自分は受かったのに、友達は試験に落ちた時、どんな反応をすればいいのだろうか。②
ユリとカンナの案内付きで、街の案内が始まった。
どうやらこの街は普通の街と比べて、大きめの街のようだ。
人も多く出入りして、街中は活気で溢れかえっている。
街は城壁のような物で囲まれていて、俺が入った門からしか、出入りは出来ないらしい。
街の外にはモンスターと呼ばれる、前世の世界で言う動物がそこら中にいるらしく、モンスターがら街の人を守るために壁は作られたとの事。
話を聞く限り、モンスターはゲーム出てくるモンスターと、ほとんど差異はないようだ。
モンスターは危険だが、食料から、衣類の材料まで幅広く使われている生物らしい。
そして、街の中心にあるのが俺たちの通う学園で、途轍もない規模の領土を持つ。
学園から北に行くと、貴族と呼ばれる金持ちが住んでいる城があり、南に行くと大きな商店街がある。
商店街には様々な物が売っていて、大抵のものはここで揃うらしい。
学園の西には巨大な住宅街があるらしく、街に住んでいる人は大抵そこに住んでいるらしい。
東には、飲食街があり、いつも賑わっている。
他にも街には様々な面白い場所があるらしいが、時間の関係で、また今度紹介することにして、ユリが住んでいる宿に向かうことになった。
それから、数分でその宿には到着したのだが……。
「えっと……宿ってここ?」
「うん、ここだよ!」
そこにあったのは、ゲームなどで見るような宿とは違い、酒場の様な見た目をした、木造の建物だった。
どっからどう見ても酒場に見えるけど、そう見えるだけで、違うのだろうか。
「あのー……酒場っぽく見えるんだけど……」
「酒場だからね。合ってるよ」
合ってるのか。
それじゃあ、なおさら不思議だ。
酒場なのに宿って、どういうことなんだ?
「それじゃあ、うちも帰ろうかな。またね、ユリにコウキ!」
「あ……またね」
「またね!……私たちも入ろうか」
それだけ言って、ユリはドアを開いた。
酒場の中は、居酒屋の雰囲気を醸し出しているが、思っていたよりかは広い。
中に誰もいないところを見ると、まだ営業前なのだろうか。
「お姉さん、いますか?」
ユリがそう叫ぶと、奥の台所から、ピンクの派手なエプロンを付けた、黒い長髪の女性がフライパンを一つ持って出てきた。
見た目からして、二十代前半だろうか。
「おー、ユリちゃんおかえり。試験はどうだった?」
「もちろん合格してきました!」
「そりゃあ、良かった!隣の男は誰だ?彼氏?夫?」
女性がそう言うと、少し照れてユリは答えた。
「違いますよ。彼は今日知り合った、コウキくんっていうんですけど、遠くから来たらしくて、宿を探してるみたいなんです。もし部屋が開いてれば、コウキくんの事も止めてあげられないですかね?」
「あ、こ、光輝です。ユリさんの言った通り……泊まれる所を探してて……もし出来るなら、泊まらせて……もらえませんか?」
「ふーん」
と、それだけ言うと、フライパンを近くのテーブルに置き、俺の方へと近づいてきた。
それから、顔を近づけて、足から顔までじっくりと見てくる。
凄く顔が近くて、緊張する。
「……光輝だね。いいよ、部屋も開いてることだし、泊まってくれて全然かまわないよ」
「本当ですか!……あ、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ、困ったときはお互い様だからね。けど宿代は払えないんでしょ。ここは基本的には酒場を経営しているんだ。もし酒場で少し働いてくれるのなら、宿代は無しでいいけど、どうする?」
「え、いいんですか……それじゃあ、それでお願いします……」
俺から言いだそうと思っていたが、向こうから言ってくれて助かったな。
しかし、なんで俺が金を持ってない事が分かったんだろうか。
見た目も貧相ってわけじゃないし、金が無いなんて一度も言ってないんだけどな。
