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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
119/120

無能力者のバカはひたむきに努力する。

番外編のアリウム視点です!

「え、アリウムくんは迷路攻略には行けないわよ?」


「……え?……ええええ!?」


 予想外の事実に、思わず叫んでしまった。

 周りの客に謝りながらも、バラーンさんへ聞き直す。


「ちょっと待ってください!なんで俺は参加できないんですか!コウキたちと協力する魔族討伐。カンナとエスタコが行くなら、俺も連れて行ってくださいよ!」


「気持ちはわかるけどダ~メ~♡今回はワタシとカンナちゃんで行きます!……けど、そうガッカリしなくていいわよ!代・わ・り・に!アリウムくんには特別講師を用意しているのよ♡だから、明日はこの地図の場所に言ってちょうだい!」


 バラーンさんは一枚の紙を渡すと、酒を飲み干し、店を出ていった。

 紙には周辺の地図が書かれており、一か所に印がつけられている。

 地図を置くと、シャケシャを飲み干し、大きくため息をつく。


 バラーンさんから魔族と戦う依頼が来たって聞いて、勝手に俺も依頼について行くと思ってた。

 それがまさか、行くのはカンナとエスタコだけで、俺はいかないなんてな。

 いろんな技を試して、今の自分の実力を知れると思ってたのにな……。

 やっぱり、今の俺は魔族と戦えるほどの強さがないのか。

 カンナはエスタコとの合わせ技を作ったり、ユリたちは大きな依頼をこなして、街で一躍有名になったらしいし……このままじゃまずいよな。


 この街に来てから、もう数週間過ぎてる。

 俺は新しい技を少しだけ身に着けただけ。

 後は少し筋肉が増えたくらいだ。

 俺も早く強くならなくちゃ駄目だ。

 俺は一体どうすれば良いんだろ……。

 

「……いや、バカな俺がいくら考えても無駄か!考えるより行動!依頼について行けないからって、へこたれてるだけじゃ駄目だよな!俺も俺で、特別講師?の授業?頑張るぞ!」


 飲んだ分の金を置くと、元気よく店を飛び出す。

 完全な日没までは時間があるが、明日の事を考え、普段通りの宿へと駆け出す。


 そして、次の日。

 バラーンさんに言われた通り、地図内で印があった場所へと来ていた。

 その場所は街と戦場を繋ぐ門の一か所。

 数か所ある門のうち、一番中心部分に位置しているからか、門の向こうからは微かに戦闘音が聞こえる。

 もしかしたら、壁を越えて少し言った所で魔族と冒険者が戦っているのかもしれない。

 そんなことを思っていると、背後から声が聞こえた。

 振り返ると、そこには俺が憧れてた。俺が越えるべき人物が立っていた。


「最強の……男。……ゲッケイさん!」


「おう!いたな、アリウム!話はバラーンから聞いてるか?」


「あ、はい!大体は!特別講師にいろいろ学ぶようにと!……けど、まさかゲッケイさんが特別講師だとは!」


「バラーンから任されてな!魔族との戦争の第一線を見せてほしいってな!……さて!話してる時間がもったいない!良いか、アリウム!これからオレは数人の冒険者と魔族を倒しに行く!お前は自分の身を護る事を最優先に、オレについてこい!」


 それだけ告げると、ゲッケイさんは数人の冒険者と門を通り、戦場へと入る。

 突然の出来事に緊張しながらも、その後を追って行く。

 

 あの憧れのゲッケイさんと一緒に戦えるなんて……突然すぎて驚きが止まらない。

 この街に来た時一度戦ってもらえたが、あの時は強すぎてほとんど勉強にならなかった。

 魔族を倒しに行くってことは、ゲッケイさんの本気の戦闘を見れるかもしれない。

 これだけ近くで見れるなら、何か得られるものもあるはずだ。

 やべえ、めちゃくちゃワクワクしてきた!


