新学期に新しい友達を作るのは、コミュ症には難しい。③
隣の席に座ったのは、黒色でショートの髪をしている女だった。
ユリたちと同じくらい綺麗で、少しクールっぽさもある、絵に描いたような美少女。
本当に顔面偏差値のバグった世界だな。
美少女だらけだ。
彼女は席に座り、荷物を置くと、窓の外を静かに見始めた。
集まっている女子たちの中に、混ざりに行くこともなく、一人で窓を見て座るという行動。
そして、どことなく漂う、この雰囲気。
何となくだが、分かる。
この女は、俺と同じタイプの人間だ。
つまりは陰キャだろう。
……この人になら、話しかけられるか?
俺にとって、女子に自ら話しかける事は、強風が吹く中でトランプタワーを十段積むのと同じくらい難しい。
だが、彼女は俺と同じ陰キャである。
前世では陰キャの女子になら、大変ではあったが、一応話しかけることは出来た。
出来た理由は、同じ陰キャだからとか、怖さが薄いからとか色々あると思うが、実際の所は分からない。
理由は分からないが、前世の俺でも話しかけられたんだ。
今の俺なら、より簡単に話しかける事が出来るはずだ。
なにより、ここで今一人の彼女に話しかける以外、俺に選択肢は残されていない。
周りの一人でいた人たちも、グループに入って行き、一人の人たちがほとんどいなくなっている。
もし、ここで話しかけなければ、彼女もグループに入り、本当にボッチになってしまう。
それは何としても避けなければならない。
俺は覚悟を決め、体を少し左へ動かす。
そして、拒否反応を起こす体を無理やり従えながら、言葉を放つ。
「えっと……こんにちは。…………俺は光輝って……言います」
よし、言えたぞ!
これはここ数日間で考えた、初対面の人への話しかけ方だ。
下手くそかもしれないが、これが俺の今の全力だ。
そして、この後どう返されてもいいように、返答も出来る限り考えてきた。
準備に関しては、とことんしてきたんだ。
さあ、どう来る?
そう思い、俺は身構えた。
が、彼女が何かを言ったり、俺の方を見たりする気配は微塵もない。
聞こえなかったのかもしれないと思い、もう一度話しかけようと、口を開く。
「……あ、あの…………俺は光輝って…………」
「はあー……聞こえてるよ」
俺が話しきる前に、彼女は俺の言葉を遮った。
どうやら一回目に話しかけた時に、聞こえていたようだ。
「そ、そうだったんだ…………その、き、君の名前は……」
そう聞くと、彼女はゆっくりと俺の方を向いた。
その顔はさっき見た時と違い、とても嫌な顔をしているように見える。
何かしてしまったのだろうか。
「……あのさ、一回目で返事がなかったんだから、分からないの?私はあなたと話したくないの。話しをする友達が欲しいなら、他の人に話しかけてくれる?私は一人が良いから、こうしているの。あなたみたいに友達が欲しいけど、あそこで話している人たちに話しかけられないから、一人でいるわけじゃないの。分かったらこっち向くのやめてくれる?」
ものすごい早口で、それだけ話すと彼女はまた窓の外を見始めた。
その話を聞き、俺は何も話すことなく、体の向きを変え、机に肘をついた。
……なんかごめんなさい。
なんか良く分からないけど、ごめんなさい。
話しかけただけだが、どうやら癇に障ってしまったようだ。
ものすごい早口で、怒られた。
やばい、この世界に来て、良い人にしか会ってなかった分、ショックが大きい。
それに、美少女に言われたのも、精神的に来る。
もう立ち直れないほどのダメージを心に負ってしまった……。
結局、誰かに話しかける事も、話しかけられることもなく、時間は無慈悲に過ぎさって行った。
そして、数分後。
聞きなじみのある、学校のチャイムが鳴るとほぼ同時に、見覚えのある女性が、教室へ入ってきた。
緑髪で腰に剣を差した、大人の女性。
確かにどこかで見たことが……。
「……あ、試験官だ」
そうだ、確か学園入学試験を仕切っていた人の中にいた。
名前をロメリアとか言ったっけか。
何で試験官がこんな所にいるんだ?
そんなことを考えると、教卓の前に立ったロメリアが大きく口を開いた。
「おはよう、生徒諸君!私の名前はロメリア。このクラスを担当する、教師だ!これからしばらくの間、諸君らと一緒に過ごしていく。名前だけでも、覚えておいてくれ」
担当する教師って……この人が担任なのか。
話し方から察するに、学校に一人はいる、すぐ起こる怖い先生だろうな。
おそらくはハズレの先生だ。
「……さて、これから簡潔にこの後の動きを説明する。まずは、教室で校長先生の話を聞いてもらう。その後は、簡単なテストをしてもらい、その成績を発表してから、下校だ。何か質問はあるか?……ないなら、少し準備をするから、席について待っていろ!」
それだけ言うと、ロメリア先生はまるい岩のようなものを教卓の上に置き、何やら作業をし始めた。
入学式はないようだが、校長先生の話はあるのか。
やっぱり校長先生の話があるのは、全世界共通なんだな。
それに、テストもあるのか。
……うん、まずいね。
テストって、テストだよな。
この世界についてはまだ知らないことだらけだ。
そんな状態で、何が出るかすら分からないテストを受けるって……赤点ってレベルじゃないぞ。
学園入学初日に、いきなり試練だらけだな。
そんなことを思っていると、教卓上の岩が光りだし、空中に映像の様な何かが映し出された。
なにあれ、凄い!
空中に映し出されてるし、機械から出てるわけじゃなく、岩から出てるし。
不思議過ぎる。
「これから、校長先生の話が始まる!真面目に聞くように!」
ついに校長の話が始まるようだ。
校長先生か、一体どんな人なんだろうか。
校長先生の話って、長いよね。




