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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
103/120

コミュ症は運ゲー能力を目の当たりにする。①

「え……え……ま、魔族……え……え……ええ…………?」


「おい、いつまで寝ぼけてんだガキ。状況を見れば分かるだろ」


 状況を見れば分かる。

 今座っているのは土の地面。

 目の前にいるのはいかつい角が生えているイケメン男魔族。

 俺を睨んでいるのは怖い女冒険者ヒガン。

 土埃は凄くて……凄い。


 いや、分からない。

 どれだけ考えても、一体どういう状況なのか見当もつかない。

 昨日は掃除した後、間違いなくベッドの上で眠りについたはずだ。

 それがなんでこんな絶望的な空間に寝転んでいたんだ。

 全くもって理解が追い付かない。


「……あの、これって……どういう状況です……か?」


「……チッ……良いか、昨日俺が言った事を思い出してみろ。任務には連れて行くっつったろ。だから連れてきてやったんだよ」


「……ええ…………あの、それで……こ、こ、ここって……ど、どこですか?」


「決まってんだろ。魔族と人間の戦争の最前線。昼夜問わず魔族と人間が殺し合ってる戦場だよ」


「……せん……じょう……」


 まさかと思い、すぐさま周囲を見渡す。

 振り返り、後ろの先をよく見てみると、そこには巨大な壁のような物が見える。

 所々に穴が開いており、そこから大砲のような物も見え隠れしている。

 その壁から、ここが街の外であることは一目瞭然。


 大体の状況を理解した上で、魔族に目を戻す。

 殺意に駆られた目。見られるだけで、体中の震えが止まらなくなる。

 そんな魔族と戦っている戦場に座らされている。

 今になって、自らの状況が最悪である事を理解し、嫌な汗が止まらなく出て来る。


「……あの……これって……え……だって……え…………」


「はあ……お前は別に何もしなくていい。何もしないで、ただ俺がこの魔族を倒すのを見てればいいんだよ」


「倒すのをって……あ、相手は魔族ですよ……?」


「ガキ、お前は俺を舐めてんのか?魔族だから何だって話だ。黙ってそこで見てろ」


 そう言い放つと、ヒガンは自らのポケットから何かを取り出した。

 取り出したものは立方体で、面には星が刻まれている。

 面によって書かれている星の数は変わり、一から六まで刻まれている。


 流石の俺でも、こんな特徴的な物は一目で何か理解できる。

 あれはゲームなどで使用する六面ダイスだ。

 ここから見たら普通のダイスだが、あれで一体何をするつもりなのだろうか。


「さて……ギャンブルと行こうか!」


 そう叫び、ダイスを大きく振り投げた。

 ダイスは高く投げられ、数秒の時間を掛けて地面に落下した。

 その時、完全に止まった時点でのダイスは5の面を出している。

 その直後。ダイスは黄金に輝くと同時に、形を変えながらヒガンの元へと戻っていく。 

 ヒガンがそれを手に取ると同時に、輝きは消え去り、形も全く別の者へと変化していた。

 その形は古くの時代から使われていた武器。ボウガンその物の形をしていた。

 ヒガンをよく見ると、いつの間にか数百本の矢も背負っている。

 状況から判断するに、ボウガンの発生時に、一緒に発生したと考えるのが妥当だろう。


「……チッ!これは使いずらいから嫌いなんだけどな。まあ……殺すか」


 呟きながらボウガンに矢を通し、魔族へと放つ。

 矢の動きを目で追おうとするが、気が付いた時にはすでに矢が魔族の腕を貫通しており、魔族に巨大なダメージを与えていた。

 それで満足することなく、ヒガンは走り回りながら、魔族目掛けて矢を連発する。

 魔族は体から酸のような物を発射しながら、その攻撃に対応していく。

 

 目で追えない速度の矢に、それに対応する魔族の動き。

 ハッキリ言って、何が起こっているのかいまいちよく分からない。

 モモ校長のような圧倒感はないが、現実的な強さだからこそ、その強さを強く感じる。

 

