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コミュ症異世界生存史  作者: GIN
仮冒険者編
102/120

コミュ症は個性的な騎士団にあっても、当然コミュ症を発揮する。②

「……あと、先に言っておくが、俺はお前になにかを教えるつもりはない」


「…………え?」


「命令だから預かりはする。一応任務に連れて行ったりはしてやるが、それまでだ。鍛えたり、何かしたりはしない。悪いが、俺はお前が嫌いだからな」


 ……ええ……えええ…………。

 一応ほぼ初対面の相手何ですけど……俺、また何かやっちゃいました?

 この数時間で嫌われるような事はしてないと思うんですけど。

 ただ金取られて、ただ怯えながらついって言ってただけなんですけど。

 もう、本当に嫌だ。あー、もう……帰りたい……。


「あー!やっと帰ってきちゃーーーー!」


 絶望的な気分に浸っていると、突如として甲高い声が響き渡った。

 驚きながらも声主を探すと、それは部屋の隅の階段上に立っていた。

 それはオレンジ色で、ぬいぐるみのように見える見た目の着ぐるみを被っている。

 以前授業で見たゴブリンに似ている着ぐるみだ。

 この距離から性別は判断しずらいが、声色的に女性である可能性は高い。

 彼女は階段から飛び降りると、スキップで俺達の元へと向かって来る。


「もー!団長ー!仮冒険者迎えに行くだけだって言ってたじゃん!遅すぎ!どこ行ってたの!まさか……ギャンブル!?絶対そうでしょ!」


「まあな。このガキから金貰って、ちょっと遊んで来たんだよ」


「ガキって……この子仮冒険者君でしょ!?何やってるの!……ごめんね、仮冒険者の……確か、コウキ君だよね。団長にいくら取られたの?」


「え……えっと……そ、その……い、一万くらい……」


「そんなに!?だんちょーう????」


 着ぐるみの女性が顔を近づけると、ヒガンは軽く目を逸らした。

 女性は大きくため息を吐くと、どこかから財布を取り出し、数枚の紙を取り出した。


「悪いんだけど、わたちも金は持ってなくてね。ごめんだけど、今は同価値分の商品券で許してくれないかな?ちゃんと金は返えさせるからさ!あ、そう言えば自己紹介はまだだったよね!わたちはウラジロ!ヒバナ騎士団の副団長だよ!」


「あ、はい……お金は……大丈夫です……。あ……お、俺の名前は……こ、コウキで……す」


「コウキ君!これからよろしくね!ヒバナ騎士団は三人で構成されてるんだけど、もう一人は今仕事中でね。また後で挨拶に向かわせるよ!」


「あ、はい……」


 あれ、今地味に凄いこと言わなかったか?騎士団員が三人?

 団長であるヒガンに、ゴブリンの着ぐるみのウラジロに、もう一人。

 合計三人って……騎士団には少なすぎるだろ。

 俺の記憶が正しければ、モモ校長の騎士団本部には数十人の冒険者いた。

 それが三人って……。


 普通に理由を考えたら、何か騎士団に問題があって、入ってくれる人がいない。

 もしくは、騎士団員が優秀過ぎて、他に団員が必要ないとかだよな。

 まあ、状況から察するに、後者の理由だろうな。

 怖い団長に、着ぐるみ被った団員。

 うん、改めて考えてみると、やっぱりここでやっていける気がしない。

 どうしよう、出来る事なら何か理由を付けて、この場から逃げだしたい。


「うーん……よし!とりあえず、わたちがコウキ君を部屋に案内しよう!団長は団長室にまとめといた仕事やっとくように!今日中の書類だからちゃんとやってね!コウキ君、ついて来て!」