「お、お出ましのようだ!」


 数分間歩き進んだ頃。

 ゲッケイさんが足を止めると同時に声を出した。

 声に反応し遠くの方を見ると、三人の魔族が向かってきているのが見えた。

 一人は大柄で、一人は小柄の男魔族。

 もう一人は二人の間を取ったくらいの体つきをしている女魔族。

 遠目から見ても分かる。あの三人は相当強い。

 今の俺が100人いても絶対に勝てない。

 抑えようとしても、自然と体が震えてくる。

 

「それじゃあ、オレが真ん中の魔族をやる!お前らは二手に分かれて左右の魔族を倒せ!」


『了解!』


 冒険者達は答えると、左右に分かれて戦闘態勢に入る。

 焦りながらも、続くように俺も戦闘態勢に入る。

 それと同時だろうか。巨大な衝突音がすると同時に、辺り一面に衝撃が走った。

 何事かと驚きながらも前に目をやると、大柄の魔族がゲッケイさんの顔面を殴っているのが見えた。

 

「オデハ肉ヲ司ル魔族!人間ヨ!死ネエエエエエエエエエエエエ!!!」


「肉の魔族か!オレはゲッケイ!最強の異名を持つ、人類最強の男だ!この街を攻めるというのなら、最強の前に沈んでもらおう!」


 互いに叫ぶと同時に、ゲッケイさんと魔族の拳が衝突した。

 余りの力の衝突に、周囲の砂埃が一瞬にして消え去った。

 それをきっかけに、他の冒険者達の戦闘も始まった。

 冒険者と魔族はそれぞれの生呪の力と魔力を使い、相手を殺す気で攻撃を繰り出す。

 戦闘が始まって間もないのにも拘わらず、周囲の地形は変わり、まさしく戦場の景色と化した。


 凄い……凄い……凄すぎる。

 冒険者も魔族も動きが早くて、何をしてるかほとんど分からない。

 分かることと言えば、冒険者も魔族も俺の何百倍も強いって事くらいだ。

 こんな奴ら相手に、今のままじゃ勝てる気がしない。

 だから……だからこそ、俺はここで何かを得て、強くならなくちゃ駄目だ。

 俺も動くんだ!今、俺に出来る事をするんだ!

 

 カエデを生物のような見た目に変化させ、大柄の魔族を見据える。

 ゲッケイさんは本気を出していないのか、魔族を攻撃を軽く受けているだけ。

 魔族はゲッケイさんを殴るのに夢中で、他の者を全く気にしていない。

 今なら、後ろから隙を突いて斬れる!


「よし……いくぜ!……ウルフソーダ!」


 叫びながら、臆することなく魔族へ斬りかかる。

 俺の今出来る全力。学園で身に着けた最強の必殺技。

 体を刃物に変える奴だって、この一撃で倒せたんだ。

 これなら傷の一つくらいつけられるはずだ!


 攻撃は妨害される事なく、一直線に魔族へと向かう。

 その一撃は魔族に気づかれる事なく、魔族の背中に直撃した。


「……ア?何ダ?死ネヤ」


 攻撃を繰り出した数秒後。

 魔族の軽い一撃によって、俺は一気に殴り飛ばされた。

 傷を負った体をなんとか起こしながらも、魔族へと目をやる。

 間違いなく俺の剣が直撃したその体には傷一つついていない。

 防御の一つも取っていなかった魔族に、傷一つつけるられなかった。


 傷の一つくらいはつけられると思ってたんだけどな。

 ここまで俺と魔族には実力差があるのかよ……ちくしょう。

 だけど……だからって、諦める俺じゃないぞ。

 一撃で駄目なら、二撃。二撃で駄目なら三撃。

 倒せるまで、攻撃し続けてやるよ!


 ウルフソーダで駄目なら、次はどうする?

 シンプルな大剣で斬るか?

 それとも短剣にして、細かな動きで斬るか?

 いや……それで傷をつけられるとは思わない。

 じゃあ、どうするか……。


 ………………うん、駄目だ。バカだから思いつかない。

 よく考えたらバカな俺が少し考えるだけで、あの魔族に傷をつける剣なんて思いつくわけないだろ。

 考えるだけ無駄だ。やっぱり真正面からぶった斬る!


