転生したコミュ症は、手紙で自らの死を知る。
「……森だ」
俺は思わず、そう呟いた。
それは何の変哲もない、普通の一日に起きた。
この日、俺はいつも通りの生活を送っていた。
いつも通り、朝起きて。
いつも通り、学校に行き。
いつも通り、家で遊ぶ。
そして、いつも通り眠りについた。
そうだ、俺は布団に入って、眠りについた。
それなのに、今は見知らぬ森の中に立っている。
突然すぎる出来事に、理解が全く追い付いていない。
……どういうことだ。
眠りについて、気が付いたらこの状況ってことは夢か?
いや、夢なら草の感触がこんなにもリアルなわけがないし、寒さを感じるわけがないか。
何より、こんなに体を動かせて、意識がはっきりしている夢なんてあるはずがない。
夢じゃないとなると、現実ということになるが、現実だとしたらドッキリとかだろうか。
……いや、ドッキリの方がない。
そもそもとして、俺をドッキリのターゲットにするような知り合いは1人もいないからな。
考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく。
一体だれがどんな目的でこんなところに俺を移動させたのか、そもそも他の人の手によって移動させられたのか。
というかここはどこなんだろうか。
それから数分立ち、理解出来なさ過ぎて、宇宙人に連れ去られたんじゃないかと考え始めた頃。
ふと、近くに落ちている黒い箱に気が付いた。
その綺麗な見た目に魅了され、俺は何も考えずに箱へと近づいていく。
見た目と、触り心地から俺でも分かるほど、高そうな箱だ。
……怪しい。
木しかない森の中に一つだけ置かれている、綺麗な箱。
この箱には何かありますよ!って言ってるようにしか思えない。
だが、この箱以外、手掛かりになりそうなものがないのが現状だ。
……一度開けてみるか。
そう思い、恐る恐る箱を開けてみる。
開けてみると、箱の中には上下そろった服と2枚の手紙が入れられていた。
手紙には「加藤 光輝様へ」と、一目で俺宛だと分かるように名前が書かれている。
どうやらビンゴのようだ。
この箱は俺をここに移動した何者かが用意したものらしい。
分からないことだらけだが、これを読めば何かわかるかもしれない。
そう思い、俺は手紙を読み始めた。
【加藤 光輝様へ】
初めまして、光輝君。
え、何を言ってるか分からないって?それじゃあいろいろ説明してあげよう!
君が今日眠りについた後。僕がミスったせいで、入る予定じゃなかった君の家に、強盗を侵入させちゃったんだよね。
その強盗はマヌケでね。君の両親に気づかれちゃってさー、それで近くにいた君を人質に取ったんだ。
さらに、強盗はマヌケ過ぎてね、焦った強盗は手を滑らせて君を殺しちゃったんだよ。
いやー、めちゃくちゃ焦ってたんだろうね、ナイフを近づけたら間違えて刺さっちゃったぽいんだけど、動揺しまくってて面白かったよ。
それでなんだけどね、一つ問題が発生したんだ。
それは、まだまだ寿命があった君が死んじゃったことなんだよねー。
詳しく言っても分からないだろうから、簡単に言うと寿命を使い切っていない人が、死ぬといろいろ問題があるの。だからどうしよーってなってね。
話し合いの結果。君を別の世界で復活させることになったんだ。
ということだから、第二の人生を楽しんでね。
さすがに何もないのはまずいと思うから、一般的な服と、君にあった特別な力をプレゼントするから、有難く受け取るように。
じゃあ頑張ってね。 神より。
手紙を読み終えると、俺は自然と言葉をこぼした。
「……何言ってんだ?」
書かれている内容が意味不明過ぎて、全く理解ができない。
それでも一つだけ、瞬時に思ったことがある。
……なんで手紙?
いや、良く分からないけどさ、死んだとか、別の世界だとか伝えるときはさ、神様本人が直接来て、面と向かって伝えるべきだろ。
手紙で伝えるって、いくら何でも適当すぎないか。
それに途中とんでもない事が書かれていたよな。
「僕がミスったせいで」って書いてあったよな。
……え、軽い感じで書かれてるけど、俺神様のミスのせいで死んだの?
あのいろんな人たちから崇められている、神様のミスのせいで死んだの?
ダメだ、衝撃的過ぎて頭が付いてこない。
死んだってだけでも困惑してるのに、それが神様のミスのせいで、しかもめちゃくちゃ軽い感じで書かれてるし、その上に別の世界に復活。
内容が凄すぎて頭がパンクしそうだ。
何とか状況を理解しようと、何度も手紙を見返し、何度もあたりを見渡した結果。
数分間もの時間をかけて、ようやく状況を理解することができた。
どうやら俺は適当な神様のせいで死んで、その代わりに別の世界へ連れてこられたようだ。
意味が分からないが、起きたら森の中にいた事と、この手紙からこの状況を認めるしかない。
「……とりあえず服でも着替えるか」
そう呟き、俺は箱の中に入っていた服を取り出した。
服は前世で触ったことのないような生地でできていて、薄いのにしっかりしている。
うん、きつくもないし、緩くもない。丁度いいサイズだ。
俺のサイズに合わせてくれたようだ。
それに、薄い生地でできているはずなのに、全く寒くない。
それどころか暖かい。
凄い生地だな。この世界は前の世界よりも、技術が進んでいるのかもしれない。
……さて、とりあえず服を着たわけだが、これからどうするか。
急に死んだことを伝えられて、第二の人生を楽しめと言われましてもね。
よく考えたら、手紙が本当なら、俺死んだんだよな。
伝えられ方と、状況で全く実感がわかないが、いざ死んだと思うと、さすがに思うところがある。
はっきり言って、前世の俺の人生は傍から見たら、良い人生と言えるものではなかった。
頭が良い訳じゃなく、高校では中の下位の成績で、その代わりに運動神経が良いなんてこともなかった。
これといった特技もなく、目立ったことなんて全くない。
その上コミュ症で陰キャ。人と話すのが苦手な上に、自分の意見を話すこともできない。
恋は叶わず、憧れていた、誰かの為に体を張れるような人にもなれなかった。
最高の人生とは言えずとも、そこそこ楽しい人生ではあった。
好きなことをして、毎日数少ない友達と遊び、一日の最後には良い気分で就寝。
それがこんな終わり方か……。
「はー……よし!」
俺はそう呟くと、頬を叩き、覚悟を決める。
今更どうこう考えたって仕方がない。
結局の所、俺は死んで別の世界に、異世界に復活したんだ。
こうなったなら覚悟を決めて、新しい第二の人生、楽しんで行こうじゃないか。
もしかしたらこの世界でなら、俺も変われるかもしれない。
普通に人と話せて、友達もたくさんいて、恋も叶って、見知らぬ誰かのために体を張れて、なりたかった自分になれるかもしれない。
最高の人生を送れるかもしれない。
よし、前向きに行こう。
とりあえずはコミュ症から直していくことにしよう。
大きな期待を膨らませ、俺は異世界生活へ一歩を踏み出した。
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