どの世界でも先生はろくなもんじゃないと思っていたが、意外にもそうでもないのかもしれない。②
「それでは筆記用具を置いて、テスト用紙を前に回すように!」
テスト時間が終わると同時に、ロメリア先生は大声でそう知らせた。
もう、テスト時間が終わったのか。
ぼーっとしてたら、いつの間にか終わってたな。
そんな事を思いながら、眠い目を擦っていると、前の席のユリが話しかけてきた。
「コウキくん、テストどうだった?」
「ああ……何て言うか…………終わったよ」
「終わった?えっと、どういうこと?」
ユリが言った意味を聞いてくると、ユリの前に座っているカンナが話に入ってきた。
「頭の良いユリは、終わった事がないから分からないのかもね。……コウキ、うちも同じよ……」
あの全てを悟った目……。
ああ、そうか。カンナも全く出来なかったんだろうな。
どうやらカンナも俺と同じ、頭の悪いタイプの奴のようだ。
俺とカンナは目を合わせ、お互いの気持ちを理解し、頷いた。
その様子を見ていたユリは、何をしているのか分からず、困惑している。
まあ、今のはテストを出来なかったものしか分からないだろう。
そんな事をしていると、先生はテスト用紙を集め終えたようだ。
「次は、実技のテストに移る!必要最低限の物を持ち、私について来い!」
それだけ言うと、先生は廊下へと出て行った。
俺たちは言われた通りにし、先生について行く。
先生について行くと、既視感のある場所へ着いた。
学校にある体育館位の大きさで、地面は学校の校庭のように、砂と土で出来ている。
間違いないな、入学試験で使った戦闘場だ。
実力テストをすると言っていたが、一体何をするんだろうか。
やっぱり50m走とか、反復測定とか、
そう言うような、前世の体力テストみたいなのをするのかな。
……嫌だな。
前世で体力テストは年に一度の地獄で、最悪のテストだ。
走ったり、体を曲げたり、ジャンプしたりする。
嫌いな体育の授業のテストだぞ、嫌に決まっている。
みんなの前で、苦手な運動をさせられるし、目立つし、しんどいし……。
駄目だ、思い出しただけでも、気分が一気に悪くなってくる。
そんなテストを今からするかもと思うだけで、体の震えと変な寒気が止まらなくなる。
急に雨が降ったり、事故があったりして、中止になったりしないだろうか。
そんなことを思っていると、先生が説明を始めた。
「これから、実技テストを行う!諸君にはいくつかのテストをしてもらい、それを通して実力を調べる。まず、最初のテストの説明だ」
そう言うと、先生は近くに置かれていた木の物体へと近づいて行った。
その物体は前世で言う、案山子の様な見た目をしているが、一体何につかうんだ?
「これから諸君には、この力案山子の破壊を目指して、攻撃してもらう!この力案山子は頑丈な素材で出来ており、そう簡単には破壊できない。この試験では力案山子を順番に攻撃してもらい、力案山子がどれだけダメージを追ったかによって、その者の実力を見る!ちなみに、力案山子の破壊にはどんな手を使っても、構わない。何か質問はあるか?……ないなら始める!」
そう言うと、先生は一番最初の生徒の名前を呼び、テストを始めた。
なるほどな。
内容をまとめると、どんな手を使ってでも案山子を破壊しろってことか。
生呪の力っていう、不思議な力があるからこそ出来るテストだな。
さて、一見木で出来たただの案山子に見えるが、実際は途轍もなく硬いんだろう。
影を操る力で、一体どうやって破壊しようか。
やっぱり、一番火力のあるシャドウハンマーで、思いっきり潰すのが良いか。
それとも影で剣でも作って、ぶった斬る方が良いだろうか。
悩むな……。
「考えてるね~」
「ふぁっ!」
急に真後ろからした声に驚いて、思わず変な声が出てしまった。
後ろを向くと、そこにはカンナが立っていた。
どうやら声の主はカンナだったようだ。
「あ、ごめん、驚かしちゃったか。しっかし、随分真剣に悩んでたね」
「まあ、テストは絶対低いでしょうし、ここで取り返さないといけないんです。カンナさんもそうじゃないんですか?」
「確かにうちもそうだけど、うちは物を破壊するのは得意だからね。そこまで心配はしてないんよ。……あ、もう、うちの番っぽい!ちょっと行ってくるから、体中を嘗め回すような目で見ててね!」
そんなことを言うと、カンナは走って先生の方へと向かって行った。
破壊が得意と言っていたが、一体どんな力を持っているんだろうか。
この世界に来てから見た力は、俺の影を操る力と、触手を操る力だけだ。
どんな力があるのか、ほとんど知らないからな。
どんな力なのか、余計に気になる。
そんなことを考えていると、歩いてきたユリが、ゆっくりと話しだした。
「……カンナの生呪の力はね、ある意味カンナに合った力なの」
「カンナさんに合った力?」
「うん。もし誰かがカンナと同じ力を持ったとしても、カンナほど上手くは使えないと思うんよ。少なくとも私の知ってる限りではね」