 再びカエデを握りしめ、魔族へと向かおうと姿勢を変える。

 その時、ゲッケイの大声が響いた。


「落ち着けアリウム‼……良いか!お前はまだ未熟だ!単純に力を放出したって、この魔族には傷一つつけられないぞ!」


「え……でも、だからって何もしないのは嫌です!一回の攻撃で傷をつけられなくても……何度も何度も攻撃して……少しでも……!」


「何もするなとは言っていない!やり方を変えろって言ってるんだ!さっきの獣が噛みつくような技は中々に強いと思う!だが、あの技はこの魔族の強靭な肉体には効かない!あの技は力が色んな方向に向かいすぎてるんだよ!もっと、一点に力を集中させるんだ!」


「一点に……」


 ウルフソーダは剣を変化させた獣の牙で挟んだり、噛んだり、斬り裂いたりする技だ。

 剣自体の形が広い分、一か所に力は集中してないし、力が分散しているように思える。

 あの魔族みたいに体が丈夫な敵には効かないのか。


 ならどうするか……力を一点に集中させる。

 一体どうすれば……何か……何か良い武器は……。

 いや、武器じゃなくても良い。ウルフソーダの様に、獣を元に作っても良いんだ。

 何か……何か……あ、一体だけ。一体だけいた。


 一点に向かって突撃する、二本の角を生やした獣。

 体は大きく、足が短く、尾が細長い。牛と呼ばれる獣。

 その牛は人間が動かした赤い布に全速力で、一点に向かって突進していた。

 あの突進力と、一点への力。あれをイメージするんだ。

 ウルフソーダの時と同じように……獣を剣で再現するんだ!

 力が一点に集中するように、あの凶暴な頭を!

 

「いくぞ……変剣!」


 叫ぶと同時に、剣は暴れ狂う牛の頭の様に変化していく。

 巨大で鋭い角を持ち、真っ直ぐに敵を見据える牛のような見た目。

 ナックルと剣の間を取ったような武器。

 歪で、まだ完璧な完成には程遠い。

 だが、それでも火力は出るはずだ。

 

 変化させたカエデを握りしめ、魔族を見据える。

 駆け出すのに良い姿勢を探し、準備を整える。

 そして、隙を突いて魔族へと駆け出す。

 一気に魔族へ近づき、暴牛と化したカエデの一撃を放つ。


「貫け!ブルポイントショット!」


 その一撃は魔族の腹部へと直撃した。

 一点に力を集中させた一撃は、数分前の一撃とは違い、微かではあるが魔族に傷を負わせた。

 傷からは微かに出血も起きている。


「よっしゃああああ!見たかこの野郎!」


 やった……やったぞ!

 魔族に傷を負わせてやった!

 あの魔族に、ダメージを負わせてやったんだ!


「ア……ア?痛イ……痛イ!」


「……え……やば…………あれ?……あ、ゲッケイさん!」


 魔族の反撃を喰らうかと思った次の瞬間。

 一歩前に現れたゲッケイさんが魔族の拳を受けていた。


「なるほど。普段は穏やかだが、動く布に反応し、暴れたように向かって来る牛。それを元にした武器か。中々良いじゃないか!上出来だ!」


「あ、ありがとうございます!」


「だが、最強を目指すなら、それで満足して居ちゃ駄目だぞ。いい機会だし見せてやろう。最強という者を!」


「マトメテ……死ネ!」


「死なないさ。俺は……最強だ!」


 ゲッケイさんは叫ぶと、右手の正拳突きを放った。

 次の瞬間。魔族は一瞬のうちに殴り飛ばされ、遥か彼方へと飛ばされていった。

 その力は凄まじく、周囲を吹いていた風は消え去るほどだ。


 これが最強……俺が目指す力。

 今の俺じゃ全然敵わない……だけど……不思議とワクワクしてくる。

 俺も……この人みたいに強くなりたい。

 いや、強くなるんだ。この人みたいに。

 いや、この人よりも強くなる!


 強く胸に近い、男は再び最強を目指す。

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