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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
120/120

コミュ症は最悪な師匠に当たってしまった事を再び後悔する。②

「あー……空がきれいだな……」


 数分駆け回った後に見つけた岩に寄りかかり、空を見上げながら呟いた。

 付近には怪鳥の姿はない。何とか撒くことに成功したようだ。


 しかし、どうするか。

 このまま荒野を抜けようにも、何もない荒野を走っていたら怪鳥に再び見つかるのは間違いない。

 今使える影で戦っても、あの巨大な怪鳥を倒せるとは思えない。

 怪鳥が俺を探すのをやめるのを待つという手もあるが、あの様子じゃ見つけるまで探し続けるだろうしな……。


 ……はあ、なんか疲れたなー。

 よく考えたら、こうやって何もせずに座ってるのは久しぶりだ。

 というか、最近では完全に一人で何かをやるというのが久しぶりだ。

 この世界に来てから、ユリやアリウムのお陰で、一人ぼっちってのがほとんどなかったからな。

 みんなと一緒にいるのも凄く楽しいけど、やっぱり一人も良い。

 緊張もしないで、深く考える事もなく、何も考えずにいられる。

 うん。やっぱり俺は一人も凄い好きだ。

 生まれ持った陰キャの素質と言う奴だろうか。

 はあ……この時間がずっと続けばいいのにな……。


「……ん?太陽の光が消えた?太陽に雲がかかったの……か……」


 周辺が影に覆われたように感じ、上を見上げる。

 そこには、不気味な笑顔を浮かべた怪鳥の姿があった。

 怪鳥は岩上に佇み、真っ直ぐに俺を見つめている。

 

「えっと……こんにちは?」


 キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!


 化け物じみた泣き声を上げると、怪鳥は自慢のくちばしで俺を潰しにかかる。

 岩の陰に触れながら何とか避けると、岩の陰でノコギリを形作る。

 怪鳥は岩上から下りると、くちばし振り上げ、俺を仕留めようと迫りくる。


 怪鳥の動きは素早く、少しでも気を抜けば、簡単に潰されてしまう。

 怪鳥の動きを出来る限り注意しながら、全力で避けるんだ。

 注意して……全力で……いや、無理だわ!

 この鳥攻撃速度ヤバすぎるって! 

 ギリギリの所で少し掠っちゃうって!


 このままじゃ、その内やられてしまうぞ。

 どうすれば良いんだ。どうすれば怪鳥の攻撃を避けられるんだ。

 考えろ。今、俺は一人。俺がやられても助けてくれる人はいない。

 どうすれば良いのか考えるんだ。

 

 ギリギリで避け切れないってことは、もう少し速く動けば避け切れるってことだ。

 速く動くためには、速く怪鳥の攻撃に気づければいい。

 うん。なんか滅茶苦茶それっぽい考えだ。

 となると……どうなる?これ以上速く気づくなんて無理だぞ。

 今でも、視界にギリギリ入った攻撃を何とか避けているような状態だ。

 これ以上となると、俺の目が過労死する。


 ……いや、待てよ。

 俺は今まで、考えて攻撃を避けてきた。

 時々ではあるが反射的に避ける事もあった。

 だが、殆どが目で怪鳥の動きを追って、攻撃を判断する。

 そして、怪鳥の攻撃を避けれる動きを考えて、どうにかして攻撃を避けている。

 この世界に来て、学園で戦い方を習ってからそうしてきた。

 けど、この怪鳥の攻撃はそれじゃ避け切れない。

 それなら、全てを反射的に避ければいいんじゃないか?

 時々やっていた、完全に反射的に避けるってのをやれば良いんじゃないのか?


 前世の授業で聞いた事がある。

 普通の反応では、人間は刺激を受け取り、脳を通して、命令を出す。

 その脳の部分を無くせば良いんだ。

 反射で避けるを起こすって、まじで意味が分からない。

 けど……今の俺なら……いける気がする。

 思い出すんだ。強敵との戦いで、稀に反射的に避けれたときの事を。

 考えて動くんじゃない。何も考えるな。

 何も考えず……来ると分かる前に避けろ!


 キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!


 突如怪鳥は叫んだかと思うと、翼を広げ、翼を使って殴り掛かってきた。

 予想外の位置からの、高速の攻撃。

 迫りくる攻撃に対し、俺は考えるのをやめた。

 そして、自らの鍛え上げた体を信じ、体の起こす反射を信じた。

 

 次の瞬間。

 怪鳥の翼は一切俺に触れる事無く、振り切った。

 考える事無く、反射的に攻撃を避ける事に成功したのだ。

 怪鳥は驚きながらも、次々に攻撃を繰り出す。

 俺はそれに対し、反射的に全ての攻撃を避けていく。

 攻撃を避けられ続けた怪鳥は疲れ果て、数分後には諦めたように自らの巣へと帰って行った。


「やった……つ……つ……疲れたあああ…………」


 生き延びた……生き延びたあ……ヒガン許さない……。

 けど……いけた。全部反射的に避ける。

 超絶疲れたけど、全部避けれた。

 これは相当成長できただろ。

 疲れた……とりあえず帰ろう。

 ヒガンに苺を届けたら、一言強く言ってやろう。

 今回ばかりは本気で怒ってやる。


 少し休んだのち、苺を抱えて街へと歩き出す。

 街に入り、約束の場所へ行くと不機嫌そうなヒガンが佇んでいた。

 勇気を振り絞り近づくと、ゆっくりと声をかける。


「……あ……の……そ……苺……を…………」


「あ?やっと来たか。……まあ、及第点って事にしといてやるよ。この苺は美味しく俺が食っとくとして……何か言いたげだが、どうした?」


「あ……いや……何でもないです……」


「よし。それじゃあ次だ。次はこの地図の場所に行って、武道ブドウっていう果物を取って来い。俺はギャンブルしてまた待ってる」


「え……え……!?」


 またって……まじで言ってる?

 もう夕暮れだぞ。

 こんな時間に、また果物を取りに行けと……鬼かよ。

 文句を言ってやりたいが……。


「……あ?まだなんかあるか?」


「……いえ…………」


 当然、口答えなんか出来る訳がなく、俺は再び街を出るのだった。

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