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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
114/120

ドMとコミュ症が協力すれば、案外魔族に手が届くのかもしれない。②

 以前迷路を調査した際の道筋をメモしておいたため、迷路の探索は順調に行われた。

 いくら巨大な迷路と言っても、順路を知っていれば大したことはない。

 トラップもいくら引っかかろうが、先頭のバラーンが一撃で破壊してくれるため問題はない。

 数十分間進み、中心部まで残り数十メートルとなった頃。


「……よし、中心の部屋までもう少し見たいだし、そろそろ作戦を伝えるわね!」


「作戦……ですか?」


「ええ!いくらワタシでも、剣の魔族とやり合うのには苦労しそうだしね!何より、あなたたちひよっこ冒険者も活躍させたいのよ!……てことで、作戦名は~コケの一撃必殺撃沈作戦よ!簡単な話、触れれば勝てるコケくんを何とか魔族に近づけて、コケくんの一撃で倒そうってわけよ!」


 コケの一撃必殺撃沈作戦。

 何とも言えない作戦名は置いておいて、コケの一撃ってどういう事だろうか。

 コケの力は触れた物に苔を生えさせる力。

 ハッキリ言って、一撃で敵を倒せるような力だとは言えない。

 触れて魔族に苔を生やしたとして、それで倒せるとは思えないんだが……。


「分かるわ!みんな苔を生やす力で一撃必殺?って疑問に思ってるのよね!けど……だ・い・じょ・う・ぶ♡コケくんの力なら一撃で倒せるの。触れてどうやって倒すかは……その時のお楽しみね!みんなには触れるためのアシストをしてちょうだい!分かった?」


 俺達は困惑しながらも頷くと、バラーンはニッコリと笑い、通路の先を見据えた。

 話していて気が付かなかったが、いつの間にか中心部へ続く通路に到着していたようだ。


 あの先に剣の魔族がいる。

 数日前は歯が立たなかった。

 今でも、俺の攻撃が通じるとは言い切れない。

 それでも……やってやる。

 数日間ではあるが、暴走を制御するために鍛えたんだ。

 鍛えた力を見せてやる。


 俺達は一度顔を見合わせると、真っ直ぐに通路を進んで行く。

 そして、中心部へ一歩踏み込むと、そこには例のごとく剣の魔族が佇んでいた。

 遠目からでもすぐに分かる圧倒的な威圧感。

 剣の魔族……やっぱり滅茶苦茶強そうだ。


「さて、お出ましね。……それじゃあ、作戦開始!……と行きたい所だけど、その前に相手の戦い方を出来る限り把握しておく必要があると思うのよね~。だ・か・ら!カンナちゃん!まずは一人で戦ってきてくれるかしら?ワタシ達はあなたの戦いを見て、魔族の動きを把握するわ」


「バラーンさん……はい!分かりました!任せてください!」


 なるほど。動きを把握するためのタイマンか。

 ……いや、任せてください!じゃないだろ。

 バラーンは本気で行っているのか?

