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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
115/120

ドMとコミュ症が協力すれば、案外魔族に手が届くのかもしれない。③

「さて……まずはワタシの力からよ!ワタシの力は……ホット=ディフェンス!心が燃える程……硬くなる!行くわよー!」


 叫びながら、バラーンは真正面から突撃していく。

 魔族は新たに浮かぶ剣を召喚すると、全ての剣をバラーンへと放つ。

 しかし、バラーンは全く臆することなく突撃していく。

 そうなると、当然剣はバラーンに直撃する。

 

 が、剣はバラーンに刺さることなく、バラーンの肉体に弾かれた。

 その肉体からは一切流血しておらず、それどこか傷一つついていない。


「ふむ……ならば、これでどうじゃ!」


 魔族は冷静に片手に握る剣をバラーンへと振り下ろす。

 剣は真っ直ぐにバラーンに直撃するが、鋼鉄の肉体の表面で、なすすべなく停止した。

 バラーンは一切魔族の攻撃を気にすることなく、真正面から一撃を放った。

 勢いの乗った一撃に、流石の魔族も一歩後退する。

 バラーンがその隙を逃すはずがなく、バラーンの連続攻撃が魔族を襲う。

 魔族は全ての剣で攻撃を繰り出すが、バラーンの肉体を貫くことは出来ない。

 レベルの違う攻防に、思わず呆然としていると、バラーンが大きく口を開けた。


「あんたち!何やってるの!ボーっとしてないで、あんたらも攻撃しなさい!ここは戦場よ!一手が全てを分ける戦場なのよ!状況を見極めなさい!あんたたちに出来る事をして、作戦の成功に貢献しなさい!」


 そうだ……そうだった。

 戦闘に圧倒されているだけじゃ駄目なんだ。

 今日まで、出来る限りの鍛錬を積んできただろ。

 バラーンに任せるだけじゃなく、俺も一緒に戦うんだ。

 俺が……俺が剣の魔族を倒すんだ。


 しかし、どうする?

 レベルが違いすぎて、あの攻防に入って行ける気がしない。

 攻撃を気にすることなく殴り続けるバラーンに、攻撃を弾きつつ、剣で斬り続ける魔族。

 一体どうやって、バラーンのアシストをし、コケが魔族に触れられるようにすればいいんだ。

 がら空きの魔族の背中を攻撃するか。

 いや、恐らくは見抜かれて、浮かぶ剣を使って攻撃される。

 かと言って、真正面からバラーンと一緒に攻撃すれば、バラーンの邪魔になるだけだ。


 考えろ……考えろ……考えろ。

 カンナも、コケも、ウラジロも、みんな攻防が凄すぎて、隙を狙う事しか出来ていない。

 どうすれば良い……今、俺達が出来る事を考えるんだ。

 ウラジロは人形を投げれて、俺は影で攻撃できる。

 コケは苔を操れて、触れれば勝てて、カンナは攻撃と、タコでいろんな物を出せる。

 どうする……前世から今日までの知識を使って、考えるんだ。

 

