コミュ症は実際にモンスターと戦う事になっても、ゲームの様に殺すことは出来ない。③
あけおめ!
という事で、新年ですね!
去年良い事だらけだった人も、悪い事だらけだった人も、今年は良い年になるよう祈っております!
それでは、本編どうぞ!
「え、コウキ、モンスターと戦うの初めてなの?」
俺がモンスターと初めて戦うと言うと、
驚いたような声で、カンナはそう聞いてきた。
「え、そ、そうですけど。……なんか駄目でしたか?」
「いや、駄目じゃないけど、珍しいと思ってさ。……そうだな、こっちのゴレムはコウキ一人で戦ってみない?やばくなったら、うちが助けるからさ。初めての戦いは自分一人で戦いたいもんね!うん、そうだね、そうしよう!」
「え……いや…………でも」
「そうしよう!」
「……はい」
カンナの勢いに押され、断ることが出来なかった。
……どうしよう。
カンナも一緒に戦うと思っていたから、少し気持ちが楽だった部分もあった。
カンナが一緒に戦ってくれるだけで、負けない事はもちろん、少しのケガを負うことなく勝てるからな。
だが、一人で戦うとなると話は一気に変わってくる。
俺は戦いがそこまで強くない上に、モンスターと戦った事がない。
どうしよう、不安が一気に蘇ってきた。
やっぱり訂正して、一緒に戦ってもらおうか。
しかし、そう思った時には、もう遅かった。
突然、後ろにいたカンナが背中を押して、俺を一体のゴレムの前ヘ押し出した。
「……え、カンナさん、何を!?」
「何って、緊張してたみたいだし、背中を押してあげただけだよ。大丈夫、頑張れ!」
小さな親切、大きなお世話過ぎる。
背中を押してあげただげって、こういうのは実際に背中を押すもんじゃないだろ。
だが、出てしまったものは仕方がない。
こうなったら、入学試験の時のように、やれるだけやってみよう。
不意打ちも考えていたが、ゴレムこっちガン見してるし、
普通にばれてるし無理だよな。
ダンジョン内には松明しか光源がないせいで、使える影も限られてくる。
入学試験や、実技テストで作った超巨大なシャドウハンマーは恐らく作れない。
となると、それ以外で小さく、一番火力がある武器。
何かないか、それ相応の火力があり、この場で作れる武器……。
数秒間考えたのち、一つの武器が思い浮かんだ。
「…………あ、そうだ。…………影」
そう呟いた瞬間。
松明で作られた影が、少しずつ形作っていく。
そして、物の数秒で完全に変化した。
それは、剣の様に鋭くなく、槍の様に長くもない。
弓の様な遠距離武器でもなければ、ハンマーの様に大きくない。
その武器の名は、棍棒。
ゲームなどで時々見る、打撃武器だ。
今の影で作れる大きさで、火力も十分にある。
これなら、行けるかもしれない。
棍棒を作った俺は、さっきから俺の方を見ていたゴレムの方をしっかり向き、下手くそなりに戦闘態勢を整える。
それを見たゴレムも、両手を前に出し、戦闘態勢に入った。
少しの間、二人の間に静寂な時間が流れたのち、ゴレムが先に動き出した。
ゴレムは両手を真っ直ぐに上げ、俺へ殴り掛かってきた。
それをギリギリの所で避けたのち、持っていた棍棒を大きく振り上げ、勢いづけて全力で振り下ろした。
棍棒が直撃したゴレムは少しの間、ふらふら歩いたのち、それなりに大きな音を立て倒れこんだ。
警戒しながら、近くに寄ってみるが、ゴレムが動く気配はない。
「……た、倒せたのか?」
「モンスター初討伐、おめでっとうー!」
そう言いながら、カンナが後ろから飛びついてきた。
その勢いに押され、俺は顔から倒れこんだ。
普通に痛い。
「あ、ありがとう、カンナさん。何とか勝てたよ」
「いやー、流石コウキ!うちが初めて戦った時は、随分手こずったのに、こんなに簡単に倒せるとは。うちが見込んだだけはあるな!」
「そっちも倒せたみたいだね!」
俺たちがそんなやり取りをしていると、後ろからユリたちが歩いてきた。
その様子から見るに、ユリたちもゴレムを倒し終えたようだ。
「うん、なんとか。……そ、そっちも倒せたみたいで何よりだよ」
「まあ、弱いモンスターだったですし、これくらいは……。あれ、まだ止めは刺していないんですね。早く止めを刺して、先に進みましょう」
「え、あ、はい」
