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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
25/120

人生にはすぐに答えを出さなくても良い事も、あるのかもしれない。①

 ゴレムと遭遇して、数分後。

 俺たちはモンスターに出会う事なく、平和に進んでいる。

 のだが……。


 空気が重い!

 俺がモンスターを殺せるかどうかの話の後、ずっと空気が悪い。

 グリシアは普通に何もしゃべらないし、ユリはさっきのグリシアの態度を根に持ってるのか、いつもより顔が怖い気がする。

 この空気を何とかしようと、カンナは色々と話しているのだが……。


「いやー、みんな少し暗くない?もっとさ、明るく行こうよ!……あ、そうだ!うちが面白いこと言って、空気を良くしてあげるよ!そうだなー、モモ校長はー今日も絶好調!なんちって!…………んふ」


 つまらないダジャレを言っては無視され、無視された事に喜びを覚えている。

 カンナが特殊なのかもしれないが、こんな空気の中で、ダジャレ言って一人で興奮できるなんて、ドMって頭がおかしいのか?


 しかし、この空気何とかしないとだよな。

 元々の原因は俺にもあるわけだしな。

 

 おそらく、この空気を換えるには、俺が答えを見つけるのが一番良い手だ。

 だが、答えを見つけると言っても、どうするか。

 モンスターを殺せるようにならないといけないのは、俺も良く理解している。

 それがこの世界の常識だし、そうしなければ冒険者として生きていけない。

 

 頭では理解している。

 理解しているが、やろうとすると出来ない。

 だが、やれなくても、やらないといけないし……。


 あー、もう意味が分からない。

 永遠と同じ疑問が繰り返されていく。

 一体俺は、どうすれば良いんだよ。

 そう思った所で、グリシアが足を止めた。


「やっと着きましたね」

 

 そう言われて、顔を上げると、そこには巨大な扉が佇んでいた。

 普通の扉の数十倍の大きさがあり、所々に石などで装飾が施されている。

 途轍もなく大きく、綺麗な扉だがいったい何の扉なんだろうか。

 そう思うと、俺の心を読んだかのように、すぐにグリシアが答えを話してくれた。


「知っていると思いますが、これはダンジョンの部屋と、通路を分ける扉です。この先には大きな空間が広がっていて、そこで数体のモンスターが暮らしています。これから、この扉の先にある部屋のモンスターを討伐します。それで良いですよね?」


「……え、あ、はい」


「いや、待って!」

 

 俺が反射的に答えると、ユリが少し大きな声で止めてきた。

 そして、マップを取り出しながら、ゆっくり話し始めた。


「このマップを見た感じ、ここは私たちじゃ敵わないから、入るのを禁止されている部屋だよ。禁止の部屋に入るのは良くないし、別の所にしよう」


 禁止の部屋。

 確か先生たちが俺たちのため、マップに俺たちが敵わないモンスターがいる所に、禁止と書いてくれていたんだっけか。

 この部屋に禁止と書かれているのなら、確かにやめるべきだな。


「……知ってますよ、この部屋が禁止だという事くらい」


「え、じゃあ何で……」


「知ってると思いますが、学園の授業で、たくさんの良い成績を取れた人は、特別に三年間学園に通わずとも、冒険者になることが出来るんです。私は一刻も早く、冒険者にならないといけません。なので、この特別で冒険者になりたいんだす。そのために、一年生じゃ倒せないと思われ、禁止されたこの部屋のモンスターを倒したいんです」

 

 倒したいんですって……何言ってんだ、こいつ。

 少し、話の内容をまとめよう。

 初耳だが、成績優秀だったら、全てを学び終える前に、冒険者になることが出来るらしい。

 グリシアはそれで、冒険者になりたいから、禁止と言われた部屋に入って、強いモンスターを倒したい。

 

 ……いや、何言ってんだ、こいつ。

 さすがにそれはおかしいだろ。

 いくら良い成績が必要だからって、禁じられている事をするのは、良くないだろ。

 というか、もしモンスターを倒せたとしても、ルールを破ったとして、±0にならないか?

 一体グリシアは、何考えてんだよ。 


 どうやら、そう思ったのは俺だけじゃなかったようだ。

 俺が反論する前に、カンナが大声で話し始めた。


「いやいや、駄目でしょ!成績のためだからって、禁止の場所に入るのは……」


「行きたくないなら、来なくていいですよ。私は私の目的のため、行きたいから行くんです。どれだけ止められても、無駄ですよ」


 俺が言えた事じゃないのかもしれないが、少し自分勝手すぎないか?

