新学期に新しい友達を作るのは、コミュ症には難しい。①
「……よし、行くか」
そう呟き、俺は準備しておいたバックを持ち、腰を上げる。
そして、しっかりと前を向き、部屋の扉を開けた。
扉の前には、ユリがバックを持ち、ワクワクしたような顔で立っていた。
どうやら、俺の事を待ってくれたみたいだ。
「おはよ、コウキくん!ついにこの日が来たね!」
「うん、待ちに待った、学園入学日だ!」
俺がこの世界へ来て、学園への入学試験を合格した日から、早十日。
今日は俺たちが魔冒学園へ通う、最初の日なのだ。
この日をずっと楽しみにしてきたんだ。
自然とテンションは上がっていく。
入学試験の日には、しっかり学園の施設を見たり、学園について知ったりできなかったからな。
この世界の学園は、どんなことをするのだろうか。
勉強する内容は、前世のように数学や、国語などなのだろうか。
それとも、力について勉強したり、実際に力を磨き上げるための実技をしたりするのだろうか。
気になることがありすぎて、ワクワクが止まらない。
そんなことを思いながら、階段を下りていくと、一階ではお姉さんが椅子に座って、俺たちを待っていた。
「あ、やっと来たな。ユリちゃん、光輝。とりあえず学園入学おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
「さて、入学祝いという事で、二人にプレゼントを用意しました!」
そんなことを言いながら、お姉さんはポケットから何かを取り出した。
そして、ユリの方へ近づくと、その何かをユリの首に掛けた。
次に俺の方を行くと、俺には手渡しで何かを渡してきた。
お姉さんに渡されたものは、ピンク色に輝く、綺麗な石だった。
信じられないほどに綺麗な石だが、一体これは何なんだろうか。
「お姉さん、これは?」
「それはお守りだよ。私が試行錯誤して作った、不思議で綺麗な石だよ。ユリちゃんはネックレスをよくつけてるし、ネックレスにして、光輝はネックレス付けなそうだし、そのままにしといた。きっと二人の事を守ってくれるから、大切にしてね」
「い、いいんですか?俺まで貰っちゃって」
「良いに決まってんだろ、光輝ももう立派な、私の弟分だからな!」
「あ、ありがとうございます。それじゃあ、いただきます」
手作りのお守りか。
この世界のお守りは、石なんだな。
前世のお守りは、高そうな布に紙が入っているイメージがあったが、それとは大きく違ったお守りだ。
しかし、誰かから物を貰うのはやっぱり嬉しいな。
手作りなら尚更だ。
そう言えば、前世では母さんに何度も手作りの物を貰っていた。
それこそお守りや、手袋、マフラーなんかもあった。
思い出してみると、懐かしいな。
……ここ数日で、お姉さんはこの世界の母さんみたいに、思えてきた。
いや、母さんは少し違うか。
俺は一人っ子だから詳しくは分からないが、どちらかと言えば本物の姉に近い感じがする。
なんか、良いな……。
そんなことを思っていると、急にユリが大声を出した。
「あ!いつの間にかこんな時間!ごめんなさい、お姉さん。もう行かないと!」
「確かにもう時間だな。よし、行ってこい!ユリ、光輝。頑張れよ!」
お姉さんに軽く会釈してから、俺たちはお姉さんの酒場を出た。
そして、軽く走りながら、学園へ向かいだした。
時間ギリギリで、俺たちは何とか学園に着くことができた。
学園は新入生の声で、溢れかえっていて、楽しそうな雰囲気を醸し出している。
ここで、始まるんだな。
俺の新しい、学校生活が、学園生活が!
そう思って、立ち止まっていると、先生から何かの紙を貰ってきたユリが、嬉しそうに紙を見せてきた。
「コウキくん、見て見て!私たち同じクラスだよ!」
そう言われて、ユリのクラスを見てみると、そこにはクラス票と書かれていて、ユリという名前があるクラスに、コウキという字が書かれていた。
まじかよ、おい……偶然ってレベルじゃないぞ、もはや奇跡だろ!
クラスもユリと一緒になったとか……。
この世界に来てから、俺の運が爆上がりしてないか!?
「ちなみに、うちも同じクラスや!」
「ふぇっ!……い、いたんだカンナさん」
いつの間にか後ろに立っていた、カンナに驚き、思わず変な声が出てしまった。
どうやら、カンナも同じクラスのようだ。
みんな同じクラスで、良かった。
この調子でいけば、学園生活も意外と何とかなるかもしれないな。
「よし、ユリにコウキ!早く教室に行こうよ!時間もないし、学園の教室楽しみだしね!」
そんなことを言って、カンナは小走りで校内へと向かいだした。
「もう、カンナったら。私たちも行こっか」
そう言いながら、ユリは俺の手を取り、駆け出した。
引っ張られながら、俺もユリと一緒に校内へと向かって行く。
学園の校内は、想像よりも大きい構造になっていた。
建物自体が大きい分、教室が多く、慣れるまでは迷子になってしまいそうだ。
廊下は前世で通っていた学校の二倍はあり、教室に入るためのドアも、必要以上に大きい作りになっている。
廊下の所々には、お知らせが書かれている紙や、誰かも分からない肖像画など、様々な物が置かれている。
スケールは大きいし、所々に見たことがない物はあるけど、大体の作りは前世の学校と変わらないようだ。
街と比べたら、雰囲気は前世に近くて、少し落ち着くな。
と、そんなことを思いながら歩いていると、ユリが急に足を止めた。
「ここだよね。やっと着いたね、建物が大きいせいで、迷子になりそうだったけど、何とかたどり着けて良かったよー」
「う、うん。これからここで勉強していくんだね。なんかドキドキするな」
「うん、それと同時にワクワクもする。……よし、それじゃあ、入ろっか」
「う、うん。そうだね」
そう答えて、少し大きなドアに手を掛けた。
この教室で、俺の第二の学校生活が始まるんだ。
一体どんな教室で、どんな人がクラスメイトなんだろうな。
ワクワクとドキドキを胸に、俺はドアを勢い良く開いた。
友達作りという、大いなる戦いが、今始まる!




