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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
学園生活編
21/120

異世界のチート能力は、本当にチートなのかもしれない。③

 校長先生が倒れてから、数秒が立った。

 しかし、校長先生が動き出だす気配はない。

 もしかしたら、本当に死んでしまったのではないか。

 そんな考えが頭をよぎり、状況をしっかり理解していそうなユリに確認を取ってみる。


「……あのさ、ユリ。……これ校長先生大丈夫だよな?……し、死んだりしてないよな?」


「うーん、多分もうすぐ死ぬと思うよ」


「そうだったんだ、よかっ…………え、もうすぐ死ぬ?」


「うん、当たり所が悪くて、まだ死ねてないみたいだね。だけど、もう少しで死ねると思うし、しっかり見てよ」


 もうすぐ死ぬ?

 嘘だろ、校長先生がもうすぐ死ぬのか。

 

 ……いや、平然ととんでもない事を言ってないか。

 死ぬって……やばいじゃないか。

 そんなにやばい状態なら、早く助けに行った方が良いだろ。 

 何でもう少し見てようって考えになるんだよ。

 他の生徒も、先生も動く素振りはないし、何考えているんだ。


「……凄い動揺してるけど、もしかしてコウキくんは校長先生の力を知らなかったりする?」


「えっと、知らないけどそれがどうしたの?……と、というかあれ助けに行かなくて良いの?……やばいんじゃ……」


「あー、大丈夫だよ。少しここで見てて」


 見ててって……そんな状況じゃないだろ。

 だって、校長先生が死ぬんだぞ。

 何とかして、助けないといけないんじゃないのか。

 だけど、校長先生の近くでは、ゴブリンが校長先生の様子を伺ってる。

 あのゴブリンを何とかしないと、助けには行けないよな。

 全員で挑めば、ゴブリンくらい倒せそうだが、やはり生徒と先生は動く気配がない。

 本当にみんな何してるんだよ。このままじゃ、本当に校長先生が……。


 そう思った直後だった。

 校長先生の体が、少し動いたように見えた。

 まさかと思い、目を擦って再度校長先生を見てみる。

 すると、校長先生は今度は大きく動き出し、すぐに立ち上がった。

 その状況を見たゴブリンは驚き、困惑している。


 それもそうだ。さっきまで虫の息だった校長先生が、急に立ち上がり、ピンピンしてるんだ。

 俺も驚きを隠せない。

 素人の俺でもやばいと分かるくらい、出血していたのにも関わらず、何もなかったかのように平然としている。

 流石に意味が分からない。

 一体どうなってるんだ。

 俺が困惑していると、校長先生がゆっくりと口を開いた。


「……ゴブリン。的確に私の隙を突き、出来るだけ心臓の近くを突き刺した、良い攻撃だった。ゴブリンの中で、私をこれだけ早く殺せたのは、貴様が初めてだ。敬意を持って、一撃で殺してやろう」


 それだけ言うと、校長先生は剣を構え、ゴブリンに狙いを定めた。

 何かを感じ取ったのか、ゴブリンは校長先生が攻撃を繰り出す前に、襲い掛かる。

 

 が、襲い掛かった次の瞬間。

 校長先生が瞬時に消え、一瞬でゴブリンの後ろへ現れた。

 そして、その数秒後。ゴブリンは地面へ倒れこみ、動かなくなった。


「…………え?……だ…………え?」


 突然起こったその状況に、全く理解が追い付かない。

 俺が理解できていない事が分かったのか、ユリはゆっくりと説明し始めた。


「モモ校長はね。生呪の力とは別の、特殊な力を持っているの」


「生呪の力とは、別の力?」


「うん、その力は『生き返り』。どんな死に方をしても、すぐに生き返ることが出来る、最強の力なの」


 ……生き返り。

 死んでも生き返るってことは、不死身の死ぬバージョン?

 いや、死ぬから不死身ではないのか。

 

 ……どちらにしても強すぎるだろ。

 死んでも死なないって、漫画とかに一人はある最強能力の一つじゃないか。 

 しかし、それならあれだけ出血して、生きているのにも納得がいく。

 さっきも一度死んで、生き返ったのか。

 だが、新たな疑問も出てきた。


「だ、だとしたら、生呪の力は一体どんな力なんだ?今生呪の力を使ったようには、見えなかったけど……」


「いや、多分だけど、今生呪の力も使ってたと思うよ。モモ校長の力は、少しの間、自分を殺した者より、強くなる力。生き返りに合った、最弱の力だよ」


 自分を殺した者より、強くなる力か。

 普通に考えたら、使うことがない、最弱ともいえる力だ。

 死んだら、強くなったって意味がないからな。 


 だが、校長先生の生き返りの力と合わせれば、それこそ最強の力になる。

 なるほど、なんとなく分かってきた。

 さっき死んだのは、生呪の力を発動させるためだったのか。

 死んで、生呪の力を発動し、ゴブリンより強くなる。

 それで、ゴブリンを倒したのか。


 ……考えれば考える程、最強だ。

 生き返りがある限り、死んでも生き返り、

 生き返ると、その分強くなれる。

 普通に考えたら、絶対に倒すことが出来ない、最強だ。

 まさしく、チート級の力の持ち主。

 これが騎士団の団長にして、校長先生の実力か。

 恐ろしいな。


「……さて、今見た通り、人間は弱い。モンスターにいとも簡単に殺され、蹂躙される惨めな生物である。だが、その事実に向き合い、戦う覚悟を決めた人間は強くなる。モンスターを殺す力を手に入れる事が出来る。いいか、時間はある。ゆっくりで良い。この学園にいる間に、覚悟を手に入れるのだ。そうすれば、モンスターへの恐怖はなくなり、いつしか強くなれる。分かったか!」


『はい!』


 そうだ、校長先生の言う通りだ。

 時間はある、ゆっくりでも良いんだ。

 少しずつ、モンスターに慣れていくんだ。

 そして、いつかはモンスターを倒せるくらいに強くなれればいいんだ。


 ……初めてモンスターを見て、少しビビってたのかもな。

 モンスターに人間以上の力があるように、俺たちにも力がある。

 前を向いて、ゆっくり、でも確実に、進んで行こう。

 

 校長先生のおかげか、いつの間にかモンスターに対する恐怖は消えていた。

 その代わりに、少しだけ、覚悟を持てたような気がする。

 そんな事を考えていると、校長先生が再び、ゆっくりと話を始めた。


「私からの話が済んだ所で、これからモンスター討伐訓練の説明を行う。この授業は、自分たちで4人チームを作ってもらい、行う授業だ」


 なるほどな……自分たちで4人組を作るのか。

 最近先生が良い事ばかり言うから、忘れかけていた。

 授業において、やっぱり先生は駄目だ。


 ……生徒に4人組を組ませるなよ。

ちなみに、校長先生は今作では相当強いです。


次回、誰もが経験する地獄再び…?

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