「人形……影……苔……殴り……タコ…………タコ……あ」


「ん?コウキくんどうかしたの?」


「いや……もしかしたら……バラーンさんに対応するので必死な今なら……コケさんを魔族に血被けられるかもしれない」


「え!ほんと!?」


「はい……でも……その、失敗するかもだし……俺なんかの作戦じゃ」


「大丈夫だよ!コウキの作戦なら、絶対いける!だって、コウキだもん!コウキ、作戦を教えて!」


 一気に寄って来るカンナに焦りながらも、カンナの言葉を信じ、考え付いた作戦を伝える。

 ハッキリ言って、成功確率は五割。失敗すれば、俺かカンナかコケが大怪我を負う可能性もある。

 リスクを考えると、良い作戦だとは思えないが……。


「……よし、仮冒険者君。その作戦で行こう。仮冒険者さんもそれで良いよね」


「もちろん!コウキが考えた作戦なら、うちは何も言わないよ!」


「え……二人とも……こんな作戦で良いの……?」


「それが今の最善手だろ。さて、バラーンさん一人にこれ以上任せるわけにはいかない。早く準備をしよう」


 コケの言葉を聞くと、全員が作戦成功のために動き出す。

 コケは苔でゴーレムを作り、ウラジロは大量の人形を発生させる。

 カンナはエスタコの準備をし、俺は影で鎧と盾を作る。

 全員の準備が整うと同時に、すぐさま作戦を開始する。


「まずはうちらから!エスタコ!タコ墨煙!」


「はいっすううううう!」


 エスタコは顔を膨らませると、魔族目掛けて、黒い煙の様にタコ墨を放つ。

 通常のタコ墨と比べて煙に似ており、魔族を一瞬にして覆いつくした。

 それを確認すると、ウラジロ以外の3人は煙の中へと駆け出す。


「目くらましか……小童どもめが、無駄な事を。ワシ相手に目くらましをしてきた者は数十人もおるわい。目が見えなかろうが、小童如きの攻撃……ここだ!」


 魔族は自らに接近する何か目掛けて剣を振るう。

 剣は何かを確実にとらえ、真っ二つに斬り裂いた。

 しかし、魔族が斬り裂いたものは、人間どころか、生物ですらない。

 ウラジロが作り出した、ただのサメの人形だった。


「人形……む?前方から大量の何かが接近してくる。これは……全て人形か?……なるほど。人形に攻撃力はないが、ここまで多いと気が散るな」


 魔族がタコ墨と人形に気を取られているのを確認すると、俺達は互いに合図を送りながら魔族へと駆け出す。

 攻撃の姿勢に入り、全員同時に叫びながら魔族へと襲い掛かる。


 タコ墨で視界を奪い、ウラジロが投げる人形で魔族の気を引く。

 通常の魔族なら全て完璧に対応するだろうが、バラーンとの攻防の最中に突如として起きた出来事に、流石に一瞬ずつは反応が遅れるはずだ。

 そして出来た隙を狙って、三方向から俺、カンナ、コケのゴーレムで攻撃する。

 完ぺきとは言えないが、相当良い作戦だ。

 これなら……。


「ふむ……小賢しい!」


 魔族は多少驚きながらも、一瞬にして苔のゴーレムを斬り裂いた。

 直後、カンナを蹴り飛ばすと、俺へと剣を振り下ろす。

 それに対し、シャドウシールドを前に出し、真っ向から勝負する。

 盾で何とか防御するが、その攻撃の重さに、思わず押し潰されそうになる。

 それでも、足腰と腕に力を入れ、何とか耐える。

 一秒でも、一瞬でも時間を稼ぐべく、全力で耐える。


 一見したら、無駄な行為だ。

 防ぎ続けるくらいなら、盾を捨てて後ろに逃げた方が良い。

 だが、これで良い。このままで良いんだ。

 俺達はただの時間稼ぎ要因だ。

 この隙に……ゴーレムの後ろに隠れたコケが近づければ、それでいい。


「……ナイス囮だ、仮冒険者君。悪いね、魔族。その命、貰うぞ」


 瞬間。

 コケの掌が魔族の背中に触れた。


「なんじゃ……?」


「悪いね、魔族。これでもうおしまいだ」


「触れた……触れた……触れた!」


 やったぞ、コケが魔族に触れた。

 これで作戦は成功だ。

 これで、魔族を倒せるんだ!


 ……それで、一体どうやって倒すんだ?