 俺たちは今は同じチームだ。

 それなのに、自分がしたいからって、俺たちが反対しているのにも関わらず、禁止の部屋に入ろうとか……。

 一回強く言った方が良いんじゃないだろうか。


 そう思い、口を開いた瞬間。

 俺が言葉を発する前に、横にいたユリが話を始めた。


「…………グリシアさん、少し自分勝手すぎない?」


「………………え、ユリ……さん?」


「もっと周りの人の事を考えてよ。さっきのコウキくんの件もそうだけどさ、周りの人の気持ちとか、その場の状況とかをしっかりと考えた上で行動した方が良いと思うよ。貴方のせいで振り回される人の事も、少しは考えたらどうなの?」


 ……えっと、怖い。

 それなりにユリとは一緒にいたが、怒ってるユリは初めて見た。

 声色が凄く怖いし、顔は凄い怒ってる。

 言葉には棘があるようにも感じる。

 いつも元気いっぱいで、笑顔で溢れているカンナですら、こっちを見ようとせず、静かにしているレベルだ。

 

 うん、これからはユリを怒らせるのはやめておこう。

 普通に怖すぎる。


「…………ま、まあ、良いですよ。どれだけ言われようと、私は私の好きなようにするだけです。みんなも好きにしてください」


 少し怯えた様子でそう言うと、グリシアは巨大な扉に手をかけ、ゆっくりと開いていく。

 巨大な割に、そこまで重くないのか、扉はいとも簡単に開いた。

 

 扉の先に広がっていたのは、室内だとは思えないほどの、緑が生い茂る巨大な空間。

 地面は芝生で、至る所に木々が生い茂っている。 

 まるで本物の森の様だ。

 道中の様に松明がない代わりに、天井の至る所に、電球とは少し違った、光る白い球体が取りつけられている。 

 

 凄く不思議な空間だが、肝心のモンスターが一体もいない。

 静かで、生物がいる気配が全くしないのだ。


 どういうことだ?

 もしかして、全てのモンスターが外に出ていて、一体もここにいなかったりして。

 と、そんな事を思った次の瞬間。


 目の前に、巨大な何かが落ちてきた。 

 その衝撃で、俺は思わず尻餅をついてしまった。

 一体何が落ちてきたんだ?


 ゆっくりと前を向き、落ちてきた何かを見てみる。

 そこにいたのは巨大な岩に大きな目玉が一つ埋め込まれていて、四角い岩が連なって出来た足の様な物、丸い岩が連なって出来た腕の様な物が付いている物質。

 俺でも強いと分かるほど、圧倒的な威圧感を出しているモンスターだった。


「……な、なんだ、これ。……モンスター、だよな」


「……うん、前に本で見たことがある。確か……グレイム。ゴレムの上位互換のモンスターだよ。波の冒険者じゃないと、歯が立たないって聞いたことがある」


「え、じゃあ、逃げた方が…………」


「……そうですね、みんなは逃げてください。私は一人で、こいつを倒しますから」


 そう言うと、グリシアは右ポケットの中から、一枚の紙を取り出した。

 紙を左手で握りしめ、それを前に出すと、グリシアは叫んだ。


「メイダー‼」


 瞬間。

 グリシアの左手が光ったと思うと、

 そこにあった紙は消え、その代わり赤く光る、綺麗な弓が握られていた。


 紙が消えて、弓が出てきた?

 もしかして、あれがグリシアの力なのか。

 見た感じ、紙で弓を作る力とかだろうか。

 だが、弓なんかでグレイムとか言うモンスターを倒せるとは思えない。

 どう見たって頑丈そうな岩の塊だ。

 弓矢なんて、簡単に弾かれちゃうんじゃ……。


 そんな事を思っていると、グリシアはどこからか取り出した、赤い色の矢を手に取った。

 そして、自然な動きで、構えを取ると、グレイムへと矢を飛ばした。

 

 飛ばされた矢はある程度の速さで一直線に飛んでいくと、突如燃え出し、一気に速度が増した。

 燃えながら矢は飛んで行き、グレイムの体を突き抜けた。


 グロオオオオオオオオ……。


 体を突き抜けられたグレイムは、悲鳴のような声を上げ、そのまま倒れこんでしまった。

 

「す、凄い…………」


「これくらい、余裕ですよ。それにしても、一撃で倒れるとは……。やはり、大した事なかったですね。これなら、もう少しレベルの高いモンスターを狙った方が……」


 グロオオオオオオオオ‼


 グリシアが話していると、倒れていたグレイムが突然起き上がり、

 大声を上げながら、両腕を大きく上げた。

 そして、勢いづけて、グレイムは両腕を地面に叩きつけた。


 次の瞬間。

 大きな衝撃が辺りに広がり、俺たちは壁へと吹き飛ばされた。

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