 言われるがままに荷物を抱え、ウラジロの後を追って行く。

 本部の中は所々に破壊跡があり、苔が生えている。

 やはりビー玉も所々に転がっており、普通の騎士団じゃない事は明らかだ。

 不安が増していく中で、ウラジロが一つ扉の前で足を止めた。

 扉はドアノブ以外が苔で覆われており、全体的に汚い。


「えっと……ここが……」


「うん!コウキ君の部屋だよ!今日は夜遅いし、これからの生活とか、仕事とかの話はまた明日にしようか!ということで、今日はゆっくり休んでね!」


 それだけ告げ、ウラジロはその場を去って行った。

 呆然としながらそれを見送ると、汚い扉へと目をやる。

 暫くの間扉と睨めっこをしたのちに、汚れたドアノブに手を掛け、深呼吸をしたのちに扉を強く押す。


「……まじか」


 扉の向こうは苔で覆われており、人が住み着くには余りにも汚く、自然に近すぎる部屋だった。

 一応ベッドと机はあるようだが、それも苔で覆われており、とても使える物ではない。

 目を強くこすろうが、扉の開け閉めを繰り返そうが、その絶望的な部屋の現状は変わらない。

 大きくため息をついたのちに、荷物を廊下に置き、影を形作っていく。

 学校で何度も使い、想像しやすかったそれは物の数秒で作り終える事に成功した。

 誰もが一度は使ったことがある、掃除道具。

 そう、影で作り出したのは掃除用のホウキだ。


「流石に部屋変えてくれとは言えないもんな……というか、そんな度胸ないし。コミュ症には文句言うなんて厳しすぎるし……。なら、掃除するしかないもんな」


 覚悟を決め、影で作ったホウキ。通称影ホウキを手に、部屋へと一歩を踏み込む。

 出来るだけ高い所からホウキを使い、苔や汚れを落としていく。

 前世の学校で身に着けた、ホウキの使用技術を全力で発動し、掃除を続けていくか、汚れている箇所が多い分、相当な時間が掛かる。

 

 ……疲れた。

 掃除を始めて30分くらいは経ったはずだ。

 それなりに部屋は綺麗になって、苔も大分消えた。

 それでも所々汚れているし、完璧に綺麗にするまで数十分は掛かるだろう。

 流石に1時間以上掃除するのは精神的にキツイし、ここらで休憩を挟むとするか。

 

 集めたゴミや苔をゴミ袋にまとめると、影ホウキを影に戻し、30分ぶりに外に出る。

 把握し切れていない建物内を迷いながらも、入って来た入り口から地上に出ると、ゴミ袋を捨て、冒険者ギルド方面へと歩き始める。

 空を見上げると数えきれない程の星が、夜空に現れているのが見えた。


 その景色は綺麗で、前世でも見た事がない程に輝いて見えた。

 街は灯りで輝いているのにも関わらず、信じられないほどに綺麗に星が見える。

 この世界の星は前世の星よりも輝きが強く、数が多いのだろうか。

 まあ、何にせよ綺麗だからいいか。


 そんな事を考えている時。

 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 その声に応えながら振り返ると、そこにはアリウムが一人立っていた。


「よう、コウキ!さっきぶりだな!こんな所で何やってんだ?」


「おお、アリウム。ちょっと気分転換に散歩をさ」


「気が合うな、俺も散歩だ!それじゃあ、少し一緒に歩こうぜ!」


 アリウムの申し出に二つ返事で答えると、俺達は歩き始めた。

 アリウムは挨拶や荷造りを終え、出来た暇な時間を潰すべく、散歩して回っていたらしい。


「そう言えば凄かったよな、ゲッケイさん!魔族を一瞬で倒してさ!力も凄くて、全然敵わなかったな!」


「ああ、そうだな。まじで凄かった」


「けどまあ、俺はそれよりも強くなるからな!俺の目指す所は、ゲッケイさんを越えた先にあるんだからな!」


「きっと、アリウムなら越えられるよ。アリウムは強いからな」


「そうか?ありがとな………………」


「……?」


 アリウムは答えると、突如として黙り込んだ。

 その顔はどこか考えているような、悩んでいるような表情に見える。

 それから数分間沈黙が続いたのち、アリウムは思い切ったように口を開いた。


「よし!コウキ!俺はバカだから、ハッキリ言う!今回の特訓で、お前を超える!」


「……へ?いや……超えるって……元からお前の方が上だろ?」


「はー……お前は自分の事を弱く思いすぎなんだよ!俺が言うのは変かもだけどな、間違いなく今の俺はお前より弱い!……生の魔族との戦いの時、お前は最後まで戦っていたが、俺は簡単に倒されて、最後まで戦うことが出来なかった。ゲッケイさんが倒した魔族が現れた時、お前はすぐに挑もうとしていたが、俺はそれが出来なかった」