まあ、そんなこと考えなくてもいいか。
今は宿が見つかったことを、素直に喜ぼう。
「よし、それじゃあ決定だね。私はミーユ。みんなからは酒場のお姉さん、略してお姉さんって呼ばれてるんだ。よろしくね、光輝くん」
「よろしくお願いします……ミーユさん」
「ミーユさんじゃなくて、お姉さん!」
「あ、よろしくお願いします……お姉さん」
「よろしい!」
そう言うと、満足げな顔をして、フライパンを取って、キッチンへと戻っていった。
それから数秒後、キッチンから、一つの鍵が適当に投げ出されて来た。
「二回の一番奥の部屋が開いてるから、そこを使ってくれてかまわない!それが鍵だからユリ、案内してやってくれ!」
「分かりました。それじゃあ、ついて来て!」
そう言うと、ユリは店内をゆっくりと進んで行き、キッチンの横にある細い階段を上がっていった。
俺も置いて行かれないように、急ぎ足でついて行く。
二階に上がると、そこには一本の広めの廊下が広がっていて、壁にはドアが均一に並んでいる。
その廊下を進んで行き、一番端の部屋の前に着いたところで、ユリは足を止めた。
「ここが今日からのコウキくんの部屋だよ。基本的に自由に使っていいらしいから、好きに使ってね」
「何から何まで、ありがとうございます……助かりました」
「気にしないで!お姉さんが言ってた通り、困ったときはお互い様だからね。……にしても、驚いたな。今日会ったばかりのコウキくんと、まさかここまで仲良くなれるなんてね」
「……俺も驚きです」
本人はそこまで、大したことをやったとは思っていないだろう。
しかし、ユリのお陰で随分と助けられた。
ユリと出会ってなかったら、学園の事も知らなかったし、学園に合格することもできなかった。
それに、泊まる所を見つける事すらできなかったはずだ。
本当にユリには感謝しかない。
「あ、コウキくんは持ってる物からして、学園に必要な物とか持ってないよね。もしよかったら、明日一緒に必要な物を買いに行かない?私もいろいろと揃えないといけないものがあってさ」
一緒にって……デートって事ですか!?
……いやいや、ただ買い物に行くだけだし、デートではないか。
だけど、女子と一緒に買い物か……。
前世では中学一年生以来、女子と出かけた事なんて一度もなかった。
それが、出会って一日の女子と買い物か。
……この世界は最高かよ。
「えっと……嫌だったら全然いいんだよ?」
「いや、俺も買物に行きたかったし……明日、い、い、一緒に行こうか」
「良かった!それじゃあ、また明日。朝の九時ごろに部屋に行くね」
そう言うと、ユリは俺の部屋から、二三部屋離れた部屋に入って行った。
それを見送り、俺も部屋へと入って行く。
部屋には小窓が一つあり、木製の机に、柔らかそうな白いベットが一つ置かれていた。
一日の疲れがたまっていた俺は、何も考えず、ただふかふかなベットへダイブした。
今日は本当に怒涛の一日だった。
急に神様に、死んだことを伝えられて、力を貰って、この世界で生きていくように言われた。
それから数分後には、女騎士と出会って、軽く戦うことになって、何とか逃げた先には巨大な街があった。
それから、優しい門番や、ユリと出会ったりしながら進んで行って、学園に出会った。
そこでは異世界で初めてのアリウムという友達ができて、試験を受けることになって……。
……そして、初めて自分を変えて、初めての勝利を得た。
その後カンナさんや、お姉さんに会って、奇跡的に宿も見つけることができた。
いろいろあったけど、凄すぎる一日だったな。
だけど、いろいろあったおかげで実感できた。
俺はこの世界できっと変われる。
最高の人生を送ることができる。
明日からも、頑張ってこの世界を生きて……いこ…………。
そして、俺は眠りについた。
この世界の明日に、大きな希望を抱いて。
次回、女子と二人で出かけるのは、デートなのだろうか。