そう答え、俺は倒れているゴレムの方へと近づいて行く。
ゴレムは動く気配はないが、水色の石が少し光っている所を見ると、恐らくまだ生きている。
……流れで、はいって言っちゃったけど、止めを刺すって殺すって事だよな。
以前、授業でやっていたが、基本的に倒したモンスターには止めを刺さなくてはならない。
理由は、倒したモンスターが、倒された恨みで人間を執拗に襲う可能性があるかららしい。
ここまでやったんだし、授業で言っていたように、殺さないといけないというのは分かる。
しかし……きついな。
いくら殺さないといけないとしても、やはり殺したくない。
ゴレムは岩の見た目をしていて、普通の生き物を殺すよりかは、気は楽だろう。
だが、嫌な物は嫌だ。
いくらこの世界の常識だからと言っても、平和な日本で育ち、殺しを全くした事がない、ただの高校生だった奴が、殺せるわけがない。
……でも、殺さないとだよな。
それがこの世界の常識だし、この先、冒険者になるって事は、何度もモンスターと戦う事になる。
その事を考えると、今から慣れておかないといけないもんな。
俺は覚悟を決め、倒れたゴレムの目の前に立った。
そして、棍棒を振り上げ、ゴレムを殺そうと、棍棒を振り下ろそうとする。
しかし、棍棒を振り上げたまま、振り下ろすことが出来ない。
頭では振り下ろそうとしているが、体が言う事を聞かない。
そんな時。ユリが、俺の腕を掴んだ。
「おちついて、コウキくん。無理しなくていいよ。ごめん、配慮が足りなかったよ。モンスターを殺すのも初めてだったんだね。無理して殺さなくていいよ、校長先生がさっき言っていた通り、ゆっくり慣れて行けばいいよ。今はまだ殺せなくてもいいよ」
「え、いや、でも……」
「ユリの言う通りだよ。うちも考えが足りなかったわ。モンスターと戦った事がないなら、殺した事もないに決まってるわな。うちも最初は殺せなかったし、ゆっくりで良いと思うよ」
「二人とも……」
……やばい、なんか泣きそうになってきた。
そうだよな……ゆっくり慣れていけば……。
……本当にそれで良いのだろうか。
モンスターに対しては少しずつ慣れていき、殺すのにも少しずつ慣れていく。
少しずつ、少しずつで良いのだろうか。
あの日、俺は自分を変えると決めたじゃないか。
全部先延ばしにしていたら、前と変わらないんじゃないのか?
かと言って、殺したくないのは事実だ。
こんなに簡単に命を奪って良い訳がない。
だけど、この世界ではそれが常識らしいし……。
様々な考えが巡り、永遠とも思える時間考え込んでいると、
さっきまで黙っていたグリシアが、ゆっくりと話し始めた。
「……いや、無理ですよ。ここで殺せないんじゃ、一生殺せません。これは私の知っている中では、そうやって少しずつ慣れようとして、最終的にモンスターを殺せるようになった人はいません。子供ならともかく、その歳で殺せるようになるのは不可能ですよ。人はそう簡単には変われませんからね。本当に殺せないのなら、あなたは学園をやめた方が良い。冒険者は向いてませんよ」
「……少し言い過ぎじゃない?グリシアさん、コウキくんの気持ちも考えてよ」
「そうだよ!そんなに強い言葉を使うなら、コウキじゃなくてうちに伝えな!」
「…………いや、グリシアの言う通りだよ」
凄い直接的な言葉で言って来たが、全て事実だ。
反論の余地がない。
確かにここで殺せなければ、きっと一生言い訳を並べて、モンスターを殺すことはないだろう。
そうなれば、モンスターを殺すことになる冒険者は向いてない。
この学園も、やめるべきなのかもしれない。
だが、俺は学園が好きだし、絶対にやめたくない。
前世で夢見たことがあった、冒険者にもなりたい。
……一体どうすれば良いんだ。
俺はどうするのが正解なんだ。
考えすぎて、頭の中がこんがらがってきた。
「……まあ、いいですよ。このゴレムは私が仕留めておくんで、先に進んじゃいましょう。時間もないですしね」
それだけ言うと、グリシアはゴレムを仕留め、すぐに道なりに進んで行った。
俺たちは何も言う事なく、グリシアについて行く。
少し重めの話になってしまいましたね。
しかし、一応必要な話ですので、まあ、しゃーない。
次回は、初めての強敵現る。




