コミュ症は最悪な師匠に当たってしまった事を再び後悔する。②
「あー……空がきれいだな……」
数分駆け回った後に見つけた岩に寄りかかり、空を見上げながら呟いた。
付近には怪鳥の姿はない。何とか撒くことに成功したようだ。
しかし、どうするか。
このまま荒野を抜けようにも、何もない荒野を走っていたら怪鳥に再び見つかるのは間違いない。
今使える影で戦っても、あの巨大な怪鳥を倒せるとは思えない。
怪鳥が俺を探すのをやめるのを待つという手もあるが、あの様子じゃ見つけるまで探し続けるだろうしな……。
……はあ、なんか疲れたなー。
よく考えたら、こうやって何もせずに座ってるのは久しぶりだ。
というか、最近では完全に一人で何かをやるというのが久しぶりだ。
この世界に来てから、ユリやアリウムのお陰で、一人ぼっちってのがほとんどなかったからな。
みんなと一緒にいるのも凄く楽しいけど、やっぱり一人も良い。
緊張もしないで、深く考える事もなく、何も考えずにいられる。
うん。やっぱり俺は一人も凄い好きだ。
生まれ持った陰キャの素質と言う奴だろうか。
はあ……この時間がずっと続けばいいのにな……。
「……ん?太陽の光が消えた?太陽に雲がかかったの……か……」
周辺が影に覆われたように感じ、上を見上げる。
そこには、不気味な笑顔を浮かべた怪鳥の姿があった。
怪鳥は岩上に佇み、真っ直ぐに俺を見つめている。
「えっと……こんにちは?」
キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!
化け物じみた泣き声を上げると、怪鳥は自慢のくちばしで俺を潰しにかかる。
岩の陰に触れながら何とか避けると、岩の陰でノコギリを形作る。
怪鳥は岩上から下りると、くちばし振り上げ、俺を仕留めようと迫りくる。
怪鳥の動きは素早く、少しでも気を抜けば、簡単に潰されてしまう。
怪鳥の動きを出来る限り注意しながら、全力で避けるんだ。
注意して……全力で……いや、無理だわ!
この鳥攻撃速度ヤバすぎるって!
ギリギリの所で少し掠っちゃうって!
このままじゃ、その内やられてしまうぞ。
どうすれば良いんだ。どうすれば怪鳥の攻撃を避けられるんだ。
考えろ。今、俺は一人。俺がやられても助けてくれる人はいない。
どうすれば良いのか考えるんだ。
ギリギリで避け切れないってことは、もう少し速く動けば避け切れるってことだ。
速く動くためには、速く怪鳥の攻撃に気づければいい。
うん。なんか滅茶苦茶それっぽい考えだ。
となると……どうなる?これ以上速く気づくなんて無理だぞ。
今でも、視界にギリギリ入った攻撃を何とか避けているような状態だ。
これ以上となると、俺の目が過労死する。
……いや、待てよ。
俺は今まで、考えて攻撃を避けてきた。
時々ではあるが反射的に避ける事もあった。
だが、殆どが目で怪鳥の動きを追って、攻撃を判断する。
そして、怪鳥の攻撃を避けれる動きを考えて、どうにかして攻撃を避けている。
この世界に来て、学園で戦い方を習ってからそうしてきた。
けど、この怪鳥の攻撃はそれじゃ避け切れない。
それなら、全てを反射的に避ければいいんじゃないか?
時々やっていた、完全に反射的に避けるってのをやれば良いんじゃないのか?
前世の授業で聞いた事がある。
普通の反応では、人間は刺激を受け取り、脳を通して、命令を出す。
その脳の部分を無くせば良いんだ。
反射で避けるを起こすって、まじで意味が分からない。
けど……今の俺なら……いける気がする。
思い出すんだ。強敵との戦いで、稀に反射的に避けれたときの事を。
考えて動くんじゃない。何も考えるな。
何も考えず……来ると分かる前に避けろ!
キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!
突如怪鳥は叫んだかと思うと、翼を広げ、翼を使って殴り掛かってきた。
予想外の位置からの、高速の攻撃。
迫りくる攻撃に対し、俺は考えるのをやめた。
そして、自らの鍛え上げた体を信じ、体の起こす反射を信じた。
次の瞬間。
怪鳥の翼は一切俺に触れる事無く、振り切った。
考える事無く、反射的に攻撃を避ける事に成功したのだ。
怪鳥は驚きながらも、次々に攻撃を繰り出す。
俺はそれに対し、反射的に全ての攻撃を避けていく。
攻撃を避けられ続けた怪鳥は疲れ果て、数分後には諦めたように自らの巣へと帰って行った。
「やった……つ……つ……疲れたあああ…………」
生き延びた……生き延びたあ……ヒガン許さない……。
けど……いけた。全部反射的に避ける。
超絶疲れたけど、全部避けれた。
これは相当成長できただろ。
疲れた……とりあえず帰ろう。
ヒガンに苺を届けたら、一言強く言ってやろう。
今回ばかりは本気で怒ってやる。
少し休んだのち、苺を抱えて街へと歩き出す。
街に入り、約束の場所へ行くと不機嫌そうなヒガンが佇んでいた。
勇気を振り絞り近づくと、ゆっくりと声をかける。
「……あ……の……そ……苺……を…………」
「あ?やっと来たか。……まあ、及第点って事にしといてやるよ。この苺は美味しく俺が食っとくとして……何か言いたげだが、どうした?」
「あ……いや……何でもないです……」
「よし。それじゃあ次だ。次はこの地図の場所に行って、武道ブドウっていう果物を取って来い。俺はギャンブルしてまた待ってる」
「え……え……!?」
またって……まじで言ってる?
もう夕暮れだぞ。
こんな時間に、また果物を取りに行けと……鬼かよ。
文句を言ってやりたいが……。
「……あ?まだなんかあるか?」
「……いえ…………」
当然、口答えなんか出来る訳がなく、俺は再び街を出るのだった。