「いや……けどそれはさ……」


「事実は事実だ!今の俺は、お前と比べてどうしようもないほどに弱い!他の奴らと比べても、ハッキリ言って劣っている!だから……だから今回の特訓で、俺は強くなる!そして、俺はお前らを超えて、最強に近づいてやるさ!」


「アリウム……」


 事実はどうであれ、アリウムは現状の実力に不安を抱いていたようだ。

 実際の所は俺よりもアリウムの方が強いと思う。

 だが、アリウムはそう思わず、自らが弱いと思っている。

 そして、自らの弱さを受け入れた上で、強くなろうとしている。

 今回の特訓で、さらに強くなろうと考えている。

 

 何と言うか……やっぱりアリウムは凄いな。

 自分の弱さを受け入れた上で、ここまで自信満々で宣言するなんて、そう簡単に出来る事じゃない。

 俺だって、相当悩んで、時間を掛けた上で出来るかどうかだ。

 そんなアリウムに、俺が伝えるべき言葉は……。

 覚悟を決めた友達に、俺が伝えるべき思いは……。


「……分かった。だけど……俺も強くなるよ。今回の特訓で、俺も強くなる。そして……俺の方こそ、お前を超す。強くなって……強くなって……強くなってやるよ!」


「……そうか!じゃあ、勝負だな!どっちの方が強くなれるか!」


「……ああ…………ああ!望む所だ!」


「……っと、時間も時間だし、俺はもう行く!コウキ!負けないからな!」


「ああ……こっちこそ!」


 最後にそう話し、俺達はそれぞれの帰路につく。

 

 強くなる。

 本気で強くなろうと思っていたのは俺だけだと思っていた。

 別に他のみんなが強くなろうとしてないと思っていたわけじゃない。

 ただ、心の底から覚悟を決め、全力で強くなろうとしているのは自分だけで、他のみんなよりも俺の方がつよくなろうとしていると、勝手な勘違いしていた。

 少しみんなの事を見誤っていたのかもしれない。

 みんな多くの事を経験し、強くなろうとしているんだ。

 俺だけじゃなかったんだ。


「よし……頑張るか」


 そう呟くと、騎士団本部へと駆け出した。

 本部に着くと、すぐさま影ホウキを作り出し、掃除の続きを始める。

 不思議と掃除は数十分前より手際よく進み、十数分で綺麗にすることが出来た。

 達成感に包まれながら、時間の事を考え、ボロボロのベッドに入った。

 疲れが溜まっていたからか、その日は数分で眠りについた。

 そして……翌日。


「……き……ろ。……ろ……キ。…………起きろ!ガキ!」


 怒鳴るような大声で、強制的に眠りから覚まされた。

 寝ぼけながらも起き上がると、そこが部屋ではない事がすぐに理解できた。

 そこには天井どころか壁もない。微風が吹いており、そこら中から騒音が聞こえる。

 状況を理解できずに立ち上がると、ゆっくりと周囲を確認する。


 周囲には土埃が舞っており、地面の土は荒れに荒れている。

 そして、土埃の先の方に目を凝らすと、そこには人影のような物が見えた。

 数秒で人影がハッキリすると同時に、寝ぼけていた意識が完全に目覚めた。

 その人影だと思っていたそれは、魔族の影だった。


「え……魔族……え?……え?」


「何寝ぼけてるんだ、ガキ」


 声のする方を見ると、そこにはヒガンが仁王立ちで魔族を睨んでいる。


 いや……あの……どういう状況??????

起きて5秒で????

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