 バラーンさんを信じて、ここまで命懸けでやって来た。

 だけど、苔を生やす力でどうやって魔族を倒すのか、見当もつかない。

 本当に、これで良かったのだろうか。


「……よくやったわ、あなたたち!これでワタシたちの勝ちよ!」


「あの……バラーンさん……勝ちって……ど、どうやって……」


「まあ、見てなさい♡」


 コケは警戒する魔族へと目をやる。

 そして、小さく笑うと、ゆっくりと説明を始めた。


「……僕の力は、苔を生やす力。触れた物になら、その物のどこにでも苔を生やせる。分かるかい?触れた物であれば、どこにでも生やせるんだよ。それが生物なら、皮膚にも、口内にも……体内にも。……コケコケ」


「……何が言いたいのじゃ?さっきから小童が……あ?なんだ……これは……」


「まずは喉。次に……肺に胃。腎臓に……そうだな、血液にも生やそう。そして最後に……心臓。これで仕舞だ」


 言い終わると、魔族はその場に倒れ、動かなくなった。

 数秒後、魔族の全身に苔が生え始め、完全に苔に覆われた。

 

 なるほど。

 話を聞いた感じ、コケが苔を生やせる場所は、どこにでも生やせるようだ。

 それは内臓や、血液などの生物の体内にある物でも出来ると。

 今のは魔族の体内にある様々な物に苔を生やしたみたいだ。

 何と言うか……怖すぎる。

 体内に大量の苔を生やされて死ぬとか……こんな死に方絶対にしたくない。

 怖いし辛いしキツイし……まあ、一応勝てたし良かった……か。

 ただ、見たくない物を見ちゃったな。

 やっぱり、生物が死ぬところは出来る限り見たくない。


「さて……終わりましたよ。魔族の死体はどうしますか?僕は……」


「……?僕は何ですか、コケさ……コケさん?」


 言葉を止めたコケへ目をやると、そこには剣に貫かれたコケの姿があった。

 その隣には、生えていたはずの大量の苔を削ぎ落す魔族の姿があった。

 想定外の状況に、考えがまとまらず、何もする事が出来ない。

 みんなも同じ状態なのか、誰一人として動けず、言葉すら発しない。


「……ふむ。流石に今のは危なかったわい」


「……ありえな……い……。僕の……苔……を……」


「まさか体内に生やせるとはな。初めての事で動揺したが、体内に苔を生やせるなら、体内に剣も召喚できるのではと思ってな。斬った物を燃やす剣を召喚し、苔を全て燃やしきった。全く……ワシが魔族でなかったら危なかった。ここまでワシを追い詰めたのは、お前を含めて5人じゃ。誇ってよいぞ」


 体内に……剣を出した?

 何で……そんなことが出来るのかよ。

 いや……今の口ぶりからして、まさか初めてやったのか。

 初めてやって、成功して、最終的に全ての苔を消して生き延びる。

 意味が分からない。化け物過ぎる。

 何で今のコケの攻撃に対応できるんだよ。

 こんな化け物……どうやって倒せば……。


「さて……次は……」


 魔族は新たに剣を出すと、俺の方へと構える。

 次の瞬間。突如として突風が俺を襲った。

 あまりの強さに目を瞑り、突風が収まった頃に目を開く。

 すると目の前には、仁王立ちするバラーンの姿があった。


「バラーン……さん?」


「……もう……駄目じゃないの……戦場で目を……瞑ったら……駄目じゃない♡」


 最後に呟くと、バラーンはその場に倒れこんだ。

 バラーンの胸には大きな傷跡があり、魔族の一撃を喰らったのは明らかだった。

 どうやら、俺を守るために魔族の攻撃を喰らい、鋼鉄の体を貫通してダメージを受けた。

 そして、倒された。

 

 俺が反応できていれば……バラーンは……。

 いや……それよりもこれは……駄目だ。

 やばい……これはやばい……。


「ふむ。一番強いのを先にやってしまったか。……さて、小童ども。次はどいつが死にたい?」


 作戦は失敗し、最も強いバラーンは倒れた。

 コケも重傷を負い、カンナもウラジロも、当然俺も恐怖で体が動かない。


 駄目だ。


 絶望だ。

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