異世界のチート能力は、本当にチートなのかもしれない。③
校長先生が倒れてから、数秒が立った。
しかし、校長先生が動き出だす気配はない。
もしかしたら、本当に死んでしまったのではないか。
そんな考えが頭をよぎり、状況をしっかり理解していそうなユリに確認を取ってみる。
「……あのさ、ユリ。……これ校長先生大丈夫だよな?……し、死んだりしてないよな?」
「うーん、多分もうすぐ死ぬと思うよ」
「そうだったんだ、よかっ…………え、もうすぐ死ぬ?」
「うん、当たり所が悪くて、まだ死ねてないみたいだね。だけど、もう少しで死ねると思うし、しっかり見てよ」
もうすぐ死ぬ?
嘘だろ、校長先生がもうすぐ死ぬのか。
……いや、平然ととんでもない事を言ってないか。
死ぬって……やばいじゃないか。
そんなにやばい状態なら、早く助けに行った方が良いだろ。
何でもう少し見てようって考えになるんだよ。
他の生徒も、先生も動く素振りはないし、何考えているんだ。
「……凄い動揺してるけど、もしかしてコウキくんは校長先生の力を知らなかったりする?」
「えっと、知らないけどそれがどうしたの?……と、というかあれ助けに行かなくて良いの?……やばいんじゃ……」
「あー、大丈夫だよ。少しここで見てて」
見ててって……そんな状況じゃないだろ。
だって、校長先生が死ぬんだぞ。
何とかして、助けないといけないんじゃないのか。
だけど、校長先生の近くでは、ゴブリンが校長先生の様子を伺ってる。
あのゴブリンを何とかしないと、助けには行けないよな。
全員で挑めば、ゴブリンくらい倒せそうだが、やはり生徒と先生は動く気配がない。
本当にみんな何してるんだよ。このままじゃ、本当に校長先生が……。
そう思った直後だった。
校長先生の体が、少し動いたように見えた。
まさかと思い、目を擦って再度校長先生を見てみる。
すると、校長先生は今度は大きく動き出し、すぐに立ち上がった。
その状況を見たゴブリンは驚き、困惑している。
それもそうだ。さっきまで虫の息だった校長先生が、急に立ち上がり、ピンピンしてるんだ。
俺も驚きを隠せない。
素人の俺でもやばいと分かるくらい、出血していたのにも関わらず、何もなかったかのように平然としている。
流石に意味が分からない。
一体どうなってるんだ。
俺が困惑していると、校長先生がゆっくりと口を開いた。
「……ゴブリン。的確に私の隙を突き、出来るだけ心臓の近くを突き刺した、良い攻撃だった。ゴブリンの中で、私をこれだけ早く殺せたのは、貴様が初めてだ。敬意を持って、一撃で殺してやろう」
それだけ言うと、校長先生は剣を構え、ゴブリンに狙いを定めた。
何かを感じ取ったのか、ゴブリンは校長先生が攻撃を繰り出す前に、襲い掛かる。
が、襲い掛かった次の瞬間。
校長先生が瞬時に消え、一瞬でゴブリンの後ろへ現れた。
そして、その数秒後。ゴブリンは地面へ倒れこみ、動かなくなった。
「…………え?……だ…………え?」
突然起こったその状況に、全く理解が追い付かない。
俺が理解できていない事が分かったのか、ユリはゆっくりと説明し始めた。
「モモ校長はね。生呪の力とは別の、特殊な力を持っているの」
「生呪の力とは、別の力?」
「うん、その力は『生き返り』。どんな死に方をしても、すぐに生き返ることが出来る、最強の力なの」
……生き返り。
死んでも生き返るってことは、不死身の死ぬバージョン?
いや、死ぬから不死身ではないのか。
……どちらにしても強すぎるだろ。
死んでも死なないって、漫画とかに一人はある最強能力の一つじゃないか。
しかし、それならあれだけ出血して、生きているのにも納得がいく。
さっきも一度死んで、生き返ったのか。
だが、新たな疑問も出てきた。
「だ、だとしたら、生呪の力は一体どんな力なんだ?今生呪の力を使ったようには、見えなかったけど……」
「いや、多分だけど、今生呪の力も使ってたと思うよ。モモ校長の力は、少しの間、自分を殺した者より、強くなる力。生き返りに合った、最弱の力だよ」
自分を殺した者より、強くなる力か。
普通に考えたら、使うことがない、最弱ともいえる力だ。
死んだら、強くなったって意味がないからな。
だが、校長先生の生き返りの力と合わせれば、それこそ最強の力になる。
なるほど、なんとなく分かってきた。
さっき死んだのは、生呪の力を発動させるためだったのか。
死んで、生呪の力を発動し、ゴブリンより強くなる。
それで、ゴブリンを倒したのか。
……考えれば考える程、最強だ。
生き返りがある限り、死んでも生き返り、
生き返ると、その分強くなれる。
普通に考えたら、絶対に倒すことが出来ない、最強だ。
まさしく、チート級の力の持ち主。
これが騎士団の団長にして、校長先生の実力か。
恐ろしいな。
「……さて、今見た通り、人間は弱い。モンスターにいとも簡単に殺され、蹂躙される惨めな生物である。だが、その事実に向き合い、戦う覚悟を決めた人間は強くなる。モンスターを殺す力を手に入れる事が出来る。いいか、時間はある。ゆっくりで良い。この学園にいる間に、覚悟を手に入れるのだ。そうすれば、モンスターへの恐怖はなくなり、いつしか強くなれる。分かったか!」
『はい!』
そうだ、校長先生の言う通りだ。
時間はある、ゆっくりでも良いんだ。
少しずつ、モンスターに慣れていくんだ。
そして、いつかはモンスターを倒せるくらいに強くなれればいいんだ。
……初めてモンスターを見て、少しビビってたのかもな。
モンスターに人間以上の力があるように、俺たちにも力がある。
前を向いて、ゆっくり、でも確実に、進んで行こう。
校長先生のおかげか、いつの間にかモンスターに対する恐怖は消えていた。
その代わりに、少しだけ、覚悟を持てたような気がする。
そんな事を考えていると、校長先生が再び、ゆっくりと話を始めた。
「私からの話が済んだ所で、これからモンスター討伐訓練の説明を行う。この授業は、自分たちで4人チームを作ってもらい、行う授業だ」
なるほどな……自分たちで4人組を作るのか。
最近先生が良い事ばかり言うから、忘れかけていた。
授業において、やっぱり先生は駄目だ。
……生徒に4人組を組ませるなよ。
ちなみに、校長先生は今作では相当強いです。
次回、誰もが経験する地獄再び…?




