異世界のチート能力は、本当にチートなのかもしれない。①
衝撃的な学園生活初日から、数日が立った。
成績発表の後、俺は結局新しい友達を作ることもなく、ユリたちと一緒に宿へと帰り、一日を終えた。
友達が出来なかったことは残念だったが、その代わりに様々な事を知る事が出来た。
この世界には騎士が存在するという事。
俺はこの世界の事を、まだまだ知れていないという事。
それに、ロメリア先生が良い先生だという事。
その日の夜は、様々な事を知れたお陰か、自分に余裕ができ、次の日からの生活に大きな希望を持ち、眠りに着けた。
そして、次の日からの学園生活に、気合十分な状態で挑んだのだが……。
「学園生活が大変すぎる……」
思わず、そう零した。
俺は別の世界から来たわけだし、多少学園生活が大変になる覚悟はしていた。
しかし、想像以上に大変すぎる。
まず、学園での授業が大変すぎる。
全くと言っていいほど、授業について行けない。
それもそのはず、俺は小学生が勉強する内容すら、まだ学び終えていないんだ。
つまりは一般小学生が、高校で授業を受けているのと同じなんだ。
そんな状況で、授業について行ける方がおかしい。
それにだ。
この世界の学園には実技授業という物が存在する。
簡単に言うと、モンスターを倒せるくらい強くなるために、体を鍛える授業なのだが。
これが肉体的にも、精神的にもきつすぎる。
前世じゃ考えられないような距離を走らされ、
前世じゃ考えられないような運動をさせられ、
前世じゃ考えられないような、力を使った実践戦闘訓練?をさせられる。
これが普通の勉強と同じ量あるんだ。
運動を全くやってこなかった陰キャには、地獄以外の何物でもない。
そして、一番の大変な理由は……ロメリア先生だ。
先生は珍しい良い先生で、
俺たち生徒の事を一番に考えてくれている。
とても熱心で、俺たちを成長させようと、全力で教えてくれてるのだが……。
「…………鬼指導過ぎるんだよな……」
例えば走り込みだ。
俺たちが限界まで走って、倒れこんだとする。
普通なら、ここで止めさせて、休ませるだろう。
しかし、ロメリア先生は違う。
「もっと頑張れ、まだやれるはずだ!」と言い、
半強制的に走らせる。
勉強でもそうだ。
難しいテストをしたとして、全く分からない箇所があり、空欄にして提出しようとする。
そんな時、ロメリア先生は絶対に提出をさせてくれない。
諦めなければ、出来るという考えからの行動らしいが、少し迷惑だ。
テストくらい、もっと軽い気持ちでやらせてほしい。
「……良い人なんだけどな…………」
「良い人って誰が?」
「ふぁい!」
突然した声に驚き、思わず変な声を上げてしまった。
声のした方を見てみると、そこにはユリが不思議そうな顔をして立っていた。
「い、いや、考え事をしてて……声に出ちゃっただけだから……」
「ふーん、それより次は戦闘場での実技授業だよ。早く行こっ!」
「うん、そうだね」
それだけ話して、俺たちは戦闘場へと移動し始めた。
ユリは本当に優しい。
学園生活が始まって、数日が立ったというのに、まだ俺と仲良くしてくれている。
他に仲のいい友達がいるというのに、ずっと気にかけてくれている。
優しすぎて、好きになってしまいそうだ。
と、そんなアホな事を考えていると、すぐに戦闘場に着いた。
そこには既にロメリア先生と数人の先生が、集まっていた。
基本的に授業はロメリア先生一人がしてくれている。
他の先生が、それもこんなに沢山いる事は初めてだ。
これから一体どんな授業をするんだろうか。
「……さて、全員集まったようだな。今日はモンスター討伐訓練を行う。この訓練は毎年行う訓練なのだが、非常に危険な訓練だ。我々の話を聞き、一つ一つの行動に気を付けて行動してくれ」
「……モンスター討伐訓練?なんだそれ」
「え、コウキくん知らないの?」
「え、あ、う、うん。……その訓練って、一体何なの?」
「モンスター討伐訓練はね。毎年、魔冒学園の一年生が体験する、モンスターと直接戦う授業なの。冒険者になると、必ずモンスターと戦う事になるから、今からモンスターに慣れておくようにするために、体験させるんだって」
「……へー、初めて知ったよ」
モンスターと戦う授業か。
ロメリア先生の鬼指導もあって、
ここ数日間で、多少の学力と運動神経を身につけることが出来た。
しかし、学園に入ってから、一度も実際に戦う授業をしたことはない。
本当にモンスターと戦うのなら、これが学園に入って初めての戦いになる。
シンプルに緊張してきた。
ここ数日間で身に着けた知識や技術は、通用するのだろうか。
それに、授業で話には出ていたが、
実際にモンスターを見るのは初めてだ。
ゲームで何度も見てきたモンスター。
一体どんな見た目なんだろうか、緊張しながらも、ワクワクする自分がいる。
そんな事を思っていると、先生たちの中から、一人の女性が歩いてきた。
銀色の鎧に身を包んでいて、黒い長髪一人の女性。
入学初日に映像で見た。
確かあれは、この学園の校長のモモ先生だ。
「……これから、校長先生による説明が始まる!真面目に聞くように!」
どうやら、詳しい説明は校長先生がするようだ。
校長先生まで出てくるという事は、思っていた以上に大切な授業なのかもしれないな。
……しかし、実物で見てみると、やっぱりどこかで見たことがあるような気がする。
この見た目に、この雰囲気。
一体どこで……。
「……あ、思い出した」
ここで俺はようやく思い出した。
ゲームで出てくる騎士の様な雰囲気を放っていて、女騎士の見た目をしている。
間違いない、この世界に来た日、
一番最初に出会った、この世界の人間。
森で出会った女騎士だ。
……あれ、色々とまずくね?