カンナに合った力か。
一体どんな力なんだろうか。
期待が高まるばかりだ。
そんな事を思っていると、ついにカンナが案山子を攻撃する態勢に入った。
片手を前に出し、もう片方の手を引く。
前にテレビで見たことがある、いわゆる正拳突きの構えだ。
構えを取って数秒後、カンナが目を閉じ、ぴたりと止まってしまった。
そして、少しするとカンナの周りにピンク色のオーラの様な物が、カンナを覆うように漂い始めた。
それからさらに数秒後だった。
カンナが目を開けると同時に、正拳突きを繰り出した。
「おりゃあああああ‼」
正拳突きが案山子へ突撃した瞬間。
案山子の上半分が、巨大な音を立て殴り飛ばされた。
「す……すげえ…………」
思わず、そう呟いた。
別に腕が太くて、筋肉が凄いとか、そう言うわけじゃない。
ただ至って普通で、変わった所と言えば、美少女で初対面に性癖を暴露してくる所だけ。
そんな美少女が正拳突きで、いとも簡単に案山子の上半分を吹き飛ばした。
驚きすぎて、凄いとしか思えない。
呆然としていると、案山子を壊したカンナが、スキップをしながら俺たちの方へと戻ってきた。
カンナは凄く嬉しそうな笑顔で、話し始めた。
「ねえ、どうだった?凄いでしょ、うちの力!」
「う、うん。案山子を簡単に吹き飛ばして……なんか凄かった」
「でしょー!さて、問題です!うちの力はどんな力だと思う?」
普通に考えたら、力を数倍にするとか、超絶パワーとか、そういうものだよな。
だけど、正拳突きを打つのに時間を掛けていたし、周りにピンクのオーラっぽいのが見えたしな。
「えっと……、攻撃に時間を掛ければ掛ける程、その威力が増す力。……とか?」
「んー少し違うかな。うちの力は興奮すると身体能力が上がる力!うちにピッタリな力よ!」
興奮すると身体能力が上がる力か。
何となくは理解できたが、ふんわりしてて、少し分かりづらいな。
「えーと、もう少し分かりやすく、教えてほしいかも……」
「しょーがないなー。例えば、裸で道中を歩いている時、周りの人たちに体を嘗め回すように見られるじゃん。その視線やら、恥ずかしさやらのせいで気持ちよくなるじゃん。そんな時、力が発動して、身体能力が上がる!分かった?」
「まあ…………一応は………………」
ちょっと、というか凄く例えの状況が特殊過ぎて、少し分かりずらかったが、一応理解できた。
気持ちが良くなった時に、身体能力が上昇するってことだな。
良い気分になるだけで、あの硬そうな案山子を、一撃で破壊できるほどの力を手に入れられるとか。
結構強い力なのかもしれないな。
あれ、そういえば……。
「なんでさっきは力を発動で来たんですか?」
「はー?そんなん決まってるでしょ。みんなの前に出て、男たちにエロい目で見られてたんだよ?それに、みんなの前で失敗したら恥ずかしいっていう、絶対成功させないといけない状況だったんだよ?そんなのさ……興奮しちゃうでしょうが!!!ドMの血が騒いじゃうでしょうが!!!」
……なるほど。
何となくカンナに合った力ってのが分かった。
カンナは自称ドMで、初対面の相手に性癖を暴露するような女。
はっきり言うと、ドM異常者だ。
今カンナが言ったことから察せるように、カンナは日常のどんなことでも興奮するんだろう。
つまりは、常時少しではあるが身体能力が上がっているという事だ。
それに、テストのの様な特別な時は、さらに興奮しているように見える。
そのお陰で、特別な時ほど、さらに身体能力が上がっているのだろう。
うん、確かにカンナに合った力だ。
「カンナさんの言う通り、カンナさんにピッタリな力ですね」
「でしょー!しかも、この力は少しずつ体力も上がっていくんだ!これらの事を踏まえると、うちと性行為する時は、無限に性行為出来るという事や!どうや、凄いでしょ!」
「えっ…………えっと………………はい……」
「こら、コウキくんが困ってるでしょうが!」
そう言いながら、近くで見ていたユリが、カンナの頭を強めに叩いた。
「いったーい!ごめん、ごめん、けど直接的な名前を言わなかっただけ、良しとしてよー。それより、次の準備が終わったっぽいよ!次は多分ユリやし、準備しなくていいの?」
「大丈夫だよ、準備は出来てる。私だってこういうのは得意だからね、任せてよ!」
そんな事を話している時。
先生にユリが呼ばれた。
どうやらカンナが破壊した案山子の変えを、持ってき終えたようだ。
「それじゃあ、行ってくるね!」
「うん、頑張ってね」
「いっちょ、ぶちかましてきなー」
その言葉を聞き終えると、ユリは先生の方へと走っていった。
そう言えば、ユリの力も見たことがないな。
ユリはいったいどんな力を持っているんだろうか。
「ドMとは、どんなに辛い状況だったとしても、そこに快楽を見出す。最強の心と、性癖を持つ者のことである」byカンナ