 確かに、カンナは強い。

 俺なんかの数倍は強いし、冒険者としてもやっていけるレベルだと思う。

 だけど、手始めにこの魔族とタイマンはきつ過ぎるだろ。

 桁外れの身体能力に、剣を自由自在に操れる魔力。

 こんな化け物とタイマンなんて、命がいくらあっても足りない。


「いや、カンナ……流石にこの魔族とタイマンは……」


「大丈夫だよ、コウキ!……コウキもこの数日間で色々あったみたいだけど、うちもこの数日間で凄い成長したんだ!今からそれを……見せてあげる」


 それだけ告げ、カンナはゆっくりと魔族へと近づいて行く。

 魔族は不気味に笑うと、一本の錆びれた剣を手に取りカンナへと近づいて行く。


「ほう……冒険者が来たかと思えば、まだ幼い少女ではないか。……いくら戦場でも、幼い少女を斬るのは気が引けるわい」


「おじちゃん魔族!あまりうちを舐めない方が良いよ!こう見えて……滅茶苦茶強いからね!行よ、エスタコ!」


「はいっす!」


 エスタコはカンナの言葉に答えると同時に、カンナの肩へと登っていく。

 そして、カンナと何かを離したかと思うと、口を大きく膨らませ始めた。


「まずは手始め!タコモンスターズパレード!」


 カンナが叫ぶと、エスタコが口から大量の卵を吐き出した。

 卵は地面に直撃すると同時に割れ、中から見覚えのあるモンスターが出てきた。

 2本の角のような物が生えており、足が人間と違い8本に分かれている。

 全身が赤色で覆われており、足には吸盤がついているモンスター。


 間違いない。あれはこの世界のモンスターとしてのタコだ。

 これは……タコを召喚したのか。

 よく考えれば、タコの魔族だしタコを召喚できてもおかしくはない。

 タコを召喚するって言うのが、エスタコの魔力なのか。


「さて……みんなやっちゃえ!」


 カンナの掛け声と同時に、全てのタコが魔族へと向かいだす。

 どうやら、エスタコだけでなくカンナの言う事も聞くようだ。


「あれは……魔族か!魔族と人間の協力……面白い!だが、その程度のモンスター一瞬ぞ!」


 魔族は浮かぶ剣を操作し、襲い掛かるタコを斬り刻んでいく。

 タコは協力し、魔族へと向かって行くが無残にも倒される。

 流石は剣の魔族と言った所だろう。


「やっぱり厳しいか……なら!エスタコ!スミタコ!」


 エスタコは再び口を膨らませると、黒い何かを一気に吐き出した。

 その様子から察するに、タコが放出するタコ墨のようだ。

 黒い液は煙幕のように広がりながら自由に変形し、数十センチほどの可愛らしい黒色タコへと変化した。

 黒色タコに完全に変化すると、タコ墨は浮かぶ剣へと襲い掛かる。

 当然の事の様に、剣は軽々とタコ墨を真っ二つにする。


「その程度、ワシの剣なら余裕で斬れるわい」


「確かにそうかもね……だけど!斬られて終わるだけだとは思わないでね!」


「……む?」


 タコ墨を斬り裂き、浮かぶ剣はカンナへと襲い掛かろうとする。

 その時だった。剣は突如として動きを止め、その場で地面に転がった。


「これは……操作が効かないじゃと?」


「どうよ!エスタコの墨がかかった物は外部からの操作が効かなくなる!そして……エスタコ!右腕!」


「はいっす!」


 元気よく答えると、エスタコは魔族を倒すべく駆け出したカンナの右腕と絡み始める。

 足で腕全体に絡み、頭頂部がカンナの拳にくるようにすると、エスタコの頭は一瞬にして正方形の頑丈そうな頭へと変形した。


 カンナを迎え撃とうと、錆びれた剣を構える魔族に対し、カンナは臆することなく真正面から向かって行く。

 そして、右腕を大きく構え、魔族へと狙いを定める。


 と、俺が目に出来たのはそこまでだった。

 次の瞬間。魔族の剣は折れ、数メートル背後へと殴り飛ばされていた。

 魔族は余裕そうな顔をしているが、確実にダメージは入っているようだ。

 

「……殴……った?今……狙った所は見えたけど……」


「あら、コウキくんには見えなかったかしら?まあ、無理はないわね!今のは、カンナちゃんとエスタコちゃんの合わせ技。カンナちゃんは攻撃する時、生呪の力の全てを、拳の速度を上げるために必要な箇所へと使う。エスタコちゃんは頭を固くし、カンナちゃんが拳を振ると同時に足の吸盤から大量の空気を放出する。これらによって拳の威力と速度が増す。二人の身に着けた技。その名は……」


「神速撃。うちが技の名前の雰囲気を考えて、エスタコがカッコいい技名を考えた。まさに、全てを二人で考えた技よ!」


 神速撃。

 か……かっけええええ!

 目に追えない速さの攻撃。

 あの魔族の剣を折った上で、魔族に一撃喰らわせた。

 あの、俺達が逃げるしか出来なかった魔族相手に、一人で戦って、一撃を与えた。

 凄い以外の言葉が見つからない。凄すぎる。

 カンナも鍛錬で成長しているとは思っていた。

 しかし、これは想像以上だ。

 まさか、魔族と戦えるレベルの技を身に着けていたなんて……これは俺も頑張らなくちゃいけないな。


 というか、タコの吸盤から空気って……一体どういうシステムなんだよ。

 やっぱり、この世界のタコは変わっているかもしれないな。


「……ふむ。これはこれは……錆びているとはいえ、ワシの作った剣なんだがな。……極限まで速度を上げた攻撃か。普通なら、速度に耐え切れず腕が欠損するところを、タコの力で自らへの衝撃を減少させているな。……ふっふっふっ…………面白い!実に面白いぞ!これならワシも楽しめそうじゃ!」


 楽しそうにそう叫ぶと、魔族はどこからか金色に輝く高価な剣を出すと、カンナに向けて剣を向ける。

 それを目にすると、バラーンはニコッと笑い、大きく口を開ける。


「うん!カンナちゃん、良くやったわ!合格よ!しっかり、強さが染みついているわね!……よし!ご老人もやる気いっぱいみたいだし~。ここからはワタシたちも行くわよ!さあ!三人も気合入れなさい!ここからが戦い開始!作戦開始よ~♡」


 俺達は強く返事をすると、しっかりと魔族を見据える。

 そして、全員同時に戦闘態勢へ入る。

次回本格的に戦闘開始

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