「……なるほど、流石に魔族だな。じゃあ……必殺技と行かせてもらおうか」

 

 ヒガンはポケットから何かを取り出すと、それを空高く投げる。

 よく見るとそれは、六面ダイスと同じく、星が刻まれた12面ダイスだ。

 ダイスが地面に落下すると、ダイスではなく、ヒガンの手にあるボウガンが銀色に輝きだす。

 

「5か……必殺技的にはまあまあだが……良しとしてやろうじゃないか!」


 ヒガンは銀色に輝くボウガンを魔族へと向ける。

 ボウガンが最大限に輝くのを確認すると、力強く矢を放つ。

 矢は突如として発火しながら、魔族へと向かいだす。

 魔族は地面を強く蹴り上げ、矢を華麗に避ける。


 その次の瞬間。

 矢が地面に直撃すると同時に、矢が炎を撒き散らしながら爆発した。

 魔族は突然の爆発を避けることは出来ず、一瞬にして炎に包まれた。

 魔族は苦しみながら地面にのたうち回るが、炎が消える気配はない。


「無駄だ。その炎は特定の時間が経過するまで、決して消える事はない。まあ、時間はそこまで長くないがな。……だが、高温の炎に巻かれながらでは、この攻撃は避けられないよな」


 数本の矢を右手に握ると、ボウガンを構え、転がっている魔族に狙いを定める。

 そして、目にもとまらぬ速さで、魔族目掛けて矢を連射する。

 当然、燃える魔族は矢を避けることは出来ず、全ての矢を体に喰らった。

 数秒後、炎が消え去ったかと思うと、魔族は耐力が切れたのか、その場に蹲るだけとなった。


「魔族を……こんな簡単に……」


「簡単に?今のが簡単に見えたのか。……やっぱりお前は駄目だな」


「…………え?……えっと……え?」


「だんちょーう!そんなんじゃ、コウキ君も分かんないでしょ!ちゃんと説明してあげなさい!」


 聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはアヒルのような着ぐるみを着た誰かが立っていた。

 その声色や身長から察するに、中に入っているのはウラジロで間違いないだろう。


「元からこいつになにか教えるつもりはないから別に良いんだよ」


「だんちょう!ゲッケイさんにお願いされたでしょ!特訓してあげてって!だーかーらー!ちゃんと教えてあげなさい!」


「……全く。おい、ガキ。今の戦いを見て何を思った?」


「何を思った……?」


 何と言うか凄かった。

 ヒガンも魔族も、信じられないほどの速さで動いていて、ほとんど目で追えなかった。

 生呪の力も凄かったし、魔力も凄かった。

 ヒガンの猛攻が凄かったが、それに対応する魔族も凄かった。

 

「……凄かったとしか…………」


「チッ……。良いか、お前はそもそも視野が狭いんだよ。お前には見えてないものばっかりなんだ」


「は、はあ……」


「……分かった。ガキ、お前今からそこで倒れてる魔族と戦え」


「……へ?」


「相当なダメージは与えてるし、あの調子なら本調子の1割の力も出せないはずだ。戦ってみれば、俺が魔族を簡単に倒せたなんて言えなくなるはずだ。ほら、さっさと行け!」


 そう言いながら、ヒガンは俺の背を押し、魔族の眼前に追いやった。

 魔族はそれを目にすると、ボロボロの体を抑えながら、ゆっくりと戦闘態勢に入る。

 

 魔族と戦えって……。

 確かにボロボロだけど、魔族は魔族だぞ。

 魔族に俺が勝てるのか?


 いや、勝しかないか。

 だって、ここで無理って言ったら何するか分からないし。

 状況的に拒否権ないし。あんな怖い人に反抗するなんて出来ないし。

 こうなったら……やるしかない。

 

 ……怖い!

ダイスの目によって何かが起こる

これこそ運ゲー能力

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