからって、俺は殺したくない。

 別に、命が大切だからとか、良けない事だと思うからとか、そういう理由じゃない。

 ただ、俺が嫌だから、そんなしょうもない理由だ。

 だけど、嫌な物は嫌なんだ。


 ……俺は一体どうすれば良いんだよ。

 この世界では殺すのが普通だし、冒険者になるからには、モンスター殺しはついて回る。

 だが、俺は嫌だ。モンスターでも、殺しはしたくない。

 かといって、冒険者に慣れないのも嫌だ。


 あれ、そう言えばなんで俺は冒険者になりたいんだ?

 この世界に来た頃ならともかく、今の俺ならそれ以外になる選択肢もあるはずだ。

 それなのに、なんで……。

 



「メイダーフレイム!」


 そう叫び、炎を纏った矢を放つ。

 放たれた矢は、一直線にグレイムへと向かって行く。

 が、グレイムに直撃する直前に、グレイムの腕に弾かれてしまう。

  

 本気の一撃を弾かれたことに動揺していると、グレイムがその胴体に見合わない速度で、グリシアへと突撃していく。

 何とか防ごうと、弓を前にするが、グレイムの一撃は弓を壊し、そのままグリシアを殴り飛ばした。

 何とか受け身を取ったが、そのダメージは大きく、立ち上がることが出来ない。



 ……ここまでかな。

 まさか、ここまでグレイムが強かったとは。

 グレイムの強さを、甘く見積もり過ぎていたのかもしれないな……。

 

 いくら早く冒険者にならないといけなかったからって、無理はするべきじゃなかったのかもしれない。

 こんなことになるなら、弱いモンスターを多く倒すだけでも良かったのかもしれない。

 最近は、良い成績が取れずに、凄い焦ってた。

 焦ると周りが見え見えなくなる癖、

 少しは直しておくんだった。


 そう言えば、みんなは逃げれたのかな。

 自分の事ばっかりで、周りを見れなくなっていた。

 そのせいで、みんなも危険な目に合ってしまった。

 これじゃあ、あの人と同じなのに……駄目だな、私は。

 何とかモンスターからも逃げきって、先生の所についているといいな。

 緊張と、焦りのせいで、コウキにも、強く当たっちゃったし、こんな事になるなら謝っておくんだったよ。

 

 今頃になって、後悔とか、謝罪とかたくさん出てくるな。

 まあ、もう意味ないけどね。

 

 様々な事を考えている間に、グレイムは近づいてきていたようだ。

 目の前まで来たグレイムは両腕を上げ、殴り潰す姿勢に入る。

 

 ……本当にここまでか。

 最悪で、諦めの悪い人生だったな。

 最後くらいは、諦めて、安らかに逝くかな。


「…………さよなら」


 そう呟いた直後、グレイムの無慈悲な一撃は振り下ろされた。

 その一撃はそのままグリシアへと向かって行き、グリシアを潰……。




「かげええええええ!」


 グリシアに攻撃が当たる直前。

 グレイムは何かに殴られ、森の方へと飛ばされていった。

 突如殴り飛ばされたグレイムに驚き、グリシアが前を向くと、そこには一人の男が立っていた。

 

「……なんで…………なんでここにいるんですか……逃げろって…………」


「なんでって……決まってるじゃないですか。……助けに、助けに来たんですよ」


 そこに立っていたのは、巨大なハンマーを持った、コウキだった。

 コウキは、ハンマーを下ろすと、グリシアへと近づいて行く。


「助けにって、二人はどうしたの?それに、邪魔だって言ったでしょ!人の話聞いてたの!?」


「それは、グリシアさんには言われたくないかな。……はい、一応応急処置用の、医療道具あるから、渡しとくね。……それに、大丈夫だよ。もう、邪魔にはならないから」

 

 そう言いながら、コウキはグリシアへ絆創膏や傷薬が入った袋を手渡しした。

 そんな事をしていると、殴り飛ばされたグレイムはすぐに立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。


「もう起き上がって……もう良いから、早く消えてください!この状況が分からないんですか?」


「嫌だって、言ってるだろ。……影」


 木陰に触れながらそう呟くと、木陰が少しずつ動き始めた。

 木陰はあっという間に、集まり、形を巨大なハンマーへと変えた。


「グリシアさん、さっき俺に覚悟が無い、答えを見つけられていないって言いましたよね。もう大丈夫です、ある意味答えは見つけました」


「……答えを見つけた?」


「はい!」

 

 あれから、少しの間考えていた。

 なんで俺は冒険者になりたかったのか。

 別に、困っている人を助けたいとか、みんなのためになることをしたいとか。

 そんな大それた理由じゃなかったんだ。


 答えは簡単だった。

 俺は、この世界で最高の人生を送りたかったんだ。

 そして、この世界の最高の人生には、冒険者が必要だったんだ。

 前世で少し憧れていたからじゃない、学園で生活を送るうちに、冒険者になって、最高の人生を送りたいと思うようになったんだ。

 しっかりした理由じゃないし、根本的な部分も曖昧だ。

 それでも別に良いと思う。 

 他の誰でもなく、俺が良いんだ。

 俺の人生なんだ、今俺が思うように進めばいいんだ。

 だとしたら、答えは決まった。


「……俺は、やっぱりモンスターを殺せません。別に凄い理由がある訳じゃなく、ただシンプルに殺すのが嫌だからです。それでも、冒険者にはなりたいです。俺が最高の人生を送るためには、モンスターを殺さない事も、冒険者になる事も、必要不可欠なんです。だから、今はこれで良いんです。矛盾してようが、なんだろうが関係ありません!自分の目標のために、今はこのままで行きます!これが俺の答えです!」


 それだけ言い切り、俺はしっかり前を向いた。

 ゆっくりと歩いてくるグレイムの方をしっかりと向いて、シャドウハンマーを構える。

 そして、覚悟を決めた俺は叫んだ。


「……かかってこいや、ゴーレムやろう!俺が相手に、なってやる!」


 俺はハンマーをしっかり握り、グレイムへと立ち向かう。

覚悟を決め、コミュ症は巨大なモンスターに挑む

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