コミュ症は苔に苔が苔になる。②
語られるかもしれないウラジロの過去
「こう見えて凄い力なんだよ!形を変えればカエル君みたいにいろんなものを作り出せるんだ!本当に自由に動かせるから、触らずに浮かせて、縦横無尽に動かす事も出来る!」
「なるほど……それは……す、すごいですね」
「でしょー!」
凄い……のか?
いや、まあ、凄いのか。
何もない所から作れるし、話を聞く限りでは自由に動かせる。
上手く使いこなせば、そこそこ強い力のはずだ。
はずなのだが……さっき操ったりせず、作って投げるだけだった所を見るに、力を使いこなせていないのかもしれない。
そんな事を考えていると、戦闘を終えた他の冒険者が近づいてきた。
「こっちは終わった。そっちも全てを倒し終えたみたいだな!」
「え、まあ、はい……」
「にしても……凄いな、君!確か仮冒険者だっけ?その歳で、タコをここまで圧倒できる何で凄いよ!昔のヒガンさんよりも強いかもしれないぞ!」
「え……あ、いや……そ、そんなことないですよ」
「謙遜すんなって!実力だけで言えば、大抵の冒険者と同じくらいはあると思うよ。これでも戦場で、沢山の冒険者や騎士を見てきたんだ。自信を持っていいと思う!」
「そ、そうですかね……へへ……」
「あー、コウキ君てれてるー!顔真っ赤だよ!」
ウラジロの言葉を聞き、反射的に顔を抑える。
確かに、どことなく顔が熱いように感じる。
褒められ慣れていないからか、真正面から褒め有られると流石に照れる。
それが大人で、自分より凄い人からだったらなおさらだ。
自分の成長が感じられるし、何より普通に嬉しい。
うん……やばい、めっちゃ嬉しいわ。
褒められるのってこんな嬉しいものだったっけか。
いや……死ぬ気で努力してきたことが褒められているからこそ嬉しいのかもしれないな。
まさに努力が報われたような気持になって……なんか良い。
「……あれ、コウキ君!ベルト今にも壊れそうだよ?大丈夫?」
「……え……あ……あ!うそだろ!?」
下に目をやると、ベルトに大きな傷がついているのが分かった。
傷は深くに入っており、少しでも力を加えれば、簡単に千切れてしまいそうだ。
「気づかないうちに攻撃が当たったのか……最悪だ……」
師へのベルト。
学園があった街にあるボロボロな店。
そこの店主が格安で売ってくれた、様々な効力を持っているベルトだ。
このベルトのお陰で体も上手く動かせ、モンスターとより対等に戦えていた。
アリウムたちとの初めての買い物で買った、思い出の品でもあるんだが……まさかこんな形で壊れる事になるなんて……。
ローブマントも壊してしまったし、あの店主には本当に悪い事をしてしまった……。
「んー……あ、けどこれならすぐ直せるよ!」
「……え……え!本当ですか!?」
「うん!素材が特殊だけど、わちきの技術があれば簡単に直せるよ!なんなら、もっと強力に出来るかも!」
「あー……なんか良く分からないけど良かった!今日はここのタコの一掃で終わりだし、今日はもう解散で良いよ。ウラジロさんに直してもらってきなよ」
「はい……あ、ありがとうございます」
最後にそう交わし、俺達は騎士団本部へと戻っていく。
時間は未だ昼頃。昨日と比べると、街は昨日以上に騒がしく、活気で溢れているように感じる。
戦場がすぐそばの街でも、子供は楽しそうに遊び、普通に生活している。
それだけ、この街を守る冒険者や騎士が凄いという事だろう。
褒められはしたが、これで喜んでいるだけじゃ駄目だ。
もっと……もっと強くならなくちゃだめだ。
……それはそれとして、褒められたのは本当に嬉しかったな。
まあ、褒められたのを喜ぶくらいは良いだろ。
ふふっ……へへへ……俺も強くなってるんだなー……へへっ……。
気持ち悪く喜んでいると、ウラジロがゆっくりと話しかけてきた。
その声色は数分前までと違い、どこか重いようにも感じる。
「ねえ、コウキ君。だんちょうの事、あんまり悪く思わないでくれないかな」
「え……あ、はい」
「だんちょうはね。魔族と弱い奴がすっごい嫌いなんだ!理由は分からないけど、それはもう凄くね!……コウキ君は強いと思うよ。それは何となく、だんちょうも分かってる。けど、嫌いな魔族に負けたコウキ君が許せないんだと思う。それでもって、魔族に負けたって理由で、コウキ君を弱い奴だってことにしようとしてるんだと思う。……意味分からないよね。だけど、それくらいその二つが嫌いなんだ。……けど、けどけどけどね!だんちょうは本当に良い人なの!コウキ君はさ、わちきはどんな人だと思う?」
「え……どんなって……」
言っちゃ悪いが、凄く変な人。
着ぐるみをずっと来ていて、変なテンションで話しかけてくる人。
苔とか何にも気にしないし、変な所を気にしない人。
生呪の力も使いこなせていないし、これで騎士なのが信じられない人。
「……何て言うか、少し変わってるけど……凄く良い人だと思います」
「良い人か……ありがとうね!けど、気を使わなくていいよ!わちきは少しじゃなくて、大分変ってると思う!わちきなんて変な一人称だし、力もうまく使いこなせてないし、見た目もこんなだしね!けど……そんなわちきを認めてくれたのがだんちょうなの!……ちょっと、昔の話をしようかな」
そう言って、ウラジロは静かに語り始めた。




