女子と二人っきりの買い物は、デートと言っても過言ではないのではないだろうか。①
「コウキくん、起きてる?」
その日、ドアをノックする大きな音で、俺は目を覚ました。
ここは……どこだ?
こんな天井、俺は知らないぞ。
家の天井でもないし、おじいちゃん家でもない。
俺は確か昨日……そうだ。俺は死んだんだ。
死んで、別の世界に来て、そしてお姉さんの宿で眠りについたんだ。
……あ、そうだ。
今日はユリと出かける約束があったんだ!
今何時だ?
急いで時計を探すが、部屋に時計は見当たらない。
焦りながら、時計を探していると、またノックが鳴った。
「コウキくん、もしかしてまだ寝てるのかな?」
「あ、い、今起きた!もしかして寝坊しちゃった?」
「少しね。でも、昨日は試験もあって疲れがたまってたんだろうし、しょうがないよ。起きたばかりなら、一時間遅らせるけど、どうする?」
「いや、いいよ。す、すぐ行く!」
まずい、やってしまった。
男と女で買い物に行くのに、遅刻するなんてあってはならない事だ。
しかも部屋まで来て、起こしてもらうとは、最悪だ。
とりあえず急がないと。
俺は適当に身だしなみを整えながら、行く準備をする。
本当なら、シャワーをしたり、服を着替えたりもしたいが、服は一着しか持ってないし、我慢することにする。
さすがに服も一枚だけじゃまずいだろうし、もし服を売っている所があったら、買っておきたいな。
そんなことを思いながらも、俺は準備を終えて、外に出る。
「本当にごめん!寝坊しちまった!」
「いいよ、気にしないで!それじゃあ、行こうか!」
そう言って、ユリは歩き出した。
自分の身だしなみを最後に確認しながら、ユリの後を追い、歩き始める。
俺たちは必要な物を買うために、何でも揃うらしい、商店街に行くことにした。
酒場から商店街までは、様々な人で賑わっていて、活気あふれる雰囲気に包まれている。
そんな街中をユリと他愛もない話をしながら、歩いている時。
ふと、一つの考えが浮かんできた。
楽しく話しながら、街中を二人っきりで歩いている。
昨日は違うと思ったが、やっぱりこれはデートと言っても過言じゃないのでは!?
だって買い物だぞ。二人っきりだぞ。
これはどう考えたってデートだろ。
やばい、そう考えたら一気にドキドキしてきた。
初めて行くこの世界の商店街に、不安な気持ちや、楽しみな気持ちがあったおかげで、全然女子と二人という事を気にしていなかった。
しかし、俺は今女子と二人っきりで、実質デートをしているんだ。
前世じゃ、考えられなかったことだ。
この状況を自覚してしまったからか、緊張で胸がはちきれそうだ。
と、いろいろな考えが頭を回っている時。
ユリが急に顔を近づけて、大声で話しかけてきた。
「ちょっと、聞いてる?」
「ふぇ!あ、ごめん、ぼーっとしてて、聞いてなかったかも」
「もう、ほら着いたよ、商店街!」
ユリに言われ、前を見てみると、そこには大勢の人で賑わっている、店が並んでいる一覧があった。
これがこの世界の商店街なのか。
前世の商店街と比べると、随分と大きいように見える。
それに食べ物から、ベットまで幅広いものを売っている。
前世の商店街と一番違うところは、剣や弓などの武器を売っている店があるというところだな。
それも大量に。
「さて、それじゃあ、買い物を始めようか!まずはすぐそこに売り場もあるし、文房具から見ようか!」
「は、はい、そうですね!」
そして、文房具を売っている店を見てみると、多種多様な文房具が置かれていた。
前世でもあったような鉛筆もあれば、持ち手が氷でできている物もある。
持ち手にトゲトゲの針が付いている物なんかもあるが、一体どんな風に使うんだろうか。
この世界の文房具には、意味が分からないものばっかりだな。
「さて、まず鉛筆だね。私は持ち手がゴムになってる鉛筆にするけど、コウキくんはどうするの?」
「あ、俺も同じものにします」
「え、同じので良いの?持ち手がダンベルになってる物とか、羽が付いてる物とかあるけど……」
「はい、これで大丈夫です」
というか、ゴムの鉛筆以外まともな鉛筆がないからな。
これにする以外の選択肢がないんだよな。
「それならいいけど、ノートはどうするの?私は卵紙のノートを使うけど」
「俺もそれでいいです」
「え、ノートもこんなに地味なのにするの!?コウキくんは変わってるね」
そう言って、ユリは不思議そうな目で俺の方を見てきた。
俺から言わせてもらえば、この世界の文房具の方が変わっている。
トゲトゲとかダンベルとか、意味の分からない鉛筆ばかり。
ノートもモンスターの歯で作られた物や、普通のノートの数倍の大きさの物など、どうやって使うか分からないものだらけだ。
そんなことを思いながらも、俺たちは買い物を続けた。
その後、数分で必要な文房具は買い終えたのだが、ここで一つ問題が発生した。
よく考えたら、俺はこの世界の金を持っていなかった。
実質デートをしていたのに浮かれすぎて、すっかり忘れていた。
まずいな、このままじゃデートが中止になってしますかもしれない。
いや、そもそもとして学園に必要な物が買えないんじゃ、学園生活を送れないんじゃ……。
「それじゃあ、会計済ませちゃおっか!」
「あ!……いや、その……実はお金を…………その……」
「あ、お金の心配してるの?大丈夫だよ、物によるけど、学園の生徒証明書を見せると、私たちの代わりに、学園が払ってくれることになってるんだ!」
え、何それ凄い。神じゃん。
もし本当なら、生徒証を持っているだけで、無料で買い物ができるってことか。
色々な権利を得て、買い物も無料って……普通の学校じゃ、そんな特典付いてこない。
こんなに豪華な特典が付いてくるなんて、もしかして俺が入ることになった学園は、凄い学園なんじゃないだろうか。
そんなことを思いつつ、少し半信半疑になりながら生徒証を店員に見せてみる。
すると店員は俺の買った物を調べ、紙に何かを書きこんでいく。
そして、書き終わったかと思うと、
「ご購入ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
と、それだけ言い残し、他の人の接客へ向かった。
本当に買い物が出来てしまった。凄すぎるな。
「ね、言った通りだったでしょ」
「うん、本当に買えました。……凄いですね、学園って…………」
「まあ、世界有数の巨大学園だからね。さて、買うものはたくさんあるんだし、どんどん行こう!」
そして、俺たちは買い物を続けていく。
特殊なマントや、本。良く分からない石の板や、木の棒などなど。
前世の世界にもあった物から、存在しなかったものまで、様々な物を買って、買って、買いまくった。
途中、射的のような物をしたり、買い食いをしたりと、遊びながら楽しい時間を過ごしていった。
これはデート!なのか?




